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俺、普通がいいです  作者: 暇人
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普通、崩壊

episode1 普通、崩壊


みんなは普通ってどう思う?

友達と遊んだり、母親と喧嘩したり、他にもたくさんあるけどとにかくそれが羨ましかった。


だから三年前に世界中の秘境やらなんやらあちこち旅してる両親と別れて一人で日本に帰ってきた…


でも十四年間世界中を旅していた俺、黒崎蒼介は普通とはかけ離れていた。

当然勉強はしていなかったから成績は最悪、これだけなら良かったんだ勉強はがんばればなんとかなる。


でも身体能力はどうしようもなかった、物心ついたころから断崖絶壁やらジャングルなんかを走破していたんだから、当然のごとく俺の身体能力は普通から見たら[異常]だった。



中学時代はまったく普通に過ごせなかった…

「だが今度こそ、高校生活は[普通]に過ごしてみせる!」

入学式の立て看板の前で決意を新たにする俺、こんなことをしている時点で普通じゃない気がするがそれはあえて無視、気持ちの問題だ。


今日から俺はこの涼風高校の生徒として三年間過ごしていく。

入学式が終わりクラスごとに別れてHRになった、ちなみ俺はA組だ。

「隣だな、俺は榛原裕也、よろしくな!」

おお…これだ、これだよ!俺の求めていた普通の高校生活だよ!

「俺は黒崎蒼介、よろしく」

さっそく友達もできた、きっとこの先、最高の高校生活が待ってるはずだ。

クラスでの自己紹介も終わり、今日はもう下校することになった。

俺の家は高校近くの駅から二駅のところにある。

俺が日本に戻るとき両親が買った一軒家だ、なんで一人暮らしする息子に一軒家買ってんのかは不明だけど慣れれば問題なかった。

「それにしても今日は最高の1日だったなー、もう家に着くし帰ったら晩飯作らねーと…」

本当に最高の1日だった、俺の家の前で体育座りをしている女の子を見つけるまでは。

「ソースケってあなた?」

ソースケって言ったか?ソースケって蒼介のことだよな?いやまてなんで俺の家の前に女の子がいるんだ?なんかのドッキリか、いやそれはない。

「あ、ああそうだけど…」

「これ、渡せって」

そう行って女の子は俺に手紙を渡した、開けてみるとオヤジの字で

「拝啓、親愛なる蒼介へ

元気にしているか?お前が周りに溶け込めていないんじゃないかと父ちゃん心配だ、あと一年くらいで父ちゃん達も一度日本に帰るからな。

ああ、その女の子は父ちゃんが拾った、3日前にな、さすがに連れていけないしお前が一緒に住んでやってくれ。

安心しろ色々手を回して来週からその子もお前と同じクラスに転校することになってるから、あとはよろしくな。

パーフェクトな父親より。★」


「あんのクソオヤジ・・・」

こんなの普通のふの字もないじゃねーか。

しかも高校にまで…俺の普通高校生活が…

「あの…」

声を掛けられてはっと気付く、すっかりこの女の子を放置してしまっていた。

「あ~、えと、君名前は?」

「黒崎ミウ!」

「黒崎!?」

「あの人が付けてくれたの!」

急に元気になったな…って付けてくれた?記憶喪失か?

「それってオヤジに会うまでの記憶はなかったってことか?」

「ううん、ずっとちっちゃいころから森で暮らしてたの、だから名前なかったんだ!」

マジかよ…

歳は俺とたぶん変わらない、赤いロングの髪がかなり特徴的だが、それ以上に可愛いかった。そんな子がずっと森に住んでて名前もなかった?


屈託ない笑顔から察するにたぶん嘘じゃないな~、どうしよ。

ほっとくワケにもいかないし…

「わかった、ミウ、これからよろしくな」

「うん!よろしくね、ソースケ!」

こうして俺はまた普通から遠ざかった。


朝、小鳥たちの鳴き声と朝日で気持ちよく目が覚め…

ボォォン!

「ふぎゃあ!」

「なんだ!?」

爆発音に叩き起こされた。

急いで階段を下り、音のしたリビングに入ると…

パジャマ姿でひっくり返ったミウと、黒煙をあげるレンジが。

「あああああ!」

中を見ると恐らくコーラらしき1・5リットルのペットボトル。

「まさかこれあっためたのか!?」

俺が半分泣きながら聞くと、ミウはオドオドしながら

「あのシュワシュワしたのあっためたらもっと美味しいかなって思って」

と、新たな味を研究しようとしてコーラを爆散させたことを説明した。

昨日あれだけ色々試したのにまだたりませんでしたか…

そう、ミウのことで一番困ったこと…

世間のことを知らなすぎる。

そりゃずっと森で暮らしてたなら当然かもしれないがマジで何もしらない、どうやって俺んち来たんだ?


