もう一つの呪い
「あれ?もう、用事は済んだの?」
門の前にはティアナとオスヴァルトがいた。
「そっちこそ、せっかく父親に会えたんだから、ゆっくりしていないのか?」
クラウスは二人を見比べた。
ティアナの用事は父親に会うだけだったのだろうか。
「その、クラウスには話していないんだけど、私も呪われているの」
ティアナの告白に、クラウスは驚いた。
「死者の呪いほど強いものじゃないんだけどね。クラウス、疑問に思わなかった?私と旅をしている間、異常に魔獣に襲撃されたと」
一人で旅をしている間、魔獣に襲われている人を見かけると進んで首を突っ込んでいったクラウドだったため、多いと思わなかった。
いくら街から離れた街道とはいえ、王都に近づけば魔獣は少なくなるはずだ。
それが減らなかったのは、多いというべきことだろう。
「私の呪いは、魔獣が近づいてくること。だから一か所には長く居られないの」
ティアナが悲しそうな顔で告げる。
「その呪いを解く方法は?」
「まだわからないの。だから、どんな魔獣にも打ち勝つように強くなるのが目標なんだ」
『俺たちと同じじゃないか。仲間だぞ、クラウス!』
空気を読まないハーラルトが煙とともに出てきた。
「うわっ、誰だ!」
ハーラルトを知らないオスヴァルトが驚いた。
「オレの祖父のハーラルトです。現在、オレに憑りついています」
『そっけない説明だな』
クラウスの簡単な説明に、ハーラルトは不満を漏らした。
だが、オスヴァルトは驚愕した。
「あの勇者ハーラルトか!破滅の勇者、ハーラルト!!」
聞きなれない二つ名が出てきた。
「破滅かは知りませんが……」
「ハーラルトの伝説も知らないか……孫なら知らないほうがいいだろう」
クラウスは現実逃避した。
日頃のハーラルトの行動を考えると、生前は絶対何かやらかしている。
勇者という称号以上に、何かしている。
おそらく、伝説はその何かだろう。
『おいおい、せっかく呪いを解くヒントを教えようとして出てきたんだから、もっと崇めろ』
「優しいおじい様、偉大な功績を知らない孫に、呪いを解くヒントをください」
クラウスは棒読みで頼んだ。
『なんか、馬鹿にされているようだが……ま、今度魔獣が出てきたら、俺にやらせてくれれば教えてやるぞ』
「私といれば、魔獣はわさわさ湧き出てくるから!」
ティアナが追随した。
『孫よ、お前のばあさんなら何か知っていると思うぞ』