エースの初仕事 自警部編
《鳥人》、《一騎当千》……これで5人
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前回までのベスカさん
報道部の幽霊部員として暗躍する彼女は部長の罠にかかりジンと対面。2人きりに
気になる少年に正体がばれるのを恐れるベスカだが思いのほか彼女の変装にジンが気付かない
「一度あの子のお茶を飲むといいわ。よかったらワタシが淹れて差し上げます」
「はい。今度ユンやセリカさんにも教えよう。ベルティナさんや先輩たちは知っているのかな?」
「……女のひとばかりね」
2人の雑談は続く
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ユーマは今空を駆けている。前を翔けるトサカ頭を追いかけているのだ。
「《鳥人》。たしか部長さんのメモによると……」
先程読んだ資料を思い出す。
《鳥人》、ヒュウナー・フライシュ。戦士科の2年生で《天翔術》を扱う学園の特攻隊長。(自称)
空中戦に特化。これしか能がない。鳥頭。
無所属の《会長派》。不良というよりも悪童。悪戯しては空に逃げる馬鹿。
“《Aナンバー》である前に学園のバカ代表なんだよ。トリ頭だし”
by部長
「なんだかなぁ」
辛辣だった。
しかしユーマは彼に追いつけない。《鳥人》の飛行方法は宙を走る《天駆》と根本的に違うようだ。
「埒が明かない。風葉」
「びゅーん、ですねー」
《高速移動》を併用して一気に距離を詰める。
「捕まえた!」
「甘いわ」
背後からのタックルをひらりと躱すヒュウナー。そのまま空中でターン。
ユーマは勢い余ってつんのめり、地面に向けて真っ逆さま。
慌てて《突風》で姿勢を制御して着地した。
「……もう1度だ」
直線のスピードならユーマが上。でも追いついくことができてもなかなか捕まえることができない。
「ステップ!」
「いなずまー、あたーく」
正面に回り込んでフェイントを交えたジグザグ走法で突進。《高速移動》を使うユーマの得意技。
しかし《鳥人》はユーマを相手にせず上昇と下降、縦方向の飛行移動ですり抜けた。
ユーマは捕まえきれずにまた着地。
《天駆》で宙を蹴り上げれば上昇はできるが下降は自由落下もしくは《風乗り》による滑空しかできない。疑似的な飛行には限界がある。
「駄目だ。スピードで勝ってもあの身のこなしと立体的な動きをされたら」
「ワイに空で挑もうたぁ甘すぎるわ。新人」
余裕の《鳥人》。ヒュウナーは今度は空中で『制止』している。
「《天翔術》は自由自在や。お前さんの紛いモンの飛行とは違うんやで」
実際にヒュウナーの飛行は軽やか。ユーマのように走ったり風で制御するような無駄がない。マンガで見る超能力者のような飛び方をしている。
「つーわけでブラザーの魂は貰うとく。赤騎士の姐さんのレアな写真燃やしてたまるかい」
「下手すると俺が燃やされそうなんだけど」
「知らん」
ヒュウナーは空を逃げる。ユーマは撒かれないようとにかく追いかけた。
直線ダッシュで追い付いて切り返しで離される。この繰り返し。鬼ごっこに終わりが見えない。
「どうにかしてカメラをとり返さないと。風葉、あれと同じ術式は使えないの?」
「きっとオリジナルのゲンソウ術ですよー。《天翔》とはべつものですねー」
「その《天翔》は?」
「習得にはー、あと20万のけいけんちがー」
「……要は高位の術式で使えないんだな」
最近の風の精霊はどこで覚えるのか俗っぽい。
