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幻創の楽園  作者: 士宇一
幕間章 旋風姫編
79/195

旋風姫 来襲編

ユーマVS???。誰だか1発なんですけどね

 

 +++

 

 

 屋外演習場前、『ユーマの砂場』。

 

 

 一番遠くにいたせいかエイリークが駆け付けたのはどうやら最後らしい。リアトリスの他にもアギ、アイリーン、リュガといつものメンバーが揃っていた。ミサもいる。

 

 逸る気持ちを抑えてエイリークはまず連絡をくれたリアトリスに訊ねる。

 

「リア先輩。一体どうして」

「話は後にしてくれ。あとこれは一応模擬戦だ」

 

 防御結界は張ってあるとリアトリスは言うが、彼女はいつでも仲裁に入れるよう今もユーマ達の戦いを注視していた。

 

 それはアギ達も同じ。ただその中でアイリーンは誰よりも驚いている。

 

「ウインディさん。どうしてあの人が」

「聞かないで。アタシもさっき知ったのよ」

「リィちゃん。あのね」

 

 ミサは意外と落ち着いていた。手にしていた手紙をエイリークに渡す。

 

「これは?」

「忘れていたの。今朝渡して教えるつもりだったんだけど」

「!! あの子……」

 

 ミサは先に読んで事情を知っていたらしい。手紙を読んだエイリークは文面以上に差出人の名に驚いた。

 

「なんだよ。《あれ》は」

 

 動揺というよりも動転しているのは最初から見ているティムス。

 

「俺以外に《あれ》を創った奴なんて知らない。いや、仕組みは単純だから創れはするんだ。……ただ、ただあの性能は一体なんなんだよ!」

 

 《天才》の彼は《本物》を見て技術士としての敗北を味わっている。

 

 

 そんな周りの驚きも気にせずユーマ達の手合わせは続く。

 

 2人は互いに武器を向け、同時に叫ぶ。

 

 

「「ストーム・ブラスト!」」

 

 

 ユーマと戦う騎士服の彼女が手に持つ武器は……ガンプレートだ。

 

 +++

 

 

 相殺。と思いきやユーマは撃ち負けた。飲み込まれ巨大化した旋風の放射を前にしてユーマは横に飛ぶ。

 

 それを見た彼女が手を広げ、追撃の《風弾》を撃てばユーマは続けて《高速移動》で回避。2人はその攻防の合間にカートリッジを換装。

 

「えいっ!」

「げ。砂塵」

 

 経験上ガンプレートの魔法弾をある程度見分けられるユーマ。攻撃が広範囲に広がる拡散レーザーだとわかると砂埃を起こしてレーザーの威力を減衰。ダメージを抑えつつ回避運動。

 

「流石に風属性は力負けするよな。他の属性で攻めなきゃ」

 

 レーザーを掻い潜っての反撃は《フレイム・ブラスト》。ユーマの炎の旋風を彼女は片腕を振り、《旋風壁》で直撃を避けて逸らした。風に煽られて彼女が炎にのまれるようなこともない。

 

「弾いた? 火属性の非実体エネルギー系なのに」

「《風盾》の応用で当たった瞬間、受けた攻撃の軌道に変化を与えるのです。風の防御では基本ですよ」

「いや、衝撃も逃してるし上級者の技だよそれ」

 

 基本にして極意なんです、と彼女。顔はゴーグルで隠れて見えないが声は楽しそうに弾んでいる。

 

 2人戦いはガンプレートの応酬。ユーマは動き回りながらの攻撃、それを彼女が迎え撃ち火、風、氷、雷と多くの魔法弾が飛び交う。

 

 機動力、そしてカートリッジの換装速度と射撃精度は熟練度の差でユーマが上。しかし彼女はガンプレートを扱いながら風の術式で牽制と防御をこなして換装の時間を稼ぎ、拡散や誘導タイプの魔法弾で命中率を補っている。

 

 それで互角。むしろ4対6くらいでユーマが押されている。

 

「これはどうだ!」

 

 ユーマが《レプリカ2》で撃つのは《裂風弾》。クルスがユーマに見せた対風属性の術式。

 

 これなら風の防御を無効化できる。しかし彼女はユーマのそれを理解してガンプレートを構えていた。

 

