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憧れの剣士

 二人で旅をして、三日目。

 中型の犬のような魔獣の群れの中心で二人は戦っていた。


「おりゃぁあああ!」


 掛け声とともに、ティアナは剣を振るった。

 大きく振りかざすため、隙ができる。

 ティアナの戦いを見ながら、クラウスは冷静に剣を構えた。


「ティアナ!そんなに大振りだと、次の攻撃までに隙ができるぞ!!」


 脇から襲い掛かる魔獣をけん制した。


「わかっているけど、わからなーい!」


 目の前の敵に夢中になり、答えがおかしくなっている。

 ため息をついて、クラウスはティアナの目の前の魔獣以外を倒していく。


『俺の力を使わないのか?』


「これくらいの魔獣なら、必要ないだろう!」


 二人と死者が会話しながら、魔獣を倒していった。




 それから二日後――


「見て見て!王都が見えてきたよ!!」


 丘の上から見える王都にはしゃぐティアナを横目に見て、クラウスは考えていた。


「覆面が売っていたら、即買いか……」


『痣は隠せるが、完璧な不審者になるぞ』


 王都の門に辿り着いた。


「それじゃ、ここでお別れだね」


 王都に着いたため、クラウスとティアナが一緒にいる理由がなくなった。


「短い間だったけど、楽しかったよ」


「また、どこかで会えたらいいね!」


 二人は握手をした。

 クラウスは図書館を探すため、踵を返した。


「おっと、ゴメンよ」


 ティアナに男がぶつかった。

 そのまま通り過ぎようとする男の腕を、クラウスは掴んだ。


「コラ!すったものを出せ」


 その言葉を聞いたティアナは懐を探った。


「ない!私の財布がない!」


「ちっ」


 男が暴れた。

 クラウスは掴んだ腕を離さないように力を込めた。


「離せ!」


「ダメだ。ティアナの財布を返せ!」


 クラウスは男の足を払い、地面にたたき伏せた。

 そのまま、腕をひねり、馬乗りとなった。


「私の財布ー!!」


 ティアナが男の衣服を剥がそうと手をかけた。

 騒ぎに気付いた周囲の人たちが、集まってきた。

 上着を剥ぎ取り、ポケットを探る。


「上着にはない……ということは、ズボンか!」


 次にティアナは男のベルトに手をかけた。


「ティアナ!そこは男として、勘弁してやってくれ!」


「いや!私の財布!!」


 ティアナの暴走は止まらない。

 ベルトを緩め、そのままズボンを足から抜こうとした。


「公衆の面前では、そこまでにしてもらおう」


 囲んでいた人をかき分け、王都治安維持隊がやってきた。

 ティアナのターゲットが切り替わった。


「私の財布!ぶつかった!この人!!」


 何を言っているのか、最早わからない。


「わかった、わかったから、ズボンから手を離してくれないか」


 ティアナは渋々ズボンから手を離した。

 治安維持部隊は手早く男の腕を後ろ手に縛った。

 男のズボンを調べると、いくつもの財布が出てきた。


「私の財布!」


 ティアナが一つの財布に飛びついた。

 そんなティアナを笑う治安維持部隊の男がいた。


「久しぶりに会うのに、ずいぶんな格好だな、ティアナ」


「お父さん!」


 そこにはガタイの良い男が立っていた。


「あの人は……」


 クラウスは驚いた。

 ガタイの良い男は、小さいころに見た、憧れの剣士だった。


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