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幻創の楽園  作者: 士宇一
幕間章 旋風姫編
85/195

ラヴとシア 中

中編。蛇足だけど風森で起きた事件をひとつ

 

 +++

 

 

 エイルシアが初めて精霊と契約した時のこと。

 

 

「ひと月足らずですか。まさかこんなにも早くあなたが《精霊使い》になれるとは思いませんでした」

 

 精霊の風森は、紅葉色をした精霊を従えるエイルシアにそう言った。

 

「元々ウインディの血筋であり私と同化した経験が大きかったですね。……あなたの願いは確かに受け取りました」

 

 エイルシアが修行を積み、精霊の力を求めたのは自分を救ってくれた少年を彼の世界に還す為だ。

 

「では風森」

「はい」

 

 彼女は《召喚》に関して独自に調べたところ、わかったことがある。それは精霊と魔人、比べれば保有する魔力総量は魔人の方が遥かに多いということ。

 

 結論から言えば中位精霊単体の魔力だけでは異世界への《送還》は無理だということだ。必要となる魔力が足りない。

 

 たとえエイルシアが風森を完全に使役できたとしても絶対量が不足している。

 

「エイルシア、あなたの力になりましょう。私を通して《世界》を探ってください」

 

 だから探さなければいけない。少年を還す方法を。その為にもエイルシアは精霊の助けを必要としていた。

 

「ありがとう風森。でもどうすればいいの? 《世界》を探るなんて」

 

 《精霊使い》の特性は《世界》に属する精霊から知識を引きだせること。

 

 膨大な数の真実、その情報を《世界》は内包している。

 

「1番の方法は《世界》の《心像》に触れることですが、今のあなたでは逆に情報の海に飲み込まれてしまう。だから《世界》の末端ともいえる私(精霊)と対話して情報を引き出して下さい」

「対話」

 

 そうです、と風森。

 

「あなたの質問に私が答える。あなたの力量に合う問いならば私は答えることができます」

 

 それがエイルシアと風森、2人にとってリスクが少ない方法だという。

 

 試しにエイルシアは訊いてみる。

 

「ユーマさんは今何をしてるの?」

「エイリークに吹き飛ばされた所ですね。今日は木にぶら下がっています」

「今日は、って」 

 

 冗談で訊ねたが気になる話だ。

 

 気を取り直してもう1度。

 

「風森、私はあなたの子孫?」

「いいえ。正確には私の主人格であるウインディ、彼女の妹があなた達の血筋です」

 

 エイルシアも聞いたことのある仮説のひとつだ。これが真実らしい。

 

「《世界》とは何?」

「答えられません。質問が漠然としすぎています」

「魔神が転生するという預言は本当?」

「答えられません」

「精霊はどこに住んでいるの?」

「世界中に遍在しています。人が認識できないだけでその辺りの石ころのように存在します」

「……魔人はラヴちゃんの他にもまだ残っているの?」

「いるでしょうね。もしくはその血を引くものが。国には彼女以外にいませんけど」

「……」

 

 この調子で質問を繰り返すことでおおよそ理解した。

  

「明日の天気は晴れかしら?」

「晴れですね。午後から風が強くなるようですが」

「……なるほど。《交信》を使うから質問の内容に応じて私の魔力を消費するのね。それと今の私に風森が答えられる質問はほんの一握りだけ」

 

 世界中の情勢や秘密を探ると風森が答えられる内容が少ない上に大きく消耗する。雑談程度の問いなら問題がない。

 

「具体的な質問を心がけて下さい。それだけ正確な情報をあなたに教えることができます」

 

 風森は補足する。

 

「あなたが世界に影響する力、個人の能力が高いほど《世界》を識る権利があなたに与えられます。魔術でもなんでも構いません、自分を高める努力、修行を怠らないように」

「……」

 

 正直言えばまどろっこしい。

 

「焦らないで。時間はまだあります」

「わかってます。……質問するわ。ユーマさんは《転写体》、間違いない?」

「……はい」

「でしたら」

 

 エイルシアは少年に関して自分の仮説が『間違っている』ことを信じて精霊に確認してみる。

 

