第10話
「…信じらんない!」
私はそう言うと、手にしていた携帯電話を放り投げた。
「また連絡する」
それがトモから送られてきたメールだった。
絵文字も入ってないし、短いし!
それに『また』っていつ?
私はそれまでトモからの連絡を待たないといけないの!?
イライラする。
何がって…トモの態度が!
急に冷たくなるなんて!
そんな解りやすい態度取らないでよ!
…ボスンっ!
私はベットに倒れ込むと、枕に顔を埋めて溢れ出した涙を堪えようとしていた。
…トモの目に私はどう映ってるんだろう。
好きでもない男と簡単に寝ちゃう軽い女?
…好きでもない男と簡単に寝れる訳ないじゃん…
…トモだからなのに…
あの男はそれに気付いてない…。
…悔しい!
私にとって、トモはこんなに特別なのに!
なのに…私とマコをくっつけるとか…自分と美咲がくっつくとか!
訳分からない作戦ばっかり!
ガス欠で車を止めるし…
泊まろう!なんてミエミエの作戦立てるし!
しかも、一緒に寝るのが私よりもマコがいいって…
馬鹿にしすぎ!
…本当に何であんな最低男を好きになんかなっちゃったんだろう…
トモなんてマコみたいに優しくないし!
マコみたいに考えて行動しないし!
マコみたいに気を使わないし!
マコみたいに…!
……。
(由恵だっていつもマコマコマコマコ言ってるだろ!?)
頭に浮かぶトモの言葉。
…私の胸がチクリと痛む。
自分でも気付かなかったよ。
こんなに頭の中がトモだらけになってたなんて…。
私はグルンと寝返りをうつ。
その拍子に、私の身体からトモのつけてたブルガリの香水の残り香がした。
それが私の胸を締め上げる
…お風呂に入るのが勿体ない。
もう少しトモの香りに包まれていたかった。
帰りの車内。
トモは私に
「付き合おう」
って言ってくれた。
…トモからの二度目の告白
―付き合える訳ない―
こんなに好きなのは私だけだって解り切ってる。
それに、身体を重ねた今
また
「ノリ」だなんて言われたら、もう立ち直れる自信ないよ。
私は放り投げた携帯電話に手を伸ばす。
「また連絡する」
トモからのメールを見つめた。