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14.悪魔の最期

 大型の弩弓から放たれた小槍ジャベリンは、撃ったメルク自身が驚くほどの精度で、照準通りに巨像の右脚に突き刺さった。

 岩壁に矛先が埋まり、そこからビキビキとヒビが広がっていく。


 しかしヒビの広がりは巨像の右脚を完全に崩すまでには及ばなかった。

 小槍が体に刺さったのも意に介さず、メルク達に迫ろうとする。


「失敗ですか!?」


「大丈夫、成功よ。薬品もしっかり岩にかかったし、後は……」


 リヨンが言い終わる直前、横から一つの影が飛び出して来た。


「あの子に任せるわ」


 コルシェが体勢を立て直し、またも巨像に向かって突進する。

 巨像はメルク達の方に意識を向けていたことで反応が遅れ、迎撃が間に合わなかった。


 懐に潜り込んだコルシェは、突き刺さったままの小槍目がけて渾身の一撃を打ち込む。

 小槍が奥に押し込まれたことでヒビが広がり、今度こそ右脚は根本から砕け散った。


「やった!」


 巨像は右脚を失ったことでバランスを崩し、ゆっくりと前方に倒れ込む。


「まだよ!眼を破壊して!」


 リヨンの声を聞き、コルシェは素早く正面に周り込む。

 倒れた巨像の頭は、ちょうどコルシェの身長ぐらいの高さまで下がり、赤い眼が正面からコルシェを見ている。


 両腕をついて、上体を起こそうとする岩の巨人。

 しかしその前に、コルシェの拳が巨像の眼を捉えていた。


「はあぁぁッ!」


 雄叫びを上げ、力任せに殴り抜けると、巨像の眼はガラス玉のように砕け散り、中からドロドロと血のような赤い液体が流れだす。

 同時に岩の体がガラガラと崩れ、ただの石くずとなった。


 今度こそ“オメガの悪魔”は完全に消滅した。


◆◆


「はぁっ……はぁっ……」


 疲労が限界だったのか、拳を振り抜いた勢いのままよろけ、大の字になって寝転がるコルシェ。

 すぐさまメルクとリヨンが駆け寄る。


「コルシェ!大丈夫ですか?」


「も、問題ありませんわ……」


 コルシェは両腕で体を起こそうとするが、支えきれず再び倒れる。


「はいはい、大人しくしてなさいって。大丈夫な方がおかしいんだから」


 リヨンは懐から試験管を取り出すと、栓を抜き、コルシェの口元に持っていく。


「何ですか?それ」


「ちょっと元気が出るお薬。怪しい物じゃないから安心して」


 試験管を徐々に傾け、コルシェの口に少しずつ中の薬品を流し込む。


「んぐっ……ゲホッ!不味いですわ!」


「それでしばらく安静にしてれば動けるようになるわ」


「そうですよコルシェ。あれだけ闘ったんですから、しばらく休憩して……」


 ――しばらく?

 メルクはふと気になって空を見上げた。

 空はすでに赤みを帯びて、夕陽が山の向こうに落ちかけている。


「まずい!日が沈んでしまう!」


「なんですって!?……あ痛っ」


 慌ててコルシェは立ち上がろうとするが、未だ回復しておらず、尻餅を着く。


「すぐには無理よ、何なら馬車で街まで送って貰うけど?」


 大型の馬車ではスピードが出ず、おそらく間に合わない。

 キリウムの街に着いたとしても、結婚式場までは入れないだろう。

 どこかに降ろして貰って、そこから担いで行く?日没までにそれはとても無理だ。


 ――そうだ!

 メルクはある決心をした。


「……馬をお借りします」

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