テレビをみて中に人が!じゃなく

「ここって小人さんの家?入っていい!?」

だったり、

「この箱の中冷たいねー」

だったり、

「このポチポチするのおもしろーい!」

と言いながら炊飯器や電子レンジなんかのボタンを押しまくったり。

昨日一晩かけて大体の世間一般は教えたんだが、コーラをレンジで温めてはいけないとは教えていなかった。

「ソースケ、ごめんなさい」

ミウはしゅんっとして謝ってきた、くそう、そんな顔されたら怒れないじゃないか。

「いいよ、それよりケガないか?」

「うん!大丈夫だよ」

ならよかった、ミウを一人で外には出せないな…何するかわからん。

とにかく俺が学校に行ってる間は留守番させて、ん?学校?

ふと時計を見ると本来出発する時間を十分も過ぎていた。

「やっべ!」

ドタバタと準備をして玄関で靴を履く、

「ソースケお出かけ?」

「ああ、学校だ!ミウも来週からいくからな、それまではお留守番!絶対外に出るなよ!!!」

「はーい!行ってらっしゃ~い」

「行ってきます!」


なんとか間に合った、登校初日に遅刻なんてことにならずにすんだな。

「ギリギリセーフだな、蒼介」

「おはよう、裕也。なんとかな」

ああ、やっぱり普通っていい。こんなやりとり初めてだ…

「蒼介君危なかったね~、あ、あたし中津奈々!キミの後ろの席だよ」

「そっか、よろしく!えっと…中津さん?」

「奈々でいいよ、あんま名字で呼ばれるの好きじゃないし」

「わかったよ、奈々」

また友達が増えた、やっぱりいい!

普通高校生活は最高だ!

放課後、奈々が俺と裕也と帰ろうと誘ってくれた。

初めての友達との下校は楽しかった、それぞれの家の話になったときは実家が遠いから一人暮らしだとだけ説明した。

ホントは実家なんてないけど…

「じゃあ今度蒼介君んち遊びに行っていい?」

この質問はマズい!さっき一軒家だと説明してしまったから狭いという理由は無理だ、でも家にはミウが…

「あ、ああ今度な」

やってしまったー!

友達が家に遊びに来る、まさに普通の代名詞とも言えるイベントに勝てず了承しちまった…

仕方ない、あとでなんか方法を考えよう。


なんと奈々と裕也は俺と同じ駅だった、さすがに駅からはバラバラになったけどここまで一緒に帰れる友達がいることが嬉しかった。

「ただいま」

「ソ~スケ~!」

ミウが泣きながら抱きついてきた、さすがに同年代の男子に抱きつくのはどうかと思う。俺だって健全な男子だ。

「っと、どうした!?」

「泡!泡が…」

「泡?」

落ちつけ、ミウと泡、今朝はミウとレンジ…

「まさかっ」

俺はミウに抱きつかれたまま風呂場を目指した、まさか、まさか…

「やっぱりか・・・」

電子レンジの次は洗濯機か、まあ今回は壊れていないようだ。

しかし、洗濯機の周りは泡だらけになっていた。おまけに洗剤も半分以上減っている。

「よくもまあここまでベタにやらかしたな」

2日でミウのやらかしに慣れてくるとは俺もなかなかだ…

「ごめんなさいぃ~」

やっぱり怒る気にはなれないなぁ。

「ほら、掃除するぞミウ」

怒ってないとわかったからか、少し安心した顔のミウは、

「うん!」

と言って掃除機を持ってきた。

「戻してこい」


そんなこんなで高校生活にもミウのやらかしにも慣れてきた、今日はミウの初登校だ。

正直不安はたくさんある、本当にたくさんあるが、なんとかなると信じたい。

一緒に住んでいるのは校長も知ってて、退学とかにはならないらしいけど、クラスのみんなにバレたら終わる。

ミウは後から先生が迎えに来るらしいから俺は先に登校だ。

「学校の人が来たらその人にしたがいなさい」

と言っておいたから大丈夫だろ。

「おはよう」

「おはよう蒼介」

「おはよー蒼介君!」

すっかりこの三人で集まるようになったな、他のクラスメイトとも友達にはなれたけど。

会ってまだ一週間だけどこの二人とはかなり意気投合していると思う。

「蒼介君、今日転校生来るって聞いた?」

「あ、ああ」

「女子らしいぞ、楽しみだな!」

もうみんな知ってるのか、大丈夫かな…やべえ心配になってきた。

「どした?蒼介、汗すごいぞ?」

「いや、なんでもない」

チャイムが鳴り、ホームルームが始まった。

「えー、今日は転校生を紹介する」

おおー、と教室が盛り上がる。

「入っていいですよ」

「はーい!」

おおーーー!とミウの登場でさらに盛り上がる。そりゃそうだ、俺が言うのもなんだがミウはスゲー可愛いんだから。

「はじめまして!黒崎ミウです!」

「「黒崎?まさかな…」」

この空気は…

「ミウさん、黒崎蒼介君となにか関係とかありますか~?」

奈々!?まさかこいつがこんな質問をするとは、マズい!ミウは誤魔化すのが下手だから…

「かかか、か、関係なんて…えっと、ソースケ、なんて言えばいいんだっけ!?」

アウトーー!

