老婆
とっさに攻撃をかわした。
家のドアに一人の老婆が立っていた。
クラウスたちに指をさし、叫んだ。
「お前たちが考えることには賛同できん。よって、私の敵じゃ。覚悟するがよい!」
いきなりの好戦的な宣言にクラウスとティアナは戸惑った。
「なんか、私たち、誰かと間違えられていない?」
「たぶん……誤解をとかなくっちゃ」
近づこうとするティアナに、老婆は再度、炎で対応した。
「あつっ!だめ、全然話を聞いてくれない!」
そこに煙とともにハーラルトが現れた。
『俺様の出番だな!』
その間にも、老婆から炎の連撃がきた。
『風の精霊よ、我らを守る壁となれ』
風の精霊によって、風の防壁ができた。
炎は防壁に阻まれ、消滅した。
ドアの前にいる老婆が、ハーラルトをじっと見つめていた。
「ハ、ハーラルト!?」
老婆はそう言い、クラウスたちへ駆け寄ってきた。
「その姿はハーラルト!なぜいる、なぜ若いころの姿のままでここにいるのじゃ」
老婆はハーラルトの前まで近づき、詰め寄った。
『ヨハンナ、相変わらず熱い女だな。この姿か?霊になれば、好きな時の姿になれるんだぞ。お前も死んだらそうすれば良い』
「いや、そこは霊になって憑りついたりしないで、安らかに眠っていて欲しいな……」
ハーラルトの言葉にクラウスがつかさず、訂正を入れた。
「ハーラルト、この者たちは誰じゃ?」
『孫とそのお友達だ』
「孫とな!?まさか、クラウスか?おぉ、大きくなって……」
やっと話ができる状態になった。
三人と一霊は老婆――ヨハンナの家に入った。
小さな木造の家だ。
中は綺麗に片付いており、中央に四人掛けのテーブルが置かれていた。
テーブルに座ったクラウスとティアナは、部屋をきょろきょろと見渡した。
壁には何かが書かれたレポートのような紙がたくさん貼られていた。
本棚には見たことがない、古い本が並んでいた。
ヨハンナがお茶を持ってきた。
「それで、わざわざ隠居している私のところへ訪ねてくるとは、何のようかね?」
クラウスとティアナはそれぞれ説明した。
死者の呪いを解きたい、魔獣が寄ってくる呪いを解きたいと。
「死者の呪いはハーラルト、おぬしがもう一度眠りにつけばいいんじゃないか?」
『無理。お目目がぱっちりで、眠くないもん』
ヨハンナはため息をついた。
「どうせ、後先考えずに孫に憑りついたんじゃろ。呪いを解く方法ね……心当たりはある」
クラウスとヨハンナは期待に胸が高鳴った。
「ヨハンナさん、それは何ですか!」
ティアナが机に身を乗り出して、話の先を促した。
その時、室内にもかかわらず、風が吹いた。
「これは風の精霊……!?」
そして、ずしっと振動した。
「あ奴らがやってきたか」
ヨハンナは椅子は椅子から立ち上がり、ドアへ向かった。