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俺が初恋をしている件について  作者: 会津さつき
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危険なスクールライフの始まり

今回初投稿です。

今後ともこの俺恋シリーズを投稿したいと思ってますので、よろしくお願いします。

桜の花が咲き誇る頃。

 俺は高校生になった。

 この話は、そのごく平凡?な高校生のスクールライフの話だ。

 

一章危険なスクールライフの始まり


 俺/水沢(みずさわ) 泰平(たいへい)/十五歳/千葉県立紅(こう)(らん)高校の一年生/千葉県松戸市在住

 これを見るとわかるが、俺は今年から高校生だ。

 さらに、自宅は松戸市にあるのだが、なんでわざわざ地元の高校ではなく離れた高校に行くのかというと「親友が行く」のがおおよその理由だ、それ以外にも理由はあるのだが話したらきりがないからまた今度の機会にしよう。

俺の成績はずば抜けて高いわけでもなく、逆に馬鹿みたいに低いというわけでもなく平均的な成績だった。それに、この高校は俺の内申点よりも少し低かったから割と余裕で合格できた。

この日は高校生活初の登校だが、登校するだけで疲れてしまった。『平日』そう、通勤ラッシュの時間と重なるのだ…登校するたびにこの苦しみを味わうと考えると…めまいを起こしてしまう勢いだった。

 すでにクラス発表は終わっており、俺は三組だった、ちなみに、担任は「桜井(さくらい) 明日香(あすか)」という先生だった。名簿を見たところ、多少だが見覚えのある名前もあり少し安心している。そんなこと思っているうちに学校の最寄り駅に着いていた。

 駅から学校までは徒歩で向かう、その道中には、同じ制服を着た人が学校に近づくにつれて増えてきた。

「ふぅ…なんか高校生になったって感じがしないな…」とふと思う。だってつい数か月前まで中学生だったと考えると実感なんて無いだろう。

 そんなことを思っているうちに気付けばもう学校に着いていた。駅から十五分程で着く距離だったのでそれもあるかもしれない。俺はゆっくりと学校の中へと入っていく。桜並木を通り、昇降口へ行き、長い階段を上り、教室に入る。

 だが、いざ自分の席に座ろうと座席表を見ると、そこにはありえない事が書いてあった。

『みんな好きなところに座っていいからな』とチョークで書いてあり、下の模造紙(もぞうし)には男女としか書いていなかった。多分これは、男のところには男、女のところには女が座れというのを表しているのがわかった。俺はその指示通り好きな席に座った、その時には隣には誰もいなかった。 

俺はしばらくの間、愛読書の小説を読んでいた。すると隣から『ガタッ』という音が聞こえた、隣を見るとそこには見覚えのある姿があった。

 俺は少しの間、黙ってから

「あれ?もしかして宮内か?」

 彼女は小声で

「うん…そうだよ」

と答えた。

 宮内(みやうち) ()香里(かり)/十五歳/同じ中学で、優しく、お嬢様みたいな女の子だ。まさかこんなところで出会えるなんて思ってもみなかった。

「泰平君も、ここの高校だったんだね」

「そ、そうなんだよ、偶然だな、あはは…」

 と、笑ってごまかしたが実際「めっちゃ嬉しいじゃねぇか」と心の中で叫ぶ。

俺はその気持ちが表に出ないように頑張って抑えた。

 その時「ヤッホー」という声と共に、宮内の後ろから女の子がひょこっと顔を出した。

 その子は初めて会った子だったから、戸惑ってしまった。

 その後宮内が後ろにいる子を紹介し始める。

「紹介するね、この子は友達の島田(しまだ) 美咲(みさき)ちゃんだよ」

 島田 美咲/十五歳/同じクラスの女の子

 俺の意見だがはっきり言おう、「めっちゃ可愛いじゃん‼」と心で叫ぶ。

 だが、この美少女は俺の想いをまんまと裏切ってみせた。

「ねぇみずっち」

 その呼び方に思わず「みずっち⁉」と驚きつつ言う。

「今日の帰り一緒に帰ろうよ」

「えっ、いきなりそんなこと言われても」

「ダメェ?」

「また今度な、今日はダメだ」

「わかった、絶対だよ!約束だからね‼」

 と言ってこの場を後にした美少女?は他の友達のもとへ行った。

「ねぇ、あの子の話し方どうなってんの⁉」

 と、聞きたくてしょうがなかった疑問を宮内に聞く。

「あぁ、あの子が仲良くなった人に使うんだけど」

「だって俺、あの子と今日初めて会ったんだぞ?どうなってんだよ?」

「それは私にもわからないよ」

 結果は迷宮入りしてしまった。なんだかんだ話しているうちにチャイムが鳴った、みんな急いで自分の席に座っていく。

 みんなが座り終わった直後に桜井先生が来た。

 桜井 明日香/年齢不詳(彼女曰く永遠の二十歳(はたち))/俺たち一年三組の担任だ、少しズボラでマイペース過ぎるっていうか…なんというか…。

 この学校は八時ニ十分になると鳴り、それを合図に教室に担任の先生が降臨するのだが、この先生は『特別』だと同じ高校に通う先輩の証言を思い出す。

『この人は時間通りに来ることが珍しいんだよ、一回先生が来なかったから授業がなくなったことがあったんだよ』なんて、軽く話しているがこれは教師としてヤベェことだった。だけど今日はちゃんと時間通りに来ていた。

「雨でも降るんじゃねぇのか?」なんて心の中で思ってしまった。

 まぁ、これは多分ほかの人も思っているだろう。結果、見事に二時間目から大雨が降ってきた。

 授業が終わり、俺は自分のスマホで天気予報を見て驚いてしまった。だって、今朝見た時には今週は晴れが続くと言っていたのに、あらびっくり、今週はずっと雨だと言っている。降水(こうすい)確率(かくりつ)を見ると全てにおいて八十パーセントを超えていたのだ。

その後、三時間目、四時間目になっても雨が止むことは無く、ついには学校が終わってしまった。

 下校時にも雨は止まず、心なしかさっきよりも強くなっている気がした。

「あ~あ、この調子だと駅まで走らないといけないじゃん」

この時の俺のテンションはゼロだった。

仕方なく俺は駅まで全力で走る。

 やっとの思いで駅に着いた、俺は急いで改札を通り、ホームへと走る、その時電車が来て少しテンションが回復した、俺はその電車に乗り、帰りを急いだ。

 一時間程で自宅の最寄り駅に着いた、駅から自宅までは三分で着くからまだよかった。

 俺は家に着いてすぐに玄関を開け家の中へ突入する。

 俺はすぐに風呂場に直行し、タオルを手に入れ()れた体を拭きながら部屋着に着替える。

 着替えた俺はリビングに移動すると、妹が二階から降りてきた。

「あれ?いたの?」

 と冷たい言葉が降ってきた。

 まぁ、こいつも一応家族だから紹介しておこう。

 妹、水沢(みずさわ) 七海(ななみ)/十二歳/松戸市立第三中学校一年生/好きな物はアニメ、二次元

 ステータスを見てもわかるが、こいつはアニメが好きすぎてヤバい。

 こいつの部屋には、アニメのグッズやフィギュアが大量に置かれている。

 さらにこいつは、暇さえあればアニ○イトやア○ゾンで買い物、毎年行われる夏や冬の祭典、アニメやゲーム関連のイベントには予定が合えば必ず行くほどだ。

 そのあと俺が自分の部屋に戻ろうとした瞬間。

「ピンポーン」と音がした。

 すると七海は

「待ってましたぁ♪」

 そう言いながら七海は玄関に足取り軽くして向かう。

「――――――」

 ダンボールを受け取り戻ってきた。

 そのダンボールにはa○zon,co,jpと印字されていた。

 多分アニメグッズだろう。

「何買ったんだ?」

「ふふん、見たい?」

「うん」

「んじゃあ、ちょっと待ってて」

 するとカッターナイフを持ちダンボールを開ける。

その中にはやっぱりアニメグッズが大量に入っていた。

見た感じフィギュアやポスターなど色とりどりの品物が入っていた。

「やっと届いたぁ♡」

 なんて七海らしくないかわいい声を出して喜ぶ姿はやっぱりかわいい。

 その後、七海は届いたフィギュアを自分の家族コレクションにしていた。

 すると、どこかから「ぐぅ~…」とかわいらしい音がした。

 その時七海は真っ赤に顔を染めていた。

「ご飯にするか」

「うん、おなかすいたよぉ」

「何食べたい?」

「オムレツがいい!お兄ちゃんのオムレツ美味しいもん」

「わかった、少し待っててくれ」

 俺は急いでキッチンに移動し、準備を始める。

 こんな楽しそうな生活をしている俺らだが、悩みが一つある。『今この家には親がいない』ということだ。親父は長期出張で海外へ、母親は……悪いが母親のことは話したくない、嫌なこと思い出してしまう。そんな複雑な状態で水沢家は成り立っているんだ。

 そんな事話してるうちにオムレツが完成していた。俺は二階にいる七海を呼び出し、二人で夕飯を食べる。もう、これが日常と化している、それだけ前からこんな状態だったというのがわかるだろう。生活費は親父から月一のペースでもらっている、学費なども親父が全て支払ってくれている。まぁ、暗い話はやめて明るくいこう。

 俺はリモコンを手に取りテレビをつけた、そこには恋愛ドラマが映っている。しかも丁度クライマックスシーンだった。俺はふと思ったことが声に出てしまった。

「俺もこんな恋してみたいなぁ…」

 それを聞いた七海の口から冷たい言葉が落ちてくる。

「何言ってんのお兄ちゃん、キモッ」

「えっ⁉聞こえてたの⁉」

 俺は肩をビクッっとあげた、その後、七海は少しバカにするような感じでこう続ける。

「へぇ~、お兄ちゃんもそんなこと想う歳になったか」

「別にいいじゃねぇかよ、お前もそんなこと想ってんじゃねぇのか?」

「バカッ‼そんなこと想ってるわけないじゃん‼」

「なんで怒ってんだよ?」

「怒ってな~い‼」

 と言いながら、俺のことをポカポカと叩いているが、実際そんなに痛くない、痛いっていうよりくすぐったいくらいだ。

「こういうところ可愛いよな」なんて思ってしまう。

「それより七海、早く風呂に入れ」

「は~い」

 と気の無い返事をし風呂場へ向かっていった。

 俺は七海が風呂に入っている間、夕飯の片付けや色々することはたくさんある。

「ぐわぁー‼終わんねぇー‼」

 まぁ、今日中に終わらせる必要はないんだけど。そんな事言いながら暴れてると七海が戻ってきた。

「じゃあ、風呂入ってくるか」

 俺は今日の疲れを癒すため風呂場へ急ぐ。だが、風呂場にはありえない光景が広がっていた。

「なんだコレ⁉」

そこには大量のジップロックとポテチの袋、ペットボトルが無造作(むぞうさ)に置いてあった。

俺はすぐに七海を呼び出した。

「おい七海、なんだよコレ‼」

「あぁ、これは七海ちゃん入浴法だよ、お兄ちゃんもやってみたら?」

「やらねぇよ‼二度とこんなことやるな‼」

「多分ね♡」

 そこにはウィンクした七海の姿があった、だが俺はその誘惑に負けずこう続ける。

「何が『多分ね♡』だよ‼絶対やるな‼」

 その後、七海は後片付けをしたことによって、この戦いは終戦した。

 改めて俺は今日の疲れを癒すために風呂へ入る。

「なんか今日は色々と疲れたな…」

 と、残業して帰ってきたサラリーマンみたいなことを言っていた。

俺はさっさと体や頭を洗って風呂を上がる。時計を見ると十時を少し過ぎていた。

「七海~、そろそろ寝ろよ~」

「やだぁ、深夜アニメ見たい」

「録画してるだろ?」

「七海の夜はこれからなのに…」

「バカ言ってねぇで早く寝ろ」

「はぁ~い」

 俺的には、七海にはちゃんとした生活リズムで過ごしてほしいんだけどなぁ…

一週間後…

俺はいつものように学校に登校する。学校の最寄り駅から学校へいつものように向かう途中、後ろから「みずっち~」というどこかで聞き覚えのある呼び方が聞こえた。すると、俺の予測通り島田が後ろにいた。

「おっはよー」

「おはよう、美咲(・・)

「えっ⁉―――――――今、なんて言った?」

「えっ?なんてって言われても」

「今、ボクのこと下の名前で呼んだでしょ?」

「う、うん」

「やったぁ!みずっちに名前で呼ばれちゃった♡」

「そんなにうれしいか?」

「もちろん」

 と、喜びながら俺にくっついてきた。

「くっつくなぁ!」

「いいじゃん♡」

「だめだから!」

「ひど~い」

なんか、カップルみたいになってしまった…俺には想ってる人がいるのに……

まぁ、そんな夢みたいな時間も終わってしまった…教室に入り、いつものように朝の時間を過ごす。すると、同じクラスの小山が話しかけてきた。

「なぁ、泰平って何部に入るか決めたのか?」

「とりあえずは文化部志望かな」

「えぇ⁉意外だなそりゃ」

 小山(こやま) (りょう)(へい)/十五歳/なんか見た目は真面目そうなんだけど、一つのことに夢中になると周りの声が聞こえなくなったり、どことなく天然キャラだったり、どこか抜けてる人だ。

「いいじゃん別に、運動できるわけじゃないんだから」

「そっか、でも文化部って言っても色々あるけどどうするんだ?」

「………美術部とかかな」

「嘘だろ⁉」

「マジだよ」

 そのとき小山は唖然していた。

「ふ~ん…ちなみに俺は陸上部かな」

「へぇ~、確かに小山って足速いしいいんじゃないかな」

などと何部に入部するかで盛り上がる俺ら二人…すると先生がまたも定時に教室に来た。俺らはいつものようにホームルームが始まると思っていた、だが今日はいつもと違っていた。

「男子どもよく聞け‼今日女子の転入生がきたぞ‼」

『よっしゃー‼』

 なんて俺を除く男子は喜んでいた。

「んじゃあ、入ってこーい」

「は~い」

 と、廊下から元気な声が聞こえた。その声の後、前のドアがガラッと開き女の子が入ってきた。

「ん?あの子どこかで見たような…」

 彼女は前で自己紹介を始めた。

日高(ひだか) (まい)

その文字が黒板に大きく書かれていた。

日高 舞/十五歳/入学してすぐに転入して来た女の子。

彼女が自己紹介が終わった。そのあと先生は、

「んじゃあ…」

 と席を決めていた、すると日高さんは

「せんせー、ここじゃダメですか?」

 とこの席ではダメかと聞いていた、俺の前の席だった。この日は前の人が休みだった、だから空いている席だと勘違いしたのだろう。

「いいよ~、今日だけ使いな」

 と先生はいったのだ。日高さんは喜びながら、「は~い♪」と返事をしてから座った。

 すると、日高さんは俺に対してこういったのだ

「ねぇ、タイヘイ君だよね。私のこと覚えてる?小さいころよく遊んだじゃん、そういえばタイヘイ君、子供の頃に私が『私のこと好き?』って聞いたら『うん!』って言ってたよね」

 と笑顔で聞いてきたのだ、俺はどうして良いかわからなかった。

 だって、いきなりそんなこと言われたら誰もがそうなると思う。マジでどうしたらいいかわからなかった。

「人違いじゃないの?」

 無理矢理だが俺はそう答えた。だが、追い打ちをかけるかのように彼女はこう言った。

「だって、私とキスもしたじゃん」

 そう言った彼女の顔は赤面していた。俺はマジで恥ずかしかった、多分俺のこの十五年間の人生史上一番、恥ずかしかったと思う勢いだった。

その時、周りからは笑い声が聞こえた。普段はあまり怒ることの無い俺でも流石に声を荒げてしまった。

「うるせぇ‼笑うんじゃねぇよ‼」

 その言葉の後、教室には静かな空間が生まれた。授業開始を告げるチャイムが鳴った。そして、授業は始まった。

 だけど昼休み、忘れかけた朝の出来事がクラスの男子によって復活した。

「なぁ泰平、日高さんとはどういう関係なんだ?」

「いや、俺にもわからなくて」

「んじゃあ、アレはどういうことなんだよ?」

「まったく覚えてないです…」

 なんだろう、事情聴取を受けてるみたいだ(受けたことないけど)

 女子の方からも、同じような話が聞こえるが、あちらはあちらで盛り上がっている。

 それに対し俺らは、俺を除いた男子で盛り上がっている。

 そんな中、たまに女子が俺のことを睨んでくる、日高が変なことでも言ったのだろう。

「その情報を俺にも教えてくれぇ‼」なんて思ってしまう。

 だって、もしもそれが仮にその日高がいう相手が俺だったらとしたら、俺は全く覚えてないんだから、少しでも教えてほしいとは思うが、やっぱりわからない、思い出せない。

 そんな時、チャイムが鳴った。

 次は…授業っていうより活動と言った方が正しいと思う。

 先生は封筒を持ち、そこから紙を出し俺らに配っていた。

 それは入部届だった、入部届と言ってもただの入部届じゃなかった……やたら大きい紙、項目の多さ、まるで履歴書(りれきしょ)みたいだった、いや、もうこれは履歴書そのものだった。

 それを今日中に書いて提出というのだから…授業時間は五十分間、その短き時間でこの入部届を書き終わらせなければいけなかった。

 クラスの人はその話を聞いてすぐに、この入部届を無我夢中(むがむちゅう)で書いていた、俺も急いで書き始めた。

 五十分後、俺らは短き時間で課題を終わらせ力尽きていた。

 その後、残った体力を振り絞り、入部届を提出しなければならない、先生は「入部届を出した人から解散!」と言っていたので、これさえ渡せれば俺らは自由の身になれる。

 俺は美術部入部希望だから、俺は美術部部室に向かった。

俺は美術部部室の場所がイマイチ分からなかった、しばらく徘徊してると、[美術部部室]

と書いてあった部屋があった。

 俺はノックして部屋に入った。

「失礼します…美術部入部希望なんですけど……⁉」

 俺は入ってすぐに驚いてしまった。それは……とにかく部屋が散らかっているということだった、その部屋にはいろんなものが落ちていたり置いてあったりしていた。例えば、使ったままの絵具、イラストの資料、枕などが落ちている中、一番合ってはならないものが置いてあった、それは…ソファーだった、この時俺は「なんでソファーが置いてあるんだよ」とおもった、だが、そんな家みたいな部室の中にはちょこんと女の人が座っていた、おそらく部長だと思う。

 俺はその人に入部届を手渡した。

「どうぞ…」

すると部長?は

「やった~‼新人君だぁ~‼」

 と、喜びながら言っていた。

 俺は何でここまで喜ぶのか理由を知りたかった。

「なんでそんなに喜ぶんですか?」

「いやぁ~、私が入部した時には三年の先輩もいたんだけど、その先輩が卒業しちゃって、このまま後輩が出来なかったらどうしようってひやひやしてたとこだったんだ」

 と部長は言った。

「そうだ、自己紹介がまだだったね、私はこの美術部の部長の松島(まつしま) 美浦(みほ)です」

「あぁ…どうも…」

 松島 美浦/十六歳/俺の一個上の先輩でありさらに美術部部長だ。

 その時、ガラッとドアが開く音がした。

 後ろを見るとそこには宮内がいた。

「あれ⁉宮内も美術部入部希望だったんだ」

「うん」

「あれあれ?君たち知り合いかな?」

「まぁそんな感じです」

 と俺が言った後、宮内は入部届を部長に渡していた。

「それじゃあ、俺はここで失礼します」

「あ、私もここで失礼します」

 と言って部室を後にした。

さて帰ろうとしたその時何かに引っ張られた、その正体は宮内だった。

「ん?なんだ?」

「ねぇ、一緒に帰ろ?」

「ああ、構わねぇよ」

「ありがと…」

 その後しばらく二人の間には沈黙が続いた。

「んじゃ、帰るか」

「うん、帰ろっか」

そんでもって俺達は、二人で帰る。

「ねぇ、そういえばなんで泰平君って美術部に入ったの?」

「あぁ、実は俺中学の時美術部に入部しようと思ってたんだ、だけど、運動能力を何とかしたかったから運動部に在籍してたんだ、だから、ここでは中学の時叶わなかった美術部に入部したんだよ」