「「蒼介って言ったよな?名前で呼び合う仲なのか?」」

「え?…マジで関係あるの?」

奈々、こっちを見ながら聞くな、というか俺に聞かないでくれ。

「どんな関係なんですか?従姉妹とか?」

裕也まで…でもこの質問はいいぞ、ミウがうなずけば従姉妹とゆうことでまだ誤魔化せる!

「えっと、許嫁?」

瞬間、教室の空気が凍りつき、

「「ええぇぇーー!!!」」

爆発した。ちなみになんでこんなことを言ったのか後で聞いたらオヤジの指示だった、ソースケとの関係を聞かれたら[許嫁]と答えろと言われていたらしい。

オヤジ、帰ってきたらぶん殴るわ。

「ちょっちょっと待…」

「まさか一緒に住んでるの!?」

「う、うん」

「うわああああ!」

終わった、俺の普通高校生活がたった今終わった…

「蒼介、お前許嫁なんていたのか、羨ま…どうした?」

「いや、俺の生活がたった今崩壊したからさ……俺、終了のお知らせ」

裕也の言う通り許嫁なんていたら羨ましいんだろうでもそれは、俺の望んだ普通の生活からはかけ離れたものだった。


俺、終了のお知らせから3日。

俺とミウの関係は学校中に広がった、話を聞いた他のクラスやら先輩やらがミウに集まり、怯えたミウが人溜まりを抜け出て俺に抱きつき、さらに冷やかされたり。

裕也と奈々には事情を説明したけど

「それって親公認ってことじゃん」と言われ、結局冷やかされた。

「ハァ、やっぱり注目されるのは嫌だなぁ」

下校中、ため息と一緒に愚痴が出てきた。

ミウも裕也と奈々には怯えずに仲良くなれたのはよかったな、こうして4人で帰れるのがせめてもの救いだ。

「まあまあ、蒼介君元気出しなって、コンビニでなんかおごってあげるから」

奈々が気遣ってくれるのもありがたい。

「コンビニって?」

「前に教えただろ、いろんな所にあっていろんなものを買える場所だよ」

ミウは納得した顔になる。

「ほぇー、ホントになにも知らないんだね」

「ああ、困ったことにな」

コンビニに入るときミウが自動ドアに驚いてそれに二人が驚くという一幕があったけど無視した。

「ふえぇ~、ホントにたくさんのものがあるね!あ、このパン美味しそう!」

「ん?そうか、じゃあ買って…」

ミウの方を見るとメロンパンの袋を開けてかじっていた。

「ああーーー!!!!なにやってんだ!!」

「ちょっとお客さん何してるの!?」

やば、店員きた!

「すいません!お金払いますから!」


危なかった、店員がいい人で良かった。

「ミウ、お店にあるものは商品って言って、お金を払わないと自分のものにならないんだ、わかったな…」

「うん…」

いつになくしょんぼりしてるな、さすがに気にしてるか。

「ま、次から気をつければいいさ、怒ってないし大丈夫だから安心しろ」

そう言って頭を撫でてやると、ミウはぱぁっと表情を明るくして

「うん!」

と返事した。

「おーおー、お熱いねぇ」

「ホント、蒼介君やるねー」

裕也と奈々が生暖かい目で見ていた。

「なっ、違っ」

「いやいや、照れんな照れんな」

色々否定したいが、否定しきれない

部分もあるから黙るしかなかった。

この後二人とは別れ、家に帰った。

「ただいま」

「ただいま~!」

部屋に荷物を置いて着替えると、ミウが飛び込んできた。

「うわっ、どうしたミウ!?」

「ソースケ、お腹減った~」

さっきメロンパン喰ったろ…

「わかった、今作ってやる」

「やったー!」

ミウの顔がぱっと明るくなる。

思わずドキッとしてしまうのは男ならしかたないだろう。

晩飯を食べ終わって少し勉強してから寝ようとすると…

「ソースケ!」

ミウが部屋に入ってきた。

「ハイハイ」

実は俺とミウは一緒に寝ている…

最初は俺も精神的にも道徳的にもマズいということで別々に寝ようとしたのだが、一人で寝るとミウは泣き出してしまって睡眠どころか近所迷惑になってしまった…

なんでも森で暮らしてたときは動物達と一緒に寝ていて、一人で寝たことがなかったらしい。

練習すれば、と思ったが無理だった。

毎晩ミウと一緒寝ているがこれだけはなかなか慣れない。

「おやすみ」

「おやすみなさい」






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