16 皇帝として
sideルシウス=アウレリウス
その日、しじみ取りのジャックに使いの者を出すと、ジャックは行方をくらましている、という報告があった…
エレナの予感は的中していたのだ。
彼女ときちんと話をしなくてはならないだろう。
いろんな意味で。
俺は次の日、エレナを訪ねた。
「今日は皇帝としてやって来た。」
俺が言うと彼女は一礼した。
「陛下、お越しいただき恐縮でございます。」
「うむ。
そなたと話をしなければ、と思ってな。
そなたはこの事件には裏がある、とそう言っていた。
どんな裏が考えられる?」
「恐れながら申し上げます。
アウレス海岸とアウレス港はアウラール国の数少ない海にございます。
しかも、アウレス港は王都に面している。
もしも、敵国がアウラール国に攻め込むならば、私ならばこの港から攻めるでしょう。」
「…つまり、ジャックは敵国の内通者であった、と?」
「その可能性は高いかと…
アウレス港の天候やそれによる波の高さを記録していた可能性もございます。」
「…俺は…
どうすればよい?」
「まずは、体調を整えられるべきかと存じます。
しじみはもうございますゆえ。」
「そうであったな…
すっかり忘れておったわ。
しじみの料理を所望する。」
「かしこまりました。」
彼女はスキル・キッチンを発動した。
消えた!?
そして、エレナは数分後、マグカップをもってキッチンから出た。
「おぉ、消えたかと思ったら…
すごいスキルだな…」
「ありがとうございます。
さあ、陛下、これをお食べください。」
「しじみのスープ…?」
「えぇ、正確には味噌汁という物でございます。
よく混ぜてお召し上がり下さいませ。」
エレナはマグカップを差し出した。
そっと口をつける俺。
これは…!
しじみの癖のあるダシと味噌汁という汁がベストマッチしている!
何と言う風味!
海の味わい!
旨い!
旨いぞぉぉ!
「いかがですか、陛下?」
「うん、悪くない。」
俺は少し控えめに答えた。
それが、俺のエレナへのほんのわずかな仕返しだった。
「…しばらくはこれを作りますので、お召し上がりください。」
「あぁ、分かった。
ここからは、男としての話だが…」
「はい。」
「俺はそなたの心が欲しいようだ。
だから、しばらく夜伽は待とうと思う。
…それでよいか?」
「はい。」
彼女は花のような笑顔でそう答えた。
彼女の笑顔が見られて、俺は嬉しかった。
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