第1章:成長の過程
第1話:限定ガチャ
四月。桜はもう散りかけているのに、教室の空気だけはまだ春休み気分を引きずっていた。
だが、俺――竜大にとって、そんなことはどうでもよかった。
「よし……来た」
自室のデスクトップ画面。
大型モニターの中央に、眩しいほどの文字が浮かび上がる。
【GAMEアゲダマ戦記 正式サービス開始まで 残り10分】
心臓が妙に速い。
受験生のくせに何をやってるんだと、母親に言われた言葉が頭をよぎる。
――高校三年生。春。普通なら志望校だ、模試だ、勉強だと騒ぐ時期だ。
だが、俺にはそんな常識は通用しない。
ゲームは人生だ。
少なくとも、今夜だけは。
「予約番号……確認」
一か月前、俺は公式サイトのマイページを開いた。
【事前予約特典対象】
【予約番号:00001】
思わず口元が緩んだ。
「っしゃああ!」
なんと一番のり。
文字通り、世界最速だ。
このゲームは一か月前から話題をかっさらっていた。
専用のヘッドギアを装着してのVRMMO
現実のSNSと連動し、プレイヤー同士の経済、ギルド、領地、素材流通まで全てがリアルタイムで変化する。
“世界を作るゲーム”
そんな大仰な宣伝文句に、世界中のゲーマーが釣られた。
そして、当然のように俺も釣られた。
いや、釣られたんじゃない。
飛び込んだんだ。
「開始三日以内ログイン者限定、特典ガチャ一回……」
これだ。
本命はこれ。
ネットの事前情報では、SSSは全部で数種類。
・全能力+300固定スキル
・神話級武器
・伝説級ペット
・隠し職解放券
どれを引いても勝ち組。
人生変わるレベルの当たり。
俺はゲーム専用のヘッドギアをかぶり、手をこすった。
「頼むぞ……」
カウントダウンがゼロになる。
【正式サービス開始】
画面が白く光り、ゲームのロゴが現れる。
『GAMEアゲダマ戦記』
派手なSEと共に、特典ガチャ画面が表示された。
【予約番号00001特典】
【限定SSS以上確定ガチャ】
「きたああああ!」
拳を握りしめる。
手汗でマウスが滑る。
「これで勝った。最初からトップ層だ」
ガチャボタンを押した。
画面が暗転。
虹色の光。
金色の粒子。
やたら豪華な演出。
「うお……やば……」
巨大な扉が開く。
神々しい光の中から、何かがゆっくり浮かび上がってきた。
本。
「……は?」
古びた分厚い本だった。
金属の装丁。
表紙には意味不明な文字列。
その上に表示された文字。
【マニュアル】
「…………え?」
一瞬、思考が止まった。
「いや、待て待て待て」
マニュアル?聞いてない。
だが、次の瞬間。
【クラス:???】
「は?」
思わず声が裏返った。
「クラス???ってなんだよ!」
俺は椅子から半分立ち上がった。
普通こういうのって、
剣聖。
魔導王。
神獣使い。
とかだろ。
なんでマニュアルなんだよ。
本かよ。
説明書かよ。
家電か俺は。
「ふざけんな!」
思わず机を叩く。
飲みかけのペットボトルが揺れた。
だが、画面には無情な文字。
【獲得済み】
取り消し不可。
「うそだろ……」
俺はすぐにスマホを手に取ってSNSを開いた。
すでにタイムラインは祭り状態だった。
『神剣きたあああ!』
『SSSスキル、初期ステ300盛れたw』
『ペットのフェンリル当たった、勝ち確』
『このゲーム神すぎる』
次々流れる自慢。
俺は唇を噛んだ。
「俺は?」
誰に言うでもなく呟く。
「俺、クラス???だぞ?」
画面の向こうの誰かに向かって、虚しく突っ込む。
「なんでやねん!」
静かな部屋に、自分の声だけが響いた。
数秒後。
俺はため息をついて椅子に沈み込む。
「……まぁ、落ち着け」
冷静になれ。
ゲームだ。
まだ始まってもいない。
それに、???なんて妙なレア度だ。
もしかしたら隠し要素かもしれない。
画面を見る。
【マニュアル:特設チャット機能解放】
説明欄が現れる。
【ゲーム内の疑問、攻略、仕様に関する質問に即時回答します】
「……へぇ?」
思わず眉が動く。
質問に答えてくれる?