「どうする? それにどうして俺がカメラをとり返さないといけないんだ?」
「それですけどー」
根本的な疑問を口にするユーマに風葉も疑問があった。
「カメラはー、壊していいのではないですかー?」
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逃げる《鳥人》、ヒュウナー・フライシュ。実はユーマの事が前から気に入らない。
彼は《会長派》。生徒会長が《竜使い》の代わりにとスカウトしたのだ。
《皇帝竜事件》を通してユーマを危険視した生徒会長。本来の《Aナンバー》の候補10人から無理やりユーマを外し、空いた席に選ばれたのがヒュウナーである。
知る人から言わせれば彼は間に合わせの第9位と揶揄される。(ティムスは技術士なので10位に固定)それでいてユーマが異例の11番、《アナザー》のエースとなったのでますますヒュウナーの立つ瀬はない。
ただし彼はこれに関しては気にしていない。エースなんて本当は柄じゃない、いわくつきの方がアウトローな感じで箔がつくと彼は思っている。
それに次点だとしてもまだ2年生である彼の評価は正当なもの。隠れる場所のない空を戦場とする《鳥人》は常に相手に姿を晒さねばならない。ただ飛べるだけでは対空攻撃の的にしかならないのだ。
ヒュウナーの実力は並ではない。ただ1人に向けられる火線を掻い潜る度胸と空からの強襲、その突破力は現エースのツートップをぶち破ったこともあるのだから。
彼がユーマの事を気に入らないのは別に理由があった。
空中鬼ごっこは続く。しかしヒュウナーの後方にいるユーマは意外とおとなしい。
「なんや。アギの『舎弟』と聞いとったが根性なしかい?」
すると
びゅん
「…………な」
《風刃》のカマイタチがヒュウナーのトサカを掠めた。
「外したか」
「まてぇい!」
短剣を構えていたユーマに突っ込み。
「おまっ、本気かい!?」
「作戦変更。捕まえれないなら撃ち墜とす」
「てめっ、こっちには人質が」
「どうせ壊すからついでに……」
「ついでで人を撃つんかい!!」
絶叫の《鳥人》にユーマはガンプレートを抜く。
「ジンがいれば狙撃で一発なんだろうけどなぁ」
「へたなー、てっぽもかずうちゃあたるー」
「黙らんかい!」
うたう風葉にも突っ込む《鳥人》。
「というわけで勝負」
「ええい、逃げ切ったる」
ハンティング開始。
「ストーム・ブラスト」
「なんの」
容易く躱されるがこれは牽制。
「ダブルブーメラン、風葉も」
「ばんばんばんばん」
左右に旋回する《風刃》に《風弾》の連射。
「バブル・ボム、《突風》」
「ばんばんばんばんばんばんばん」
浮遊機雷の水の泡を風で周囲にばら撒く。障害物だ。
「ちょ……」
「フレア・ミサイル、プラズマ・ビュート」
「ばんばんばんばんばんばんばんばんばんばんばん」
誘導火炎弾に不規則な軌道を描きながら襲う電撃。
「ばんばんばんばんばんばんばんばんばんばんばんばんばんばんばんばんばんばんばん……」
「多いわ!!」
風葉、トリガーハッピー。
「すげ。全部躱してる」
「この程度の修羅場何度もくぐったわ……ぜはー」
息を切らしながらもヒュウナーは凌いだ。さすがはエース。
ただし怒り心頭。
「なんやそのちび! 馬鹿のように撃ちやががって何のつもりや!!」
「だんまくしゅーてぃんぐですよー」
「……本当にどこで覚えるんだ? それ」
精霊のふしぎその2。
その1はどうしてミサのクッキーだけ食べれるのか?
