第6話
「…何でこうなるんだよ」
俺はベットに座り楽しそうに携帯をいじっている由恵に視線を移す。
…事の始まりは二時間前…
俺の提案に戸惑いながらも賛成した三人。
俺は強行突破でタクシーを止め、近くのラブホテルまで向かって貰った。
ラブホテルと聞いて固まってしまった美咲とマコ。
俺はそんなのお構いなしで、隣に座る由恵に小さな声で囁いた。
「…由恵、いいか?覚悟を決めるんだ!」
俺の言葉に、由恵は力強く頷いた。
「…ブホッ!…ゴホゴホッ!」
助手席でマコが変な咳をし始める。
…風邪でも引いたのか?
まあ、マコが風邪をひこうが関係ない!
俺はこれから起こるであろう出来事に胸を高鳴らせた。
これから向かうのはラブホテル…
まさか、男同士で部屋を借りるわけには行かない。
つまり必然的に男女ペアになる訳だ!
勿論俺の頭の中では、俺と美咲、マコと由恵のペアを組む予定だ。
…後は由恵のおいろけ作戦でマコを落とす!
さすがのマコも、ラブホのおいろけ作戦では落ちるに決まってる!
俺と美咲は…
チャンスがあれば嬉しい方向へ…
俺は一人でニヤニヤしながら、見え始めたラブホテルを見つめていた。
…なのに…
ラブホに着くなり、二人で部屋を選び始めるマコと美咲…
何故?
いつものマコなら動揺するハズだろ?
いつもの美咲なら警戒するハズだろ?
…もしかして…!
「マコ!」
俺はマコの腕を掴み、壁側まで引っ張る。
「マコと美咲ってもうやっちゃったの!?」
…バシッ!
俺が話し終わらない内にマコに頭を叩かれる。
「そんな訳ないだろ?部屋を借りるのは男女ペアでも、後からこっそり入れ代わればいいだろ?」
マコはそう言って顔をしかめると、今度は由恵を見ながら小さな声で…
「…智博こそ…由恵に覚悟を決めろって…どういう関係なんだよお前達?」
…と聞いてきた。
…さっきの会話、聞こえてたのかよ…
それにしても、こっそり入れ代わるって…結局マコと寝るのか…
しょうがない。由恵の代わりに、俺がおいろけ作戦実行するか…
俺はマコの質問に答えるのを忘れたまま、部屋を選んでいる由恵の元へと足を向けた。
…ハズなのに…
何故か部屋に居るのは由恵
……
「…マコと部屋を交換しに行けよ…」
俺は由恵を睨みながら言う。
由恵はそんな俺を気にも留めない様子で
「嫌だよ。この部屋気に入ってるんだよ!」
と続けた。
…もういい…
「わかった。俺が美咲と交換しに行く!」
俺はそう言って荷物を手にする。
…しかし、由恵に掴まれた腕がそれを邪魔した。
「…何で?私と一緒よりもマコの方がいいの?」
由恵は下から俺を見つめながらそう言った。
…そんなの…
「当たり前じゃないか!マコと美咲が二人で泊まるなんて考えただけでも羨ましい!」
俺がそう言うと、由恵は少し怒った様子で
「もういい!私お風呂に入るから勝手にしたら!?」
と言って、風呂場へと足を向けた。
…何怒ってんだよ?
俺は由恵が怒った理由がわからないままベットへと腰を降ろす。
…美咲と部屋を交換しに行くか…
…でも…
風呂から聞こえてくるシャワーの音…
俺の足は自然と風呂場へ向かってしまう。
…曇りガラスにうっすらと映る由恵の姿…
…これはヤバイ…
俺は黙って曇りガラスを見続ける。
「…トモ?何してるの?」
曇りガラスの向こうから由恵の声が聞こえてきた。
俺は正直に
「覗き。」
と答えてみる。
すると聞こえてきた由恵の
「…最低。」
の声。
……?
あれ?でも、怒ってはいない…よな?
「…トモ、私出たいから退けて?」
由恵の声に、俺は部屋へと足を向け…
…る訳がない!
「わかった」
と返事だけして、壁に隠れる俺。
勿論、顔だけそーっと向ける。
曇りガラスがキーッと開く。
由恵の手が伸びてきてバスタオルを掴む。
…そして…
バスタオルで身体を隠しただけの由恵が姿を現した!
…萌え…
そのまま下着を付けて行く由恵。
…そして…
「キャー!トモ何してんの!?最低!」
…と響いた由恵の声…
俺は慌てて部屋に戻るとそのままベットに潜り込んだ。