攻略サイトの最上位版みたいなものか?
「でも、どこまでだ?」
たとえば、この敵の弱点は?
最短レベル上げルートは?
隠しイベントの場所は?
そういうのも答えるのか?
いや、さすがにチュートリアルの説明程度だろ。
「まぁ、売るのは後でもいいか」
マニュアルのアイコンをクリックする。
すると画面右下に、小さなチャット欄が開いた。
【特設サポート:接続完了】
シンプルな白い入力欄。
試しに打ってみる。
『お前、何ができる?』
一秒も経たず、返信。
【回答:あなたが“正しく問うたこと”に対し、最適な情報を提示します】
竜大は目を細めた。
「……随分偉そうだな」
さらに打つ。
『このゲームで最強になる方法は?』
少しだけ間があった。
そして、返答。
【回答:あります】
「……は?」
その二文字だけ。
だが、妙に背筋がぞくりとした。
まるで画面の向こうに、本当に何かがいるような感覚。
『教えろよ』
【回答:まず、生き残ってください】
「は?」
意味がわからない。
ゲームだぞ?
死んだらリスポーンするだけだろ。
だが、その直後。
ゲーム本編のオープニングムービーが強制再生された。
世界の中心にそびえる、巨大な癒しの鉱石。
病を癒し、傷を塞ぎ、人々の信仰を集める聖なる大岩。
そこへ、夜空を裂いて落ちる一つの光。
隕石。
轟音。
閃光。
そして、砕け散る神の岩。
無数の欠片が世界中へ飛び散る。
森へ。
海へ。
山へ。
街へ。
欠片を取り込んだ動物たちが、異形へと変わっていく。
咆哮。
暴走。
炎。
崩れる都市。
世界が、壊れていく。
だが同時に、人々は気づく。
魔物の核となった欠片は、力になる。
武器に。
防具に。
人の肉体に。
力。富。戦争。欲望。
そして再構築される新しい秩序。
画面の最後に、大きく文字が浮かんだ。
【ようこそ、再構築される世界へ】
竜大は、無意識に喉を鳴らした。
「……面白ぇじゃん」
さっきまでの落胆が、少しだけ消える。
画面右下のチャット欄が、ふっと光った。
【追記:最初の村を出る前に、西の井戸を調べてください】
「……え?」
チュートリアルも始まってないのに?
だが、その一文を見た瞬間。
竜大のゲーマーとしての本能が、強く疼いた。
ハズレか。
当たりか。
そんなものは、やってみればわかる。
俺はマウスを握り直し、口の端を上げた。
「いいぜ」
エンターキーに指を置く。
「世界最速で、このクソゲー……いや、神ゲー、攻略してやる」
カチッ。
その小さな音と共に、
竜大の人生で最も熱い戦いが、始まった。
第2話 チュートリアル
エンターキーを押した瞬間、画面いっぱいに白い光が広がった。
次の瞬間、俺――竜大は、石畳の広場の真ん中に立っていた。
「……うお」
思わず声が漏れる。
すげぇ。
ただのPCゲームのはずなのに、風の揺れや人のざわめきまで妙に生々しい。
石畳の隙間に生えた雑草、露店から漂う焼き肉みたいな匂い、遠くで鳴る鐘の音。
現実じゃない。
でも、ただの映像とも思えない。
そこは、始まりの街――《リスタ》。
中世風の小さな街だった。
中央広場には噴水。
その周りを囲むように、
・初心者ギルド
・酒場
・役場
・鍛冶屋
・宿屋
・商店
いかにも“始まりの街”って感じの施設が並んでいる。
しかも、もうすでに人だらけだった。
「うわ……」
見渡すだけで、百人近いプレイヤーがいる。
剣を振り回してるやつ。
ジャンプしてるやつ。
意味もなく走ってるやつ。
全員、浮かれてる。
そりゃそうだ。
今日が正式サービス初日。
しかも、このゲームは世界中で話題の超大型タイトル。
祭りみたいなもんだ。
画面右側には、全体チャットが高速で流れていた。
『これどうやって装備すんの?』
『スライムどこ?』
『街の外出れねえw』
