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スミレ

作者: 鹿間 颯
掲載日:2026/08/02

水彩画って苦手なの。水を多くしすぎて紙が破けちゃうから。

どうして君がそんなことを言い出したのかは分からなかったけど、多分、君が出ていった理由はそれなんだろうな。




冷蔵庫の中には冷凍のお好み焼きがあった。


封を切ってから、「このまま温めてください」の表示に気づいた。こういう時、どうしたらいいか分からないんだ。




仕方がないから、レモンドロップスを舐めた。君が帰ってきたら、何とかしてもらおうと思った。




夜になった。誰も帰ってこない。驚いたことにチェルシーすら帰ってこない。煮干しならちゃんとあるって言うのに。




不安になって外に出たけれど、なんとなくもう君に会えない気はした。


そうなると困った。この街に知り合いなんて誰もいない。


国境を超えれば、そりゃあ馴染みもいるだろうが、身一つで出てきちまったから、パスポートすらない。




気持ちを落ち着けるためにビデオを借りた。3本も借りた。面白いか分からないけれど、君のことを忘れられる気がした。




だけど、ビデオを見ていた方が君のことを考えてしまった。




だってさ、そりゃ君が悪いよ、気味だって悪いよ。




映画のタイトルが何だったと思う?


そうだよ、君が苦手な水彩の、水彩色のあの花さ。


君の名前の花だよ。




多分、あの時ちゃんと、褒めてあげれば良かったんだね。

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