「へぇ~、そんなことがあったんだね、なんか…意外だね、泰平君が美術部に入部希望だったなんて」

「みんなによく言われたよ、『なんで運動出来ない泰平が運動部に入ったんだ?』ってな」

「でも、よかったね、美術部入部が叶って」

「ホントだよぉ、マジで入部したかったしな」

 その時、俺らは駅前に着いた。

「あれ?まだ駅だったんだね」

「ホントだな、なんかやっと着いたって感じがするよ」

「少し急ごっか」

「そうだな」

「―――――――」

俺達は帰りの電車の中でも楽しく話していた。

中学の時には一緒に帰るなんて考えたこともなかった人とこんなに楽しく話して帰ったのは初めてだ。

 楽しい時間は終わり、松戸の駅に着いた。

「じゃあ、俺買い物して帰るから」

「うん…じゃあね…」

俺は買い物をする為、駅前のスーパーに行こうとした。

すると後ろから。

「待って!」

という声とともに、宮内が追いかけてきて、俺の前に出てきた。

「ねぇ…今日、泰平君の家に行ってもいいかな?」

「なんでだ?」

「今日、家に誰も居なくて…」

「寂しいのか?」

「うん……」

 そこには顔を赤く染めた宮内の姿があった。

「構わねぇよ…来たって」

 少し照れくさい感じで言う。

「え?いいの?」

「いいよ」

「あ…ありがと」

「でも、買い物には付き合ってくれよな」

 という軽い条件付きだ。

「うん!」

 その後、俺達は買い物を済ませ、自宅へと向かう。

「ただいま~」

「おじゃまします…」

「おかえり~」

七海が階段から下りてきた。

「…その隣の女の人だれ?お兄ちゃんの彼女?」

 その時俺たち二人は肩を『ビクッ』っとあげた。

「いやいや、それはないから‼」

「でもそっちの女の人は反論してないみたいだけど」

「……………」

 俺が宮内に目を送ると頬を赤らめてうつむいてた。

「えぇ!?」

 流石の俺もビックリした。

「付き合ってるの?」

「「ちがいますぅ‼」」

 なんだか、嬉しいような複雑な感じがする。

「んじゃあ、ご飯作るぞ」

「何にするの?」

秋刀魚(さんま)に肉じゃがとお味噌汁(みそしる)の和食にするよ」

「へぇ~、たまには和食も良いかもね」

「泰平君、私も何か手伝おうか?」

「あぁ、お願いしても良いかな」

「ラジャー…」

 そんでもって俺と宮内の二人で晩ご飯を作る。

「お兄ちゃん達ってやっぱり付き合ってるんじゃないの?」

「バカッ、違うって言ってるだろ!」

「晩ご飯出来るまで勉強でもしてろ」

「そう言って私がするとでも思う?」

「いいから、勉強してこい!」

「はぁ~い」

 と、仕方無く勉強しに行くように見られた。

「泰平君って、料理上手なんだね、みてて『すごいなぁ~』って思っちゃったもん」

「そうか?そういう宮内も上手だと思うけどなぁ」

「そうかなぁ、なんだか嬉しいな…」

 なんだか、カップルみたいな感じになっている。

「こんなの初めてだなぁ…」

「なにが?」

「こうやって男子の友達の家で一緒にお料理したり、夜ごはん食べたりするのって」

「そうなのか?」

「こんなに楽しいんだね、男子と過ごすのって」

「そっか、そう言ってもらえると俺も嬉しいよ」

こんな、俺も女子と家で過ごすのって久しぶりだな。

 宮内の協力もあって少しいつもより豪華になったと思う。

「七海~、できたぞ~」

「はぁ~い」

 二階から七海が下りてきた。

 そして、俺達三人は食卓を囲む。

『いただきま~す』

「うっ!」

「どうだ?」

「おいしい」

「よかったぁ、まずいとか言われたらどうしようって心配しちゃった」

「本当に美味しいよ、流石(さすが)泰平君だね」

「そう言われると嬉しいな」

「やっぱりお兄ちゃんって」

「付き合ってません!そろそろしつこいぞ」

「ごめんごめん」

 こんなに楽しい夕飯は久しぶりだな、だっていつも二人で囲む食卓だから会話のパターンも少ないし、あまり盛り上がらないからな。

『ごちそうさまでした』

「泰平君、後片付け手伝うよ」

「いや、宮内は帰りなよ」

「………嫌だ」

そういえば、今日家に誰も居ないって言ってたことを思い出だす。

「…………………」

「んじゃあ…泊まっていくか?」

 と思いきって言う。

「ふぇ?」

 と可愛らしい声で返事をした。

「一人で寂しんだろ?」

「うん……」

「だったら無理には帰そうとはしねぇ、どっちにするかは自分で決めな、俺達は別に構わねぇよ」

 俺はかっこつけた感じで言う、我ながら恥ずかしかったレベルだった。

「じゃあ、お言葉に甘えて…」

「おう‼」

「それじゃあ、着替えとか持ってこないと」

「一人じゃ、危ないから俺も一緒に行くよ」

「ありがとう」

俺達は七海を残し、二人で宮内の家に向かう。

「ねぇ、泰平君」

「ん?なんだ?」

「なんだか、こんなに優しくしてくれた男の子って泰平君だけだなぁ」

「へぇ~、俺以外にもいるんじゃないか?」

「いや、泰平君だけだよ」

「それは光栄だな」

 俺達は、宮内の家に着いた。

「じゃあ、ここで待ってて」

 指定されたのはリビングだった。

「分かった」

「絶対に私の部屋に来ないでよ…」

「分かった!絶対に行かないから」

「待ってて」

 そう言われて残された俺。

宮内の指示通り、俺は一人でずっと待っていた。

   ~二十分後~

 まだ来ない…

   ~それから十分後~

 まだ来ない、流石(さすが)の俺でも心配になってきた。

三十分も待ってるのにまだ下りてこないなんて遅すぎじゃないか?

もう俺は覚悟を決め宮内の部屋に向かった。

俺は宮内の部屋の前で立ち止まり扉をノックをした、だが、反応がない、俺は何回も扉をノックしたが応答が無い、俺は宮内の部屋の扉を開けた。

そこには、散乱(さんらん)した着替えの上で寝ている宮内の私服姿だった。

俺は「ふぅ…」と安心した、その後俺は、宮内を起こした、起きた宮内は俺の顔を見るなり「うわぁ!」と驚いていた。

「なんでいるの?」

「だってよ、三十分も待たされて、まだ下りて来ないんだから」

 そう言うとやっとこの状況を理解できたらしい。

「あぁ、ごめん…心配してくれたの?」

「当たり前だろ‼なんか遭ったんじゃねぇかって」

「ありがと、心配してくれて、少し嬉しいな」

 そこには赤面した宮内の姿があった。

「宮内に何もなかったらそれで良いよ」

「…………だ…ぁ…」

 何かを言ったように聞こえたがその声はあまりにも小さく、何を言ったのか聞き取れなかった。

「ん?何か言ったか?」

「いったよ、でも教えな~い」

「えぇ~、そんなこと言われたら気になるな」

「ちゃんと聞いてない方が悪いんだよぉ~」

「ひどいなぁ」

なんて二人で盛り上がっているけど、何か大事なことを忘れてる気が…

「あぁ‼」

「なに?いきなり大声出して」

「七海の事すっかり忘れてた!」

「あぁ!急いで戻らないと」

「やべぇ‼急ぐぞ()香里(・・)!」

「う、うん」

俺達は宮内の荷物を持って俺の家まで急いで戻る。

「ごめん、七海」

「もぅ、何してたの?心配だったんだよ」

「ごめんなさい…私が悪いの…」

「えっ?」

「私が泰平君を待たせてる間に寝ちゃったから…」

「お姉ちゃんがそういうなら許してあげる」

「あのぉ…七海、俺は?」

「身の程を知れ三次元が…」

 こ●美で言ってそうなワードが聞こえた。

「なに言ってんだよお前…」

「別にいいじゃん~♪」

「……なんかむかつく」

「やべぇ、風呂沸かさないと」

 と風呂場に向かおうとすると、冷ややかな声で。

「もう沸けてます」

「ありがとう七海」

 俺は七海にお礼を言う。

「んじゃあ、お姉ちゃん、一緒にお風呂はいろ!」

「いいよ、それじゃあ泰平君お先に」

「どうぞ、行ってらっしゃいませお嬢様」

俺は女性達を見送ってから、洗い物などの家事をする。

幸いなことに明日は土曜日だからまだ良かった。

そういえば、明日は七海とお買い物をするって約束をしてたのを思い出す、「そうだ、明日の買い物に宮内を誘ってみよう」というのが俺の脳内に現れた。

その時、パジャマ姿の二人が戻ってきた。

すると七海が

「お兄ちゃん、明日のお買い物にお姉ちゃん誘ったけどいいよね」

「大丈夫かな?」

「大丈夫だよ、実は俺も誘おうとしてたんだ」

「そうなんだ、誘ってくれてありがとうね」

「誘ったのは七海だよ!」

なんて、普段ない光景が俺の家の中にはあった。

「それじゃあ、先に寝てていいよ」

「私も手伝うよ」

「先に寝てなよ、宮内だって疲れてるだろ?こっちもまだまだやらないといけないことがたっぷりあるからな」

「そう、それじゃあ、おやすみなさい」

「おやすみ」

 と、俺はお(じょう)様達を寝かせてから、作業を再開する。

~四十分後~

「やっと終わったぁ、よく頑張ったぞ俺」

 と、自分で自分を褒めた。

「んじゃあ、風呂入ってすぐに寝よう、もう疲れたよ」

それもそのはずだ、だってもう夜中の一時なんだから。

 俺はさっさと風呂に入り今週の疲れを癒した…かった、もう眠いから頭や体洗ってすぐに上がり着替えて自分の部屋に向かった。

 俺は布団の中に入ってすぐに眠りに()いた。


 この時、来週にあんな事やこんなことが起こるなんてこの時は誰も知らなかった。







































二章 生まれし黒歴史


 朝になり、俺の耳元で爆音の目覚ましが鳴る。

 俺が起きてリビングに向かうと、宮内が朝ご飯を作っていた。

「おはよう、泰平君」

「おはよう、宮内、申し訳ない朝ご飯まで作ってもらっちゃって」

「良いのよ別に」

「そっか?」

「それより…頭、なんとかしたら?」

 そう言われ俺は頭の上に手を当て、やっと俺の頭の状態を理解する。

「うわ!スゲェ爆発してる」

「うふふ…」

「悪い、こんな姿見せちゃって」

 俺は慌てて頭を小さな手で覆い隠す。

「良いよ、私も朝爆発してたし…」

「ごめん、髪の毛直したら手伝うから」

「ありがと」

ヤべェ、宮内にこんな恥ずかしい姿みられた…

 俺はすぐに髪の毛を直しリビングに戻る。

「泰平君、そろそろ七海ちゃん起こしてきてあげて、もうすぐ出来るから」

「了解です」

 俺は宮内に頼まれた通り七海を起こしに行く。

「ほら七海、起きなさい」

「あと一時間…」

「……起きろぉ‼」

「はいっ!」

 俺のこの声で七海は飛び起きた。

「ほら、さっさとご飯食べて出掛けるぞ」

「はぁ~い」

 と七海と俺はリビングに向かう、そこには宮内特製の朝ご飯が準備されてあった。

「お口に合うか分からないけど、食べてみて」

「「おいしそぉ~」」

 俺達兄妹は驚いた、何よりもメニュ―の多さ、いつも二品三品しか出てこない俺とは大違いだったからだ。

「それじゃあ、食べようか」

『いただきま~す』

 という明るい声が家の中に響いた。

 いつもは二人だけなのに一人増えるだけでこんなに変わるんだと改めて分かった気がする。

 俺と七海は宮内が作ってくれた朝ご飯を食べる。

「「おいしい~い‼」」

 これは俺たちの素直な感想だ。

「すごくおいしい!もしかしたら俺が作るよりもおいしいかも」と思うくらいおいしかった。

 見た目は、いたって普通の和食なんだが、味にどことなく優しさを感じるような…そんな感じだった。

「こんな食事が毎日出されたらうれしいよな~」なんて思ってしまう。


「……ねぇ………ねぇ………おい‼………このくそ野郎!起きろー‼」

 大声によって起きると同時に何か固いものが俺の頭に直撃(ちょくげき)し、激痛(げきつう)が走った。

「痛てて…」

 起き上がると目の前には七海と宮内がいた。

 どうやら夢を見ていたらしい。

「泰平君気持ちよさそうに寝てたけど、どんな夢見てたの?」

 と聞かれたが…答えられない…はっきり言ってこんな恥ずかしい夢見てたなんて死んでも言えない、言ってしまったら…俺が俺でいなくなってしまう。

「くだらない夢だよ、あはは…」

 何とかごまかせたかな?

「はっ‼まさかお兄ちゃん、まさかとは思うけど変な夢見てたんじゃないの⁉」

「んな訳ねぇだろ‼」

全力で否定する俺。俺と七海が「どんな夢を見たのか」っていうので話していると宮内が

「泰平君に七海ちゃん、朝ご飯出来てるから食べようか」

「「は~い」」

 俺たち兄妹は子供のように返事をした。

 さて朝食を食べようとしたその時、俺は二つの事に驚いた、それは、朝食の内容、和食であること、メニューの多さ、全て夢の中と同じ、それに、味も全ただ違うことと言ったらく同じだった、優しさのあるこの味夢の中と同じだった。

 ただ違うことと言ったら、俺が七海に起こされたことと宮内との楽しい会話が少なかったことただそれだけだった…「あれが現実だったらめっちゃ嬉しかったのに…」なんて思ってしまう。

「ねぇ泰平君、今日ってどこに出かけるの?」

「池袋だよ」

 俺が行き先を言った瞬間七海が反応した。

「本当に⁉池袋って言ったらアニ●イトじゃん‼」

「ヤベェ…マジでアニ●イトに行く気だ…絶対行かせてたまるか‼」と心に誓った。

 なぜ俺がこんなにも七海をアニ●イト行かせたくないのか、二つの理由がある

一、七海が単独で行動してしまうということ。

二、とにかく物価(ぶっか)が高い。

俺も一回七海と二人で行ったことがあるが「高くね?」と思った、でも「品物の多さは俺の行ったことがあるアニメショップではトップレベルだった」としか言えない。

『ごちそうさまでした』

 また明るい声が家の中に響く

 俺と宮内は急いで後片付けをして、出かける準備をする。

「七海も準備しなよ!」

「はぁ~い」

と軽く返事をして自分の部屋と戻る。しばらくして俺と宮内の支度(したく)は終わったが、七海がまだらしい。

 十分後

「まだ来ない、遅すぎないか?」

「ちょっと私、様子見てくるね」

 そう言うと宮内は七海の部屋へ向かった。

  それから五分後

 ついには宮内も戻ってこなくなった。

 さすがの俺も七海たちの様子を見に行く、だが、いざ七海の部屋の前に立つと俺の脳内に三つの選択肢が現れた、

[扉(とびら)を開ける]

[中を確認する]

[そっとしておく]

の三つだ。

ここで間違った選択をするとこの先のシナリオが決まってしまう、なんだかギャルゲーの主人公みたいだ。

俺は中を確認するを選んだ。

ドアに耳を近づけてみると、楽しそうな会話、それに聞き覚えのあるBGMが聞こえた、嫌な予感しかしない。

少しづずつ扉を開けると…そこから見えたものは…

なんと、そこには楽しそうにゲームをしている二人の姿があった。

俺は迷わず背後からゆっくり近づき

「なにをしているのかなぁ?」

 と、明るい声で聞く、するとゲームをしていた二人は肩をビクッと上げこちらを見てきた。

すると七海が訳のわからないことを言ってきた。

「お兄ちゃんなん勝手に七海の部屋に入ってきてるの?バカなの?アホなの?」

 相変わらず腹の立つ妹だ。

それに宮内も

「そうだよ泰平君、女の子の部屋に入るときには必ずノックしなきゃダメなんだからね」

ついに宮内にも言われてしまった…って「なんで俺がこんなに言われないといけないんだよ!」って言いたくなるなぁって思うよ。

そういえば出かけるのを思い出して俺は部屋の時計を見る。

「もう九時過ぎてんじゃん!ほら、さっさと行くぞ」

「「はぁ~い」」

 と反省しているのか疑ってしまうような返事だった。

 俺はそんな二人を連れて一路池袋を目指す、初めて行った時には一時間程かかったんだけど、今日はその倍の時間がかかりそうな予感がする、だって……「こいつら自由すぎる!」

七海なんてついさっき「ねぇこれからアキバ行かない?」なんてアホみたなこと言ってん  だもん、まぁ、当たり前だがその意見は消滅した。

 俺たち一行は、経由地の上野駅に着いた……が、またこいつらは自由に行動していた、気づいたら改札を出てすぐのカフェに入店していた……まぁそこで食べたものは美味しかったし「良いなぁ、また来よ」なんて思ったけど、とにかく自由すぎる。

 そんなこんなでやっと池袋に着いたのだが、時間は俺の予想通り二時間程かかった。

 それで今日のメインは服とかそっち系の買い出しと、そのあとにちょっとした観光をしようと思っている、その事はまだ二人に話してないからちょっとしたサプライズ的な感じにしようと思っている。

 それにしても、地元とは大違いだ、スゲェという言葉しか出ない、地元にある駅とは違って、大きな駅ビル、高層ビル群、地元とは全く逆だ。

 そんな中、さっきまで自由だった女性方は…早速俺の視界からいなくなってる……

「ヤベェ…終わった…あいつら二人でこんな場所で…しかも七海は絶対あそこに行くだろうし…」

 どちらにしても、現状はやばい状態だとしか言えない。

 俺はあいつらがどこにいるかを知りたかったから、宮内にLINEをしようとスマホを取り出し起動させるが…

「あっ……」

 スマホをつけた瞬間、俺の頭の中は真っ白になった、その理由が『バッテリー五%♥』だったからな。

 なんで!?なんでもう五パーなの?家でちゃんと充電したのに!

俺の脳内はパンク寸前だった、だけど一つの可能性があった、俺のスマホの充電器は長いこと使い込んでるから、ちょっとしたことで抜けてしまう、そんな時家で、何かに引っかかってこけたんだけどその時に抜けてしまい充電できなかったのかもしれない。

 とにかく俺は、目の前にあったヨドバ●カメラで予備バッテリーを買ってきて充電した。

 しばらくして俺は宮内に連絡を取る

「もしもし」

『泰平君?』

「そうだよ、それよりどこにいるの?」

 と俺が宮内に聞くと驚きの答えが返ってきた。

『ごめん、新宿です…』

「えっ?」

 言葉を失ってしまった、気づいたらあの人たちは全然違うところにいるんだもん。

『ごめんね…七海ちゃんがどんどん先に進んじゃって…』

「いや…宮内が謝ることはないよ、とりあえず申し訳ない…」

『いや、私にも過失はあったんだし』

 ホントに申し訳ないな…。

「う、うん、七海も一緒にいるの?」

『うん一緒にいるよ、今はショッピングしてるよ』

「わかった、急いで向かうから待ってて」

『うん、待ってるね』

 ……マジで申し訳ねぇ、七海の勝手な行動で宮内にも迷惑をかけてしまっている。

 そんなこと思ってないで俺は急いで新宿に向かおうとしたが…『迷子になっちゃった☆』

 だってこんな広い駅久しぶりだもん、気づいたら全然違うところにいた、とりあえず落ち着いてもう一回見てみると、新宿の文字が見つかってすぐにホームに向かう、だが、着いてすぐに目の前に止まっていた電車が行ってしまった、「ついてねぇ…」と心の中で思う、でも数分後に電車がきて一路新宿を目指す。

 十分後新宿に着いた、そして宮内に連絡する。

「もしもし、どこにいるの?」

『なんかル●ネエストっていうところのスタバにいるから』

「わかった、すぐ行くよ」

『待ってるね』

 俺は急いでそこに向かう。

 だが、改札を出ようとしたとき、目の前に見覚えのある姿の女性二名がいた、その時こちらを見てきた。

「やっぱりかぁぁぁぁ!」

 やっぱりその二人は島田と日高だった、二人はパァっとひまわりのような笑顔でこちらを見てきた、そのままこちらに寄ってきた。

「みずっちじゃん、ボクに会いに来たの?」

「んな訳あるかよ、宮内のところに行く途中だよ」

「えぇ!じゃあ私たちも一緒に行ってもいい?」

「いいんじゃないかな、少なくとも俺はいいよ」

「やったぁ♥」

「調子狂うよなぁ…」

 俺たちは、ルミネのスタバを目指す。

 だが…方向音痴(おんち)の俺は秒単位で迷子になった。

「ねぇ、ルミネの場所ってわかる?」

「迷子になったのかい?大丈夫だよ、ボクが君のそばにいればこんなことにはさせないから♥」

「何言ってんだよ!」

「ねぇ何話してるの?私のタイヘイだよ」

「なんで私物化(しぶつか)してるんだよ」

 七海がいなくてよかった、何言われるかわからないからな。

 俺たちは島田の案内でルミネのスタバに向かう。

 着いてすぐに宮内が奥から出てきた。

「あれ?泰平君なんで美咲ちゃんと一緒にいるの?」

「あぁ、さっき駅で会ったんだよ、それで一緒に同行することになったんだよ」

「ホントに!?やったぁ」

 よかった、喜んでもらえたみたいだ。

「あれ?お兄ちゃん?」

 奥から七海が出てきた。

「お兄ちゃん、由香里ちゃんという人がいながら…」

「違う違う!ただの友達だから!」

 俺は全力で否定する。

「えぇ?ボクとは友達以上の関係でしょ?」

 燃料投下するなぁ!

