いますぐに
あれはいつの事だっただろうか。
私が幾つのときだっただろうか。
腹違いの兄に愛情を抱いたのはいつのことだっただろうか。
みっつ歳上の彼は私に毎朝くちづけを落とし、甘言を垂れる。それが私たちの日課。
兄はよくメンソールの煙草を吸う。私もそれを真似て吸い出した。
兄は才能溢れたひとで、何でも出来るが少し拗れた性格をしている。
私は特に此れと言った才能も無いが、趣味として掌編小説を書いている。
兄は褒めるのが得意だ。私をてのひらで踊らせては突き落とす。
兄は皆から好かれる程の美貌を持ち合わせているが、醸し出す雰囲気は近寄り難い雰囲気を出していた。
そんな素敵な兄が私に“愛してる”とほざくのが滑稽でならない。
何より私が兄に愛情を抱いてる事を知りながら“家族だから”と云う兄が憎らしい。
私はいますぐに兄を殺めて仕舞いたい。兄の首に手を掛けたその時、憂いだ顔を見せたかと思えば私に馬乗りになり、態勢が逆になった。
そして吸っていたメンソールの煙草の煙を私に吹き掛けた。
「御前はぼくだけ見てれば好いんだよ」
どくんと胸が跳ねた。その姿が酷く厭らしく妖艶で、又私は兄の虜になる。
–いますぐに彼のものになりたい。
「私を壊してお兄ちゃん」
兄に私はそう言い放つと、兄は目を少し見開き少し口の端を上げ「いいよ」と私を抱いた。
代わり映えの無いまいにち。
代わり映えの無い私たちの関係性。
いつかは壊れるこの関係。
私は彼をあいしてる。