 間違っていなかった。

 

「エイルシア……」

「……ユーマさんを元の世界に還せる方法はある?」

「あります。私ができるのはその答えを導き出す手助けだけですが」

 

 それが希望の言葉。

 

 エイルシアは決意を固める。

 

「まず強くならないといけないのね。それで風森からたくさんの事を聞きだせるようにならなきゃ」

「修行の際も私を活用して下さい。私の中の『ウインディ』の記憶が役に立つはずです」

 

 

 エイルシアはこの日から風森の指導を受けるようになった。

 

 その後彼女は伝説の勇者の仲間だった《風使い》の力、失われた上位術式や奥義を授かることになる。

 

 

「今日はこれまでにしましょう。今までの《交信》とは違い、あなたが思うよりも消耗しているはずです」

「待って。最後に聞かせて欲しいことがあるの」

 

 消えようとした風森をエイルシアは呼び止める。

 

「何でしょうか」

「ラヴちゃん、いえあなたの知るラヴニカのことを教えて」

「……」

 

 黙る風森。答えられないのではなく逡巡している。

 

 あの魔人の彼女と風森、ひいては『ウインディ』との縁は深い。400年も続く。

 

 精霊の主人格である『彼女』が話すことを躊躇った。

 

「私にはまだ答えられない?」

「……いえ」

「ならお願い。私はもっと彼女のことを知らないといけない。彼女を傷つけた私はもう過ちを犯したくないの」

「エイルシア……」 

 

 エイルシアは《魔人事件》のことが忘れられない。

 

 魔力の狂気に呑まれた自分。彼女を知らず、ただラヴニカに憎しみしかぶつけられなかった愚かさを。

 

 彼女と今度こそ向き合うのだと決めたのは、エイルシア自身が定めた決意のひとつだ。

 

「……わかりました。少し長くなりますよ」

 

 話をするに置いて、まず風森は彼女のことをこう言った。

 

「ラヴニカ・コルデイクは《病魔》の魔人。魔神の生み出した邪なる風。下位の魔力生命体である彼女は彼の手駒のひとつにすぎませんでした」

 

 +++

 

 

 ラヴニカは日課のようにエイルシアと『遊ぶ』。遊び場は兵たちの練鍛場だ。

 

 

 エイルシアは何かと忙しい毎日を送っている。

 

 国の政治は議会制ではあるが彼女も代表の1人として国の運営に携わっているし治癒魔法を使った国の巡回もまだ続けている。

 

 リハビリ中の母の世話もするし精霊との修行も怠らない。彼女は調べ物をするために最近は召喚に関する《西の遺跡》の資料を取り寄せていた。

 

 エイルシアがラヴニカをかわいがるのは息抜きのようなものかもしれない。

 

 それから少し前からガンプレートの射撃訓練もはじめた。

 

 ユーマから「護身用に使って」と預かったオリジナルのガンプレート。しかし彼が学園に行ったきりなので用途不明なカートリッジが多く彼女は使いこなせないでいた。

 

 エイルシアは折角だからと射撃訓練を行い、同時に実験のように魔法弾の試し撃ちをするようにした。

 

 

 ラヴニカはその際模擬戦の相手に付き合わされるのだが彼女はそれを『遊び』と称している。

 

 模擬戦でラヴニカが使うのはユーマが置いていった回路紙の魔法カード。魔力がなく子ども状態の彼女でも扱える便利で強力なアイテムだ。

 

 また、回路紙とカートリッジの魔力補充は精霊のカレハからまかなっている。

 

 ラヴニカはこの『遊び』が結構気に入っている。消費型アイテムを駆使し、効率よい戦闘を工夫することが以前の彼女は必要なかったのでそれがまた楽しいらしい。

 

 

 ところがその日は違った。

 

 

 現在、風森の城の上空は完全に包囲されている。

 

 空に浮かぶのは艦の形をした巨大な雷雲。その数ざっと100ほど。

 

 

「ラヴちゃん……」

「ええい! 情けない声を上げるな」

  

 

 風森の国は今年3度目の大事件、2度目の崩壊の危機に陥っていた。

 

