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幻創の楽園  作者: 士宇一
幕間章 Aナンバー登場編
72/195

エースの初仕事 喫茶店編

《霧影》、《烈火烈風》……

 

……3話目でまだ3人かぁ

 

 +++

 

 

 前回までの話 

 

 

 報道部で《Aナンバー》の情報を入手したユーマ。その時にエースの1人、《霧影》に出会うが招待状を渡しそびれてしまう

 

 彼を追いかけるため、ユーマは喫茶『ハイドランジア』へ向かうことに

 

 

「ボクも行くよ。だからリリーナさん、ジン君の取材お願いね」

「ええっ!?」

 

 

 というわけでベスカの試練はまだまだ続く

 

 +++

 

 

 ハイドランジアは学園内で経営している喫茶店。創業50年、当代の学園長が女生徒だった頃からあるという。

 

 ここに今《Aナンバー》である《霧影》、そして《烈火烈風》の2人がいるらしい。

 

「リアトリスさんはどうしてここに?」

「奉仕活動。《皇帝竜事件》ではブソウ君と一緒に君を匿っていたからね。ちょっとした罰ゲームだよ」

 

 ユーマに協力してくれた赤毛の騎士もまたユーマやティムス同様学園長から処罰を受けていた。

 

「おばーちゃんに生徒会からエースの責任問題を問われる前に手を打ってもらったんだ。これを理由に彼女がエースの資格を奪われるのはボクにとっても痛い話だからね。ちなみに罰ゲームを考えたのはボク」

 

 聞けばその喫茶店の店長は学園長の茶飲み友達という。彼女の伝手でリアトリスは数日の間接客の仕事をすることになった。

 

「あの人にも迷惑かけたんだな。もしかしてブソウさんも?」

「ブソウ君はお咎めなし。というよりも彼は君の被害者でしょ? あそこまでやつれると流石に」

「……」

 

 自警部は試験期間から続く《皇帝竜事件》の事後処理と通常業務で組織自体が潰れかかっていた。特に部長であるブソウは報告書の確認が終わらず今も本部で寝泊まりしているらしい。

 

「日に日に弱ってくる彼を見るとなんかこう……きゅん ってこない?」

「それはおかしいです」

 

 

 ユーマはブソウを憐れみ、今度甘いものを持っていこうと思った。

 

 +++

  

 

「ここだよ」

「うわっ、人多いですね。こんなに人気のあるお店知りませんでしたよ」

 

 部長と2人例の喫茶店へと来たユーマ。外にいる客の多さに驚く。

 

 行列ができているわけではない。窓という窓に人が張り付いている。

 

「多くは一見さんだね。お昼はともかくこの時間帯ならいつもは常連だけなんだけど、期間限定であの《烈火烈風》がウェイトレスなんだから」

「確かにイメージにギャップはあると思いますけどそんなに注目されるものなんですか?」

 

 常に甲冑姿の女騎士を思い出しながらその店構えを見る。木造のこぢんまりとしたお店。

 

 ペンキで白く塗られた花壇の柵。店の外回りは花で飾られている。

 

「紫陽花。ハイドランジアってそう呼ぶんでしたっけ?」

「詳しいね。もう少し先が咲き頃なんだよ。ここは学園の花の名所のひとつ」

「『水の容器』の花でお茶屋さんか」

 

 

 店の中に入る。そこでユーマは怪奇現象を見た。

 

 ティーカップやケーキが宙を浮いている。

 

「……いらっしゃいませ」

「……」

「……ぶふっ」

 

 部長は思わず吹きだした。

 

 

 リアトリス・ロート。《烈火列風》の魔法騎士。学園では渉外(他校との連絡と交渉役)の任を受け持ちエースとしても上位の実力を誇る。

 

 そんな彼女が身の纏うのはいつもの銀の甲冑ではなく淡い青紫のスカートにフリル付きの白いエプロンを組み合わせたエプロンドレス。


 店の制服だが意匠としては可もなく不可もなくといったところ。リアトリスにも似合うしそれは問題ではない。

 

 

 リアトリスは転んでいた。ユーマと部長に「いらっしゃいませ」と言った時はおしりを2人に向けたまま。

  

「何で転んだんですか?」

「……バナナだ」

 

 

 フルーツパフェをこぼしてそれを踏んだらしい。

 

 +++

 

 

 一方その頃。

 

 

「あのう、取材の方は?」

「ち、ちょっと待って下さい」

 

 ジンと2人きりにされたリリーナことベスカは焦りを抑え部長から渡された取材メモを取り出す。

 

 

“ズバリ、あなたの女性遍歴は?”