『宿屋の娘かわいすぎ』
『誰かギルド作ろうぜ!』
質問ばっかり。
「まぁ、そりゃそうか」
まだ始まったばかりだ。
攻略サイトもない。
情報もない。
普通なら、全員が横一線のスタート。
普通なら。
俺は画面右下を見る。
そこには、ひっそりと例のチャット欄。
【特設サポート:接続中】
こいつだけが、俺のアドバンテージだ。
その前に、まずはキャラ設定か。
【キャラクター作成】
画面が切り替わる。
「さて……」
俺は腕を組んだ。
ここ、大事。
ゲームのキャラクリってのは、もう第二の人生だ。
適当に済ませるやつは三流。
まず名前。
【プレイヤー名:】
迷わず打つ。
『リョウタ』
本名のまま。
こういうのは逆に変に凝らない方がいい。
次。
年齢設定。
『17』
現実と同じ。
身体バランスや動きの違和感が少ない方がいい。
そして最大の難関。
顔。
「よし、やるか」
目。
鼻。
輪郭。
髪型。
身長。
体格。
調整項目が細かすぎる。
髪の長さ一ミリ単位とか、誰得だよ。
だが、妥協はしない。
どうせなら、最高の俺で行く。
一時間後。
「……よし」
画面の中にいたのは、現実の俺をベースに三割増しくらい盛った、かなりのイケメンだった。
黒髪。
少し長めの前髪。
シャープな目元。
無駄のない輪郭。
「これだな」
鏡みたいに映る自分を見て、満足する。
現実では、まぁ普通。
だがゲームなら、少しくらい盛ってもいい。
【設定完了】
再び広場。
その瞬間、ステータス画面が自動表示された。
==========
プレイヤー:リョウタ
年齢:17
性別:男
HP:5
攻撃:3
防御:3
速度:3
瞬発:4
魔力:3
魔抵抗:3
所持金:500アゲダマ
==========
「……普通だな」
いや、むしろ普通すぎる。
チュートリアル初期値って感じだ。
HP5って、紙じゃん。
犬に噛まれたら終わるだろ。
だが、それでいい。
最初から強い必要なんてない。
強くなればいいんだから。
「さて」
俺は広場を見渡す。
普通なら、
・初心者クエ受注
・木の剣購入
・スライム狩り
これが王道だ。
でも、俺には違うルートがある。
昨日のあの言葉。
【最初の村を出る前に、西の井戸を調べてください】
あれが本当なら――。
「行くか」
俺はすぐに走り出した。
広場を抜ける。
商店街を抜ける。
道の途中、NPC商人が声をかけてくる。
「お兄さん! 初心者セットどうだい? 木剣に革鎧、今なら特価だよ!」
普通なら買う。
でも、俺は立ち止まらない。
酒場の前では、すでに初心者パーティ募集が始まっていた。
「前衛一人足りない! 誰か来ない?」
「ヒーラーやれる人ー!」
無視。
今、他人に合わせてる場合じゃない。
街の西側へ向かうにつれて、人影は減っていった。
人気のない裏路地。
石壁に囲まれた細い通路。
その先に、小さな広場があった。
「……あった」
古びた井戸。
苔むしていて、ロープも古い。
いかにも使われてなさそうな井戸。
でも、おかしい。
周囲の石畳だけ、妙に擦れている。
誰かが最近触ったような跡。
「これか」
俺は近づく。
すると、画面右下のチャット欄が光った。
【質問を推奨:この井戸の正しい調べ方】
「……ほんとかよ」
俺は苦笑しつつ、入力した。
『この井戸、どうすればいい?』
即答。
【回答:井戸の縁を時計回りに三周してください。途中で止まらないでください】
「は?」
思わず眉をひそめる。
なんだそれ。
都市伝説かよ。
でも、ここまで来てやらない理由もない。
「よし」
俺は井戸の縁に手を添え、歩き始めた。
一周。
何もない。
二周。
風が少し冷たくなる。
三周目。
半分を過ぎた瞬間――。
ゴゴゴゴ……。
「っ!?」
突然、足元の石畳が揺れた。
井戸の底から、重い音が響く。