 エイルシアの手によって。彼女はガンプレートをラヴニカに向けておろおろしている。

 

「エイルシア、一体何を使った?」

「あの、新しいケースからカートリッジを取り出したのですけど」

「お主は向こうの文字が読めぬから勝手に使うなと前にも言うておったろうが!!」

 

 エイルシアのガンプレートには度々酷い目に合うラヴニカだが今回は特に酷い。

 

 雷雲の艦隊が包囲しているのは城ではなくガンプレートを向けられた彼女だから。

 

 屋外の練鍛場にいたことが不幸中の幸い。屋内で使われたらどうなっていたか考えたくもない。

 

 

 エイルシアの使ったカートリッジはレベル7。対艦隊戦用の掃討殲滅術式、

 

 ゴッドフリート

 

 

 ラヴニカはここにはいない少年に向けて舌打ち。

 

「ユーマめ、厄介なものを置いて行きおって。我とやりあった時は手加減していたとでもいうのか」

 

 単に扱えなかっただけだ。エイルシアが使えた方が驚きだともいう。

 

「シア! それは制御できとるのか? お主の方で止められんのか?」

「消し方がわかりません! 今も『溜め』の状態なんです」

「溜め? ……成程。典型的な大規模術式か」

「エイルシア様!!」

 

 事態の重大さに集まる武装した騎士や兵たち。ラヴニカは叱りつける。

 

「貴様ら! 早く城から離れんか」

「しかし」

「ただの人であの術式を止められぬものか。あやつに犠牲をださせたいのか、この達磨ヒゲ!!」

「ひ、ひげ?」

 

 小さな子どもに罵られあんぐりとする騎士隊長の1人。

 

「シアよ。止められぬのなら時間を稼げ。撃つなら城の者を避難させてからにしろ」

「ラヴちゃん?」

「……ふん。思い出したわ。《神の艦隊》とかいうふざけた名の魔術」

 

 険しい目つきのまま、ラヴニカはエイルシア達に命令する。

 

「よいか。それが我の知る魔術と同じならば『指揮』を執ることができるはず。ならばシア、艦隊の照準を我1人に絞り順次砲撃せよ。一斉砲撃は今の我では捌き切れぬかもしれぬからな」

「ラヴちゃん!?」

「黙れ! 我はもう照準に入っておる。お主が完全に制御できぬから仕方なかろう。……尻拭いも大概にしろ。ヒゲはさっさと城の者を避難させい」

「お嬢ちゃん1人で何を」

 

 動転する騎士と兵。

 

「舐めるなよ小僧。我を誰と思うておる」

「っ!?」

 

 カードを扇のように広げ、彼女は不敵に笑う。

 

 この時だけはふりふりドレスの幼女であることが不自然なほど凄惨に。

 

「5分。いや3分で動け。……行かぬか!!」

「……は、はっ!」

 

 紫の瞳が放つ迫力に押され、騎士と兵は散開。城内だけでなく周囲の住民にも避難勧告がだされた。

 

「ラヴちゃん」

「うろたえるな。お主がそんなだから兵が機敏に動けぬのじゃ……3分」

 

 ラヴニカは装備を確認。カードを両手に持ち構える。

 

「なるべく被害を抑える。我が上空に飛んだら放て。よいな」

「でも」

 

 尚も躊躇うエイルシアに苛立つラヴニカ。何と言えばこの女は納得するのかと考える。

 

「我にすればこれも所詮遊びじゃ。できればお主には制御できるようになってもらいたいが」

「……」

 

 まだ駄目だ。エイルシアは不安そう。

 

「……我を信じよ。ゆくぞ」

「ラヴちゃん!」

 

 その一言ではっとした。

 

 ラヴニカはカードの1枚を叩きつけ、カードが放出する魔力の推進力で高く飛ぶ。

 

「今じゃ!」

「っ、撃ちます!」

 

 

 砲撃、開始。

 

 

 《ゴッドフリート》の艦隊砲撃は雷撃と衝撃砲が主力だ。包囲された城の真下に対地攻撃をされたらひとたまりもない。

 