 対風属性も風属性。ユーマは《風読み》で相手の風属性の術式を先読みできるなんて知らない。

 

「あ」

 

 しまった。ユーマは彼女の《風使い》のイメージが先行しすぎてガンプレートの機能を失念していた。

 

 本来ガンプレートの銃剣は機能のひとつでしかない。それと特殊なカートリッジがあることを忘れていたのだ。

 

「シールド」

 

 彼女のガンプレートは前方に緑色に光るエネルギーの膜を展開。その『シールド』に当たった《裂風弾》をガンプレートのカートリッジが《吸収》する。

 

 それから《裂風弾》を撃ち返した。

 

「リバース・ショット」

「うわっ!?」

 

 ユーマは辛うじて《ヒート・カッター》で打ち払った。対属性の術式は対応する属性以外だと非常に弱い。

 

「……それは使ったことなかったから忘れてた。《ドレイン》と《リバース》はレベル4でも扱いの難しいやつなのに」

 

 でも1番驚いたのはティムスだろう。《ガンプレート・レプリカ》では再現できなかった魔法弾だったから。ユーマの想像以上に彼女はガンプレートを使いこなしている。

 

 

 手合わせの前に模擬戦を繰り返していたユーマは疲れている。そんな彼の状態をわかってか彼女は話しかけてきた。

 

「ユーマさん。ガンプレートの事はお互い手の内を知っているので埒が明きませんね。次で最後にしましょう。……本気で行きますよ」

 

 正直言えばユーマは彼女の浮かべる笑みが怖かった。笑顔を返したかったが引き攣ってしまう。ユーマはつい思ってしまうのだ。

 

 やっぱり怒ってません? と。

 

「……あと1分だけね。風葉」

「ふー。わかりましたー」

 

 お疲れの風の精霊が姿を現してユーマの肩にしがみつく。

 

「いくよ」

「……」

 

 ユーマは近接戦で勝負をつけるために《高速移動》で走りだす。

 

 ところが対する彼女は動かず、腰に差した《短剣》に語りかけた。

 

 力を貸して、と。

 

「お任せ下さい」

「えっ!?」

 

 次に起きたことは誰もが驚いた。彼女が名前を呼び、それに応えるモノが現れたからだ。

 

「……嘘だろ」

 

 魔力を帯びた風が吹く。彼女の前に姿を現すのは紅葉色の髪の、それもフェアリーの姿をした小さな風の精霊。

 

 ユーマやエイリーク、当然ミサだって知らなかった。

 

 

 彼女が《精霊使い》だと。

 

 

「風は決して貴女を傷つけさせません」 

 

 そう言った紅葉色の精霊は風の奔流を操作。守るべき彼女を中心に無軌道に周回する風の帯を展開。

 

 触れたものを切り裂く風の帯。これは風属性操作系斬撃術式、《風刃結界・竜牙》。

 

 ユーマどころか魔術師のアイリーン、エースのリアトリスも知らない術式。ゲンソウ術では再現できない本物の魔法。

 

 不可視の風の竜はユーマが近接戦を仕掛ける度に牙を剥き、彼女に近づけさせない。

 

「カレハ、そのまま援護を」

「くっ、風葉」

 

 近づくことを封じられたユーマは彼女の戦闘スタイルに合わせるしかない。再び風魔法とガンプレートの応酬になる。

 

 しかしガンプレートの性能差はユーマの技量でなんとかなるも風属性の熟練度はユーマより彼女が上。それでいて同じ《精霊使い》なのだからユーマは明らかに不利だ。

 

 彼女は精霊の力なしに魔法が使えるのだから。

 

「加速円陣……」

「やばっ、スパーク・ブ」

「させません」

 

 ユーマが邪魔しようにも紅葉色の精霊が彼女を守る。対抗できる大技を仕掛ける隙もない。

 

 その間に魔法陣は完成してしまう。

 

「展開! しっかり防御して下さいね。撃ちます」

「ちょっと待って!!」

 

 アレの威力をユーマは知っている。いくら精霊の補助があっても人の反応速度で躱すなんて無理だ。

 

 彼女は《加速円陣》を前方に展開してガンプレートをユーマに向ける。容赦なし。

 

「アクセル・シュート!!」

 

 ただの《風弾》が音速を突き破り風属性最速の魔法弾となる。

 