次の瞬間。
井戸の中の暗闇に、青白い光が灯った。
「……マジかよ」
井戸の内壁に沿って、隠し階段がせり上がってきた。
隠しダンジョン。
しかも、サービス開始初日、開始数分。
まだ誰も知らない。
俺は喉を鳴らした。
画面右下がまた光る。
【警告:この先、推奨レベル3】
【現在の生存率:23%】
「低っ!」
思わず叫ぶ。
だが、その数字を見ても、なぜか足は止まらなかった。
むしろ、笑ってしまう。
「最高じゃん」
誰も知らない。
誰もまだ来ていない。
最速予約番号00001。
ハズレ扱いの攻略書。
全部、ここに繋がってた。
俺は深く息を吸い、暗い井戸の底を見下ろした。
「行くぞ」
ゲームの本当の始まりは、きっと、ここからだ。
そう確信しながら、俺は隠し階段へ足を踏み入れた。
――その時。
背後から、女の声がした。
「ちょっと待ちなさい!」
「……は?」
振り返る。
そこに立っていたのは、金色の髪を揺らした、美少女アバターだった。
整った顔。
鋭い目。
高級感のある白銀装備。
明らかに初心者装備じゃない。
そして、その女は腕を組み、じっと俺を睨んでいた。
「さっきから見てたけど。なんであんた、こんな場所知ってるの?」
リョウタは、思わず口角を上げた。
――面白くなってきた。
第3話 金髪の乱入者と、井戸の底の最初の試練
「ちょっと待ちなさい!」
背後から飛んできた女の声に、俺――リョウタは階段へ踏み出しかけた足を止めた。
振り返る。
そこに立っていたのは、広場でも見かけたことのないレベルの美少女だった。
腰まで流れる金髪。
白い肌。
切れ長の青い瞳。
そして、やたら整った顔立ち。
ゲームのアバター補正込みだとしても、相当作り込んでる。
しかも装備が目立つ。
白銀の胸当て。
細身の剣。
マント付き。
初心者装備じゃない。
少なくとも、初期配布の革鎧とは別物だ。
「なんでそんな格好してんだ?」
思わず口に出た。
女は眉をひそめる。
「質問してるのはこっちよ」
強気な声。
プライド高そうだ。
「さっきから見てたけど、なんで街のチュートリアル無視してこんな裏路地に来たの?」
「散歩」
「は?」
「散歩だよ。街並み見るの好きなんだ」
適当に返す。
当然、女の眉間に皺が寄る。
「嘘つくの下手ね」
「初対面にそこまで言う?」
「怪しいもの」
そりゃそうだ。
サービス開始直後、誰も来ない裏井戸にまっすぐ来た男。
怪しまれない方がおかしい。
でも、こっちにも事情がある。
俺は肩をすくめた。
「で、あんたは?」
女は一瞬、顎を上げる。
「……ユイナ」
「へぇ」
「それだけ?」
「いや、いい名前だなって」
「軽い」
少し呆れたような顔。
だが、ほんのわずかに口元が揺れた。
案外、感情は顔に出るタイプかもしれない。
「で、そのユイナさんは、なんでこんなとこに?」
「……勘よ」
「勘?」
「こういうゲームって、最初の街に隠し要素あるでしょ。そう思って、目立たない場所探してたの」
「なるほど」
それはかなり鋭い。
普通の初心者じゃない。
「で、見てたら、あんたが井戸の周りぐるぐる回り始めた」
「見てたのかよ」
「怖かったわよ。新手の変質者かと思った」
「失礼だな」
思わず笑う。
こんな軽口を叩いてる場合じゃないのに、妙に楽しい。
だが、ユイナの視線は真剣だった。
「この先、何があるの?」
俺は井戸の中を見る。
青白い光を放つ隠し階段。
答えるか迷う。
でも、この手のゲームで隠しダンジョンは、一人で抱え込むより協力した方がいい場合もある。
それに――。
画面右下のマニュアル欄が光った。
【推奨:同行を許可してください】
「……は?」
俺は思わず小声で漏らす。
ユイナが眉を上げた。
「何?」
「いや、なんでも」
なんだよ、推奨って。
しかも、こいつを?