「泰平君、そんな関係なの?」

「違うからな、そんなことは断じてないから」

 あぁ、これだから島田は…

「それよりタイヘイ、その子は妹さん?」

「あ、あぁ、そうだよ、妹の七海だよ」

 俺は途中参加の二人に紹介する。

「それじゃあ、そろそろお昼にしよっか」

 俺はGoogle大先生の協力を得て新宿周辺のランチ出来そうなところを調べる。

 それで調べたところで昼食をとる、そこは駅からも近くすごくオシャレな雰囲気(ふんいき)だった。

 俺たちは午後のスケジュールを考える、俺は女性方の意見を聞く、すると全員口を揃えて、『泰平君の家に行きたい』と言ってきた

「わかったよ、今日は早めに切り上げて俺の家に行くか」

 そう言うと、『やったぁ♥』という声がした。

 それまでどこに行くか、考えていると七海が

「原宿に行ってみたい」

 意外だった、どうせ『アキバに行きたい』とかいうのかと思ったらちゃんと考えてたんだと感心してしまう。

 すると他の女性方も行きたいと同意していた。

 食べ終わったら、原宿に行く事に決めた。

 それにしてもここの料理は美味しい、また来たいと思う、あの人と一緒に…

 さて、食べ終わった事だし原宿に向かう。

 向かう途中、島田がコンビニスイーツを買ってきた。

「お前…さっきご飯食べたばっかなのに、まだ食べるのか?」

 そう言うと島田は、笑顔で

「スイーツは別腹なんだよ☆」

 まぁ、そういうところが島田らしいっていうか。

 島田は美味しそうにコンビニスイーツを食べている。

 電車に乗ってから数分後には原宿に着いた、さすが原宿、若い方々や外国人観光客が多い、多すぎる。

 そんな中俺たちは、原宿を楽しむ。

 さすが原宿、若者向けの品物を販売してる店が多い、女性方四名はあっちやこっちやいろんなところへ行っている、ホントに楽しそうだ、その時宮内が俺を呼んできた、すると七海や島田や日高が俺に何かをつけてきた、そのあと鏡を見ると……、

「なんだこれ!?」

 そこには女の子向けの物がついている俺の姿だった。

『案外似合ってるね』

 なんか悔しい…、だが我ながらいいなっておもう、それに、みんなお揃いのモノをつけている。

「じゃあ、みんなで買ってこれでまわろうよ」

 と日高が言ってきた。

 俺は分かっているが一応このことを聞いた。

「それって、まさか俺も入ってる?」

 日高は当たり前のごとく

「もちろんだよ、みんなお揃いで行こうよ」

 恥ずかしい一面もあるが、なんだか嬉しい、純粋(じゅんすい)に嬉しい、こんなこと初めてだからかな。

 その後、みんなお揃いで買った物を身に付けみんなでお店を巡ったり、スイーツをみんなで食べ歩きをしたり、すごく楽しい一日だった。

 そんな中、島田が忘れかけたことを言ってきた。

「そういえば、このあとみずっちの家に行くって約束してたよね」

『あっ、そういえば』

「そういえばそうだったよな、じゃあ行こっか」

『はぁ~い』

 その時島田が

「ボクたち一旦家に帰ってから行ってもいいかな?」

「私もそうする」

 日高もそう言う。

俺はダメとは言えず

「良いよ、帰ってから来なよ」

 と言ってしまった。

「「ありがとー」」

 えっと、今が三時だから五時頃に新松戸っていう駅で待ち合わせね、何かあったら電話して。

「「了解!」」

「じゃあ、一時解散!」

『おぉ!』

俺と七海と宮内はそのまま俺の家に、島田と日高はそれぞれの家に一時帰宅する。

 この時の俺は、これから起こる出来事については全く知らなかった。

 一時間後には大都市東京を後にし自宅に帰宅完了。

 現在四時ちょい過ぎ、俺は買い物ついでに迎えに行く。

 俺が家を出て数分後、後ろから何かの気配を感じる、大体は察しがつくが…、俺が後ろを振り向くとやっぱりそこには七海と宮内がついてきていた。

「やっぱりな、お前ら…」

「いや、お兄ちゃん、由香里ちゃんが」

 七海がそこまで言った途端、宮内が止めに入る。

「あのっ、そのぉ……」

宮内は顔を赤くして、ぼそぼそと小声で何かを言っているが聞き取れない。

「ほれ、行くぞ」

「うん…」

多分寂しかったのだろう、昨日の時と同じ顔だ。

 俺たち三人は駅に向かう。

 その時島田から電話がかかってきた、

「みずっち~、もう着いたよ~」

「わかった、もうすぐ着くから待ってて」

「待ってまぁ~す」

 思ってた以上に早く着いてるよ…

 駅前に着くと、手を振ってる島田と日高がいた。

 やけに大きなカバンを持ってる、一体何が入ってるというのか…

「やっほ~、今日はよろしく」

「今日はよろしくって、ただ遊びに来ただけだろ?」

「今日はお泊りしようってみんなで」

「え?聞いてないんだけど」

「そういうわけだから、ボクたちは今日みずっちの家に一泊しま~す」

「はぁ?なんで」

 理由を聞こうとすると、島田は耳元で

「嫌とは言わせないぞ♥」

 ここまで来てもらうと、ダメだとは言えないしな。

「わかったよ、盛大にやるか!」

『やったー☆』

 そのあと俺たちは駅前のスーパーで買い物をする。

 帰りのバスの中では俺の料理の話を宮内がしていた。

「泰平君の料理はすごく美味しんだよ」

「本当かな?」

 と島田が疑っている。

「それは食べてみればわかるよ」

 そんな話をしていると、家の最寄りのバス停に着いて、そこから少し歩いて、やっと自宅に着いた。

「それじゃあ上がって…」

 俺はアポなしで泊まりに来たとんでもない客を迎え入れ、リビングへ案内した。

 それにまだ時間は六時前、夕飯までまだ時間がある。

「まだ夕飯まで時間があるから、何かして遊んでたら?」

 そう言うと、宮内が

「そうだ、七海ちゃんの部屋でゲームしようよ」

 宮内にしては珍しい、自分からゲームをしようなんて。

「そうだね、ボクはゲームが得意なんだよ」

 と自慢げに言っている。

「私も少しだけなら」

 日高は気弱そうに言ってる。

 なんだかこの日は、みんなのいろんな姿が見れた気がする。

 みんなはななみの部屋にゲームをしに行った。

「それじゃあ、俺はその間に準備するか、今日は忙しくなるぞぉ!」

 気合を入れいざ夕飯を作る、今日のおかずは、(さば)の味噌煮と手羽の黒酢煮だ、煮物が多いとか言うなよ。

 今日は五人分作るからいつもの倍は大変だ。

 それより、こんなことになるなんて想像もしてなかった、昨日は宮内が泊まって、今日は日高と島田が泊まりに来るって……「変な想像はやめろ俺!理性が壊れる!」と自分に言い聞かせる。

 すると、島田が下りて来た

「ん?どうしたんだ?みんなとゲームしてたんじゃ…」

島田は俺の後ろに立ち俺にもたれ掛かってきた。

「あの、島田さん?すいません料理がしにくいんですけど」

 島田はご機嫌が悪いのか頭をコン、コンと当ててくる。

「ねぇみずっち、ボクの事どう思ってるの?」

 といきなりそんなこと言われても。

「えっと、好きだよ…」

「えっ?」

「もちろん友達としてな」

俺の本音を伝えた。

「そっか、わかったよ、でもひとつお願いがあるんだけど」

「なんだ?俺にできることならなんでもするぞ」

 そう言うと島田は顔を赤く染めながら

「ボクのことを名前で呼んで欲しいな…」

「なんだ、そんなことか」

「そんなことって…」

島田は頬をプクっと膨らませている

「わかったから、そんな顔するなよ美咲」

 と俺は美咲の頭をなでるようにして言う。

 そのあと美咲はさっきまでの顔とは違って笑顔になって、嬉しそうに七海の部屋へ戻っていった。

 さっきの出来事の間にもう夕飯のおかずができていた、俺は出来たものを盛り付け、配膳する、そのあと七海の部屋にいるみんなを呼び出す。

「お~い、夕飯だぞ」

 ……無反応

 俺は七海の部屋へ行く、

「お~い、ご飯できたぞ~」

 と七海の部屋のドアを開ける、中では今日の部屋割りについて話されていた。

「あっ、お兄ちゃん、今ね、部屋割りの話をしてたんだ」

 そこには白い紙が置かれていてそこには誰がどこの部屋で寝るかについて審議(しんぎ)されていた、ちなみに俺は一対一のマンツーマンで寝るらしい、現在その枠は空白だった。

「それより、ご飯にするから降りてこい」

『待ってましたぁ』

 下に降りて来て、みんなで食卓を囲む

『いいただきま~す』

 昨日より明るく、大きな声が響く。

「さぁ、食べてみろ!」

 美咲なんて恐る恐る食べてるよ…

『美味し~い』

 初めて俺の手料理を食べる二人は驚いた顔をしている。

 よかった、口にあったみたいだな

「みずっちって、こんなに料理上手だったんだね、ボクもたまに作るけどボクよりも上手かも」

 という美咲からの尊敬の眼差(まなざ)しを感じる。

 日高も同じような眼差(まなざ)しをしている。

 少しながら俺の株価(かぶか)が上がった気がする。

「そういえば、美咲と日高はいつまで泊まるんだ?」

 すると美咲の口からとんでもない言葉が出てきた。

「え?明後日の学校にはここから行こうかなって思ってるんだけど」

「えっと、もう一度聞くけど、明後日(あさって)の学校にはここから行くって言ったよね?」

 俺は恐る恐る聞いてみる。

「だから、そうだって言ってんじゃん」

あぁ、そういことね、俺はこの方々をアポなしで泊まりに来たとんでもない客だとおもってたんだが、前言(ぜんげん)撤回(てっかい)、アポなしで泊まりに来た、逝かれた客らしい。

 マジでこの二名の方は人間的に終わってるらしい。

そんな会話をしてたら、みんな食べ終わっていた。

『ごちそうさまでした』

 それと同時ぐらいに風呂が沸けた。

「女性方二グループに分かれて先入ってきなよ、俺は後片付けしないとだからさ」

「じゃあ、お言葉に甘えてボクたち先に入るから」

 と言うとジャンケンで入るグループを決めている。

「あっ、洗濯物は洗濯機に入れといてね」

『はぁ~い』

 言っておくが、俺の洗濯物と女性方の洗濯物はちゃんと分けて洗濯するからな、誤解するなよ。

 女子たちは楽しそうにしているのが声だけでわかる。

 先に入れなかった組の美咲と宮内はありがたいことに後片付けを手伝ってくれている。

「なんか手伝ってありがとね、お客さんなのに」

 そう言うと美咲は

「いや、ボクは君の力になりたいんだよ、君の力になれるだけで嬉しいもん」

 なんだか嬉しい、こう言ってくれる人が身近にいたなんて。

「私も、泰平君が喜んでくれるならそれでいいもん」

 宮内もそう言ってくれている。

 気付かないうちにこんなこと言ってくれる人が近くにいたなんて、誇りに思える。

 皿洗いが終わったら、美咲たちは『何かすることないの?』と言わんばかりの目をしている。

「えっと…、もう手伝ってもらうことはないんだけど」

 と言うと、宮内が近づいてきて

「泰平君、疲れてない?」

 と言われた。

たしかに宮内の言うとおりだが、そんな事こいつらの前では言えない。

「大丈夫だよ、疲れてないよ」

「今嘘ついたでしょ」

 バレバレだった、

「無理すると、体調崩すよ」

「じゃあボクがマッサージしてあげるよ!」

 美咲はそう言ってくれているが

「ありがとうな、でもいいよ、また今度頼むね」

「でも無理しないでね」

 と宮内も言ってくれているし、嬉しいよ。

 その時、先に入っていた七海と日高が可愛らしいパジャマ姿で戻ってきた。

「ほら、宮内たちも入ってきなよ」

「……無理しないでね」

「わかってるって、心配しすぎだよ」

「バカッ…――――――」

宮内は静かに風呂場へ行った。

 あの宮内の口から『バカっ』という言葉が聞こえるなんて、こんなこと初めてだった、それにしても、バカって言ったあとも何かを言ってた気がしたんだけど、小さすぎて聞き取れ

なかった。

「どうしたの?宮内さんと何かあったの?」

 と心配そうに聞いてくる、

「分からないよ」

 本当に何を言ってたのかもわからないし、まぁバカっていうくらいだから俺に原因があるのはなんとなくだがわかる。

「詳しくは後で宮内に聞いてみるよ」

「うん…」

 なんか俺、何かのフラグを立ててしまった気がする。

 それに、多分日高は何が原因かは大体分かってるらしい。

 それより、俺はお客様の寝床の準備を行う。

 布団などを運び入れ、いつでも寝られるように準備を行う。

 準備が終わって下に戻ると、宮内たちが戻ってた。

「寝床の準備が終わったから、どこで寝るかとか決めたら?」

『ありがと~』

と言ってるが、宮内は相変わらずだ。

「宮内、話があるから後で俺の部屋に来てくれ」

 と言うと、宮内は

「はぁ~い」

 と、宮内らしくない感じで言う。

 それじゃあ、風呂入ってくるか。

「やっぱり、俺に原因があるらしいな」ということを考えながら、頭と体を洗い湯船に浸かる、なんだかんだ言って上がるまで、ずっとあのことを考えていた。

 リビングに戻ると誰もいなかった、ただ机の上に『君の部屋に入ると今晩のご相手が待ってますよ、誰だろうね♥』と悪意のある紙が置かれていた。

 俺は歯を(みが)いてから、自分の部屋へ向かう。

 そこには、宮内が座って待っていた。なんだかすごく気まずい、

「宮内、さっきの事なんだけど、なんでお前があんなこと言ったのか考えてたんだけど、全然分からなかったんだ、頼む!教えてくれ!」

 と頭を下げる。

「私ね、心配なの…、最近の泰平君、頑張りすぎてる気がするんだ、それで体調崩しちゃったら…わたし…」

宮内の言うとおりだ、最近の俺は頑張りすぎている気がする、それをこんなに心配してい

たのに、それに気付けなかった俺が悔しい。

「ごめん…宮内がそう思ってたなんて気付なくて」

「ううん、大丈夫だよ」

 そう言ってはくれているが、俺の心が許さなかった。

「泰平君、そろそろ寝ようよ」

「そうだね」

 そう言って寝ようとする、だが宮内は俺のベッドで寝ようとしている、だから下にひいた布団に寝ようとしたら。

「だめぇ」

 という宮内の声が聞こえた。

「はい?」

「こっちで一緒に寝ようよ」

 とんでもない言葉に少し驚いている。

「いっ、いや、そんなことできないよ」

「いいから、泰平君はこっち」

 顔が真っ赤だ、頑張って言ってるのだろう。

「はいはい、わかったよ、そっちで寝ればいいんでしょ」

「え?」

「『え?』じゃねぇよ、お前がこうしたいって言ったんだろ?」

「冗談で言ってみたんだけど…私はこっちのほうが良いかな」

 宮内がこんなに積極的なはずがない。

「早くぅ」

「はいはい」

 と二人で寝ようとしたんだが…、狭い、

「なぁ、狭いしやめない?」

「じゃあ、泰平君のベッドの布団も下ろして下で寝よ」

「それなら…」

 と言って、布団を引き直し二人で寝る。

 しかも心なしかくっついてきてる気がする。

「宮内、くっつき過ぎ…」

 と宮内の方を見ると既に寝ていた、よっぽど楽しかったのだろう。

寝顔も可愛いな…

俺も眠りに就く、だがこのあと事件が起こる。

 時は日付が変わる頃、眠りが浅くなり、目を開けるとそこには、美咲が寝ていた。

「ダメだ、耐え切れん」と下に降りようと起き上がろうとした時、美咲に引っ張られた、そのあとまた寝ようとすると、タイミング良く俺のことを抱き枕のごとく抱きしめられた。

 しかもなんだか、柔らかい、完全な死亡フラグだった、「ダメだ、これはいやなよかんしかしない、息苦しい…」そのあと後ろからも抱きしめられるような感じがした。

 確認したいが無理に動かせない、こんな状態が朝まで続いた。

 七時頃俺が起きると、抱きしめ地獄からは解放されてた。

「ほら起きなさい」

 と俺はこの危険なふたりを起こす。

『おはよ~』

 流石に寝起きだからこの組み合わせであることには気づかなかったらしい。

 そのあと、七海たちを起こしに行く。

「ほら、お前らも起きろ」

『は~い』

 と寝ぼけた感じの返事だ。

 俺は、こいつらを起こしたあと、朝食を作ろうとするが、キッチンには宮内と美咲がいた。

「あれ?お前ら何してるんだ?」

 そう聞くと、二人はキョトンとした顔で

「何って、朝ごはん作ろうとしてるんだけど」

 と、当たり前のように言っている。

「なんでまた…」

 そう言うと宮内は

「今日くらいは私たちに甘えてもいいんじゃないかな?だって泊まらせてくれたお礼だってしたいし」

 その言葉を聞いた美咲が

「その『私たち』にはボクとか日高ちゃんも入ってるの?」

 それに対し宮内は

「もちろん!だって私たちは『泊まらせてもらったんだからね』」

 そう言われた美咲は

「そうだね!みずっちの力になれるなら」

 そんなわけで俺はこの泊まりに来た女子たちに甘えることにしてみた

「それより、この会話に参加してない日高がなんて言うかがだな、多分『え~!分かったよ~』とでも言いそうだな」

 とみんなで日高がこれを聞いてなんというか予想しながら笑っていた。

 それにしても七海と日高が降りて来ない、俺は様子を見に行く。

 七海の部屋に入ると…やっぱり寝てました。

「ほら、起きろ!二度寝するな!」

 と言っても無反応、ここで俺はちょっとしたイタズラ仕掛ける、その名も『足裏くすぐり大作戦!』我ながら恥ずかしい名前だ…

 そんな事より作戦実行!