「《精霊使い》! もう勘弁ならん、そのちび諸共シメたるわ!!」
ヒュウナーは爆発的に加速してユーマに突撃した。
瞬間速度が《高速移動》を超えるヒュウナーの術式は《疾駆》だ。これで空から強襲する彼はまさに人間ミサイル。最速のエースでもある。
それは泡の機雷が破裂するよりも速く、風葉の展開する弾幕に当たるよりも迅く――
「爆風壁」
「どわっ!」
爆発。ユーマが予め仕掛けておいた風の防壁によるカウンターが炸裂。
「ばんばんばんばんばん」
爆発の反動で退くヒュウナーに風葉は追撃。再び乱射。《風弾》を躱すことができなかった《鳥人》は遂に地に墜ちた。
「ちび! 覚えておれ!!」
どかーん
「あの人も突撃馬鹿か……」
正面からの攻撃には滅法強いユーマ。
「それよりも……風葉?」
「あの緑色はー、品がないですよー」
「……」
精霊さんがやけに好戦的だったのは、彼のトサカがお気に召さなかったせいらしい。
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「……ここは、どこや?」
「自警部」
墜落して気絶したヒュウナー。目が覚めるとロープでぐるぐる巻きにされていた。
「てめ、《精霊使い》」
「ユーマだよ。あとここは正確に言うとその部長室前だね」
カメラを破壊したユーマはヒュウナーを捕らえた後に報道部部長に連絡。
「だったら彼に用はないや。ミスト君と一緒に自警部に引き渡して」
ブソウ君のところで反省させてとは彼女の言葉。
というわけで吹き飛んだ《霧影》を回収したユーマは2人をイモムシにするともう1体の精霊、砂更の砂で自警部本部まで運んできた。
地面を這う砂に運ばれるイモムシはまるで蟻が巣穴へ運ぶ餌のようだったという。
「フフ。散々だったな、ブラザー」
「すまん。お前さんの魂、壊されてもうたわ」
「それも計算通り」
「何やて?」
「……フフ」
簀巻きになっても不敵に笑うマフラー男。
「ブソウさーん、ユーマです。入りますよー」
そんな2人のやりとりは置いといて、ユーマは直接部長であるブソウに2人を引き渡そうとする。
何せミストもヒュウナーもエースなので他の自警部部員には任せられない。
むしろ部員たちが彼に押し付けた。
ブソウ・ナギバ。自警部部長、3年生。
《紙兵》を操り1人で最大千人もの兵力を運用できる《一騎当千》。戦士に見られがちだが魔術師系の1つ、《符術士》である。
苦労人、貧乏くじが彼の2つ名だという噂もある。甘党。
彼には本当に世話になっているユーマ。会うのも久しぶりだ。
「……なんだ、この組み合わせは?」
でもってブソウが見たものは今期のエースにして問題児の3トップ。
一度に見ると頭が痛くなる。
「盗撮犯とその協力者を捕まえました。部長さんがブソウさんに反省させてって」
「部長……ああ、あいつか」
それを聞くとますます頭が痛いブソウ。また俺に厄介事を……と愚痴をこぼす。
「この部屋、前より汚いですね」
「……誰のせいだと思ってる」
部長室に備え付けられたデスクやテーブルは相変わらず、椅子の上まで書類の束が占領している。同じ部長室でも報道部とは比べ物にならない。
特に前来た時にはなかった巨大な十字架は嫌にも目に付いた。
(……鬼神モードの記憶はなかったって聞いてたけど)
ユーマは見なかったことにした。
「ほとんどが《皇帝竜事件》に関する報告書だ。捕まえた生徒と竜騎士団残党の取調べに壊したスタジアムの被害報告と苦情。職員に提出するものもある」
あと3日も寝泊まりして作業すれば寮に帰れるなとブソウ。
「へへ。ザマないなぁ、《一騎当千》」
「……フフ」
嘲笑うイモムシ。彼らはブソウと敵対関係にある。
捕まえる側(自警部)と掴まる側(不良&変態)の関係。
「貴様等」
「ブソウさん落ち着いて」
ユーマは慌てた。寝不足と疲労でブソウのリミッターが外れやすくなっている。
この中で《鬼神モード》を知っているのはユーマのみ。ヒトではないアレになればイモムシたちと協力しても逃げ切れる自信がない。
あの十字架を手に持たせたら……終わりだ。
「これ、これあげますから」
「ナンダ……? クッキーか」
変わりかかっていた。間一髪でユーマは甘いものでブソウの気を引く。
