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青空と白球と君

この熱はだれのせい?

作者: 桐 暁

title by 確かに恋だった

「おい!」

「なに、海藤?」

「お前何してんだよ!?」

「何って…洗濯」


私の前には終わったばかりの洗濯機とその中の大量の洗濯物。

今は合宿中だ。

部員が練習している間に前日の練習着を洗うのはマネージャーの仕事。

今、私はそれをしていて、練習中の海藤がここにいる方がおかしい。


「練習は?」

「休憩中だっ!っつーか、だからなんでお前が洗濯してんだって!」

「マネージャーの仕事だから」

「お前昨日も一昨日もやってただろ!?他の奴と代われよ!」

「……何で?」


仕方ないじゃないか。

彼女達はみんなアンタを傍で見てたいんだもの。

海藤と幼なじみの私は、いつでも傍にいれるだろうと、練習中や合宿中は離されるのが常だ。

別にそんな四六時中一緒にいるわけではないけど、彼女達には通じない。


「お前は俺を見てる義務があるっ!」

「何言ってんの?」


本当に傲慢な男だ。

全て思い通りになると思っているところがムカつく。


「約束しただろ。ずっと俺を見てるって。なぁ……遠耶」

「!?」


気付いたら、何故か海藤の腕の中で。

耳元で囁かれた声と、包まれる海藤の匂いに体温が急上昇する。


「なんの……」

「忘れたのか?俺は覚えてるからな。忘れたのなら、何度でも思い出させてやるよ」


意地悪な響きを持った言葉に、ヤバいと思った時には遅かった。

少しだけ離された体。

覗くのは意地悪く上がった口角。

近付いて、離れる整った顔。


「っ!?」

「思い出したか?前も約束した時してやっただろ?キス」


かぁっと真っ赤になる顔。思い、出した。

いや、忘れるわけがない。

忘れたフリをしていたのだ。

柔らかい湿った感触が唇に残って、言葉が焼き付く。


「まだ思いださねぇのか?ならもう一回……」

「思い出したっ!もういらない!!」


最初の言葉に満足げな、後の言葉に不満な顔。

一瞬で変わった海藤の顔にまた冷や汗が流れる。

何が悪かった?


「お前……俺とキスすんのそんなに嫌か?」

「はぁっ!?」


何でそういう話になるんだ。

約束を覚えているかどうかじゃないの!?

大体好きでもないくせに、そういうことをするのが気に食わない。

約束させるために、私を黙らせる為にしたキスはアンタの予想以上に私にダメージを与えるのだから。


「だから嫌なのか?」


なんでそこでちょっと弱った顔をするんだ。

アンタはいつも自信に溢れて、我が道を行くくせに。


「俺はお前とするの好きだし、いっぱいしたいんだけど」

「……」

「嫌だっつっても、知らねぇけどな」


海藤の言葉に呆然とする私に、ヤツはそう言って、もう一度顔が近付く。


「んっ」


重なった唇は今度は中々離れない。

それどころか呼吸を求めて開いた隙間に捩込まれるもの――。



「はぁっ…はっ……」


ようやく解放された私は上がる息が抑えられない。

全身から力が抜け、海藤に支えてもらえないと立てない。

クッ、と意地悪く笑う声が聞こえて、さらにさらに上がる体温。




好きだ。キスじゃなくて、お前が。


“この熱は誰の所為?”


アンタ以外、こんなに私を熱くできない。



練習中、姿の見えない彼女。

それを追い掛けて、抜け出す彼。

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