「いざ、喰らいたまえ‼」

 俺は、日高と七海の足の裏をくすぐる。

 すると、予想通りこいつらには、効果は抜群のようだ。

 だが、ここで問題が起こった、起きたまでは良かったのだが、そのあとが問題だった。

 俺がくすぐっている間、こいつらは逃れるため暴れていた、それによって下にいた美咲がやってきた、状況を知らない美咲は「なにやってるのかな?」と怒り口調で言ってくる。

「なんでもないんだ!ちょっとしたイタズラでな…」

 と、俺は真実を伝えたが。

「問答無用‼くらえ!ボクのこのフライパンを!」

と、セリフを言いながら俺に向かって右手に持っていたフライパンで俺を殴ってきた、『俺はそのまま天界に召された…』じゃなくてそのまま気を失ってしまった。

しばらくして、俺が目覚めるとそこは『一面お花畑』…じゃなくてリビングのソファの上だった。

俺が起き上がるとそこには、美咲がいた。

「あっ!気がついたんだ!」

「うっ…うん」

 と俺が答えると美咲は今にも泣きそうな顔で俺に抱きついてきた。

「死んじゃったかと思ったよ…ごめんね、ボクのせいで…」

 と涙ながらに謝っている。

「おいおい、泣くなよ…」

 俺は持っていたハンカチで美咲の涙を拭き取る。

「俺はそんなんじゃ死なないし、それよりも、せっかくの可愛い顔が台無しじゃねぇか」

 と、俺は美咲に言う、するとさっきまでの泣き顔とは真逆に笑顔で

「うん!」

 やっぱりこっちのほうが美咲らしい。

「それより、他の奴らは?」

「お買い物しに行ってるよ」

「そっか…」

 時計を見たらもう十二時過ぎだった。

「俺はどんだけ気を失ってたんだか…」って、我ながら思ってしまう。

「それにしても昨日は七海に殴られて、今日は美咲に殴られるって…、まさか明日はないよな…」な~んて思っちゃうよ。

『くぅぅ……』

 俺の腹からなってる、流石に朝ごはんも食べてないしな。

 美咲も「クスクス」と笑っている。

「みずっち、何食べたい?」

 と美咲が聞いてきた。

「じゃあ、美咲が得意な料理を作ってよ、食べてみたいからさ」

 それを聞くと美咲は自信満々でキッチンに向かって行った。

  ~数分後~

「出来たよ~」

 その手の上にある皿には焼売が置かれていた。

「えっ?これって手作り?」

 美咲が作ったという焼売の出来があまりにも良かったので思い切って聞いてみた。

「もちろんだよ、なんだい?ボクが冷食のお世話になったって言いたいのかい?」

「そういう訳じゃないよ」

 俺は否定する、だがよくよく見ると形が崩れてたり、皮が破けちゃってるのもいくつかある、どうやら本当に手作りらしい。

「ほら、冷めちゃうよ」

「そっ、そうだな」

「いただきます」

 俺は美咲作の焼売(しゅうまい)を食べる。

「おっ、美味しい」

「やったぁ!」

 はっきり言ってスゲェ美味しい、俺よりも美味しいかもしれない、いや確実に俺のよりも上手だった。

「ボクも食べるぅ」

と言うと美咲は口を開けている。

「食べさせて」

 俺は仕方なく美咲の口の中に焼売(しゅうまい)を運ぶ。

「やっぱりボクの作る料理は美味しいね」

「ホントだよ、少なくとも俺よりも上手かもしれないよ、俺にはこんな味再現できないよ」

 と俺は本音を言う。

「いつか毎日ボクの料理が食べられる日が来るよ」

「えっ⁉」

『ただいま~』

 どうやら買い物をしていた宮内たちが帰ってきたらしい。

「おかえり~」

と答えると、玄関の方からドタドタと大きな音がしている。

 リビングに入った途端(とたん)俺のところに来て、

「「大丈夫だったの?」」

 と日高と宮内は心配をしてくれるが七海はそうでもなさそうだ。

 俺は「だいじょーぶだよ」と振舞う。

 それでも二人は心配な顔をしている。

「心配しないでよ、俺はこの通り大丈夫だから」

 そう言うと少し安心したらしい。

宮内達には申し訳ないことをしてしまった。

根本的にあんな起こし方をしなければ……

 だが、もうすでに終わったことだ、忘れよう!

 もう二時過ぎ、なんだか甘いものが食べたくなる、

「なぁ、大学芋でも食べないか?」

『うん!』

 と言ったあと俺はキッチンで大学芋を作る。

女子たちは、興味深く見ている。

~しばらくして~

「完成!名付けて『大学芋スペシャル‼』」

 そう言ったあとみんなは口を揃えてこう言う

『ダサい、ダサすぎる』

 そう言われるとなんだか恥ずかしい、それに寂しい。

「アハハ…食べよっか」

 そう言ってみんなで大学芋を食べる。

「やっぱり泰平君の作るものは美味しいね」

 と宮内に褒められた。

「確かにボクのよりも美味しいかも」

 何を言ってるのだか、品物は違えどあのクオリティーなのに。

「私もこのくらいなら…できるかも」

 日高も少し背伸びをしたような感じで言っている。

「七海はもう少し甘いほうがいいかも」

 という七海からのアドバイスがあったりなど、俺の料理スキルはお母さんから教わったこととかもあるが、多くは七海やこれを食べた友人のアドバイスによって身に付いたり、スキルアップしたりなどできた。

『ごちそうさまでした!』

 食べ終わったあと俺たちは、この後どうしようかを悩んでいた。

その時美咲が、

「ねぇ、お昼寝でもしない?昨日はあまりゆっくりできなかったし、今日くらいはいいのじゃないかな」

 それを聞いた宮内や日高も

「「いいね!」」

 と賛成気味だった。

 俺と七海はしばらく見つめ合って、

「たまにはいいかもな」

 七海も「いいかもね!」とみんな同意見だし、それを実行する。

 俺たちは二階に移動し昨日自分が寝た部屋に向かう…だが昨日は二人だったはずなのだけど、なんか三人くらい多い気がする、てか、全員いると言ったほうがいいかもしれない、

「じゃあ、女子たちはここで寝てたら?俺はリビングで寝るから」

そう言って自分の部屋を出ようとした時、美咲が

「捕まえろぉぉ‼」

と言ったあと後ろから女子達が俺のことを襲うようにして捕まえてきた。

「何してるのだよ‼」

「えっ?なにってここからは出させないようにしてるのだよ」

 と宮内はそう言ってるが

「ここはボクのテリトリーなのさ、君はボクがいる限りここからは出られないよ!」

 ここは素直に従うしかなさそうだ。

「はいはい、わかったからボクはどうすればいいの?

「簡単さ…ボクたちと一緒にお昼寝するのだよ‼」

 とピースをしながら言っている。なんだか美咲の後ろの方から『ドーン!』というポップな擬音が見えそうな感じがする。

 俺はいつの間にか俺の部屋の主になってる美咲の言うことを聞く。

 それは凄まじいものだった、右には女子、左にも女子、上には天井…とにかくとんでもないことになっている。

 はっきりと言おう、「こんな状態で寝れるかっ‼」と思う。

 考えてみてほしい、「両側から女子の息遣いが聞こえるんだぜ、そんなところで寝られるか?君たち読者の過半数は『寝れるでしょっ』というかもしれない、だが実際なってみると寝れないものだよ」と言いたいよ…。

 そんな空間に俺は四時間程いた。

 六時になって俺はみんなを起こす、今回はみんな素直に起きてくれた。「あんな朝みたいな起こし方はしたくないし…」と朝の出来事がフラッシュバックしてくる…

 宮内は『今日くらいは私たちに甘えてもいいんだよ』なんて言ってたんだけど…なんだかんだ言って甘えられてないな。甘えられるとしたら夕飯を作ってもらうくらいかな、確か俺が気を失って気がついた時にあいつらが買い物から帰ってきたんだったけな。

 女子達は起きてすぐに夕御飯の準備を始めてた。

 俺は女子たちの料理の腕を遠くから見させてもらう。

 まず、誰が何をするかを係分担をしている、まるで自然教室みたいな感じだった。

 俺が見た限り大体の係りはこんな感じになっていた。

 宮内→炒め物など

 美咲→野菜のカットなど

 日高→煮物など

 七海→盛り付けなど

「こんな感じで大丈夫なのか?」と思ってしまう勢いだった。

だけど俺は女子達のがんばりを見ないといけない、俺ができることは見ることとできないところフォローするだけだ、それ以外は手出しできない。

 しばらく見ていると、みんなの得意なところが見えてきた気がする、まだまだ課題はあるだろうけどみんな上手だった。だけど、ところどころ「えっ⁉」とか「おぉ!」と、いろんなことを思ってしまう、だけどみんな協力し合って完成に近づいている。

『出来たぁ‼』

 どうやら完成したらしい、まだ現物を見てないから楽しみという感情もあるが少なからず不安な感情もある。まあ、美味しく出来たことを祈る…。

 いざ現物を見ると、はっきり言って予想以上に美味しそうだった。

 献立は肉じゃがと野菜炒めだった、マジで美味しそうだった。

『それでは泰平君、召し上がれ』

 という、女子たちからそう言われたあと「いただきます」と一言いってから肉じゃがから食してみる。

「っ⁉」

 と俺は硬直(こうちょく)した。

 女子たちは心配そうにこちらを見つめている。

「美味い、美味いよ‼」

 と俺が驚きつつ言うと安心したらしい。

 俺はもう一品の野菜炒めも食べる

「うん!こっちも美味しい」

 と、両方とも美味しいと聞いて喜んでいる女子たちに俺はひとつコメントを言う、

「確かに両方共美味しいんだけど…」

『だけど?』

「うん、この野菜炒めなんだけど、塩入れたでしょ?」

 と聞くと。

「うん入れたけど…」

「これ…塩じゃなくて砂糖だよ…」

 そう、真実を言う。

「ホントに⁉ごめん‼」

 と謝るが俺は

「いや、謝らないでよ失敗だってあるよ、俺だってたまにあるし」

今にも宮内は泣きそうな感じで目が(うる)んでいる。

「でも宮内、俺はこっちのほうが美味しいかもしれないな、醤油(しょうゆ)の味を残しつつ、醤油のしょっぱさが砂糖のおかげで少しながら薄くなってるんだよ」

 これが俺の素直(すなお)な感想だ、ホントにおいしい、いつも塩と醤油のしょっぱさが残るのがまえからの課題だったんだが、解決策がわかったからありがたいくらいだ。

 それを聞いた女子たちは野菜炒めに手をつける。

『美味しいかも』

 皆この答えだった。

「ほらな、一見間違ったことをしたと思ってもそれその判断が正しいこともあるんだよ、こうやって俺の悩みを解決してくれたんだ、ありがとな」

 と俺はお礼を言った。

「何それ?お兄ちゃんのくせにかっこいい事いちゃってさ」

 という七海からの痛い一言が突き刺さる。

「別に良いじゃねぇかよ、褒めてるだけだし」

「ホントかな?」

 と、七海は疑いながら言ってくる。

「なんだ?疑ってるのか?」

「もちろん!」

 なんだよこいつ、素直なのはいいが素直すぎるよな…。

 そんな俺たちの夕御飯パニックはみんなの笑顔によってひと段落した。

 そのあと美咲があることを言ってきた。

「ねぇみずっち、今度私たちに手作り弁当作ってよ」

 唐突すぎて言葉を失った。

「明日のやつか?」

 俺はそれはないと信じながら一応聞いてみる。

「無理には言わないけど出来れば…」

「いきなり過ぎだろ、まだもう少し前に言ってくれれば作れたんだが今言われてもな」

 それを聞いた美咲は少ししょんぼりしていた。

 そんな時俺は一つ提案をした。

「それじゃあ、毎週金曜日に俺が手作り弁当をみんなの分を作るっていうのはどうだ?」

 という俺にとっても少しながらハードな提案をした。

 だが、それを聞いた美咲たちは、

「いいね!私賛成するよ!」

「私も!」

 とみんな同意した。

「じゃあ、今週の金曜日に作ってくるから待っててね」

『うん‼』

 そんなわけで俺が毎週金曜日に手作り弁当を作るということになった。

「ねぇ泰平君、明日ってどうするの?」

 という疑問をぶつけられた、

「あっ…」

 俺としたことが明日から地獄の五日間が始まることに気づいていなかった。

 どうしよう…俺にはいま二つの選択肢がポンッと出てきた。

・明日は特例で手作り弁当を作る。

・こいつらには悪いがコンビニで済ませてもらう。

 出来れば後者は選びたくない、だからといってこれから材料を買ってきて作るっていうのも…、それでも俺は前者を選択した。

「それじゃあ、これからスーパーで食料買ってくるから風呂とか入ってて」

『オッケー!』

 そう言った後、俺は急いで駅前のスーパーで明日の弁当に入れるものを買いに行く、もちろんスーパーまでは俺の近距離移動のひ●つ道具『ママチャリ』で向かう。

 スーパーでは献立を考えつつ彼女たちの好き嫌いに配慮しつつ品物を買っていく。

 なんだかんだ悩んでいたら帰ってきたのは出発してから二時間後だった。

 帰ってくるとみんなは風呂から上がっていてみんなでテレビを見ていた、もう夜も遅いし俺は風呂には入らずシャワーで済ませた。俺が戻ってくるともうリビングにはみんなの笑い声はなく静かなリビングがあった。

 俺は明日の準備とかがあるからとりあえずソファーで寝た。

 翌日、まだ四時頃、俺は一人キッチンに立ちお弁当と朝ごはんを作る。

「ふぅ、とりあえずはこんなもんかな、まあ初めて作るしこんなもんでいいでしょ」

 そう言って弁当が完成したのが五時半頃、俺たちは朝の七時にはこの家を出なければ学校には間に合わないから六時には彼女たちを起こさなければいけない、その間の三十分間で準備と朝ごはんを作らなければいけない。

 ~三十分後~

「終わった~!」

 とりあえず朝ごはんの準備も終わり、後は彼女たちを起こすだけだ。

 俺は二つの部屋を訪れみんなを起こす、今日は素直に起きてくれた。

「みんな少し急いでね、七時には出ないと間に合わないからね」

『うん…』

「わかってるんだろうか…」なんて思ってしまう。

 だが、彼女たちは俺の思っていた以上にテキパキと動いている。

 そのおかげで思っていた以上に時間に余裕ができた。

 だがその時間も短く、もう七時前だった。

「お~い、もうそろそろ行くぞ~!」

『は~い』

『行ってきま~す!』

 と、俺たちは七海より早く出発し学校へ向かう。

 ~それからしばらくして学校の最寄り駅に到着~

『はあ…疲れたぁ…』

 もう疲れた…、いつもの事なのだが今日はいつも以上に疲れた。

 だがこのあと驚きの人と会う。

「おお、水沢じゃないか、なんだ?今日は女子に囲まれてるじゃないか」

 その声の正体は担任の桜井先生だった。

「せっ、先生!いや、これには事情がありまして…」

「センセー、私たち泰平の家にお泊りしてたんです!」

 ああ、終わった…俺が俺として死んだ…

「それは楽しそうじゃないか!聞かせてくれよ」

「いいよ!」

 と彼女たちは先生に土日の出来事を話している。

「余計なことは言わないでくれよな」と祈ることしかできない。

 だが、その祈りは無意味なこととなった。

「そういえばみずっち、原宿に行った時にね可愛いカチューシャつけてたんだよ!あの時のみずっち可愛かったなぁ」

「そういえば泰平君結構似合ってたよね」

 それを聞いた先生は俺のことを見てニヤニヤしながら。

「そうなのか?一回見てみたいな」

「いやいや!あんな黒歴史は見せられません‼」

 絶対にあんな姿は見せられない、死んでも見せられない。

「そう言われると見たくなるんだよな」

「それじゃあ、見よっか!」

 と、意味深な発言をする日高さん。

 自分のカバンに手を入れそこからあの時つけたカチューシャを取り出した。

『おお‼』

「は?」

「なんでそれがあるの⁉」

「なんでだろうなぁ…」

 絶対わざと持ってきたのはわかる。

「じゃあ早速つけもらいましょう」

「絶対に嫌だ‼」

 俺は断固(だんこ)拒否(きょひ)した、だってあんな黒歴史の出来事をこんなところで見せられないもん。

「それじゃあ、今日は一日先生のお手伝いをさせようかな」

「えっ?」

 それは死んでも嫌だ、この人のお手伝いとかそれに一日中って、生きて帰れるかも分からない。

「分かりましたよ…つけますよ…」

『おお‼』

「あ~あ、言ってしまった…」と今更になって後悔する。

 俺は日高からカチューシャを受け取り、頭につける。

『おお‼』

「似合ってるじゃないか、彼女たちが言う通り可愛いな」

「馬鹿にしないでくださいッ‼」

「そういうところも可愛いじゃないか」

「――――――――――」

 なんにも言えない、こんな姿を見られて恥ずかしい。

「おい、遅刻するぞ!お前ら急げよな」

『オッケー』

 俺はカチューシャを外してから、みんなと学校へ向かう。

 学校に着いたのは遅刻寸前の時間だった。

 着いてすぐにホームルームが始まった、先生が入ってくると真っ先に俺のことを見てきた。

「腹立つわ~、また後で先生に色々といじられるんだろうな…」

 と小声で言うと

「水沢くん、何か言いました?」

「な、なんでもないです‼」

「マジかよ、めっちゃ小声で言ったつもりだったのに聞こえたのかよ…、ヤバイなあいつ…」と桜井先生の隠しスキルに驚く。

 ホームルームからしばらくして時は四時間目、授業は先生の雑談から始まった、なんだか嫌な予感がしていた。

「みんなって土日何してたの?」

「ぶふっ……!」

 察しはついていたがまさか本当にしてくるとは思わなかった、今度は先生じゃなくてクラスの男子から襲われそうだ、戦争が始まってしまいそうだ。

「私はみずっちの家に行ったよ!」

「ぶふっ……!」

 ああ、もう駄目だこりゃ…

「そういえばそうだったな!」

 マジでこの先生は…ひどすぎる…

『おい‼それは本当なのか⁉』

 という男子からの拷問(ごうもん)が始まる。

「うん、真実です」

 俺は素直に答えた、ここで嘘をついても意味はないとわかってたから。

隣に座っている宮内は心配そうにこっちを見ている。

「なあ水沢、お前の黒歴史見せてやれよ」

「なに言ってんですかあんたは‼」

『見てみたい!』

 みんなはこう言ってる。

「こうなりゃやけくそだ、俺の黒歴史を見せてやる‼」

 と言って俺は自分のカバンからカチューシャを取り出し頭に着ける。

「これが俺の黒歴史だ‼」

『おお‼可愛い~‼』

 自分の思っていた以上の好評価だった。

「でも何か物足りないな…」

「もう十分だと思うんだけど」

「あっ!ちょっと待ってろ」

 と言って先生は廊下へ飛び出した。

「やっぱりこれでしょ!」

 と言って何かを持って戻ってきた、その手にはかつらがあった、演劇部から借りてきたのだろう。

「それをどうしろと?」

「少しぐらい察しろよ」

「まさか⁉」

「そのまさかだ、これをつけてみろ!」

それは女装用のかつらだった。

「分かりましたよ、着けますよ」

 ここで抵抗しても俺の評判を下げるだけだ、仕方なく波に乗ろう。

「じゃあ別室で準備するか」

「はぁ?ここでいいじゃないですか」

 と俺は言ったが、拒否され俺は先生に連れられ別室へ行く。

「じゃあ、これに着替えろ!」

「はぁ⁉」

その手にはこの学校の女子用の制服だった。

「これ着るの?」

「もちろんじゃないか、それ以外に何に使うんだよ」

「はあ……」

 ため息しか出ない。

「分かりましたよ…じゃあ外に出てくださいよ」

「はいはい」

 俺は制服を脱いで女子用の制服を着る。

「スカートとか…短くないか⁉」と思ってしまう。

「着替えましたよ!」

「おお、似合ってるじゃないか!」

 と笑いながら言ってくる。

「早く済ませましょ」

 女装した俺は先生と教室に戻る。

教室に入った瞬間、みんなして『おお‼めっちゃ可愛い~!』という声が聞こえる。

『カシャッ!』

「めっちゃ写真撮られてるんですけど…」

「だって可愛いんだもん!」

 という女子からの声がする。

 するとその子から写真を見せてもらった。

「これって…俺?」

「もちろん!」

 自分でもびっくりだった、俺の原型をとどめてない、もう性別の壁を越えたのではないのかと思ってしまう出来栄えだ。

「じゃあ、水沢には今日はこの格好で居てもらおう!」

『賛成‼』

 みんなはやって欲しいらしい。

 まあ、ここは少し悩めた、自分の出来がここまでとは思わなかったし。

「良いかな……」

「水沢が承認したぞ‼」

『おお‼』

 まあ良いんじゃないかな、あの出来栄えだったし。

「もう授業は終わるな、少し早いが号令かけてくれ」

「――――――――――!」

 お昼になった、俺たちはみんなで集まってお弁当を食べる。

「ねえ水沢君、私も一緒にいいかな?」

 声をかけてきたのは同じクラスの『磐田(いわた) ()()』だった、彼女は結構小柄な感じの人で俺とも身長差がすごい。

 磐田 真希/十五歳/同じクラスの女の子で、身長が低いことを気にしている可愛らしい奴だ。

「いいよ、一緒に食べよ」

俺たちはみんなで集まってお弁当を食べる

「そういえばみんな同じだね」

 と興味津々に見ている。

「ふっふっふっ……これはみずっちの手作り弁当なんだよ~」

 と子供のように自慢げに言っている。

「よかったら一口良いかな…」

「それじゃあ、俺の弁当食べる?」

「いいの?」

「もちろん!」

「じゃあ私のお弁当と交換しようよ!」

 と思いもよらない答えが返ってきたが

「そっちがいいならいいけど」

「じゃあ決まりだね!」

 と俺と磐田さんはお互いのお弁当を交換した。

『いただきます!』

俺は磐田さんのお弁当をいただく。

「もしかしてこれって磐田さんの手作り⁉」

「うん、お口に合えばいいんだけど」

 と、少しながら自慢げに言っている。

 俺は磐田さんの未知の領域のお弁当に手をつける。

「っ⁉おいしい‼」

「ほんとに?」

「もちろんだよ!」

「よかった~」

 と、ひと安心している。

「それじゃあ、水沢くんのも」

「ど~ぞ♪」

 その時の俺の声は変人そのものだった。

「美味しい!」

「よかったあ」

 口にあったらしい、とりあえず一安心。

 それにしても気のせいかもしれないがこのグループの女子からの殺気?みたいのがしている気がするんだが……。

「楽しそうだね、みずっち」

 駄目だ美咲…、楽しそうに聞こえないよ…。

「放課後体育館裏に来てね」

 駄目だよ、マジで何されるかわからねぇ!