 400年前に失われたはずの魔術奥義、ソニック・ブレイカー。

 

 正面から何が来るのかまで知らされていたユーマは前面に《旋風壁》、さらに短剣とガンプレート交差して《風盾》を2重展開。それで攻撃を防ごうとした。

 

「ぐっ! うわああああーーっ」

 

 それでも一瞬で弾き飛ばされ、錐揉み状に高く吹き飛ぶユーマ。そのまま砂地に墜落。

 

 

 後にユーマは語る。

 

 戦闘機に轢かれるってこんな感じかなぁ、と。

 

 

 ぐしゃ。

 

 

「あれは……姫さんの比じゃねぇ」

 

 

 エイリークによく吹き飛ばされ、もう慣れたと豪語するアギさえも恐れる一撃だった。

 

 

 

 

 うつ伏せに倒れ沈黙するユーマに彼女は近づいた。

 

「私の勝ちですね」 

「……」

「……ユーマさん?」

 

 沈黙。ぴくりとも動かないユーマ。

 

「嘘。手加減しましたし大丈夫ですよね?」

「……」

 

 こころなしか呼吸していないような気がする。

 

「ユーマさん!!」

 

 慌てだした彼女は迂闊にもユーマに触れようとして……

 

「きゃあ!」

 

 ズボッと腰まで埋まった。

 

「ううっ、一体何が」

「……フフ」

 

 聞こえるのは学園にいる年中マフラー男のような含み笑い。

 

「ユーマさん?」

「ふっふっふっふっ。奥義、《死んだふり》」

 

 むくっと起き上がるユーマはガンプレートを彼女に向ける。

 

 チェックメイト。それと同時に現れるのは貌を隠した金髪の男。

 

「えっ、まさか別の精霊?」

「砂更の事は知らないはずだからね。切り札に最後まで隠してたんだ」

 

 したり顔のユーマに大人げなくむくれる彼女。

 

「ずるいですよ。ユーマさん」

「こっちだって最初から驚きっぱなしなんだから。とにかく今回は俺の勝……はっ」

 

 卑怯にも勝ち誇ったユーマは油断した。彼女がいるのだからエイリークが来る可能性があること気付けなかった。

 

 

 次の展開が予想できてももう遅い。

 

 

「何てことをするのよ、アンタはああああああ!!」

「やっぱりぃぃぃぃ」 

 

 強襲、《竜巻ダイビングきっく》で今度こそ飛ばされるユーマ。

 

「ちょっとリィちゃん!?」

「いいの。当然の仕打ちでいつものことよ」

「いつものって」

「それより!」

 

 非難を無視して埋まった彼女を引っ張りだすエイリーク。

 

 それから故郷にいるはずの彼女に文句を言った。

 

 それはもう最初から言いたかった。

 

 

「その服、アタシのじゃないの、姉さま!!」

 

 

 

 

 とっくにおわかりだと思いますが、学園に風森の姉姫様がやってきました。

 

 

 +++

旋風姫、襲来

 +++

 

 

 エイルシア・ウインディ。

 

 西国の1つ、風森の国の第一王女。エイリークの姉で《風邪守の巫女》と呼ばれた風使いの《魔法使い》。

 

「勝手に借りてごめんなさい。1人旅するのに丁度いい服を持っていなかったから」

 

 エイルシア旅装ヴァージョン。それは白地に翠の刺繍を施された風森の騎士服上からフード付きのマント。それからはちみつ色の長い髪をまとめあげた男装スタイル。といっても女性らしい体つきは隠しようがない。

 

「似合わないかしら」

「そんなことないわよ。……アタシの服じゃなければ」

 

 複雑そうな顔をするエイリーク。

 

 エイリークとエイルシアの背格好はほぼ同じだ。同じ服を着ればその『ほぼ』の部分が如実に顕れる。

 

 胸まわりとか腰まわりとか。

 

 それとエイルシアの服装はエイリークの戦闘衣に近いが装備はユーマと同じ。

 

 専用のガンベルトにオリジナルのガンプレートとカートリッジ、《回路紙》を使った魔法カードのデッキケース。腰のソードホルダーには《守護の短剣》。変装用なのか額にはユーマが風森の国に置いてきたデバイスゴーグルのレプリカ(未使用)をしている。

