絶望と友情
普通の生活が崩壊してから2ヶ月、
高校生最大の敵を目の前に、俺は
絶望していた。
その敵とは、定期テスト。
俺の学力は最低ランク、高校入試は一週間全力で頭に叩き込むとゆう荒技で乗り切ったがもう忘れてしまった。
だが、考え方を変えればこれは普通の高校生活と言えるんじゃないか?
テストで悩む、正に普通じゃないか!つまりテストとは俺が普通であるために用意された普通の普通による普通になるための普通行事で…
頭こんがらがってきた。
「蒼介、そんなにヤバいなら泊まり込みで勉強合宿でもやるか?」
周りから見て一目で分かるほど負のオーラが出ていたらしい、裕也が遠まわしに助けてやると言ってくれた。
「本当か!?助かる!」
俺は感謝の気持ちを素直に伝えた。
「ああ、蒼介んちでな」
「え?」
「俺の家は両親うるさいから泊まりは無理なんだ」
そうゆうことか、仕方がないか、
ミウと一緒に住んでるのは知られてるし、まあいいか。
「なになに!?勉強合宿するの?あたしもやるよー!」
奈々まで!?
「い、いや男の家に泊まりって大丈夫なのか?両親とか」
「ミウちゃんの家に泊まりに行くって言うから大丈夫!」
確かに嘘ではないけども!
「お泊まり?」
ミウは首を傾げている
「ああ、裕也と奈々が少しの間一緒に暮らすようなもんだ」
ミウは嬉しそうな表情で
「楽しそう!」
と喜んだ。
そんなミウの頭を撫でてやるとさらに嬉しそうに笑顔になる、どうやら頭を撫でてもらうのが気に入ったらしい。
「最近の蒼介君達、もはやカップルよね…」
「なっ!?」
つい顔が赤くなる。
「カップル?」
「知らなくていいから!」
「?…うん」
ミウは人を好きになるとかを知らない、と思う。
もし知っていたら初めて会った男子と同棲なんてしないはずだから。
「とにかく、明日から連休でそれが明ければテストだ、今日から蒼介の家で勉強合宿をする!各自帰宅後に蒼介宅集合だ」
「おー!」
「あれ、俺の家の場所知ってたっけ?」
二人があっ!という顔をした
「いやあ、前に蒼介とミウが本当に一緒に暮らしてるか確かめようと二人で尾行をば…」
「おい!」
まさか友人がストーキングしていたとは、なにげに酷いな…
「と、とにかく今日から合宿だ!ほら、早く帰ろうぜ」
「お泊まりー!」
いまの会話の半分も理解出来てないミウはただただお泊まりが楽しみなようだ。
ピンポーン
インターフォンが鳴った、二人が来たみたいだ。
俺は晩飯を作ってる最中だったからミウに頼んだ。
「ミウ、入れてやってくれ」
「はーい!」
たたた、と小走りのミウ、相当楽しみだったんだな。
「おじゃましまーす!」
「蒼介君、奥さんに客人を迎えさせるとは、なかなかやりますな」
相変わらず奈々はからかってくる。
「あのな、見りゃわかんだろ、飯作ってて手が放せないんだよ」
「へー!蒼介料理出来るのか!」
「三年も一人暮らししてたからな」
「いまは二人暮らしだけどね~」
ぐぬ、否定できない…
「ソースケの料理、とっても美味しいよ!」
「お、ミウのおすみつきか!期待できそうだな」
「………もはや夫婦ね」
最後の奈々の呟きは聞こえなかったふりをした
「ほら、出来たぞ」
おおー、と二人が感心し、わーい!とミウが喜んだ。
「「「いただきまーす!」」」
…現時点ではマジでただのお泊まりだな。
「うまっ!なにこれ!?」
「ああ、これは美味いな!蒼介、お前天才か?」
「言ったでしょー!ソースケが作るのなんでも美味しいの!」
「お褒めいただき光栄だよ」
多目に作ったのにすぐに料理はなくなった。ていうかよく食うな!