「じゃあみんな行こうか…」

 磐田さんを除く女子たちはみんなで集まって女子トークをしている。

「どうしたんだろうね」

「さあ…わからないな…」

大体はわかる…わかるんだけど分かりたくない…。

「それにしても水沢くん…その格好似合うね」

「それはあまり触れないでくれ…」

 ああ恥ずかしい…

「それにしても廊下から騒ぎ声が聞こえるね」

 そういえば…

「ねえ、あの人?」

「まさかね~」

「でも聞いたとこあの人らしいよ」

 ああ、多分廊下にいる人たちはオレの女装を見に来たのだろう…。

「結構可愛くない?」

「そうだよね、結構好きかも」

 改めてこの女装の出来栄えに驚く。

「そろそろ次の授業じゃないの?」

「そういえばそうだな」

 そして授業が始まった。

「おい水沢!なんだその格好!」

「えっと…」

 俺は四時間目の出来事を全て話した。

「アハハ!それは良いじゃないか!」

「そんなに笑わないでくださいよ…」

だめだこりぁ…

そんな感じで五時間目六時間目と先生にいじり倒されこの姿も終了の時間になった。

俺は着替えてる途中一つのことを思い出す、『放課後体育館裏に来てね』という美咲からの言葉だった。

俺は急いで着替え体育館裏へと向かう。

そこにはひとつの手紙が落ちていた。

『時間を変えましょう、迎えに来るからそれまで部活に行ってなさい』と書いてあった、もう文章を見ただけでわかる、完全に怒っているという事がわかるよ…。

 俺はその手紙の通り迎えに来るまで部活に行く。

「すみません遅れました~」

「はいは~い、事情は宮内ちゃんから聞いてるから大丈夫だよ」

 俺は活動を始める。

「そういえば水沢くん今日面白い格好になったらしいね」

「なんで部長が知ってるんですか‼」

「いや~、その…」

と言いながら部長は宮内の方を見ている。

「まさか宮内!あの格好の写真見せたのか⁉」

「はうっ!」

 と肩をビクッと上げて驚いている。

「いや…見せたくなっちゃったっていうか…なんというか…」

 だめだこりゃ…。

「結構似合ってるね」

「ホントに馬鹿にしないでくださいよっ!」

「ねえ、今日のイラストのモデルしてよ!」

「俺がですか⁉」

 唐突な振りだった。

「もちろんあの格好でね」

「ええっ⁉なに言ってんですか‼」

「いいじゃん!部長命令ですっ!」

 部長命令とかじゃなくてもう力で抑え込んでる感じがするのは気のせいだろうか…

「分かりましたよ…」

「やったー!」

 と、俺はまたあの装備を着ける。

 しばらくして着替え終わって更衣室から部室に戻る時、また恥ずかしい…、部室に戻ってきて松島さん初見の言葉が

「君…本当に水沢くん?」

「はい…正真(しょうしん)正銘(しょうめい)、水沢泰平です」

「どうやら本当らしいね」

 俺はまたあの装備をした姿で絵のモデルをする。

  ~しばらくして~

「「出来たあ~!」」

 どうやら出来たらしい。

「見せて下さいっ!」

 俺は部長と宮内が描いてくれた絵を見る。

「なんですか?これ…」

「水沢君だよっ!」

 自信満々に言っているが、そこには俺が取ったポーズとは全然違うポーズをした俺の姿があった。

「なに描いてるんですか⁉」

 そう言った瞬間扉が急に開いた。

「お迎えに上がりました…」

 そこには死神(しにがみ)のような感じの姿をした美咲がいた、バックにドラ●エのラスボス戦のBGM流れてそうだった。

「あっ、はい…」

 ダメだ…天国からお迎えが来たみたいだ…。

「それじゃあ、先に失礼します…」

「気をつけてね…」

 俺はとりあえずこの格好から元の格好へと戻した。

 そのあと、体育館裏へと向かった。

「えっと…話ってなんでしょうか…?」

「ねえ、今度の土曜日って空いてるかな?」

 何のために聞いているのか分からないが俺は正直に答えた。

「ああ、空いてるよけど、なんでだ?」

「それじゃ、ボクとデートしてくれ!」

「にゃぁぁにぃぃぃぃぃぃぃぃ⁉」

 いきなりのお誘いに俺はどうしていいかわからなかった。

「デ…デートって…」

「良いじゃないか!」

「わかった、じゃあ行こうか」

俺が良いよと言うと美咲は子供のように

「わ~い!」

 とすごく喜んでいる。

「それじゃあ、今度の土曜日朝九時に迎えに行くね」

 と言って美咲はその場を後にした。

 俺は今一度考えてみた、俺の人生の中でデートをした事があっただろうか、答えは無い!全くもって初めての経験だった、しかも二人きりで…。

 俺は家に帰ってもそのことが忘れられなかった。

 そんな時ケータイが鳴っている、相手は磐田さんだった。そういえばお昼休みにアドレスを交換していたのを忘れていた。

 しかも電話だった、俺は慌てて電話に出た。

「もしもし?」

『水沢くん?』

「そうだよ、どうしたの?」

『ねえ…今度の日曜日って予定とかってある?』

 さっきと同じくだりだったがまさかとは思いながらも質問に答える。

「空いてるけど…」

『良かったらその日、ちょっと会えないかな?』

「えっ?なんで?」

『いいから……』

「分かった、良いよ」

『やったあ!それじゃあ今度の日曜日の朝九時三十分に学校の前にね、もちろん私服で来てね』

「うん分かったよ、楽しみにしてるね」

『じゃあね…』

 と言われてから切られた。

電話の後俺は自分の部屋のベットの上で「なんだ俺‼モテ期でも来たのか⁉」と思ってしまった。

  それから俺は土曜日までテンションがマックスだった。



















三章 休日の出来事


 ~美咲とのデート当日~

 俺は昨日の夜から一睡もできなかった。

 時間になると下には美咲が家の前で待っていた。

「ごめんごめん、待った?」

「大丈夫だよ、私も今着いたところ」

「「――――――――――」」

「行こうか…」

「うん」

 俺たちは電車の中でどこに行くかを聞く、とりあえずお金はいっぱいもってきたつもりだが、行き先は聞いてないからな。

「なあ美咲、今日はどこに行くんだ?」

「浅草とかスカイツリーだよ!」

「おお!楽しそうだな!」

「でしょ!ボクが全力で考えたんだよ!」

 と、胸を張って言っている。

「少し期待できる…気がする」

俺たちは移動中にもそんな感じの楽しそうな話をしていた。

しばらくしてスカイツリーについた、やっぱりいつ見ても高いし大きい、こんな真下から見るのは初めてだった。

 その時美咲はスカイツリーを指差し

「登ろっか!」

 どうやらスカイツリーに登るらしい、そして美咲は自分の可愛らしいお財布からスカイツリーのチケットを取り出した、もちろんだが俺はちゃんとお金は支払ったからな。

「じゃあ早速のぼろっか」

「着いていきなりとか早すぎる」とは思ったが美咲が決めたんだ、今日はあまり口出ししないようにしよう。

 俺たちは東京スカイツリーの展望台へとエレベーターで上がる。

 展望台に着いてすぐに美咲は子供のようにはしゃぎながら外の景色を見ている。

「見てみて!高いね!」

「そうだな!」

 と俺たちは外に見える東京タワーや建物などの景色を見ながら楽しむ。そんな中タワー系の定番のガラス張りの床を見つけ、美咲は

「ねえ!ガラスの床があるよ、行ってみよっ!」

 と言いながら俺の手を引きガラスの床へと連れて行く。

 こういう系は初めてだから少し不安だ。

「わあ!思ってた以上に怖いね…」

 美咲の言うとおりだ、思っていた以上に怖い。

 その後もスカイツリーを満喫して元の地上に戻ってくる。

 それから、ソラマチなどで買い物などをしてそろそろお昼時になった。

「ねえ美咲、お昼ってどうするの?」

「えっとね…」

 と言ってカバンから今日のスケジュールを書いたものと思われるメモ帳を取り出してから、今後の予定を言った。

「えっとね、もんじゃ焼きにしてみたんだけど…」

 あまりにいい選択に驚いている、てっきりそこら辺のファストフードてんで済ませるの

かと思っていたが、予想以上のプランだった。

「それじゃあ、浅草に移動しま~す!」

「は~い!」

 俺は美咲の先導によりセレクトしたお店へと行く。

 歩いて十分程、そのお店についた、そのお店はよく見ないと分からないくらいわかりにくい店だった。

「じゃあ、行こっか」

 と、階段を上がったところにその店はあった、それなりに混んでいる。

「えっと、二名で予約した水沢です…」

「ああ、水沢さんですね。奥へどうぞ」

 なんだかフレンドリーな店員だな…。

机へと向かうとそこにはまたもや美咲がセレクトをしたであろう料理が置いてあった。

 そのあとお店の人がもんじゃ焼きの作り方を教えてくれた。

「結構難しそうだな…」

「そうだね、みずっちでも難しいって言うとボクには出来ないね…」

 と、言ったらその人が

「じゃあ作ってあげようか?」

 と言ってくれた、俺たちはお言葉に甘えて。

「「おねがいしますっ!」」

 と答える。

 そのあとお店の人が手際よくもんじゃ焼きの作ってくれた。

「じゃ~ん!これが本場の月島もんじゃだよ!」

「「おお!これが!」」

 手際とか見ていてもなんだか俺にもできそうな感じだった。

 俺たちは本場の月島もんじゃを頂く。

「「っ‼」」

「「美味しいです!」」

「それは良かった」」

 と店員も一安心していた。

 そのあとも俺たちは協力しながら二人でお好み焼きやもんじゃを作って食べた。

 なんだかんだで一時間三十分程いただろうか、すごく楽しかった。

俺たちは割り勘をしてお金を支払い店を後にする。

「このあとどうするの?」

「えっと…浅草の仲見世の食べ歩きだよ」

 あれだけもんじゃを食べてからの食べ歩きは少しきつい。

「それじゃあどんどん行こう!」

「うん…」

 俺たちは仲見世で人形焼や人気のメロンパンを買って食べたり出来て、結構楽しかった。

「ねえ、おみくじ引こうよ!」

「良いよ!」

 俺たちはおみくじを引いた、

「うわっ!俺『凶』だったんだけど…」

「やったー!ボクは『大吉』だったよ!」

 と大吉を見せつけぴょんぴょんと跳んで喜んでいる。

 いろいろと悔しい…。

 その後も浅草周辺を少し観光し、今俺たちは東京駅にいた。

「なあ美咲、なんでここに来たんだ?」

「なんでって、もちろん駅ナカスイーツを食べに来たに決まってるじゃん!」

 ああ、大体は分かりました。

「それじゃあどんどん行きましょー!」

 と美咲はどんどん進んでいく。

 その後、美咲は美味しそうなものを片っ端から買っていた。

「ただいま~☆」

 と、外のベンチで待っていた俺のもとへ帰ってきた美咲は両手に袋をいっぱいもって戻ってきた。

「お前…どれだけ買ってきたんだよ……」

「ふぇ?だってみずっちも食べると思ったからいっぱい買ってきたんだよ~」

 と、美咲はひまわりのような笑顔で言う。

 何を買ってきたのか見せてもらうと、全部たしかに美味しそうだ。それに全部二つずつ買ってあった。こういうささやかな心遣いが俺的には好きだ。

 時は三時頃、俺たちはこのあとどうしようか悩んでいた。美咲プランではこのあと帰宅とあるんだが帰るにはまだ早い、だから悩んでいた。

 ここで俺は一つ提案をしてみる。

「ねえ、これからお台場に行ってみない?」

 と、少しネタ要素ありで言ってみた。

すると美咲は意外な反応を示す。

「いいね!行ってみようよ!」

「ああ、うん」

 と、案外簡単に決まってしまった。

 そんなわけで俺たちはお台場へ移動する。

「「お台場にとうちゃ~く!」」

 というのが俺たちが改札から出てすぐにしたことだ。

内心「めっちゃ恥ずかしいよ~!」と心の中で叫ぶ、「だけどせっかくのデート?だ楽しもう!」と決めていたし、まあいいだろう。

そのまま俺たちは近くの公園に向かおうとしていたが一番の問題があった、そう『ビル風』だった。

冷たい風だったから流石に寒い…、美咲なんかすごく寒そうに見える。

「美咲、寒いだろ?これ着なよ」

 と、着ているパーカーを貸す。

「ありがとう」

 と、美咲はパーカーを着る。

「みずっちのだから大きいね、それにみずっちの匂いがする」

「何言ってんだよ!」

 そんなわけで俺たちは公園に向かう。

「それにしても風強いな…」

「そうだね…」

 ほんとに風が強い。

 その風に俺たちは打ち勝ち公園に着いた。

「わぁ~、海だ~!」

「ホントだな!」

 確かに公園から海が見えたり、レインボーブリッジが見えたりなど、眺めもいい場所だった。

 俺たちはベンチに座って東京駅で買った駅ナカスイーツを食べる。

「美味し~い♥」

「ホントだな、甘くて美味しいな」

そんな感じで駅ナカスイーツを食べながら色々と話していた。

「ねえ!フジテレビに行ってみない?」

「いいんじゃないか」

 というわけで、お台場観光をする俺たち一行。

 楽しい時間はあっという間に終わってしまう、時は五時半頃、少し暗くなってきている。

「そろそろ帰ろっか、暗くなってきたし」

 と俺が言うと美咲は

「嫌だよ~」

 と、子供みたいな感じで言ってくる。

「最後に行きたいところがあるんだけど付き合ってくれないかな?」

 と、言ってくる、俺はどこへ行きたいのかと聞くと

「観覧車に乗りたいのだ!」

「どこのだ?」

「葛西のあの大きな観覧車だよ!」

「良いんじゃない?ちょうど夜景がきれいに見れるんじゃないかな」

 と、俺たちは美咲の要望によって葛西(かさい)の大観覧車に乗りに行く。

  ~葛西(かさい)臨海(りんかい)公園(こうえん)に到着~

「やっぱり高いね、綺麗な景色が見えそうだね!」

 と美咲はすごくはしゃいでる。

 その後俺と美咲は観覧車に乗る、だがその間はこの狭い空間に二人きりだ。

 だんだん上がっていくごとに都心の夜景が見えてくる。

「綺麗だね」

「そうだな…」

「あれっ?思っていた以上に会話が少なく思えるのは気のせいだろうか…」と思ってしまうくらい会話が少なかった。

 だが、そんな中美咲がいきなり話しかけてくる。

「ねえ」

「なんだ?」

「ボクね、好きな人がいるんだ…」

「そうなんだ…」

いきなりなんなんだ、こんな話…

「誰だと思う?」

「えっ?そんなのわからないよ」

 そう言うと美咲は俺に密着しながら

「みずっちのことが好きだよ♥…」

 そう言った後俺の(ほお)にキスをしてきた。

 ヤバイ、体が熱い、こんな事ってあるのか?

 その後下に降りるまで会話はなかった、帰るときも、お互い無言だった、話したことと言ったら『じゃあね』ということだけだった。

 そんな感じでこのデートは終わってしまった。

俺は美咲と別れたあと、一人で家に帰る。

「ただいま~」

「おかえりなさ~い!」

 といつもと変わらない。

「お兄ちゃん、どうだった?」

「うん、すごく楽しかったよ」

 という今日の報告をする。

 そのあと夜ご飯を食べ、風呂に入って、寝ようと自分の部屋に向かう。

 部屋に入ってすぐ俺のスマホにメールが届く。

『今日は楽しかったね、みずっちと一日過ごせて嬉しかったよ。あんなこと言ってごめんねびっくりしたでしょ、だけどあの言葉に間違いはないから、それだけは分かってほしいな…。それじゃあまた月曜日会おうね!』という美咲からのメールだった、俺はそのメールを見てから返信する。『うん、俺もすごく楽しかったよ、七海以外の女の子と二人きりで出かけるなんて初めてだったから少し緊張したけど…、それにあの言葉には少しびっくりしたな…、まあ、美咲が嘘をつかないことは分かってるから安心して、変な言い方だけど…。また今度どこか行きたいな、今度は夏休み頃かな?じゃあまた月曜日ね』という返信をした、そのあとすぐに磐田さんから電話が来た。

『ねえ水沢君、明日どこか行ってみたいところとかある?』

 多分俺の予想だが『行くところが思い浮かばない…、そうだ、水沢くんに聞けばいいんだ』といったあたりだろう。

「君の行きたいところならどこでもいいよ」

 と言ってみると。

『それが…、どこに行きたいか思い浮かばなくて…』

 やっぱり俺の察した通りだった。

「そう言われてもな…」

『あっ!』

 何か思いついたらしい。

『私、おうちデートしてみたい!』

「どっちの家でやるんだ?」

 と俺が行く先を聞くと、

『私の家で良いかな?』

「まあ、いいんじゃない?」

 と言うと、

『じゃあ決まりね!』

「うん、分かった」

『制服持ってきてね』

「はぁ?なんで?」

と聞こうとした途端に

『じゃあまた明日ね!』

 と言って切られた。

「マイペースな性格かな?」と思ってしまう。

 それより寝なければ…、明日も早いしな…。

  ~翌日~

 俺は磐田さんとの待ち合わせ場所へ向かっていた。

 制服を持ってこいって…、何を考えているのかわからない。

 俺は待ち合わせ場所の学校前についた。

 だが、待ち合わせ時間になっても来ない。

  ~十五分後~

「やっほ~!」

 やっと来たよ…。

「水沢くん早いね」

「そりゃそうだよ、だって磐田さん…静岡時間(※)で来ているんだもん」と内心思っている。

俺は磐田さんについて行きながら彼女の家へと向かう。

「磐田さん、いきなりで申し訳ないんだけど、磐田さんってなんだか呼びにくいから下の名前で呼んでもいいかな?」

 ほんとにいきなりで申し訳ないと思う。

「いいよ~、みんな苗字だと呼びにくいって下の名前で呼んでもらってるんだよ~」

 意外とあっさりオッケーが出ていて少し驚く。

「じゃあ…、真希さん……」

「は~い!」

 と返事をしている、まるで子供みたいだ。

  ~学校を出発してから電車に乗って~

「着いたよ~」

 どうやら着いたらしい、そこにはマンションがあった。

「ここの三階だよ~」

 俺は真希さんについていく。

「じゃあ入って~

「おじゃまします…」

 見た目はすごく綺麗な部屋だった。

「散らかってるけどごめんね」

「そんなことないじゃん、すごく綺麗だよ」

 うん?気のせいか?