 

 

 ぐしゃ

 

「聞けるか!!」

 

 

 握りつぶした。

 

 +++

 

 

「あはははは。君はボクの予想を裏切らないね。チーズケーキに紅茶ね」

「うん。今のはエイリークが言ってる『リア先輩』だった。俺はこのホットケーキセットで」

「……かしこまりました」

 

 憮然とした表情で注文を受けるリアトリス。

 

「君たちも私を笑いに来たのか? 言っておくが私は皿もカップも1度も割ってないんだぞ」

「さっきみたいに《浮遊》を瞬時に発動させるのはすごいんだけど、使わざる得ない状況になるのがありえないんだよ」

 

 自慢する彼女を部長は切り捨てる。

 

「……少々お待ち下さい」

 

 逃げた。

 

「あー今日は楽しいな。リリーナさんでもリアトリスでも遊べるし」

「何気に酷いこと言ってますね? でもあんな調子でお店に迷惑かけてないんですか?」

「大丈夫みたいだよ。ウェイトレスさんは他にもいるんだし」

 

 確かに青、紫、赤紫と色違いの制服を着るウェイトレスがいる。しかし部長には他にも思うところがあった。

 

 しばらくしてユーマ達の注文を持って来るリアトリス。ふらふらと危なっかしい。鎧を着てないと彼女はどうも注意力が散漫になる。

 

 すれ違う客に気付かず肩をぶつけた。転びそうになる彼女を支えるのは金髪のウェイター。

 

「ああもう、休憩終わりましたから手伝います」

 

 リアトリスに手を貸すウェイターはワイシャツとスラックスという服装の上にエプロンを身に付け、髪をまとめ上げた美少年。

 

「いつもすまない。8番のテーブルに持って行ってくれないか?」

「わかりました……って」

 

 ウェイターはユーマを見た。翠の瞳は驚きで大きく開かれる。

 

「なんでアンタが!?」

「エイリーク? どうしてここに? ……なんで男物なの?」

「誰が好き好んでひらひら着なきゃいけないのよ!!」

 

 先輩であるリアトリスにヘルプを頼まれたエイリークだった。

 

「もったいない。ここの制服は被服科の生徒が毎年デザインする人気のある服なのに」

「アンタは確か……」

「部長さん」

 

 顔見知り程度のエイリークに適当な紹介。

 

「残念。《竜殺し》で人気上昇中の《旋風の剣士》のウェイトレス姿が見れると思ったのに」

「こんな人」

「……わかったわ」

 

 十分に伝わったようだ。

 

「それで? アタシはアンタのせいでお金なくて、今仕事しなきゃいけないんだけど」

 

 なのにアンタは働くアタシの前でホットケーキ? と剣呑なウェイターさん。

 

「悪かったよ。とりあえず預かってた200万をすぐに返すアテはできたんだ。それでリアトリスさんに用があるんだけど……」

「あっ!」

 

 少し目を離していたらリアトリスはティーポットと一緒に宙を飛んでいる。何故?

 

「間に合えっ!!」

 

 エイリークは駆け出すと床を蹴りジャンプ。

 

 空中でリアトリスとティーポットをキャッチするとお姫様だっこのまま着地。ティーポットの中身を溢さなかったのは神業である。

 

「お騒がせしました」

 

 何事もなかったかのように接客用の笑顔をお客に向けるエイリーク。拍手に歓声があがる。

 

「……慣れてるなぁ」

「あの見世物、このお店の名物なんだよ。女性客が多いのも男装の彼女がいるからなんだ。今のも美男美女でお似合いでしょ?」

「エイリークばっかり負担かかってますね」

 

 

 それから先もリアトリスをフォローし続けるというかそれしかしないエイリーク。


 先輩想いというより騎士の本望なんだろうということでユーマは納得した。

 

 +++

 

 

 その頃のベスカさん。

 

 

 ジンに正体がばれないかと冷や冷やしながら適当な質問を繰り返す。

 

(これ、いつになったら終わるの?)

 

 遂に話題がなくなった。

 

「これで終わりですか?」

「い、いえ。待って下さい」

 

(ワタクシのバカー!)