 

 おまけは肩に乗せた紅葉色の精霊。

 

「姉さま。その子はやっぱり」

「そうよ。カレハは私の《守護の短剣》に宿る《風森》の一部。カレハ、私の妹にユーマさんよ」

 

 カレハと呼ばれた紅葉色の精霊はぺこりと礼をする。

 

「はじめまして。エイリーク様にユーマ様。私はエイルシア様に仕えるカレハと申します。それから」

 

 ユーマの肩に乗る風葉を見ると、カレハは頬を紅潮して嬉しそうに言った。

 

「お会いしたかったです。風葉お姉様」

「わたしですかー?」

 

 ユーマとエイリークはびっくり。

 

「姉ぇ? 風葉が?」

「どう見たって逆じゃ」

「ひどいですねー」

 

 ふくれる風葉。カレハに比べれば言動が明らかにアレだ。

 

 風葉はふよふよー、とカレハに近づくとくるくるー、と周囲を飛び回り観察。最後にうわぁ、と喜びカレハに抱きついた。

  

「わたしはー、元気ですかー?」

「はい! 名を与えられ、別れても私達はひとつ。お姉様の活躍は風の便りで風森わたしにも届いています」

 

 抱き合って喜ぶ精霊の姉妹。ちなみに名を与えられた順で風葉が姉だという。

 

 活躍? ユーマは毎日クッキーをおねだりする風葉しか思い出せない。

 

「そんなことありません。最近でもお姉様はユーマ様を守る為、勇敢にも飛び蹴りを繰り出したではありませんか」

「……ああ、クルスさんの時。ってなんでわかった?」

 

 当然です、とカレハ。

 

「私もまた《風森》です。ユーマ様とは契約で繋がっておりますから」

「……えーと、シアさん?」

「大丈夫ですよ」

 

 気まずそうな顔をするユーマが何を考えたのか、エイルシアは察していた。

 

「私と風森、ユーマさんと風森。繋がっているのはそれだけです。私とユーマさんがお互いの思考を読み取れるわけではありません。風葉を通じて私のことわかりますか?」

「いや。でも……」

 

 ひとつだけわかっていることがある。

 

「シアさん怒ってるよね」

「当然です」 

 

 ユーマ、正解。

 

「いいですかユーマさん……ってユーマさん?」

「えっ?」

 

 当然のように正座するユーマに戸惑うエイルシア。

 

 ユーマはエイルシアの声音が姉の説教モードに似ていたので無意識の行動だった。

 

「……ユーマさんがリィちゃんの宿題を届けに行ってもうすぐ3ヶ月になります。あの時は少しくらい寄り道するだろうと思っていましたが、まさか風森に帰らず学園に通い出すなんて……いえ、それはいいです」

 

 愚痴りだしたら止まりそうになかったので無理やり飲み込んだ。

 

 エイルシアが聞きたかったのは1つだけだから。

 

「元気でしたか? 心配したんですよ」

「……うん。みんなとうまくやってる」

 

 今はそれだけ聞ければよかったエイルシア。微笑んだ。

 

「驚いたよ。リアトリスさんがいきなりシアさんを連れてきてさ。シアさんはシアさんで折角だから手合わせしましょう、って」

「ガンプレートの腕前はやっぱりユーマさんに見てもらわないとわかりませんから。どうでしたか?」

「もう驚いた。でもシアさん1人で学園まできたの? 狙われたこともあったんだし危険だったんじゃ」

「ユーマ様。今のエイルシア様は常に私が傍にいます。何人たりとも触れさせはしません」

「……ああ」

 

 何とも頼もしいことを言う風の精霊。同じ《風森》なのに何故こうも風葉と違うのか疑問に思う。

 

 教育方針の違いか?

