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君色空  作者:
1/8

第1話



君と出逢って、私は生まれて初めて、空の色が美しい事を知った。



下を向いて歩く私に、君は空を見ることを教えてくれた。



君は知っているだろうか。



あの時、私は空を見上げて、その眩しい青色に、どれほど感動したのかを。



そして、どれほど救われたのかを。



あの日以来、私の目に映る全ての物が色づき、輝き始めた。



君は、私を取り囲む漆黒の闇に、光を差し込み、彩りを与えてくれた。



目を閉じれば、そこに君と見たあの青空が広がる。



そして思い出す、透き通った、果てしなく続く大きな青色が、



溢れんばかりの光で、ちっぽけな私たちを照らしていたことを。



君といれば、強くなれる気がした。勇気を持てるような気がした。



君と出逢うまで、私の世界は暗闇に覆われていた。



色も無く味気のない、果てしなく闇が続くこの世界を、君が変えてくれた。



色という魔法を使って。



君に出逢えなかったら、きっと私は昔のまま、綺麗な青色を知ることもなく、



下を向いたまま歩き続けていたのだろう。



多分、君自身なんだと思う。闇を打ち砕いた、あの光は。



絶え間無く降り注ぐ暖かな光の下で、二人一緒にいた短く幸せだった時間は、



もう取り戻すことはできない。



だけど、君が私の世界に与えてくれた光と彩りは、



時間を超えて、いつまでも永遠に輝き続けていく。



例え二度と君に、逢えなくても。



そして、決して忘れない、君と見た、あの青空を。



だから、心から言いたい。直接伝えられない、臆病な私を許して。



ありがとう。そして、さようなら・・・。



君が隣にいない空は、一体どんな色をしているのだろう・・・。









「ブス」



「マジでキモイ。本当にウザイよね、由理の奴」



「なんでこんなのが私の近くにいるの?消えて欲しいんですけど」



学校の門を潜ると、こんな言葉がいつも私の周りを延々と渦巻いていた。



私へと向けられるクラスメートの視線は、いつも鋭い刺があり、



私の心に深く深く突き刺さる。一体私は何をしたのだろう。



恨まれるような事をしてしまったのだろうか。



気がつけば私はクラスメイトに、世間で言うところのイジメというものを受けていた。



ブス、ムカツク、シネ、たくさんの言葉が私に投げつけられた。



たくさんの辛い仕打ちを受けた。教室には私の居場所がない。



邪魔者は排除すべき、そんな空気が漂っている。



自分に与えられたはずの机と椅子までも、私に使われることを嫌がっているような気がした。



窓の方を見ると、空が見えた。どんなに晴れた日でも、どんな雨の日でも、



空の色はいつも私を冷たく見下ろしていた。



私はこんな生活に絶えられるほど、強くはない。



中学まではそんなことなかったのに、なぜなのだろう。



答えはわからなかった。



それでも私は学校に行った。



母を心配させたくなかったからだ。



父を私が幼いころに亡くし、女手一つで育ててくれた母に、無駄な心配をかけたくなかった。



母を心配させるぐらいなら、学校に行って辛い思いをする方が良い。



そう思った。それでもやはり、苦しく辛いのは変わりなかった。




イジメを受けるようになって、一つ変わったことがある。



それは鏡を見ることが嫌いになったこと。



鏡に映る自分の姿を見ることが、苦痛でしょうがなかった。



醜い自分の姿を、わざわざ鏡に映して何になるというのだろう。



私は最低のブス。救いようもないほど醜い。



いつしかそんな風に考えるようになった。



そして、そんな風に思う自分が大嫌いで。



鏡に映る姿はもちろん、窓に映る自分の姿も、水溜りに映る自分を見るたびに、



その姿をぐちゃぐちゃに消してしまいたい。



そんな衝動が心を貫く。



それと一緒に、私自身も消えてしまえば良いのに・・・。



日に日にその思いは強くなり、いつしか私の心の大部分を占めていた。






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