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夕陽と僕  作者: 日南ひなた
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はじまりのはなし〜プロローグ〜

始めて投稿します。

読んでくださればとても嬉しいです。

拙い文章かもしれませんが、一生懸命書きました。

基本的には、1人の少年と少女の周りで起こる、不思議な話になります。


小さい頃から、僕は人の気持ちが見えた。

何もない空間に、吹き出しが出てきて、その中に、言葉が書いてあるのだ。目を凝らすと、吹き出しは、人の頭から空に向かって生えていて、そこには、その人の気持ちが書かれているのだと思う。

字がわからない頃はまだ良かった。何が書いてあるのか分からなかったから。ただ、視界は悪かったけど。

でも、小学校に入って、少しずつ字を覚えて、何が書いてあるか分かった時、気分が悪くなった。

僕は、小学校一年生にして、人間の怖さ、特に、外面と内面の存在を知ったのだった。

例えばそう、今この教室でも小学4年生の僕は人間の怖さを感じている。

教室の片隅。一見仲良く話している2人の女の子。でも、僕にはそう見えない。

片方の女の子。僕の家の近所の、少し薄汚い感じの子。この子は珍しく何にも見えない。吹き出しが生えてこない。この子には外面と内面がないのだ。

しかし、もう一方の女の子。確か、お父さんが会社の重役かなんかで、お金持ちで、いつも華やかな服を着ている。その子から、ポッと吹き出しが生えた。

…なんか臭いのよ、あんた。見てて腹立つ。でも、あんたと一緒にいたら、周りは私をビンボーと仲良くしてあげてるいい子って思ってくれるから。仲良くしてあげてんのよ。

ああ、女の子って怖いなぁ。いっぱい考えているんだなぁって思う。ふと、父さんが遠くを見ながら、「女って…こぇーなぁ…。」とつぶやきながら、煙草の煙を吐いていたのを思い出した。ちっちゃい時から、「女」は「女」なんだなぁと思う。

ふと、薄汚い方の女の子がこちらを振り向いた。日に焼けた肌、やせっぽちの体、まるで男の子のようだ。でも、目が大きくて、常にニコニコしている。

その、大きな目で僕をとらえた彼女は、雑にくくられた髪の毛をひょこひょこ揺らしながら近づいてきた。

「しょーた君、今いい?」と僕の名前を呼ぶと、にっこり笑ってこう言った。

「放課後暇?遊びに行く用事とかある?」

あるはずない。この能力のせいで、僕は友達を作れずにいた。もし、友達になった子が、心の中で僕のことを嫌いだとか言ったら分かってしまうから…。

空いてるよ、と答えると、彼女は、それじゃあ教室にいてね、と笑って、喋っていた女の子のところに戻って行った。

「何してたの?ゆうひ。」と女の子は少し苛立ったように尋ねる。同時に生えた吹き出しには、「私を放っておいて、何様のつもり?」と書かれていた。



ごめん、ちょっと用事。と笑ったその女の子の名前は、田中夕陽と書いてたなかゆうひ。

密かに、僕が想いを寄せている女の子。



その日の放課後、みんなが帰った後、夕陽は僕の机に来た。

そこにしゃがみこんで、僕が読んでいる本をのぞき込む。

「本好きなの?ずいぶん分厚いね。」

「そうでもない。でも本読んでると落ち着く。」本の中の人達は、なんだかんだでいい人がたくさんいる。吹き出しであふれたこの街では出来ない冒険や友達を、僕は本の中で楽しんでいた。

「夕陽は?本好き?」

「あんまり好きじゃない。勉強嫌いだし、漫画の方が面白い。…あっ、それでね。用事っていうのが」



夕陽に夕日を見に行こうと誘われた。

ダジャレでは無い。面白くもない。でも、とっても嬉しかった!なんだか、2人だけの秘密みたいで。

学校の校門を並んで出る。ランドセルがガシャガシャと立てる音がそろって、なんだかおかしくて、顔を見合わせて笑った。

夕陽はどんどん歩道を走っていく。僕もついて行く。勝手に笑いがこみ上げてくる。2人とも笑い声を上げながら、人の隙間を縫うように、走っていた。

そうやって走っているうちに、ふと彼女が足を止めた。顔を上げると、そこは何の変哲もない道端だった。でも、僕には分かった。そこが夕陽にとって大切な場所なのだと。

夕陽が無言でガードレールにまたがって、そのままそこに腰掛けた。僕もそれにならう。そして、2人揃って前を見た。

力強く、しかし柔らかな温もりが顔を照らす。きっと、僕らは今、オレンジ色に染まっている。

真っ正面には大きな夕日がある。とても綺麗だ。

そういう風にしか説明できない自分の表現力の乏しさはなんとも言えないが、でも、どんな詩人だって、今の僕の気持ちは言葉には出来ないだろう。この、体が熱くなって、叫び出したくなるようなこの気持ちは…!


その後のことはあまり覚えていない。ただ、それから夕陽の姿が消えた事。次の日も、その次の日も、それからずっと学校に来なかったこと、そして、あの時夕陽が泣いていたこと、それは確かに覚えている。

田中夕陽…。僕の大好きな女の子。

夕陽はもう、どこにもいないのかなぁ…。

僕は、あれから5年経って、中学3年生になった今でも、夕日を見て涙を流す。














…夕陽っ……⁉︎



楽しんでいただけましたか?

しょうたと夕陽がこれから出会う出来事を、少しでも丁寧にお伝えして行きたいです。

ありがとうございました。

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