 

 平常心を保てないベスカは切り上げるタイミングを誤った。


 決して彼ともう少し話がしたかった訳ではない、と思う。

 

「えと、えーと」

「リリーナさん?」

 

 錯乱するベスカ。

 

 ジンとの共通の話題を探した挙句、彼女はやってしまった。

 

 

「……りんりんって知ってる?」

 

 +++

 

 

 ユーマは店長に話をしてリアトリスを強制で休憩にしてもらう。

 

 彼女は仕事しない方が店の負担にならないので快く了承された。

 

 

「親睦会? わかった。出席しよう」

「やった。これで40万」

「……親睦会なんて今までしなかったのだが」

 

 リアトリスは学園長の意図が読めない。

 

「いや、私の事もある。学園長には何か思うところがあるのだろう」

「ん?」

 

 刑罰でウェイトレスをやらせたのは学園長ではない。リアトリスの目の前でケーキのおかわりをほおばっている彼女なのだが。

 

「あと8人。そういえば部長さん、《霧影》のミストさんもここに来ているって言ってませんでしたか?」

「なんだと?」

「ミスト君? そうだねぇ…………そこっ!」

 

 部長は突然手にしたフォークを壁に向けて投げる。

 

「……流石です。部長」

「いや、ハズレてるし」

 

 ユーマはもう驚きはしなかったが《霧影》はフォークを投げた反対方向から歩いてきた。

 

「ミスト君! この場合は出てこないのが正解なんだよ! 当てずっぽうでも『ちっ、はずしたか』って言うのがかっこいいんじゃないか!」

「俺が普通にで出てくることで馬鹿っぽくなりましたね」

 

 部長、羞恥で震える。珍しい反応。

 

「……フフ。素で恥ずかしがる部長もイイですよ。撮りますか?」

「この変態マフラー!!」

 

 念写器(便宜上カメラと呼ぶ)を構えるミストを蹴り飛ばすと部長は容赦なくスタンピング。

 

「…………フフ」

「こ、このっ」

「待て! ……ミスト。貴様、何を撮った?」

「真実」

 

 《霧影》は《烈火烈風》に向けて堂々と答えた。

 

「俺は真の念写能力者。妄想に囚われず目の当たりにした真実のみをカメラで写し撮る。それがエースとしての俺の使命……」

 

 血を流しボコボコにされた《霧影》は何事もなく立ち上がる。

 

 彼の使命感から溢れる誇り高きオーラに誰もが息を飲む。

 

「そう! エプロンドレス姿で笑顔を振りまく《烈火烈風》、リアトリス・ロート。転んで魅せるその真実チラリズムに俺は感動した!!」

 

 でも紛れもない変態だった。

 

「それ以上に俺は見た。あたふたと動き回る彼女に合わせて揺れる胸、鎧の下に隠されていたその真実いーかっぷ!! そして……」

 

 溜めに溜めて……叫ぶ。

 

「彼女が1人でこっそりこう……くるっ、とスカートを翻して照れていたときなんかもう……サイコウ!!!」

 

 店内の男共は湧いた。

 

 ミスト・クロイツ。彼の求める真実は美少女の意外な一面、ただそれのみ。そのためならば変態と呼ばれようが彼はあらゆる場所に潜みありのままを《念写》する。

 

 強い信念せいへきを持ち、高い潜伏能力に加え捜索、追跡の能力にも長け、さらに隠密性を買われてエースとなった強者へんたいである。

 

 男子生徒はこの真実の伝導者を影で勇者と讃え、彼の新作に想いを馳せるのだった。

 

「変態がっ」

 

 リアトリスは剣を抜く。それで男共を黙らせた。

 

 剣をどこから出したかはともかく、《烈火剣》と羞恥心で剣と顔を赤くして完全に切れた。

 

「まだ現像していないのだろう? カメラは壊して貴様の記憶を抹消。そのあとで消し炭にしてやる」

「フフ。できるか? あの《天才》は言っていたぞ」

 

 不敵のマフラー男《霧影》。歪む口元は赤いマフラーで見えない。

 

「鎧を着てない《烈火烈風》などただのボケねーちゃんだと」

「戯言を」

 

 一触即発。

 

「ちょっとまったあぁぁぁぁ」

 

 対峙する2人のエースに割り込むのは部長。

 

「落ち着きなよ。お店の中で暴れない。ただでさえエース同士の喧嘩はご法度なんだよ」

「何を言ってる! 貴様の部下だぞ」

 

 食ってかかるリアトリス。いつもの落ち着きがない。

 