「……美味いな。どこの店だ」
「特注品です。風森の知る人ぞ知る名菓、ミサちゃんクッキー」
「ほう」
でたらめを信じるブソウ。まあ、元々風森の王妃がミサに託したレシピなのであながち間違いではない。
「入手手段があるなら是非教えてくれ。 これは……いいものだ」
クッキーを噛み締める甘党。
「はい。今度職人を紹介します。(この人本当に機嫌よくなったよ。アギの言った通りだ)」
「本当か? それは楽しみだ」
クッキー1枚で平穏を取り戻せる自警部部長。
連日の激務に身を置く彼にとってちいさなしあわせは明日への活力だったりする。
「む~」
そしてそのしあわせを奪われたのは風の精霊。
「風葉?」
「わたしのー、クッキー……」
恨みがましい視線をユーマに送る。ちょっと涙目。
しがみつく肩に爪(あるのか?)を立てては地味に痛い。
「なんやちび。がめついやっちゃなー。……太るで」
「むー!」
それからデリカシーのない鳥頭が1人。
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一方その頃、喫茶ハイドランジア。
「カメラはミツルギ君が壊したって」
「そうか」
「もしかして残念に思ってない?」
「まさか」
今日の勤務時間を終えた《烈火烈風》、リアトリスはそのまま報道部部長とお茶を楽しむ。
「ミスト君は変態でも腕は本物だよ。『これが貴女の真実!』とか言って綺麗に撮ってくれるからね。彼の写真集見たことない?」
ミストの写真の腕前は有名。男女問わずモデルを志願したり指名で写真を頼みに来る人がいるほど。
彼のだす写真集は人気商品で報道部の収入源でも主力である。
「確かにそうなのだが彼の態度は何というか生理的に」
「照れ隠しだよ」
1割くらい
「君も騎士である前に女の子なんだから興味あったでしょ? きっとかわいく撮れてたと思うんだ」
「何と言われようがもう遅いさ。……まぁウェイトレスをやるのは大変でも楽しいよ」
その陰には《旋風の剣士》の涙ぐましい努力があったりするけど。
「ところでこれなーんだ?」
「? 念写器の記憶媒体……!? まさか」
「そう。ミスト君の魂」
リアトリスは驚いた。いつの間に?
「ミスト君を踏みつけたときにね。一度検閲にかけるのが報道部のルールだから」
「……ミツルギに追わせたのは演技か?」
「裏で売るとしても生徒会や自警部の目を欺く必要があるんだよ」
「よこせ」
「やだ」
リアトリスに緊張が走る。……斬るか?
「というわけで一度現像してみない? マズイと判断するのは君に任せるし気に入ったものはサービスするよ」
「……わかった。同行しよう」
内心ほくそ笑む部長。リアトリスに隠さずとも写真を燃やされない自信が彼女にはあった。
そう。《烈火烈風》は自分の写真(ウェイトレス姿)に絶対興味がある。
だって勤務が終わった今でも着替えずエプロンドレスのままだから。
「報道部へ行くぞ」
「……いいけどね」
さらにそのまま外へ出ようとする彼女を見ると「ただの素ボケかも」と思いなおす部長だった。
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戻って自警部本部。事件が起きた。
それは精霊の凶行
すぱーん。……ふぁさ
「「「……」」」
絶句。
風葉の《風刃》がヒュウナーのトサカ状の髪を刈り取ったのだ。
「ぶいはかいー」
「風葉! 『おうち』に帰りなさい!!」
「ぎゅむ」
ユーマは風葉を《守護の短剣》に無理やり押し込んだ。最近の奔放ぶりは誰に似たのやら目に余る。
「なんや? なんか頭が軽く……」
イモムシ状態のヒュウナーは確認できず惨劇にまだ気付いていない。
「フフ。ブラザー、これが真実だ」
「ミストさん!?」
なのにいつの間にか縄抜けしたミストがどこからとなく鏡を取り出す。
彼は《忍者》。いつでも脱出できたらしい。
「何してんの!?」
「ヒュウ。それはイカスぜ」
「……」
「ヒュウナーさん?」
「…………なんやて」
茫然としていたヒュウナーはミストの言葉に遅れて反応した。
「前から思っていた。ブラザー、お前の髪型は古い」
「なんやて!?」
「だがその髪型は斬新だ。ただの伸びすぎたモヒカンが無造作にも切り揃えられさっぱり感がある」