「それじゃあ何しよっか」

 と俺が聞くと真希さんは

「水沢くんと一緒にお料理したい!」

「じゃあそうしようか」

 というわけで俺と真希さんで料理をすることになった。

「キッチンとか綺麗だね」

 気のせいじゃないかもな…

「水沢くん、何か言いたそうだね」

「ギクッ!」

 完全に図星を突かれた。

「そんなことないよ~」

「嘘だ~、だって棒読みじゃん」

 我ながら演技力がないなと思ってしまう。

「そのうち言うよ」

「今すぐ言ってよ~」

「やだよ~☆」

 ああ…なんで俺こんな会話してるんだろ…

 そんなことを考えながら俺と真希さんは料理をする。

「やっぱり泰平君ってお料理上手なんだね、お弁当見てもわかったけど、実施に見ても手つきが違うもん」

「そういう真希さんも上手だね、俺ができないことも楽々やってるもん、教えて欲しいくらいだよ」

 と、真希さんに尊敬の眼差しを送る俺。

「なんか照れるね」

 と、いう楽しい会話をしながら俺たちは料理をする。

「「出来た~!」」

 なんだかんだで協力して完成したものは、『お好み焼き』だった。

「……、あの…昨日食べたんだけど…」とは口が裂けても言えない。

 そんな感じで作ったお好み焼きを食べる。

 味は…手作りにしては上出来ではないかと思う。

「ねえ、このあとってどうしようか…」

「そういえば…」

 なんだかんだ俺たちこんなのんきにお昼ご飯食べてるけど、このあとする事なんて考えてもなかった。

「買い物でも言ってみる?千葉の市街地の方に」

「うん!」

 という感じでとりあえずどこに行くかは決まった。

「じゃあ二時くらいに行こうか」

「そうだね、楽しみだなぁ」

 まるで子供のようにはしゃいでる。

「そんなに楽しみなのか?」

「もちろん!男の子と一緒に行けるなんて」

所詮(しょせん)俺とだぞ?」

「いいんだよ、それで」 

「ふ~ん…」

 ほんとにいいのだろうか…

そんな感じで話しているうちに時間になっていたから俺たちは買い物がてら千葉市街地の方へと向かう。

 聞いたところ最寄りの駅から五分程らしい。

「案外近いんだね」

「うん、すごく便利なんだよ!」

 と五分の移動時間の間に色々と話していた。

 それに千葉の市街地に行くのは久しぶりだからな。

 五分後、千葉駅に着いた。

「……ここどこ?」

「何言ってるの水沢くん、千葉駅だけど…」

そこにあったのは俺の知ってる千葉駅じゃなかった…俺が来なかった間にすごく綺麗になっていた。

「じゃあ着いたことだしどこから行こうか」

 たしかに、ノープランで来ちゃったしな。

「何があるんだ?俺もイマイチ分からないしな」

「じゃあ案内してあげるよ」

「ありがとう」

 というわけで真希さんの案内で買い物をする。

 早速デパートに入り服のエリアへと向かう。

「ねえ!これ可愛くない?似合ってる?」

 と、可愛らしい服をスタイルの良い体に当てて見せている。

「うんっ、似合ってるんじゃないかな」

 と、率直な感想を言うと

「そうかな?」

 と顔を赤くしている。

 そのあともずっとこんな感じで服を見ていると時はいつの間にか四時だった。

「ねえ水沢君、ゲームセンターがあるよ!」

 と指さしていこうと言わんばかりの顔をしている。

「ねえ、これやってみたい!」

 と、リズムゲームを指差している。

「じゃあ、勝負な!」

「負けないよ!」

 ~それから俺たちは十回ほど戦い~

「負けた…」

「やったぁ」

 十回戦って八回負けるとか…

「ねえ、これ可愛いね!」

 そこには確かに可愛いストラップのクレーンゲームがあった。

「ほんとだね」

「ほしいな~…」

 ああ、俺の周り友人の女子もそうだが、この人たちの笑顔の破壊力がすごい、ひどすぎるよ、俺なんて一発でノックアウトだよ…

「分かったよ、これでもクレーンゲームは得意なんだよ!」

「今度こそいいところ見せないと…」と自信をつける。

 ~俺は何回も挑戦するも取れず、五百円を使い切った~

「ダメだ~…全然取れない…」

 と諦めていた時、真希が

「代わって~」

 と自信満々に挑む。

 いい感じに景品が持ち上がる、しかも二つも一気にだ

「おお…」

「まさかね…」と思っていると、取れているではありませんか…

「やったぁ!」

「マジかよ…」

 取れた景品を渡してくる。

「スゲェな…」

「ふふん!これが私の力よ!」

「ほんとにスゲェ…だって五百円使ってもひとつも取れなかったのに、真希さんは百円で二つも一気にとってるもん」と悔しい気持ちと同時に尊敬の気持ちが交差している。

 そのあと真希さんがいきなり走りだし向かった場所は『プリクラコーナー』だった。

「ねえねえ、一緒に撮ろうよ~」

 これには少し抵抗があった…

「いや…」

「いいからっ!」

 と、俺の手を引っ張り中に入る。

「ほら、入っちゃったから撮るしかないね」

 と笑いながら言っている、悪魔の笑いだった…

 俺の主張には聞く耳を持たずどんどんと撮る準備を始めている。

  ~しばらくして~

「出来た~!」

 と言ってスマホにダウンロードやらいろんなことをして、その結果を見せてきた。

「なんか俺すごいことになってるんだけど…」

「いいじゃん可愛いし」

 なんだか…自分でもびっくりっていうくらいすごいことになってる…

 そのあともしばらく散策しながら楽しんでいると時間はどんどん過ぎていき六時を過ぎていた。

「そろそろ帰ろうか……ん?」

「うん………」

 と、すごく眠たそうにしている。

「眠いのか?」

「うん…」

「正直で何よりです……」

「帰ろ~…」

「うん、帰るから家まで頑張ってくれ」

 と、真希さんは睡魔(すいま)と戦いながら真希の家の最寄り駅についた。

「真希、もうすぐだから…」

「おんぶ~…」

「え?」

「おんぶして~」

 そこには高校生とは思えない真希の姿があった、まるで疲れて眠くなった幼稚園児みたいだった。

「はいはい分かりましたよ…」

 と俺は真希をおんぶして家へと向かう。

「水沢君暖か~い…」

「うん…」

 という会話の直後、後頭部でなんだか寝息が聞こえる…

 うん、見なくてもわかるが寝ているのが分かった。

 家について真希を下ろすとゆらゆらと揺れながらこっちに倒れてきた。

「「うわあ!」」

 と、俺の上には真希が乗っていた。

「真希、大丈夫?」

「うん、ごめんなさい…」

 そんな小さな事故は多々あったが、無事真希の家に帰宅できた。

 真希は戻ってすぐ自分の部屋のベッドの上に飛び込みそのまま寝てしまった。

 その後俺は夜ご飯の製作に入る。

「はあ…」

 と、ため息をつきながら作る。

 三十分して完成し、真希を起こしに行く。

「ほら、起きてください!」

「………」

 反応なしだ。

 俺は真希の肩を叩きながら起こす。

「う~ん…」

 どうやら起きたらしい。

「ほら、もうごはんですよ」

「ふぇ?」

 なんだか状況がつかめないらしい。

「時計を見てください」

 と言って時計を見させると、驚きの顔を見せつつこっちをまた見直す。

「分かりましたか?」

 改めて聞きなおすと

「うん…」

 と状況をやっと理解したらしい。

「冷めないうちに食べましょう」

 と、真希をリビングに連れて行く。

「わあ~、すご~い」

 真希は目をキラキラさせながら言っている。

「「いただきま~す」」

 と、夜ご飯を食べる。

「美味しいっ!」

「そうか?それは良かった」

 真希さんは、驚いた顔で食べている。

「ねえ、レシピとか教えてよ」

「ダメ~っ!企業秘密だよ」

「ええ~っ!なんで~?別にいいじゃん」

 なんか、最近知り合ったばっかなのに、前から知ってる感じがする。

「「ごちそうさま~」」

「じゃあ真希さん」

「なに?」

「手伝ってもらいましょうか」

「えっ?」

「『えっ?』じゃないからっ、手伝うんだよ、さっきまで寝てたからね」

「え、えぇ―――――⁉これ全部洗うの?」

 と、驚きながら言っている。

「もちろんっ!」

 と笑顔で返事をする。

「いつも一人だからこんな量洗ったことないな~」

「お母さんとかは?」

「長期出張でカナダに…」

「そうなんだ…俺たち似た者同士だな」

「どういうこと?」

「俺の親父も長期出張で海外にいるんだ、だから家では妹と二人だよ」

 と、しばらく後片付けをしながら自分たちの親事情について話していた、結構共感するところがあって、同じクラスに俺と同じ事情の人がいると少し嬉しい…。

 そんな会話をしているともう十時を過ぎていた。

「ヤバイな風呂入らないと!」

「そうだね、水沢くん先に入っていいよ」

「ありがとう、お言葉に甘えてお先に」

 と、着替えを持って風呂場へと向かう。

 一応さっきシャンプーとか一式買っといたし、とりあえずは問題ないだろう。

 俺は体を洗ってから疲れを癒しながらゆっくりとしていると「ガラッ」と扉が開いた。

「何してるんですか⁉」

「なに?って、時間もないし一緒に入ったほうが楽かと」

 と、キャミソールを着て言っている。

 俺は、ちっこいタオルを持っていたからまだしも、持っていなかったら…。

 そのまま湯槽に入って来る。

「気持ちいいな、男の子と二人してお風呂に入るなんて何年ぶりかな?」

「知らないよ…」

 そんな事より狭いおかげで体が密着しそうだ、そのせいで俺の下腹部において熱膨張(ねつぼうちょう)が始まりかけている、理性が壊れる…。

「どうしたの?」

「どうしたのじゃないですよ…」

 そう言った後真希さんが俺の背中にもたれかかってきた。

「ごめんなさい、俺もう出ますね」

「え~…ひどいな~」

「失礼します」

 という言葉を言い捨てて俺は風呂を後にした、そのまま着替えて俺は後片付けをしていた。

「ただいま~」

「お帰りなさい…」

「元気ないね、どうしたの?」

 よく言うぜ…あなたが原因ですよ…

「あっ!もうこんな時間だったんだ、そろそろ寝よっか」

「そうだね、明日もあるしな」

 と就寝準備をする上でひとつ疑問に思った。

「真希さん、俺ってどこで寝ればいいのかな?」

「う~ん、私の部屋でもいいかな?」

「それは構わないが…」

 あっさり承認してしまった…

 俺は渋々真希さんの部屋へと向かう。

「あれっ?俺の布団は?」

「無いよ~」

「ふぁ?」

「私のベッドで寝るの、広いから大丈夫でしょ?」

 たしかにダブルベッドだし問題はないとは思うが…、流石にな…。

「分かりましたよ…」

「それじゃあ…寝ようか」

「そうだね…」

 俺たち二人はひとつのベッドで寝る、余裕はあっていいのだが、布団の中で足とかがたまに当たってしまう。

「「おやすみ~」」

 お互いに寝むりに就いた。









四章 緊急事態!


  ~翌日~

 俺は朝6時頃に目覚めた、とてつもない状態で…。だって、『抱き枕』にされてるんだもん、それに真希さんの胸が俺の体に当たってる…。そんな状態から離脱するため俺は真希さんを起こす。

「ほらっ、起きてくださいよ、俺を抱き枕にしないでください」

「ん………う~ん……………」

 おぉ、一発で起きるなんて、俺の人脈史上久しぶりの出来事だぞ。

「おはよ~…」

 と、可愛らしいあくびをしながらのお目覚めだった。

「おはようさん、良いお目覚めですか?」

 俺は冷たい一言を言うと真希さんはこの状態を理解したらしく頬を赤くして恥ずかしそうに。

「ごめんなさい、こんなつもりじゃなくて」

「大丈夫だよ、気持ちよさそうに寝てたし」

 という目覚めだった。

 その後、俺と真希さんはお弁当を作る。二人での共同作業だ。

俺は、そのついでに簡単な朝ごはんを作る。十分足らずで出来る代物だ。

「出来たぞ~」

「は~い」

 安定のクオリティーだ、だけど二人で作ったからいつもよりかはましだった、それよりも七海のことが心配だった、自炊もできない七海を一日ひとりにするのはきついな…多分帰ったら世紀末な光景だろうな…。

「どうしたの?」

 真希が見上げるようにして聞いてくる。

「何でもないよ、大丈夫だよ。

 その後、俺たちは朝食を済ませ学校へ行く支度をしていた。

「水沢君、何してるの?」

「学校に行く準備だよ」

「えっ?早くない?まだ七時半前だよ」

「早くないよ、普通だろ?」

「普通じゃないよ!」

 そういえば真希って…いつも遅刻ギリギリで来てたな…

「いつもより早く行ってみれば?」

「えぇ~…でも一人で行くのは寂しいし…」

「だろ?早くしなよ」

「は~い」

 という感じで納得できなかった真希を急かしつつ俺は準備を進める。

「もう俺の準備終わるけど、お前の準備はどうだ?」

「終わったよ~」

「それじゃあ行くぞ」

「オッケ~」

 と、俺たちは学校へ登校する。

「なんかいつもと違う通学路だからなんか新鮮だな」

「なんか私もいつも一人だからなんか新鮮かも…」

 と二人で共感している。

 俺たちは幾度となく乗り換えをしながらこの通勤ラッシュという戦いに挑む。

 何とか乗り込め、真希とも距離は近く離れ離れ(はなればなれ)にはならなかった。

「大丈夫か?つかまれるか?」

 と俺は真希の方に手を伸ばす、真希はがっちりと俺の手をつかみ耐えている。

「いつも一人だったから心強いかも…」

「そっか…」

  ~しばらくして~

「「やっと着いたぁ~…」」

 長かった…

ここからも歩いて数分だが、真希との楽しい話で時を忘れてしまっていた。

「あっ!もう着いてる」

「嘘っ?気付かなかった」

 それだけ会話に夢中になっていたということか。

すると、学校の外周を走っている小山を見つけた。

「小山!何してるんだ?」

「オッス泰平!何してるって部活の朝練に遅刻したから罰として学校外周十だとよ…」

「アハハ…がんばれ…」

「おう!それよりも気になるんだがなんでお前ら一緒なんだ?」

「いいじゃん別に、ほらっ、部活がんばれよ」

 と俺は真希の手を引き校内へと入る。

 着いたのは八時頃だった、教室に入るとそこにはいつメンの女子たちが来ていた。

「えっ?なんでお前らがいるの?早くない?」

 そう聞くと美咲は

「なんでって、どういう事なの?真希さんと二人で来るとか」

「いや…これには理由があって…」

 その後真希がフォローに入って。

「私が誘ったんだ…泊まりに来ないかって」

「そんなことだと思ってたんだ」

 という冷酷な言葉が美咲の口から聞こえた。

「「ふぇ?」」と真希と二人で首をかしげる。

「もしかしたら、真希ちゃんとこの場では話せないような内容のことでもしてないか心配してたんだよ」

 このエロ女め!公然とそんなこと言いやがって。

「そんなことするわけないでしょ、心配しすぎだよ」

「良かったぁ、とりあえず一安心だね」

 と安心している、美咲の後ろでは顔を赤くした宮内達がうつむいている。

「こいつは重要警戒人物に指定しよう」と心の中で思う。

「そういえばもうそろそろ五月だね、みんなはゴールデンウイークはどこか行く予定はあるの?」

 と美咲が聞いてきた、

「俺は…特に予定はないかな」

「私も…」

「私も予定はないかも」

「私もかな」

「ちなみにボクは、特に予定はないかな」

 ほとんどの人が予定は無いらしい。

 そこで俺は一つ提案をしてみる。

「なあ、みんなでどこか行かないか?」

 と、少し冗談で言ってみると

『良いよ』

 と承認された、そこに朝練を終えた小山が教室に入ってきた。

「あれっ?朝練終わったの?」

「おう!あんなの十分で終わらせたぜ」

 お前は何なんだよ…、チートを使ったキャラかよ…

「何の話してたんだ?」

「ゴールデンウィークにどこかにでも行かないか?って話だよ」

「どこかって、どこだよ」

「それが決まってたらどこかって場所伏()せないからっ!」

 ああ…こいつの脳はどうなっているのか…研究してみたい。

「どこ行くの?」

「じゃあ、LINEのグループで決めようよ」

『オッケー』

 そこに桜井先生が来た

「おぉ青春だね、思い出作りもいいが試験勉強も忘れるなよ、赤点とったら補習だからな」

『はぁ~い…』

 そういえば来月末は試験もあったっけ、「すっかり忘れてたぜ☆」なんて言ってられない状態だよ…。

 その後も至って普通に過ごしお昼も終わり放課後へと突入していた。

「みやうち~、部活行こうぜ」

「ごめん…今日はちょっと…」

「行けないのか?」

「うん…」

 宮内にしては珍しかった。

「分かった、美浦さんにはそう言っとくね」

「よろしくね」

俺は急ぎ気味に帰宅する宮内を見送ってから部室に行く。

「美浦さ~ん!……あれっ?」

 そこには誰もいなかった、俺は顧問の先生の所へ行き事情を聴く。

「ああ、松島さんなら先帰ったよ」

「えっ?なんでですか?」

「なんか急いでたしな…あっ!宮内さんと一緒にいたのを見たな」

「宮内とですか?」

 疑問でしかなかった、先輩と宮内…どんな組み合わせだ?

「うん、なんか話してたっけな」

 何を話してたんだ?

「あの…先生、俺…このままだと一人で活動になってしまうんですけど…」

「ああ、今日に関しては任せるよ、自由にしなさい」

 これでも顧問(こもん)なのか?

「分かりました、今日は帰りますね」

「分かった、気を付けて帰れよ」

「は~い」

 俺は職員室を後にして帰ろうとすると昇降口になんかそわそわしている小山がいた。

「お~い!何してるんだ?」

「おお!泰平じゃん、なあ、お前中学の時陸上部だったらしいな」

 なんでこいつが知ってるんだ⁉このことは中学校の友達しか知らないのに…

「う、うん、そうだけど、それがどうしたの?」

「ああ、それが……」

 小山が話した内容に俺は驚いた。

「俺が…大会に臨時選手として出場⁉」

「そうなんだよ…俺もびっくりしてな…」

 そりゃお前もびっくりするだろうな…。

「でも、それってまずいんじゃないかな」

「それに関しては、うちらの顧問承認済みだから、てか、顧問が言い出したんだよね」

 彼は笑いながら言っている、確かに中学時代は県内でもそこそこ良い記録持ってたから、そんなに記録は低下してないとは思うけど…突然すぎてびっくりしている。

「それで…何の種目出るんだ?」

「短距離とリレーだ」

 待ってくれ、リレーとか花形じゃないか、しかもそれって既存の部員から色々と言われそうなんだが…。

「日程は?いつなんだ?」

「えっと…五月の半ばくらいだったかな、まあとりあえず、顧問の所に行くぞ」

「えっ!俺これから帰るのにぃぃぃぃ‼」

 俺は小山に引きずられ顧問の元へと連行される。

「先生!連れてきました!」

「おぉ!彼がそうか」

 なんか勝手に盛り上がってるんですけどぉぉ…。

「それじゃあ着替えてくれ」

「は、はい…」

 俺は渋々体操着に着替える、本当だったらもう帰れてるのに…

「着替えました」

「じゃあ、君の実力を見てみたいから、十分後タイム測ろうか」

「は、はい…」

 何なんだよこの部活…いきなり呼び立てしておいて来て十分後にタイム測るとか頭おかしいでしょ…。

  ~十分後~

「じゃあ測るぞ!」

 測るのは良いんだが…、なんで部員全員の前でやらないといけないんだ?