「わかってる。さすがに今日のミスト君にはボクも怒った。でも今の君じゃ無理だよ。だからミツルギ君、君に任せる」

「……え? ここで俺なの?」

 

 ご指名のユーマは話を無視して《Aナンバー》の資料を読んでいた。

 

「えーと、とりあえずこれエース親睦会の招待状です。是非出席して下さい」

「それはどーも。この場を見逃してくれたなら出席してもいいよ」

 

 とりあえず10万ゲット。

 

「ミツルギ」

 

 でもって剣を持って睨むウェイトレスさんが怖い。

 

「……ミストさん、とにかく勝負です。俺が勝ったらカメラの没収と親睦会の出席。ミストさんが勝ったらこの場は見逃すということで」

「条件が対等じゃないな。君の要求は2つもある。だから」

  

 ミストは大騒ぎする自分達を無視して接客する給仕人を見た。

 

「俺が勝ったらそこの《旋風の剣士》、彼女にハイドラの制服を着せる。どうだ?」

「ん? 別にいいですよ」

 

 即答して了承するユーマ。勝手にエイリークを巻き込んだ。

 

「ミツルギ、いいのか?」

「いや、制服をちゃんと着ないあいつのほうがおかしいんだし。リアトリスさんだって嫌々ながらも着てるんでしょ?」

「……まぁな」

 

 内心自分のウェイトレス姿にちょっと喜んでいたとは言えなくなったリアトリス。

 

「フフ。見どころのある後輩だ。報道部に入らないか?」

「それはまた今度で。ルールは?」

「決闘はマズイだろう。それに俺は真実を追い求める報道部員。だから後輩、君は俺に真実を見せてくれ」

 

 両手を広げさぁ、と言わんばかりのミスト。

 

 どうでもいいがマフラーを口元で隠しているのに彼の声はよく通る。

 

「真実?」

「インパクトのある写真を見せればいいんだよ。主に美少女」

 

 部長が通訳してくれた。

 

「写真ってそんなすぐに……ってあった」

 

 偶然にもPCリング販売イベント後に打ち上げした時に撮ったものがユーマの鞄の中にあった。

 

「ほう、用意がいい。流石は《アナザー》。11番は伊達ではないと」

「……もし写真持ってなかったらどうしたんですか?」

「撮りに行かせる間に逃げる」

 

 ミストは卑怯者だった。

 

「ここからが勝負だよ」

「部長さん?」

 

 ユーマが写真を受け取ったのは今日、報道部を出る前だ。彼女はこの展開を予想してたのではないだろうか?

 

「ならば正々堂々と戦うしかない! 3回勝負だ。1度でも俺の魂を震わせる真実を見せてみろ!」

 

 ミストは戦闘しないのに無駄に構えをとる。ユーマはとりあえず無視して写真を選んだ。

 

「えーと、これ?」

「ガフッ」

 

「何だと!?」

 

 驚いたのはリアトリス。

 

 吐血するミスト。彼のマフラーが赤いのは血のせいかもしれない。

 

「……キサマ、ナンダソレハ」

 

「リュガ子とアギ美」

 

 打ち上げの時の悪ふざけで罰ゲームの写真だった。

 

 詳細は割愛するが女装したバンダナ兄弟は攻撃力が高い。

 

 それを見たリアトリスが顔を背ける程。

 

「魂、震えました?」

「吸い取られそうだ……あと2回」

 

 ミストはこの真実あくむを認めなかった。

 

「インパクト勝負かぁ……これ?」

 

 

 バタン!! ぴくぴく

 

 

「何が起きた!!」

 

 リアトリスは戦慄。

 

 ミストが倒れた。たかが写真を見ただけで痙攣している。

 

「……ミツルギ? 何を見せた」

「あー。見ない方がいいかも」

 

 それはお世話になった先輩の見舞いに行った時、丁度眠っていたのでついやってしまった悪戯。

 

 

 ブソ代。

 

 

 リアトリスは病室で安らかに眠る自警部部長の写真を見て泣きそうになった。

 

「…………あと1回だ」

「もういい! ミスト、ミツルギは君を殺す気でいるぞ」

 

 震える身体で起き上がるミストにリアトリスは同情した。ユーマの悪質な写真は《真実の目》を持つミストにとって害悪でしかない。彼女は気付いたのだ。

 

 ミストは勘違いをしている。ミストの敵はユーマではない。その背後には報道部部長がいる。

 

 写真の現像は彼女がしたはず。だからユーマの写真の中身をきっと知っている。

 

 部下であるミストの事をよく知った上でこの展開に持っていった部長の彼女が真の敵なのだ。

  

 

 からかわれたことがそんなに許せなかったのか?