「……」
まるで鎌で草を根元から刈り取ったようなさっぱり感。
「後輩、この髪型はなんだ?」
「……ソフトモヒカン?」
急にふられても困るユーマ。しかしミストのフリにユーマは賭けにでる。
ごまかせ
「ヒュウナーさん。実は俺があなたを撃ち落とせたのはその髪型のせいです。あのトサカはきっと空気抵抗がでかい。つまり……あなたの特性を損なっています!」
「なんやて!?」
衝撃。あとヒュウナーに突っ込みの才能はない。
「風葉は風の精霊。実はヒュウナーさんの力を引き出すイカした髪型を知っていたのです」
「そうやったのか……」
誤解していく《鳥人》。そんなわけないのに。
(わたしはー、品がないからー)
(風葉は黙れ)
「これなら空気抵抗を減らしつつセットに時間がかからないはず。風葉が早まったのは謝りますけど気に入りませんか?」
「いや、そう言われれば悪うないかも……」
「パンクでファニーです」
*パンク……過激、攻撃的な意味で
*ファニー……やっぱり滑稽だから
意味はあんまり通じていないようだ。ユーマは疑問を持たせないよう話を変えつつ畳み掛ける。
「どうせなら二つ名も変えましょう。《鳥人》なんてブソウさんやミストさんに比べたらダサいですよ。そう、《コンドル》なんてどうですか?」
「それええな!」
*コンドル……禿鷹
「大空を舞う猛禽類。ぴったりです」
「《精霊使い》、いやユーマ! 気に入らん奴やと思うとったけどええ奴やったんやな」
お前さんは《皇帝竜事件》でワイのお株を奪うように空から登場したりしたけれど、とヒュウナー。
彼がユーマを気に入らなかったのはそれだけである。
馬鹿なのだ。
(……フフ。さすがだ後輩、教えることはないようだ)
(ミストさん?)
(君は『天使』を見せてくれたからな。ブラザーはそうやって扱うのさ)
(……)
彼が憐れになってきた。
「……ヒュウナーさん。あとこれはエース親睦会の招待状です。ブソウさんも」
でもちゃっかり自分の仕事は果たすユーマ。2人は快く承諾してくれた。
「今日はええ日や。久々に地下の反省室で飲もうでブラザー。ユーマも来い」
「え?」
「フフ。慣れるとあそこも良い隠れ家さ」
自警部部長の目の前で飲み騒ぐと堂々と言い張る常連2人。
「ブソウさん?」
「……どうせお前らは反省室行きだ。ミツルギは好きにしろ」
諦めがちのブソウ。
「反省室は最近リフォームしたばかりだ。……快適だろう」
「お。ええやないか」
上機嫌の《鳥人》改め《禿鷹》。ブソウの含むところが理解できなかった。
「いくでー」
「……では」
「失礼します」
部長室を去るユーマ達3人。
「あいつら……」
残るはブソウと室内に撒き散らされたヒュウナーの緑髪。
「誰が片づけると思ってるんだ?」
虚しくなった。
そのあと反省室でユーマ達を待っていたのはお仕置き用《十人兵》3小隊と磔用の巨大十字架。外から鍵を掛けられ、協力して脱出を図る3人がいたのは別の話。
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最後に
「……くー」
報道部部長室。ソファで眠る《黙殺》。
(…………おなかすいた……ごはん……)
夕方6時を過ぎて覚醒した彼女。今はジンとベスカ、2人の邪魔をしてはいけないと起きるタイミングを失って寝たふりを続けていた。
「ただいまー。リアトリス連れて来たよー」
「「!?」」
部長とウェイトレス姿の《烈火烈風》に驚くベスカ。やっぱり気付いていない。
それよりも《黙殺》の反応はすさまじかった。
リアトリスは元エース仲間。《黙殺》の素顔を知っているし行方を眩ませていたものだから無防備に寝ていたら彼女に捕まってしまう。
《黙殺》にも苦手なものはある。
(リアの小言を聞くのは……いや)
瞬間芸といえる《黙殺》の脱出劇は見ものだったとのちに部長は語る。
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ここまで読んでくださりありがとうございます。
《次回予告》
残るエースはあと5人。
ユーマはついに《会長派》、生徒会長と対面する
次回「エースの初仕事 生徒会編」
「俺がここにいて悪いか?」
「……くま?」




