死者の呪い
「あの魔獣、私にはでかすぎて倒せなかったんだ。助けてくれてありがとう!」
女性が男の手を握り、握手をしながら礼を言った。
「一体だけだったから、簡単に倒せたけど、どうして追われていたんだ?」
「私、父に憧れて剣の修行のため、旅をしているんだけど、うっかりあいつのテリトリーに入っちゃったの。それだけ。しょうもない理由でしょ」
照れ隠しか、笑いながら答えた。
「オレも強くなる旅の途中だ。仲間だな」
男はにかっと笑いかけた。
「あ、私の名前はティアナ。あなたは?」
「オレの名前はクラウス」
「クラウスは、なんで旅にでたの?」
初めて会った人間に対して、かなり踏み込んだことを聞いてきた。
先ほどまで追われていた恐怖と、助かった安堵感でティアナは興奮していた。
「最強になるため!ま、小さいころ村で見た剣士に憧れたのが最初のきっかけだけどな」
「なんだ、憧れからって、同じじゃないの」
二人は笑った。
こんな場所で出会う人間の目的はかなり限られている。
だが、クラウスは理由の一つを述べただけだった。
本当はもう一つ目的があった。
それは死者の呪いを解く方法を探すことだった。
「で、これからどうするの?」
「オレは王都に向かう途中だ」
クラウスはもう一つの目的のため、王都へ向かう途中だった。
王都にある国立図書館。
そこに死者の呪いを解く方法があるかもしれない。
「私と同じじゃないの。王都まで一緒に移動しない?」
ティアナは予想外の提案をしてきた。
クラウスは迷った。
ティアナは死者の呪いのことを知らない。
クラウスはティアナに出会い、久しぶりに笑った。
できれば、もうしばらく一緒に行動したい。
そう思っていた。
「……ティアナ、オレには死者の呪いがかけられている。それでもいいのか」
正直に話した。
「どんな死者なの……?」
そうティアナが聞いた瞬間、クラウスの背後でボンッと煙が出た。
『俺に興味を持つなんて、いい子じゃないか』
真っ赤な髪をした若い男がクラウスの背後に浮いていた。
「この死者の名前はハーラルト。オレのじいちゃんだ」