 それでラヴニカは自分1人を狙わせ、上空で迎えうつことにしたのだ。

 

 ラヴニカが両手に持つカードは火属性や風属性の推進力となるもの。彼女はこれをブースターやスラスター代わりにして機動戦、砲撃を回避し続ける気だ。

 

「フン!」

 

 ホバリングして雷撃を引き寄せブースト。急上昇。

 

 次にカードを持つ両手を振り姿勢制御。カードの推力を小刻みに噴かすことでバーニア制御をこなす。

 

 子どもの姿でもラヴニカは魔人。急加速によるGの負荷にも身体は耐え得るし空気抵抗も風属性無効の特性を持つ彼女ならば問題ない。

 

 集中砲火を掻い潜るラヴニカ。稀に防御系や爆発系のカードを振るって相殺や衝撃波を利用した緊急回避も使って見せる。

 

「くっ、問題は手持ちの札が尽きる前に砲撃が終わるかどうかじゃが……」

 

 一定の高度を保たなければならないので節約できずカードが保有する魔力が長時間持たない。

 

 常に全力状態。このままもって5分。

 

 ラヴニカは叫ぶ。

 

「エイルシア! 術式の魔力はあとどのくらいじゃ?」

「あと8割くらいです!」

「砲撃の数を10倍に増やせ! このままでは我の札の数が足りん」

「ラヴちゃん!?」

 

 心配する余りエイルシアの制御が甘くなる。砲撃の誤射が城の一部を破壊。

 

「馬鹿もの! しっかり我を狙わんか!」

「で、でも……」

「このっ! くっ、こんなにも魔力がなくて恨めしいと思ったことはないわ」

 

 誘導式の雷球をスピードで振り切りながら舌打ち。

 

 ラヴニカが《ゴッドフリート》のターゲットから外れることはない。彼女が地に落ちた時点で艦隊の集中砲火が大被害を起こしてしまう。

 

「あと3分弱で撃ち尽くさねばならぬというのに」

 

 エイルシアの甘さに苛立つ。必死になる自分が馬鹿馬鹿しくなる。

 

「仕方ない。ならばっ」

 

 だったらその甘さを捨てさせるまでだ。秘策はある。

 

 なぜならエイルシアはエイリークの姉であるだけあって実は怒りっぽいから。

 

 何よりラヴニカは彼女の地雷、起爆装置をよく知っているのだから。

 

「エイルシア、聞け!!」

「ラヴちゃん?」

 

 戸惑うエイルシアにラヴニカは叫ぶ。上空から思いっきり怒鳴る。

 

 

「この年増! 行かず後家が!!」

「!!?」

 

 

 エイルシアに落雷のような衝撃が走る。

 

 

 行かず後家:適齢期を過ぎても嫁に行かない女性のこと。そういった女性を嘲う言葉。

 

 

 ショックを受けたエイルシア。

 

 その間も砲撃は続き、ラヴニカは艦隊に急接近してはインメルマンターンを繰り出して火線をやり過ごす。

 

 それから罵り、嘲笑う。

 

「いつまでも姫でいられると思うなよ。我に言わせればお主などもうばばあじゃ」

「ばっ!?」

 

 現在10歳未満の容姿のラヴニカは容赦ない砲撃に対し容赦ない言葉を浴びせる。

 

「我の持つ知識に加えユーマの部屋にある書物まんがを読み、鑑みてはっきりした。今求められるのは『ろり』じゃ。今の我のような『ようぢょ』の時代なんじゃよ」

「よっ!?」

「20代のお主は古い遺物。もう終いなのじゃ!!」

「いぶつ!?」

 

 計り知れないダメージが彼女を襲う。

 

「我も、くっ、残念じゃよ……エイルシア。ははっ、はははは、あはははははは」

「……」

 

 とどめの高笑い。でも手札の消耗と共に弾幕の回避に余裕がない。

 

「……」

 

 ガンプレートを握り締め沈黙するエイルシア。

 

 ラヴニカが飛べなくなるまであと1分。

 

(そろそろじゃな……来た!)