俺は改めてユイナを見る。
腕は立ちそう。
気は強そう。
でも、頭は悪くなさそうだ。
何より、ここまで来た時点で嗅覚が鋭い。
「一つ条件」
「なによ」
「この先で見たこと、しばらく誰にも言わない」
ユイナは即答した。
「いいわ」
「早いな」
「隠しイベントを見つけた時点で、普通は口外しないものよ。先行者利益ってやつ」
「話が早い」
さすが、ゲーム慣れしてる。
俺は頷いた。
「じゃあ、行くか」
「ええ」
俺たちは並んで、井戸の階段を降り始めた。
石造りの階段は冷たく、足音がやけに響く。
一段降りるごとに、空気が重くなる。
湿った土の匂い。
地下水の滴る音。
数十段ほど降りた先で、視界が開けた。
「……っ」
思わず息を呑む。
そこは、地下洞窟だった。
青白く光る鉱石が壁に埋まっていて、薄暗い中でも視界は悪くない。
だが、問題はその奥。
ぬるり、と動く影。
「いた」
スライム。
だが、街の初心者向けエリアにいるような可愛い丸型じゃない。
人の腰くらいある、濁った灰色の塊。
表面がどろどろと脈打っている。
【汚濁スライム Lv3】
「最初からこれ?」
ユイナが剣を抜きながら呟く。
俺も喉を鳴らした。
確かに強そうだ。
HP5の俺なんて、触れられたら終わりかもしれない。
その時、マニュアルが光る。
【質問を推奨:汚濁スライムの倒し方】
即座に打つ。
『倒し方』
一秒。
【回答:正面から戦闘しないでください。】
「そりゃそうだろ」
思わず突っ込む。
続き。
【右壁の青鉱石を蹴って落としてください。三秒後に左へ回避。】
「……なるほど」
ユイナが怪訝そうに見る。
「何?」
「作戦がある」
「そんな短時間で?」
「いいから聞け」
俺は素早く説明した。
ユイナは少し疑った顔をしたが、すぐに頷いた。
「わかった。信じる」
「意外と素直だな」
「ここまで来て、今さらよ」
スライムがこちらに気づき、ずるりと迫ってくる。
速い。
「来るぞ!」
俺は走った。
右壁へ。
スライムが跳ねる。
迫る灰色の塊。
「今だ!」
壁の青鉱石を思いきり蹴る。
バキッ!
大きな鉱石が外れ、真下へ落ちた。
直後。
ドゴォン!!
地面が揺れた。
鉱石が床に当たった瞬間、周囲に青白い電流が走る。
スライムがそれをまともに浴びた。
「ギシャアアア!」
悲鳴。
「左!」
マニュアル通り、俺とユイナは同時に飛ぶ。
次の瞬間。
スライムの身体が膨張し、破裂した。
どろりと灰色の液体が飛び散る。
だが、俺たちは無傷。
静寂。
数秒後。
【Lvアップ】
【リョウタ Lv2】
【アゲダマ+20】
【アイテム:1センチ青の欠片】
「……」
「……」
俺とユイナは顔を見合わせた。
そして、同時に笑った。
「やば」
「最高ね」
胸が熱い。
これだ。
これが、ゲームだ。
努力も、運も、知識も、全部ぶつけて勝つ。
その快感。
俺の画面右下が、また光る。
【警告:本試練はまだ始まっていません】
「……は?」
俺の呟きと同時に、洞窟の奥から、重い足音が響いた。
ドン。
ドン。
ドン。
青い闇の向こう。
巨大な影が、ゆっくり姿を現した。
人の三倍はある巨体。
岩のような腕。
胸に埋まった、青く輝く巨大な欠片。
【守護兵ゴーレム Lv10】
ユイナが息を呑む。
「……嘘でしょ」
俺は、乾いた笑いを漏らした。
「いや、これ……チュートリアルだよな?」
だが、胸の奥では、逆に火がついていた。
――面白くなってきた。
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