「いくぞ~!」

 スタート係りの先輩がスタート合図を出し俺は全力で百メートルを走り抜けた、周りからは「あの人速くない?」「あの人県で結構上の方だったらしいよ」という言葉が聞こえた。

「おぉ、すごいぞ」

「何秒ですか?」

「十一秒台だぞっ!」

『おお!』

 こんな気分になったのは久しぶりかな…なんだか懐かしい…。

「これは決定だな!」

「そうですね!」

 そんな声が聞こえた直後陸上部の部長が来た。

「頼みたいことがある」

「何でしょうか?」

 まだあるのか…

「臨時部員として陸上部に入部してみないか?」

 いきなりすぎて俺の脳内回路が処理落ちしてしまったみたいだ。

「今なんて?」

「臨時部員として来てほしいんだ」

「ふぁ⁉」

「無理にとは言わない、断ってもいいんだぞ」

 これに関しては俺の本音を伝えた。

「分かりました、お力になれるか分かりませんが、よろしくお願いします」

「こちらこそよろしく」

 俺は部長と握手を交わし、周りからは温かい拍手が鳴り響いた。

 その後俺は中学時代のように練習をしていた。

 部活も終わり、俺は同級生の女子部員に声をかけられた。

「水沢さ~ん」

「ん?どうしたの?」

「この後お時間あります?」

「あるけど、どうしたの?」

 そう聞くと少しうつむいてこう続ける。

「私、足が遅くて…だから、水沢さんみたいになりたくて、アドバイスしてほしいです!」

 こんな人初めてだった、中学時代にもこんな子はいたが、ここまで全力で言ってきたのは初めてだった。

「分かった、少しだけな」

「ありがとうございますっ!」

 俺はその後も彼女には全力でサポート、アドバイスをして俺の持ってる知識、経験をすべて伝えた、最後に五十メートルの計測を行った、彼女曰く初めて測ったときは八秒台だった、いざ計測すると少しだが、確実に速くなっていた。

「やったじゃん、記録更新だよ!」

「ホントに⁉」

 俺は彼女のタイムを見せる。

「本当だ!」

「だろ?君だって練習すればもっと速くなると思うよ」

「本当ですか⁉」

 彼女はパァッと笑顔になっていた。

「うん、俺がみっちり教えてあげるよ」

「はいっ!ありがとうございます!」

 と、汗びっょりになってお礼を言っている。

「ほれっ、汗拭きなよ風邪引くぞ」

 俺は、たまたま持ってたタオルを渡す。

「そういえば名前聞いてなかったね」

「そういえばそうでしたね、『山北(やまきた) ()()』です」

 山北 沙希/十五歳/同じ陸上部の女の子だ。

「じゃあ、沙希さんって呼んでも良いかな?」

「いいよ」

「じゃあ俺先帰るから、もう練習はしないですぐに帰りなよ」

「分かりました!」

 我ながら恥ずかしい…。

帰りの電車の中で真希からメールが届く。

『水沢君、カバン忘れたでしょ…、だから宮内さんに渡しておきましたんで、またね☆』

「ごめん宮内…、用事があったのに…」と心で謝罪する。

 やっと自宅に戻ってきた。

「ただいま~」

『おかえり~』

 なんだかいつもより声の種類が多い気がする。

「誰が来てるんだ~?ななみ~」

「「私たちだよ、水沢君」」

 そこには美浦さんと宮内がいた。

「宮内はともかく…なんで美浦さんまでいるんですか?」

「ひどいじゃないか、お隣さんに失礼だぞ」

 その時意味深な発言が聞こえた気がした、俺は一応もう一回確認をとる。

「今なんて?言いました?」

「『お隣さんに失礼だぞ』って言ったんだけど」

「どういうことですか?」











「私はこの家の隣に住んでるんだよ」

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ⁉」












五章 意外なる新事実。


 意外すぎる真事実だった、この人が、それに部長がお隣さんだったなんて…

「いつから住んでるんですか?」

「生まれたときからだよ、ずっとここだよ」

 言葉を失ってしまった、まさか部長が隣に、しかもずっと居たなんて…

「そういえば、ずっと前に遊んだことだってあるよ」

「ホントですか⁉」

 ああ…嘘だと思いたい。

「水沢君のお父さんに聞いてみれば?多分知ってると思うけど」

「そうだな…」

 俺は、この真相を探るために親父に連絡をする。

「もしもし」

『おぉ!泰平か久しぶりだな、どうした?』

 なんだか久しぶりに親父の声を聴いた気がする、俺は本題を話す。

「ねぇ、松島 美浦って聞き覚えない?」

『ああ!あの子ね、あの人がどうした?』

「今家にいるんだ…」

『なんでだ?』

「俺の部活の部長なんだよ…」

『おぉ!そっかそっか、あの子と一緒の学校だったんだな』

「それでさ、その子とさ俺って遊んでたの?」

『ああ、毎日のように遊んでな』

「まじかよ…」

『そういえばお隣だったけな』

「ウソだろ…」

 知りたくなかったことの真相が今やっと分かった。

『そういえば、俺の部屋にアルバムがあったはずだから話のネタにするといい』

「分かった、ありがとう」

『じゃあ、元気でな』

 結論、真実でした。

「ねぇお兄ちゃん、アルバム探してよ」

「分かったよ…」

  ~数分後~

「これっぽいな」

何とかそれらしきものは見つかった。

「ほれ、あったぞ」

『おぉ!』

 俺たちは早速アルバムを見る。

 そんな中俺はあるページを見つけた、それは幼稚園の入園の時の写真だった、そこには俺ともう一人、その幼稚園の制服を着た女の子が映っている。

「あっ!この女の子私だよ!」

「「どれどれ?」」

「ほら、この子」

「「可愛い!」」

「確かに可愛いな…」

 なんてことを話してた。

 楽しい時間の流れは速いものだった、既に一時間は過ぎていた。

「うわっ、もう七時じゃん、そろそろお前ら帰った方がいいんじゃない?」

「「そうだね」」

 そういって彼女たちは自宅に帰って行った。

 俺たち兄妹は夜ごはんを食べようとするが準備がめんどい。

「なぁ、久しぶりにピザにするか?」

「おぉ!良いじゃん、お兄ちゃんにしては良いセンスだね」

 こいつ…言うこと殆どにおいて一言余計なんだよな…

「じゃあ行こうか」

「どこに?」

「ピザ買いに行くんだよ」

「ふぁ?」

 七海は驚いたように言っている。

「ほら、行くぞ」

「私行かな~い!」

「えっ!行かないの?」

「うん、ネトゲやるから」

「ふざけるな!」

「じゃあね」

 そういうと自分の部屋へと逃げて行った。

 こうなるともうだめだ。

「いつものでいいか?」

「うん!」

「分かった」

 俺はそこのピザ屋に買いに行こうと玄関を出て道路に出ると、隣にはあの人がいた。

「ヤッホー!偶然だね」

 何たる偶然だ、こんなことが起こるなんて。

「何しに行くんですか?…」

「ピザ買いに行くんだ!」

 はぁ…最悪だ……

「一緒に行こうよ」

「いいですよ…」

 俺は少し機嫌が悪そうに言った。

「怒ってる?」

「もちろんですっ!」

 俺と美浦さんは二人で駅前のピザ屋に向かう。

「ねぇ、私と小学校、中学校と一緒の学校って知ってた?」

「そうなんですか?それは知らなかったです」

 またもや知らなかったことだった。

「でも、俺が入部届を出したときに気付かなかったんですか?」

「だって、感じが変わっちゃったんだもん」

「そんなに変わりました?」

「うん、なんか頼れる男の子って感じだよ」

「そういわれるとなんだか照れるな…」

「可愛いね☆」

「茶化さないでください!」

 なんだかんだで先輩とこんなに話したのは久しぶりかもしれない。

 しばらくして俺たちはピザを買って家に戻る。

「先輩、ゴールデンウィークって予定ありますか?」

「特にないけど…」

「分かりました」

「もしかして…」

 と、少し引き気味で腕を組んでいる、しかも胸を強調したスタイルだ。

「いやいや!いろいろと勘違いしてませんか⁉」

「ふぇ?デートのお誘いじゃないの?」

「違いますよ‼」

「な~んだ、違うのか…」

 何を期待してたのやら…

「それよりなんで聞いたの?」

「いいじゃないですか、内緒です」

「えぇ~…」

 なんか残念そうな顔をしている。

「遊ぶのはいいけど、部活も忘れないでね」

「分かってますよ、だってコンクールもありますしね」

「そうそう、君たち初めてのコンクールだよね、自信ある?」

「もちろんっ!」

 そんなことを話してると自宅に戻ってた。

「それじゃあ、また明日」

「じゃあね~」

 俺たちは各自宅へと帰った。

「ただいま~」

「おかえり~、おなか空いたよぉ」

 と、甘える猫のように寄ってくる。

「コラッ、くっつくな!」

「ごめんなさ~い」

 俺たち兄妹は買ってきたピザを囲む。

「やっぱりいいね、久々のピザ」

「確かにそうだね、だって最後に食べたのってクリスマスの時だっけ?」

「そうそう、お兄ちゃんが受験勉強してて、クリスマスの時は思い切って楽しんでたから覚えてるよ」

「そういえばあの時、ピザ買いに行くときトナカイのコスプレして買いに行ったっけ」

「そうそう、七海がサンタのコスプレしながら二人で」

 そんな思い出話をしながら食べる、いろんな思い出を…

「「ごちそうさまでした!」」

「じゃあ、風呂入ってこい」

「は~い」

 七海は足取りを軽くして風呂場へと行く。

「さてと、始めるか」

俺はコンクール用のイラストの素材作りを始める、題材は…いまいち決めてない

「はぁ…何書こうかな…」

 俺がしばらく悩んでいると七海が来た。

「お兄ちゃん、早く風呂入りなよ」

「えっ⁉もう戻ってきたの?」

「うん。それよりどうしたの、考え事しちゃって」

 七海が心配してくれてるのはなんか意外だな。

「それがさ、今度コンクールでさ、イラストのモデルをどうしようかなって」

 そういうと七海は胸を張って

「私がいるじゃん」

「えぇ~…お前が?」

 つい俺は本音を言ってしまった。

「私じゃダメなの?…」

 七海は目を潤ませながら俺に言う。

「ごめんごめん、じゃあお願いしようかな」

「やったぁ、お兄ちゃんに描いてもらえる♡」

 すごくうれしそうだ、こんなに喜ぶなんて…

「じゃあ、早速描いてよ」

「いやいや、無茶言わないでくれよ、もう少ししてからな」

「ちぇ~…」

「じゃあ風呂入ってきちゃうか」

 そういって俺の部屋を後にする。

「はぁ……」

 俺の口からは溜息しか出なかった。

「まさか部長が隣に住んでるなんて…」

 あれはマジで意外だった。

「明日から大変そうだな…」

 俺はそんなこんなでいろいろと考えすぎて疲れを癒せなかった。そのあと俺は翌日の準

備を済ませ就寝した。

 翌日の朝、俺が学校へ登校するために家を出ると家の前には俺が予想してた人が待ち構えていた。

「おっはよ~☆」

「何してるんですか?」

「なにって、待ってたんだよ」

「誰をですか」

「誰って、君しかいないでしょ」

 俺の予想していた通りだった。

「じゃあ行こうか」

 と、俺の手を引っ張って行く。

「はぁ…もう止められないな」

 そのまま二人で登校する。

 電車の中ではあまり話すことはなく、最寄りの駅に着いた途端俺にくっついて色々と話してくる。

「あの、先輩…くっつきすぎじゃないですか?」

「恥ずかしいの?」

「はい…」

「可愛いんだから♡」

 だって無理もないよ、先輩の柔らかい胸が当たってるんだから。

「それより先輩」

「なにかな?」

「先輩って彼氏いるんですか?」

「どうして?」

「なんとなくです…」

「いないよ」

「へぇ~」

 それは意外だった。

「なんか意外そうな顔してるね」

「そ、そんなことないですよ」

 この人鋭いな…

「私ね…すごく寂しかったんだ……」

「何がですか?」

「子供の時はすごく仲良くしてたのに、ある時を境にあまり話さなくなって、いつしか忘れ

ちゃう…」

 なんか申し訳なかったな、そのことについては。

「でもね、うれしかったんだ、水沢君と再会できたなんて」

そんなに嬉しかったんだ…でも俺はそれに気付けなかったんだよな…

「それにね、また前みたいに関われた事も嬉しかったんだ」

 先輩がこんな風に思ってたなんて。

 その後、俺と美浦さんはそれぞれの教室へと向かった。

  ~放課後~

「なぁ泰平、今日は陸部に来るよな?」

「もちろん!大会に向けて練習しないと」

 そう話しながら俺たちは教室を出ようとすると、廊下には見覚えのある子がいた、あの時一緒に練習した沙希だった。

「おぉ!こんなところで何してるんだ?」

「えっと、水沢君に用事があって」

「俺か?」

「うん」

「じゃあ良平先行っててくれ、後から行く」

「分かったぜ」

 そういって良平は小走りでこの場を後にした。

「んで?話って何だ?」

「その…場所変えませんか?」

「構わないけど…」

 そう言われて俺は彼女の言うままについていく。

「ここなら大丈夫ですね」

「なんなんだよ、こんなところで…」

 そう聞くと彼女は顔を赤めながら。

「えっと…その…」

「ん?」

「私…」

「どうしたの?」

「わ…私……」

 なんか心なしか体調が悪そうに見える。

「どうした?」

 そう聞くと沙希はこっちにもたれかかってきた。

「大丈夫か?」

 でも、沙希の顔は真っ赤だ。

「はぁ…はぁ……」

「お前、熱あるだろ」

「そんなことないです…」

 そう言ってるが俺が沙希のおでこに手を当てるとやっぱり熱っぽい。

「じゃあ、とりあえず保健室行こうか」

「はい…」

「ほれっ」

「えっ?」

「おんぶしてやるから」

「うん…」

 俺は沙希をおんぶして保健室へと連れていく。

「せんせ~…居ないのかよ…」

 なんでいないんだよ…って突っ込みたくなるよ。

 俺は沙希をベッドに寝かせる。

「大丈夫か?」

「うん…」

「とりあえず、ここでじっとしてなよ」

 そういって俺は保健室を後にしようとすると沙希は俺の手を引っ張ってきた。

「ん?なんだ?」

「一人にしないで…寂しい…」

 そこには目が潤んでいる沙希の姿があった、下手すりゃ一発でノックアウトものだった。

「仕方ないな…」

 そう言うと沙希の顔には少しばかり笑顔ができていた。

「少し寝たら?少しは楽になると思うけど」

「うん、でも一人にしないでね」

「安心しろ、俺は神に誓ってお前を一人にしない」

 俺は胸を張って言った。

「じゃあ…少しだけ……」

「おやすみなさい…」

 俺がそう言った直後にはもう先は眠りについていた。

「じゃあ、始めるか」

 俺はバケツに冷たい水を入れタオルを浸し沙希のおでこに乗せた、それに、ぬるくなったら交換する、それを何回も…。

 だが俺に睡魔という強敵が襲ってきた、眠い、すごく眠い!そして俺は睡魔との戦いに負けた…。

「――――さん…――沢さん…」

「う~ん…」

 俺が起き上がると、目の前には沙希がいた。

「うわっ!マジか…俺寝ちゃったんだ…」

「水沢さんの寝顔、可愛かったですよ」

「なに言ってるんだよっ」

「だって本当だったもん」

 また黒歴史を生んでしまった気がする、俺はそれに対応するためにこう続ける。

「そういう沙希もそうだったんだよ」

「ふぇっ⁉もぉ…」

 沙希はそう言いながら頬をプクっと膨らませている。

「でも、もう大丈夫そうだね、熱もなさそう」

「はいっ!少し楽になりました!」

 いつも通りの姿に戻ってなによりだ。

「じゃあ帰ろっか、家どの辺なの?」

「馬橋の近くです」

「マジで⁉俺新松戸の所だよ」

「ホントですか⁉こんな偶然あるんですね」

「ホントだよな!」

 またしても意外な新事実だった。

「じゃあ、そろそろ行こうか、大丈夫か?」

「はいっ!大丈夫です」

「荷物持つよ」

「ありがとうございます」

 そして俺たちは二人で下校する。

「そういえば沙希はなんでこの学校に来たの?」

「えっ?」

「いや…なんか気になったから」

 なんか変な感じだな…

「えっと…好きな人が行くって聞いたからです」

「へぇ~…なんかロマンチックだね」

「そうですか?水沢さんもそんな理由じゃないんですか?」

「まぁ…そんな感じかな」

「お互い似た者同士ですね」

「そうだね」

 その後もずっと途切れることもなくいろんなことを話してた、陸上の事とか、趣味の事とか、長い時間話してたがそれでも足りなかった。

「水沢さん、新松戸ですけど良いんですか?」

「いいよ、沙希の家まで送っていくよ」

「水沢さんって優しいんですね」

「そうかな」

 なんか照れてしまう。

「そうですよ!私そういう人好きですよ」

「ありがとな」

 俺はそのまま沙希の家まで一緒に行く。

「駅に着いたけどここからどうやって行くの?」

「こっちです、すぐそこですよ」

 確かに沙希が言った通りすぐそこだった。

「ここです」

「おぉ!確かに近いね」

「そうでしょ?」

「俺の家とかバス乗って行かないといけないしな…」

「あはは…」

 沙希もなんかどうリアクションすればいいのか分からないみたいな笑い方してるよ…

「それじゃあ、俺帰るわ」

「待って!」

 そう言った直後、後ろから抱き着かれた。

「少し、寄って行きませんか?」

「えっ⁉」

「今家に誰もいないんで…二人きりですよ♡」

「いやいや、七海が待ってるからっ!」

「じゃあ、また今度にしましょうか」

「うん、そうしようか」

 あ~あ…調子狂うよな…

「じゃあ、帰るわ」

「今日はありがとうございましたっ!」

 その時の沙希の顔にはひまわりの様な笑顔が咲いていた。

 その後帰ろうとすると

「水沢さん!」

「ん?」

「新松戸だったら、駅からバスが出てますよ!」

「おぉ!ナイス情報をありがとな!」

 でも、そのバスが俺の家の近くを通るのかが問題だ…

 俺はスマホで某有名サイトの乗換案内を使ってルート検索をする、その結果は…見事なことに最寄りを通るのが分かった。

「おぉ!今度こっち来るときはバスで行けるじゃないか!」なんて次また来る前庭のこの話な。

 俺は我が家へ帰宅するために駅のバス停からバスに乗って数分後、七海からメールが来る。

『お兄ちゃん何処にいるの?少し心配する…とでもいうと思った?それよりも美浦さん来てるんだけど、なんか鍵忘れちゃったらしくて、それに親が今日帰って来れないらしいんだって、だから泊めてって言ってるんだけど』

 あぁ…今夜も家の中がカオスな事になりそうだ。

「とりあえず状況は理解できたよ、今回は事情があるから認めるけど、次からは気を付けてくださいよって伝えといてくれ」と返信する。

 返信して少しすると次が最寄りのバス停だった、俺はそこで降りて家へと向かう。

「ただいま~」

「「おかえり~」」

「なんだか良い匂いがする……まさかっ!」

 そのままリビングへ向かうとそこには…美穂さんの手料理が置かれてあった。

「あれっ?これって…」

「おっ、これ全部私が作ったんだよ」

「美穂さん料理上手だったよ、お兄ちゃんよりも」

 何気痛いとこ突きやがるなこいつは…

「お口に合うか分からないけど、食べてみてっ!」

 危険な予感しかしない…ドラクエで言う『不思議な木の実』みたいな危険度だ、でも見た目は普通だった。

「う、うん…いただきます…」

 俺は恐る恐るそれを口に運ぶ。

「んっ!」

「どうかな?」

「美味しい…」

「でしょ?」

 なんでなんだ⁉こんなズボラな先輩がこんなにおいしい料理を作れるなんて…なんか悔しい…。

「なに?『こんな私がこんなにおいしい料理作れる訳がない』って言いたそうな顔してるけど」

「そんなことないですよっ」

 完全に見破られてる、なんでわかるんだこの人は…女の勘ってスゲェ…。

「でも、水沢君までには至らないかな…」

「よく言うぜ…俺よりも上手だよ…」なんて口が裂けても言いたくねぇ…。

「そういえば…今日一泊するんですか?」

「うん、鍵忘れちゃって☆」

「今度からは気を付けてくださいよ」

「はぁ~い☆」

 はぁ…この天然キャラめ…

「お兄ちゃん、お風呂沸かしておいたから先入っちゃって」

「おぉ…ありがとな」

 なんか…七海がいつもと違う気が…。

「七海…お前…なんか変なもの食べたか?」

「はぁ?殺されたいの?私だってこれくらいしますっ」

 相変わらずだな…でも…ありがたいな。

「ありがとな、助かったぜ」

「ふんっ!アンタのためじゃないんだからっ!」

 完全なるツンデレキャラじゃないか…。

「いつもこんな感じなの?」

「はい…いつもこんな感じで…」

 あぁ…恥ずかしい…。

「でも楽しそうじゃん、隣までたまに聞こえてきたりするよ」

「ホントですかっ?」

「うん、楽しそうな声と怒ってる水沢君の声とか」

「マジっすか…」

 マジで恥ずかしい…。

「それじゃあ、先に入ってきますね」

「「いってらっしゃ~い」」

 あぁ…なんか怖い…。

 その後俺はサッと風呂に入り戻ってきた。

「速くない?」

「いや…もう夜遅いし」

 時計を指さすと既に九時を過ぎていた。

「ほら、早く入ってきなよ」

「「はぁ~い」」

 そう言うと美浦と二人で風呂に入ってきた。

「はぁ…やっと休める……それに今週末からゴールデンウィークだ…けど、どこ行くかも決めてねぇしな…」

 俺はスマホを片手に出かける先を探す。そこには『キャンプならここがおすすめランキング』とか『少し贅沢なバスツアーランキング』とか『やっぱり温泉でしょ!そして温泉なら伊豆・箱根でしょ、伊豆・箱根の温泉宿ランキング』とか結構分野があった。