「さて、飯も食い終わったし」
「遊ぼーか!」
「遊ばねーよ!奈々、俺は真面目にヤバいんだ…」
「…ゴメン」
何はともあれ勉強開始、裕也は俺に、奈々はミウに教えていた。
「はい、1+1は?」
「うーんと、2!」
「正解!じゃあ2+3は?」
「4!」
「おしい!5でしたー」
なんとも微笑ましい…
ミウは、当たり前だけど俺以上に勉強が出来ない。
前に授業中いつもノートをとっていたから「頑張ってんな」と思って見てみたらお絵かきしてた。
言葉はオヤジに習ったらしい、てかスゲーなオヤジ!?3日でどうやって教えたんだ?
「蒼介、集中して」
「お、おう」
っと、俺も他人事じゃあない、真面目にやらないと赤点まっしぐらだ。
裕也の教え方がいいのか順調に勉強が進んでいるけど、こいつ頭良かったんだ…
勉強開始から三時間、さすがに俺が限界だったので今日はここまでにした。
「疲れた…」
「俺も疲れたよ、まさか蒼介に勉強教えるのがこんなに大変とは思わなかった」
スマン…
けどおかげでテスト範囲は理解出来るようになってきた、この調子ならなんとかなりそうだ!
「ふにゃぁ~」
「……………………」
奈々が燃え尽きている…
少し負担が大き過ぎたみたいだ。
「ミウ、勉強進んだか?」
「うん!九九まで覚えたよ!」
三時間前まで一桁の足し算も出来なかったのに凄い進歩だ。
奈々、頑張ったな。
「お疲れ様、奈々」
「ナナ~お風呂入ろ~」
ミウも疲れたんだな。
「そうね、入らせてもらうわ…」
女子組が風呂に入っている間俺達は…
「さて、覗きにいくぞ!蒼介!」
「いかねーよ!」
「冗談だよ、トランプでもやるか」
まあ無難だろ
「ああ」
三回目の神経衰弱が終わったころ、女子組が戻ってきた。
「はー、気持ちよかった~」
「そりゃよかった」
「ソースケ!入ってきなよ!」
「そうだな、裕也、行くか」
「へーい」
俺の家の風呂はムダにでかい、一度に二、三入れる大きさだ。
体を洗っていると、裕也が急に真剣な顔で話しかけてきた。
「なあ、蒼介」
「なんだ?」
裕也は湯船を見つめて
「このお湯って、ミウや奈々が入ったんだよな…」
「まあ、そうだけど?」
俺がそう答えると、
「イヤッホーゥ!!!!」
と叫んで飛び込んだ。
「…なにやってんだお前」
「女の子が入った風呂に入るなんてそうそうないからな!」
「あ、そ」
たかが風呂だろう、プールと大差ないと思うけどな…
風呂に入ってる間は、裕也のテンションが凄かった。
風呂からあがると、リビングでミウたちがテレビを見ていた。
「あ!ソースケ、なにか飲む?」
「そうだな、コーラを頼む」
「はーい!」
いつもこうというワケではない。
「ふあぁ~、さすがに眠いな~」
確かにもう遅い時間だ、今日はもう寝るか。
「二人は、一階の空き部屋をそれぞれ使ってくれ。俺とミウは二階で寝るから」
「はーい」
「…オイ蒼介、お前まさかミウと寝るんじゃないだろうな」
その瞬間、俺は自分でもわかるほどあからさまに動揺した。
背中から冷や汗がダラダラと流れる。
「い、いやそんなわけないだろ」
「なんか怪しい…」
やばい、奈々はこの手のことに鋭いし、これ以上はごまかせない!
「さ、さあもう寝よう!」
未だ疑っている二人をそれぞれの部屋に案内して、自分の部屋に戻りカギをかける、念の為だ。
「…ミウ、もう寝たのか」
「すー、すー」
今日はよほど疲れたんだろうな、俺も勉強に精神が削られて正直クタクタだ。
「さすがに疲れたな、早く寝よう…」
思ったより疲労が溜まっていたのか、横になるとすぐに眠りに落ちた。