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最後の娯楽

作者: 小雨川蛙
掲載日:2026/05/21

 何千年か。

 何万年か。

 あるいはそれ以上か。

 遂に人類は幸福を手に入れた。


『昔は死というものがあったらしい』


 人々の不幸に対する認識はその程度のものだ。


『終わりというものがあったらしい』


 終わりとは始まりと対になるもののはず。

 しかし、幸福を手に入れた人類には始まりはあっても終わりはない。

 あるのは始まりと続きだけだ。


 変わらない永遠。

 それこそが人類の手に入れた幸福である。

 人々は一定の年齢になると成長を止めてしまう。

 あとはもう傷つきもせず、苦しみもせず、永遠に生きていく。

 痛みも苦しみもないゆえに争いらしい争いも起こらない。

 そんな世界。


 ただ存在するだけの生活の中。

 近頃、流行りの遊びがある。


「変わらないものを変える遊びがあるらしい」


 誰がそれを口にしたのか分からない。

 けれど、幸福と言う退屈に慣れ切った人々はすぐにその言葉に囚われた。


「昔、存在した死というもの。終わりというものを体験出来る遊びがあるらしい」


 そう言って人々はその方法を探していた。

 痛みも苦しみもないゆえに障害らしい障害もない。

 そんな世界。


 無限に近い時間がある中で人々は今日もその遊びについて調べる。


「退屈から抜ける遊びがあるらしい」

「幸せでなくなる遊びがあるらしい」


 そう言いながら。


 どれだけ時間がかかっても、きっといつかはその遊び方を人々は見つけるだろう。

 なにせ、彼らには永遠の時間があるのだから。

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