「はぁ…どうしたもんかなぁ…」

 そうやって俺が頭を抱えていると後ろから美浦さんが抱いてきた。

「大丈夫?なんか大変そうだね」

「うん…行先決めなきゃ……って、何してるんですかっ⁉」

「だって、疲れてそうだったから私が包んであげれば治るかなって思って…」

「治りませんよっ」

 てか…下手すりゃ被害は甚大なことになりそうだったよ。

「あれっ?その服って…」

「あぁ、これ?七海ちゃんが『これ着たら?お兄ちゃんのだけど』って言ってたしお言葉に甘えて…」

「ふ~ん、分かりました、洗濯物は入れといてくださいね、明日までには何とかしますから」

「ごめんね」

 はぁ…明日学校が休みにでもなんないかな…。

「それじゃあ先寝ててください、まだやることあるんで」

「それじゃあ、お先に失礼します」

「おやすみ…」

「「おやすみなさ~い」」

 そういって七海たちは二階へと向かった。

「はぁ…忙しくなるぞ…」

 女性たちが寝た後、俺は洗濯物を洗い乾燥させたり、ゴールデンウィークの予定を考えたり、お知らせ用の手紙を作成したり…、色々と忙しくなりそうだ…。

「はぁ…結局行先は決まらなかったし、いくつか候補を挙げてアンケート式にするか…」

 そんな感じで、パソコンのソフトで作成を始める。

「はぁ…結局寝るのは十二時過ぎになりそうだな…」

 その後、乾燥機にかけておいた先輩の着替えとかもろもろにアイロン掛けをしてから、寝る準備を始める。

「ふぅ…寝る前にこのプリントの印刷だけしといて寝ちゃおう」

 でもここで問題が起こった。

「えっ?紙ねぇじゃん…」

 いつもはプリンターの横にセットで置いてあるんだが、紙が切れていた。

「はぁ…ストック出さないとじゃん…」

 あぁ面倒くさい。

「ここだよな」

 俺は自分の部屋のクローゼットからA4用紙を取り出す。

「あったあった」

 俺はリビングに戻って印刷を始める。

「はぁ…もう寝よう、必要量印刷したら勝手に止まってくれるだろ」

 さすがに寝ようとするが、上に行く体力はなかったから下で寝ることにする、だってもう

眠いし…疲れてるし…。

「それじゃあ、おやすみなさ~い」

 そのまますぐに寝れてしまった。

 ~翌日~

「ふわぁ…よく寝たぁ…」

 何とも言えないお目覚めだ…。

「おはよ~」

 そこに居たのは意外にも美浦さんだった。

「なにしてるんですか?…」

「なにって…お弁当作ってるんだよ☆」

「は、はぁ…」

 なんでこんな事してるんだよこの人は…。

「あっ!水沢君は手伝わなくて良いよ、私一人でやらせて」

「う、うん…まぁ頑張ってください」

 俺はその後も少し様子を見ながら先輩の頑張りを見守る。

「出来たぁ!」

「おぉ…」

 昨日みたいな出来でありますように…。

「どうかな?私の手作り弁当」

「う、うん…良いと思うけど」

 昨日の夕飯に近いものを感じるんだが。

「じゃあ朝ご飯にしよっか」

「うん、じゃあ七海起こしてきちゃうね」

 俺は七海を起こしに部屋へと向かう。

「ほら、起きなさいっ」

「はぁ~い」

 今日は聞き分けがいいな…。

 その後、俺たちは先輩の作った朝ご飯を食べて、昨日印刷しておいたプリントを持ってから学校に向かう。

「「行ってきま~す」」

「行ってらっしゃ~い」

「はぁ…行きたくないよぉ…」という思いは届かず、どんどん引っ張られるように行く。

「先輩、強く引っ張らないでくださいよ」

「ごめんごめん、それともう一つ聞いてもいい?」

「なにをですか?」

「バス停ってどこだっけ?」

 はぁ、一体全体どうなってるんだか…。

「先輩、一応地元民なんですからそれぐらい知っといてくださいよ」

「あはは、ごめんなさいっ☆」

 なんか…わざとらしさを感じるんだが…。

「それじゃあ行きますよ」

「うんっ」

 なんなんだろ…この人は…。

 俺たちは先輩の力だけじゃたどり着けなかったバス停についた。

「おはよ~」

 なんか聞き覚えのある声が聞こえた。

「おぉ宮内、おはよう」

 やったぜ、先輩と二人きりという空間から解放されたぜ。

「ん?なんか嬉しそうだね、まさかね…」

「いやっ、先輩と二人きりじゃなくなるからですよっ」

「「うわぁ…ひど~い」」

「うわぁ…マジか…、二人から言われるとは思わなかった」と内心ショックを受けている。

そんな感じでショックを受けていると駅前行のバスが来た、俺たち三人はバスに乗り込む、その中は安定の混雑ぶりだった。

 駅前までは数分で着くから混雑ぶりはいつもあまり気にはしないが今日は女子が二人もいるしな…少しは気にしなければ……なんて言ってられない、まずは我が身の安全を。

 ~数分後~

 俺たちはまだバスの中だ、なぜかって?だって、『安定の大通りの渋滞が発生してるもん!』何人かの通勤客は次のバス停で降りようとしている。

「宮内に美浦さん、次のバス停で降りようと思ってるんですけど、どうします?」

「「そうしましょう」」

息ぴったりじゃないですか…。

 結局俺たちは次のバス停で降り立ち、駅まで歩くことにした。

「水沢さ~ん」

 後ろの方からまた聞き覚えのある声がする。

 俺が後ろを向くとそこには沙希がいた。

「なんで沙希がここにいるんだ?」

「だって、水沢さんに会えるかな?って思ってて」

 沙希は顔を赤めている。

「変な誤解招くからやめてくれ」

「分かりました☆」

 絶対分かってねぇだろうな。

「それじゃあ…行こうか…」

『おぉ!』

 ただでさえ今週はハードスケジュールだったのに…金曜日にもこんなに疲れるなんて…。

そんでもって、学校の最寄り駅まで行くとまた聞き覚えのある声が聞こえた。

「「泰平く~ん」」

 はぁ…二人だな…。

「あぁ…おはよう…」

「「おはよ~」」

「結局みんな揃っちゃったな」

 でもたった一人は戸惑っている。

「そういえば沙希はこのメンバーは知らなかったんだっけとりあえず軽く紹介しとこうか」

 そんな感じでお互いに自己紹介していつものメンバーの仲間入りをした。

「えっと、ここで皆さん小山を除く全員そろったからこれ、先に渡しておくね、小山には後から渡すから」

 そういって、昨日徹夜して作ったゴールデンウィークの予定のお知らせの手紙をいつメンのみんなに渡す。

『なにこれ?』

 みんな疑問に思ってるらしく俺は学校まで歩きながら説明する。

「この前『ゴールデンウィークにみんなでどこかに行かない?』って話したじゃん?その計画なんだけど、俺一人で決めるのはあれだったし、いくつか候補を挙げたんだけど…」

「おぉ!山奥のキャンプだって」

「東京ネズミ―ランドで朝から夜まで遊びっぱなしプランもあるよ!」

「定番のバスツアー…ホントに定番だね」

「でもやっぱりボクはこれがいいな!」

『なになに?』

「箱根二泊三日温泉巡りと観光施設巡りの旅でしょ!」

『おぉ!』

「徹夜してプランを決めたかいがあった…」と泣きそうになってしまうくらいだった。

 その後も彼女たちはいろんなプランを見て盛り上がっていた、昼休みに小山にも

 ~放課後~

「はぁ…今日はどこも部活ないし、最高の日じゃねぇか」なんてテンションで帰ろうとすると、なんかのフラグを立ててしまう。

『やっと来たぁ!』

 なんで毎回こうなるんだろ…

「んで?なんで俺を待ってたんだ?」

『プラン決定したから』

 みんなは口をそろえて言っている。

「早くない⁉親とかからの承諾は?」

『取りました』

「はぁ…それで?プランはどうするの?」

『箱根の二泊三日プランに決定しました!』

 うわっ…マジか…一番来ないと思ってたのに…。

「分かった、でもちょっと待って、俺の親に連絡してみるわ」

そういって俺は少し離れたところで親父に電話をする。

「ごめん、今いいかな?」

『泰平か、どうした?』

「うん、ゴールデンウィークに友人たちと出かけようって話になってるんだけど」

『どこ行くんだ?』

「箱根…」

『ふ~ん、いいぞ行ってこい!』

「マジで⁉」

『お金はいつもの口座に入れとくから、お土産送ってくれよな』

「オッケ―」

『それじゃあ、俺寝るから』

「そっか、じゃあね」

 マジか…案外簡単に許可が下りてしまった…、俺はほかの人にもこの事を報告する。

「許可も出たし、正式決定ということでよろしくお願いします」

『よっしゃ~!』

 はぁ…これでよかったのかな…。

 俺は帰りもスマホを片手に箱根の温泉について色々と調べる。

「はぁ…どこも高いな…」

「そうだね…泰平君、無理しすぎないでね」

 前にも言われたフレーズだな。

「うん、一応皆には楽しい思い出を作ってほしいけど、何よりも身の安全を最優先にしないとね」

「ねぇ、明日泰平君の家に行ってもいいかな?」

「いいけど…何するんだ?」

「今回の旅行のプランなんだけど、一緒に考えれば少しでも早く終わるんじゃないかなって思って…」

「そう言ってくれると助かる、それじゃあ手伝ってくれ」

「うんっ」

 と、宮内と二人で盛り上がってると美浦さんがなんか言いたそうな顔をしていた。

「美穂さん、何か言いたそうですね」

「もちろん!明日、私も行く」

「はいはい、分かりましたよ」

「やったぁ」

 休めるのは日曜日だけか…。

「あの…」

「ん?どうしたの?」

「私も行っていいですか?」

「もちろん、良いよ!」

「わ~い!」

 明日中に決めよう、そうしないと休みがない…。

「ただいま~」

「………」

返事がない。

「お~い、居ないのか?」

「……」

よくよく見ると七海の靴がない、リビングに行くと七海からの置手紙置いてあった。

『バカでキモイお兄ちゃんへ、友達のさくらちゃんの家で女子会という名のお泊り会してるから、日曜日まで帰れないからね』

やったぜっ、めんどくさい七海が居ないだけで俺の土日のライフが回復できるぜ!

俺は自分のノーパソを使って、箱根のホテルについて調ようと…思った時期もあった、完全に寝落ちしてしまった。

「お~い」

 なんだろ…誰かが呼ぶ声が聞こえる…。

「お~い」

 誰だろ…。

「起きてくださいよっ」

 俺が起きるとそこには宮内や沙希に美浦さんが集結してた。

「えっ⁉なんで居るんですか⁉」

「なんでって、今何時だと思ってるの?」

「ふぇ?」

 俺が部屋の時計を見ると針は九時を指していて、さらに外は明るかった。

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ⁉」

 その時の俺の声は近所中に響き渡っただろう。

「うわ……ビックリした…………」

 いやいや、こっちがビックリだよ、だって軽く寝たつもりが起きたら十四時間後とか……マジであり得ないから!

「とりあえず…一息入れさせてくれ」

 そう言って俺はインスタントコーヒーを飲む。

「それで?君の言い分は帰って来てそのまま寝落ちしたら朝になってたと…」

「まさにその通りです…」

 そう言うとみんなは爆笑していた。

「それより一つ疑問に思うんだが、お前らどうやって入ってきた?」

「あぁ…それはね…」

「それは?」

『玄関の鍵が開いてたもん』

 と、口をそろえて言う。

 こいつら……でもこれに関しては俺にも原因はあるし。

「でもこんな事は二度としないでよね」

『はぁ~い☆』

 絶対また何回かするだろうな…。

「泰平君、旅行先のホテルとかどうするの?」

「それがね…」

「見つからなかったんですか?」

「まぁ…言っちゃうとそうだけど…」

「候補は見つかったの?」

「まぁ…いくつかは見つかってますけど、資料不足で………」

 それを聞いた美浦さんは何か思いついたような感じで家を飛びだす。数分後何かを持って戻ってきたがその手にはありがたい資料を持っていた。

「これ使えば良いんじゃない?」

 その手には旅行雑誌がありしかも箱根温泉特集だった。

『おぉ‼』

「マジでありがたいよ、これ買おうかなって考えてたところだったんだ」

「水沢君にそう言ってもらえると嬉しいな…」

 なんなんだこの人は…顔を赤くしちゃって、照れてるのか?

 その後しばらく俺たち四人は旅行誌を囲んで「あのホテルはどう?」「いやいや、ここでしょ」なんてことを話してる、一応日程は決まってるし、その日の予約が取れればそれで問題ないが、混んでるだろうな…。

 ~三時間後~

「ダメだぁ、決まらねぇ…」

「うん、どこも良さそうだもんね」

 ホントにどこも良さげだしな、しかもこんなにいくつも選択肢があったら決まらねぇよ…

「でもそういうところに限って混んでますし…」

「ここはどう?」

 美浦さんが提案してきた。

『どこどこ?』

「ここだよ」

 その指先には結構良さげな旅館があった。

「良いじゃん」

「そうですね」

「そうだね」

 俺たち三人からは高評価だった。

「それじゃあ…ここにするか!」

『うんっ!』

「それじゃあ、今から皆に通達してっと…」

 みんなに旅館のホームページのリンクを貼って、一応明日全員招集をしておいた。

「とりあえず、今日中にはみんな読んでくれるっしょ、それで承認されたら明日にでも予約するか!」

『うんっ!』

 そんな感じで宿は決まったが…雑誌に書いてあったフリーパスとやらの手配が終わってない。

「それじゃあ…このフリーパスも買うか、三日間箱根の乗り物が乗り放題になるし」

「そうだね、すごくお得だし」

「でも…この切符、小田急のみみたいですけど」

『うわ…マジか…』

「でも何とかなるっしょ!」

 自分で言っておくのもあれだが、これ一番ダメなやつだよ…。

「そういえばもう十二時か…」

「お腹空きましたね…」

「じゃあ、簡単なものでも作っちゃうから待ってて」

『わ~い!』

 ~五分後~

「出来たぞ~」

『早っ!』

「だってこれだもん」

 と、言いながら炒飯を出す。

『炒飯…』

「うん…炒飯…」

 なんか気まずいな…。

「早く食べましょうよ、お腹空きましたし」

「そうだね、食べようか」

 そう言ってみんなで食卓を囲む。

 でもお昼ご飯を食べ終わってから三十分後になると…。

「暇ですね…」

「そうだな…」

 そんな時宮内が何かを思い出したかのように言う。

「ねぇ、なんかテレビゲーム無いの?」

「そうだな!ちょうど四人いるしパーティーゲームでもするか!」

「「やったぁ!」」

 そう言って俺はテレビゲームの準備を始める。

「これで良いか?」

 俺が取り出したのはすごろくゲームやミニゲームなどのファミリー向けパーティーゲームだった。

「うん、これで大丈夫だよ」

「私も大丈夫です」

「私もオッケーだよ」

「それじゃあ…レッツパーティー‼」

 その後、テレビゲームでバカ騒ぎして、遊び疲れて時計を見ると五時過ぎだった。

「おぉ…そろそろ解散しますか」

「そうだね、明日もあるし」

「そうですね、明日に向けて」

 一体明日は何があるんだか…。

『お邪魔しましたぁ!』

「また明日ね」

 はぁ…また静かな空間になってしまった。

 その後俺はノーパソを開き、明日に必要な予算を軽く計算する。

「うわっ!一万近く持ってかないとじゃん」

 俺はその旨を、LINEのグループトークに貼る。十分後、皆から返信が来る。

『オッケー!』

『分かったぜ!』

『分かりました』

『分かったよ』

 良かった…みんなからは承認されたらしい。

「それじゃあ、明日北千住に一時集合でよろしく」

『はぁ~い』

 という感じを示すスタンプが送られてくる。

 七海にも連絡っと。

「俺、明日みんなと出かけるからよろしく」

『分かった、気を付けてね』

 なんか…七海らしくないな…。

 ~翌日のお昼過ぎ、北千住にて~

「結局みんなそろったな」

「待ってよ、美浦さんいないけど」

「あぁ、美浦ならさっきお腹空いたってコンビ二行ってるからそのうち来るでしょ」

『あはは…』

 みんなどうリアクションして良いか分かって無いみたいだけど。

「ただいま~」

「やっと戻って来たか、行きますよ」

「は~い」

 俺たちはルミネの旅行代理店にやって来た。

「えっと…このフリーパスを買いたいんですけど…」

「日程はどうします?」

「えっと、三日分を」

「はい、どこから乗りますか?」

「新宿から」

「えっと、ロマンスカーはどうします?」

「ロマンスカー?」

「小田急さんの特急です、観光向けですのでお客様みたいな友人たちとの旅行にぴったりですよ」

 良く分かんないけど人気なら買おう。

「じゃあ、それも」

「時間はどうします?」

「何時があります?」

 そういうと時刻表を取り出してきた。

「えっと、朝方だとこの時間がありますけど、いつごろ出発ですか?」

「えっと五月四日頃です」

「「―――――――――――――――――――」」

 ~数分後~

「これが切符です、ありがとうございました」

「ありがとうございます」

 何とか買えたぜ。

「じゃあ、これが切符ね、絶対に無くさないでよ」

『は~い☆』

 大丈夫かな?この人たちに預けて…。

「泰平君、この後ってどうするの?」

「ふっふっふっ、よくぞ聞いてくれた」

「俺のおごりでカラオケ行くぞぉ‼」

『やったぁ!』

 そう言って俺たちは近くのカラオケが出来るところにに行く。

 その後も六時ころまでずっと歌いっぱなしだった。

 その後、現地解散して各自の家に帰宅する。

「ただいま~」

「おかえり~」

 やっとなんか家に帰ってきた感がある。

「七海、ちょっとしたプレゼント買ってきたぞ」

「なになに?」

 そう言いながら目をキラキラさせている。

「ふっふっふっ、これだ!」

 俺はそう言って今日買ってきたものを見せる。

「なにこれ?」

「今度のゴールデンウィークに箱根に行くぞ!」

 俺は唐突に七海にそう伝えると、『聞き間違えたのかな?』と言わんばかりのリアクションをしてこう続ける。

「………もう一回言って」

「だからぁ、箱根に行くって、しかも三日間!」

「本当に⁉」

「うん!」

「やったぁぁぁぁ‼」

 七海は床をぶち抜いてしまうような勢いで跳んで喜んでいた、やっぱり秘密にしといてよかった。

「誰が行くの?」

そう聞かれて俺はメンバーを伝える。

「宮内とか美浦さんとか俺の友人がメインかな」

「結構いいメンバーだね、楽しそうじゃん」

 七海も納得してくれたらしい。

「楽しみだねっ!お兄ちゃんっ!」

「うん!めっちゃ楽しみだな!」

 兄妹二人でテンションが上がってる。

 俺たち兄妹だけじゃないだろう、宮内や美浦さん、沙希に美咲とかいろんな人が楽しみにしてるだろう。




「今週末の箱根旅行が楽しみだ!」


この度は俺が初恋をしている件について第一巻を読んでいただきありがとうございました。

初めての投稿ですので、お見苦しいところもあったと思われます。

次回はもう少し先になりそうです。リアルの時間軸で勝負(受験)の時が近づいていますので…気長にお待ちください。


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