 

「《精霊使い》。シアさんもなれたんだね。ガンプレートもだけど相当訓練したんでしょ? 手合わせしても信じられないよ」

「精霊の力は風森から直に教わりました。ガンプレートの訓練はラヴちゃんと一緒に」

「へぇ。ラヴニカは元気?」

「もちろん。今度会ったらびっくりしますよ」

 

 エイルシアもあれから風森の国で色々とあった。その中で義妹となった魔人の少女とも歩み寄ることができたという。

 

 お姉ちゃんとは呼んでくれないんですけどね、とエイルシアが言うので2人して笑う。

 

 ユーマが風森の国にいた頃はいつもそうだった。少しだけ懐かしい。

 

「姉さま。リア先輩が待ってる」

「……そうね。ユーマさん、先に行ってください。被った砂を払ってエイリークと一緒にきますから」

「わかった」

 

 仲間たちの所に走るユーマ。アギ達が絡んでくるよりも早く、ガンプレートの事でティムスが食ってかかっている。

 

 そしてその場に残ったエイリークとエイルシア。

 

 突然の再会。エイリークは彼女に言いたいこと、聞きたいことが沢山ある。

 

「エイリークも元気そうね。嬉しいわ」

「……あのね姉さま、風森がね」

 

 沢山あったのにすぐに思いついたのは、エイリークが風葉を通じて初めて風森と《交信》した時の事。

 

 精霊は告げた。

 

 

 ――今のあの子を《勇者》にしてはいけない

 

 ――叶うならば私の血を引く貴女たちが彼の助けとなってください

 

 

 きっとエイルシアは何か知っているはずだ。風森はこうも言ったのだから。

 

 

 ――エイルシアはあの子を救う為に還す方法を模索しています

 

 

「姉さまが1人学園に来たのはもしかして」

「……これです」

 

 エイルシアは1枚の紙を見せた。それは

 

 

“リーズ学園運動会のご案内”

 

 

「……え?」

「これです」

 

 目を疑うエイリーク。

 

 運動会は学園の公開授業を兼ねたレクリエーション大会。3日後にある。

 

 エイリークが見せてもらった紙は保護者宛てに毎年送られる案内状だ。“ご父兄の皆さまのお越しをお待ち申し上げております”と書いてある。

 

「私も1度くらい学園に来てみたかったの。毎年運動会はこっそりお父様がリィちゃんを見に行ってるけれど、今回は代わってもらったわ」

「嘘!?」

「気付いてなかったの?」

  

 2重の意味でびっくり。

 

 まず国王様、仕事して下さい。

 

「本当にそれだけ?」

「ええ。カレハのおかげで国から離れても精霊の加護が私を守ってくれる。特訓して護身術もばっちり」

「……」

 

 それにしても姉さま、強くなりすぎです。

 

 実はエイリーク、ガンプレートや《精霊使い》の力を除いても《魔法使い》としての姉の戦闘力を知らなかった。初めて見たのだから余計に驚いている。

 

「そろそろ行きましょう。カレハ」

「はい。エイルシア様」

 

 精霊が風で主人の服や髪の砂を吹き払い、髪を整えるとエイルシアは皆のもとへ颯爽と歩いて行く。茫然と見送るエイリーク。

 

「……昔の姉さまだわ。でも」

 

 稀に突拍子もないをことをするのは昔からだった姉姫様。

 

 ただ自然に振る舞う笑顔は少し前までエイリークが取り戻したいと願ったもの。素直に嬉しいと思う。

 

 《風邪守の巫女》という重い宿命から解放されたエイルシア。それでも国の事、目覚めて間もない王妃の事、義妹となった魔人の事、そしてエイルシア自身が世界で確認されている数少ない《魔法使い》であること。今も彼女にかかる負担は大きい。

 

 事情を知り彼女が羽を伸ばしに学園に来たと言われれば納得できる。

 

 普通ならば。でもエイルシアの妹達は違う。

 

「ラヴニカ。アンタが言いたいことは何? ここで姉さまは何をしようとしてるの? それに……」

 

 風森の国から届いた手紙。その最後の1枚はエイリークにとっても義妹である彼女からのメッセージ。

 

 

“あねうえがにつまっておる。ゆ-まをかしてやれ”

 

 

「アイツはアタシのじゃないわよっ!!」

 

 

 今のラヴニカを知る由もないが、1度帰って話をする必要があるとエイリークは思った。

 

 +++

 

ここまで読んでくださりありがとうございます。

 

《次回予告》

 

 色々とパワーアップして登場のエイルシア。しばらく学園に滞在することに。

 

 風森の姉姫様は召使い(ユーマ)を連れ、仲間たちを巻き込み学園をゆく。

 

 

 次回「旋風姫 学園横断編」 

 

「それってデートなんじゃ……」

 

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