 

「……ラヴちゃん、私は」

 

 エイルシアが、

 

「私はまだ22です。私はまだ……」

 

 キレる。

 

 

「若いんです!!」

 

 

 ブチ切れた。もう涙目で。

 

 この時、エイルシアは完全に《ゴッドフリート》を掌握した。手にしたガンプレートを通じて艦隊指揮を執る。

 

「のおう!?」

 

 支援砲撃と同時にラヴニカに突っ込んでくる雷雲の艦。特攻だ。

 

 危うく上に逃げるラヴニカだが、

 

「逃がしません!」

 

 対空砲火と同時に艦隊は包囲網を狭める。

 

 ラヴニカ、絶体絶命。

 

「ゴッドフリート、全砲門開け。照準……」

 

 ガンプレートで狙いを絞り、怒りに満ちた声でエイルシアは叫ぶ。

 

「400歳を超えるろりばばあ!!」

「何じゃと!?」

 

 ラヴニカもその暴言は聞き捨てならない。それよりお姫様がそんなこと言ってはいけない。

 

「てーーーーっ!!」

「ぬおっ?」

 

 十字砲火の一斉砲撃。

 

 

 風森の国の空は轟音と閃光に包まれた。

 

 

 

 

 静寂。

 

 魔力を放出しきって艦隊は消失。雲ひとつない青い空だけが残る。

 

「…………はっ」

 

 不毛な争いだった。空を見上げ虚しさが込み上げてきたエイルシアは正気に戻る。

 

 それから見た。

 

 空から墜ちてくるぼろ雑巾のような女の子を。

 

「!? ら、らら、ラヴちゃーーーーん」

 

 どかーん! 墜落の衝撃は練鍛場の中心に大きな穴を作る。

  

「ふぎゃ」

 

 

 ラヴニカはなんとか生還した。

 

 +++

 

 

「それでラヴちゃんは国の危機を救って一躍有名になったの」

「姉さま……」

 

 エイルシアから風森の国で今話題の『風森の特大花火大会』、『空飛ぶちび姫様事件』を聞いたエイリーク。

  

 その真相が姉のうっかりからはじまり姉妹喧嘩で終わったなんて知りたくもなかった。

 

 国では大事にならないよう誤魔化したらしい。

 

 エイルシアが《精霊使い》の《魔法使い》であることと、ラヴニカが幼くてもものすごい《符術士》だという嘘を理由にこじつけた力技だ。

 

 それで納得する国民もなんだか。

 

 元はと言えばユーマがガンプレートをエイルシアに預けたせいだと結論をだしたエイリークは2回ぶっとばすと決意。

 

「なんであの子はそんな攻撃を受けて生きてるのよ」

「《ゴッドフリート》は雲の艦隊を操作して風属性の衝撃砲と雷属性の雷撃を一斉掃射する大規模な術式。ラヴちゃんは魔人の特性で風属性が効かないのよ」

「雷は?」

 

 それがね、とエイルシア。

 

「ユーマさんが置いていった装備の中に雷撃を弾くグローブがあるの。それと防御用のカードで受け捌いたらしいわ」

「なによそれ」

 

 信じられない話だ。

 

「あの時の事は私が悪かったけどラヴちゃんだって酷いのよ。私のこと行かず後家ってわざと悪口言ったりして」

「反省してないわね、姉さま」

 

 聞けばまだ何かありそうだ。

 

「ラヴニカが姉さまのせいでものすごく大変だったことはわかったわ。でもその時はそんなに仲良くなかったのでしょ?」

 

 話の中のラヴニカとエイリークの読んだ彼女の手紙から読みとれる人柄に違和感を感じる。

 

「あの子が姉さまのことを『姉上』と呼ぶようになったのはいつ?」

「それは」

 

 思い出すエイルシア。

 

 忘れもしない。その日は彼女が抱えていたすべてをさらけ出した日。

 

 ラヴニカが《風邪守の巫女》だった彼女と初めて向き合った日。

 

 

 

 

「それは……あの子を最後に封印したお母様と再会して初めてお話した日のことです」

 

 +++

 

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