 

 

「降参はしない。……忘れるな。この勝負は《烈火烈風》、お前の写真と《旋風の剣士》のエプロンドレスが懸っていることを」

 

 退く理由がミストにはなかった。それさえも彼女の罠だと知らずに。

 

「……さあ来い。俺の魂はこの程度では消されはせんぞ!!」

「魂震わせろって言ったのに……とっておきがあるよ?」

「……いや、できれば美少女がいい。どうせ死ぬなら絶世の美少女を見て死にたい」

 

 恐るべき真実じごくのおにを見たあとのミストはちょっと引いた。

 

 どの道次の写真で死ぬ覚悟はあるらしい。

 

「じゃあそれで。はい」

 

 

 ぷしゃぁぁぁぁ

 

 

「……もう、なんだこれは」

 

 リアトリスは呆れた。

 

 ミストは天を仰ぎ、それから倒れた。満足な笑みを浮かべている。

 

「……ありがとう後輩。俺は……」

 

 

 ――天使を見たよ

 

 

「……ミツルギ」

「これです」

 

 ユーマが見せた写真は半脱ぎの美少女が野郎どもに着替えさせられる図。

 

 天使は癖のあるふわふわした金の髪をしており覗く肌は写真で見てもきめ細やか。

 

 涙目でこちらを見る幼い顔立ちは保護欲を煽られ、男女問わず誰もが魅了される。

 

 

 天使の名はルックス・グナントという。

 

 

「……君達は一体何をしてたんだ?」

「打ち上げ中にやったゲームで罰ゲームが女装だったんだ」

 

 他にもエルド『姉弟』や4人組の写真がある。

 

「みんな弱いよね。ババ抜き」

「……」

 

 罰ゲームを免れたのはユーマと《直感》持ちのエイリークのみ。(彼女の罰ゲームは男装ではなくフリルスカートの着用)

 

「ミツルギ君も酷いよねー。《銀の氷姫》の男装写真でも見せればミスト君なんか一発なのに」

「そう仕向けたのは部長さんですよ。自分の男装写真だけ抜いたでしょ?」

 

 えへへ、と誤魔化す部長。

 

「それに俺も恨みがあるから。……この人ですよね? 去年の文化祭の写真撮った人」 

「……まあいい。この馬鹿のカメラは取り上げるぞ」

 

「…………そうは、いかない」

 

 女装少年の写真で昇天したはずのミストは幽鬼の如く立ち上がる。

 

「ミスト!?」

「この勝負、俺の負けだ。約束通り親睦会には出席しよう。……しかし! この俺の半身カメラはやはり渡せん」

「貴様、鼻血の出し過ぎでふらふらの癖に何を?」

「こうするのさ!」

 

 ミストは残る力を振り絞りカメラを遠くに投げた。

 

「フッ。後は任せぞ。ブラザー……」

 

 カメラを受け取ったのは店の出入り口にいた緑髪のトサカ頭。

 

「任されたぜ、ブラザー!」

 

 トサカ頭はカメラを持って店を出ると空を翔けていく。

 

「《鳥人》か! あのトリ頭め」

「だれ?」

「《Aナンバー》の1人だよ。ミツルギ君、追って!」

「えー」

 

 まさか他のメンバーも同じノリの人ではないのだろうかとユーマは不安になる。

 

「はぁ。いくよ、風葉」

「はーい」

 

 久しぶりの出番の精霊を連れてユーマは《天駆》で空を駆ける。

 

 成り行きでカメラを持つ《鳥人》を追いかけた。

 

 

 

 

「リア先輩、いい加減片づけてもいい?」

「これを埋めてくれ」

 

 撒き散らした鼻血を拭くモップとゴミ袋を持ってきたエイリークにミストを差し出すリアトリス。

  

 

 エイリークは面倒になってゴミは《旋風剣》で遠くに飛ばした。

 

 +++

 

 

 一方その頃。

 

 

「へぇ。リン先輩って《組合》でお店出してたんですね」

「そうよ。あの子ったらお茶淹れるのへたくそなのに茶葉を発酵させたりするのは上手なのよ」

 

 

 ベスカはジンに正体がばれないまま、共通の友人の話で何故か盛り上がっていた。

 

 +++

 

 

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