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幻創の楽園  作者: 士宇一
幕間章 Aナンバー登場編
69/195

風森の精霊と

風葉と彼女に関わる彼女達と。物語の謎を少々

 

 +++

 

 

 昇級試験、そして《皇帝竜事件》から数日。久しぶりの学園生活を送るユーマ。

 

 

「ミサちーのクッキーが食べたいですー」

  

 

 そんな彼の前にいきなり現れてこんなことを言うのはユーマの精霊である風葉だ。

 

「なんだよいきなり」

「わたしはずっとー、ポピっちの護衛をしてたんですよー。正当な報酬をくださいー」

「そう言われればしばらくミサちゃんにも会いに行ってないな」

 

 試験期間中のユーマは対《竜使い》戦に備えてずっと身を隠していていた。

 

 風葉もポピラの護衛として彼女のポケットの中にいたのでミサに会うこともクッキーをおねだりする機会もしばらくなかったのだ。

 

「わかった。今日までのご褒美と砂更の分もあわせてたくさん焼いてもらおう」

「はーい」

 

 さあいきましょー、とユーマの肩の上で彼を急かす風葉。

 

「今日は3枚食べますよー」

「……まあ、いいや。一体どこに入るんだろうな?」

 

 10センチほどしかない小さな精霊に胃袋があるかどうかの疑問はとりあえず考えないことにした。

 

 

 その日の放課後は普通科棟へ。

 

 途中でユーマはエイリークに呼び止められた。

 

「ユーマ。ちょっと待って」 

「ん? 用事?」

「ええ。一応無事に試験が終わったでしょ。結果はまだだけど」

「……」

 

 おかしい。ユーマの頭の中で何故か警鐘が鳴り響く。

 

「いろいろあったんだし、今日にでもパァーっとみんなで打ち上げをしようと思ったんだけど」

「あ!」

 

 そして。

 

 

 

 

「バァカアアアアアア!!!」

 

 

 

 

 訳あってユーマは吹き飛びました。

 

 飛距離が伸びていることにエイリークの成長が窺える。

 

 

「エイリっちー。ミサちーのところまで連れっててくださいー」

 

 風葉はユーマを置いて緊急脱出。

 

 主人の安否より今はミサのクッキー。そんな風の精霊。

 

「……仕方ないわね」

 

 

 こうして風葉はエイリークの肩に乗ってミサの下へ向かうことに。

 

 +++

 

 

「……あの時は非常時だったんだ」

 

 

 木に引っ掛かって宙ぶらりんのユーマ。今回の出番はこれでおしまい。

 

「……」

 

 

 +++

風森の精霊と

 +++

 

  

「ミサ」

「あれ、リィちゃん?」

「今日時間ある? 風葉を連れてきたんだけど」

 

 ミサ・クリス。風森の国の出身でエイリークの幼馴染。彼女の親友兼専属侍女を名乗っている。

 

「ユーマ君はどうしたの?」

「飛んだわ」

「……そっかあ。大変だね」

 

 ミサは流した。

 

 小さな頃は彼女も『飛ばされる側』だったので理由はどうあれユーマに同情した。

 

「それで今日は一緒にお茶にしない?」

「うん。リィちゃんが放課後に誘ってくれるなんて久しぶり。でも紅茶の葉、切らしてたよ」

「少しくらい待つわよ」

 

 そのあたりで風葉と時間を潰すからと言いかけたエイリークだが。

 

「リィちゃん、買いに行って」

「え?」

「《組合》の商店でいいお店見つけたの。今からクッキーを焼いてくるからその間にお願い」

「……仕方ないわね」

「ついでにお夕飯の買い物もいいかな? パンと卵とそれから……」

「ちょっと」

「駄目?」

 

 相部屋の寮でミサと住むエイリーク。家事全般、特に食事は彼女の世話になっているので強く言えない。

 

「もう。ついでだからね」

「ありがとー。それじゃあいつものテラスで待ち合わせね」

 

 にこにこと笑顔のミサ。

 

 幼馴染とはいえ自国の姫を使い走りに使うことに疑問を持っていないのはその親密さ故か。

 

「行こう。風葉ちゃん」

「はーい」

 

 さらにミサは買い物のメモをエイリークの渡すと風葉を連れて行ってしまった。

 

「あの子は《精霊使い》の素質があるのかしら?」

 

 いくらクッキーで餌付け(?)しているとはいえ風葉は風森の、ウインディ家を守護する精霊のはずだ。

 

 でも風葉は迷わずミサについて行く。1人取り残された風森の第2王女様。

 

「……買い物、多いわよ」  

 

 

 姫であることは置いておくとしても、エイリークは親友にも精霊にもないがしろにされている気がした。

 

 +++

  

 

 焼きたてのクッキーとお茶の準備をするのに1時間弱。

 

 待ち合わせの場所でエイリークを待っているミサと風葉。

 

 

「ポピっちですー」

「ポピラちゃん? こんにちは」

「……風葉ちゃん?」

 

 

 ポピラ・エルドは精霊の風葉をかわいがっている。

 

 ポピラは《同調》スキル持ちで風葉の独特の感性(ぐるぐるーのどかーん! など)を理解できる。なので彼女達は仲が良い。

 

 

 通りすがりのポピラはミサの肩にともだちの精霊がいたので立ち止った。

 

「ミツルギさんはどうしました?」

「飛びましたー」

「馬鹿ですね」

 

 理由は問わなかった。どうでもよかったともいう。

 

「今からリィちゃんとお茶にするんだけどポピラちゃんも一緒にどう?」

「リィ……ああ。エイリークさんですか。仲がいいのですね」

「わたしの親友なんだ」

「……」

 

 にこにこと自信を持って答えるミサ。ポピラは言葉に詰まった。

 

 何者だろう? ポピラは顔見知りでしかない彼女を探るように観察する。

 

 

 こげ茶の髪をエイリークと同じように1つに結んでいる。違いはミサが大きなリボンを使っていること。

 

 背はやや低め。156センチのポピラより低い。

 

 体格も小柄で童顔。学年は2年と聞いているが中等部の方じゃないかと疑ってしまう。

 

 ただ中等部の生徒とは思えないものが1つ。

 

「……大きい」

「このバスケットの事? クッキーの他に今日は本格的にティーセットも用意したから」

 

 風森の城で使う高級品だよ、と自慢するミサだがポピラは聞いていない。

 

「もしかして紅茶は苦手?」

「いいえ。……私の成長期はまだでしょうから」

「?」

 

 ポピラは自分の胸を抑え、ミサのそれと比べるとあの人は年上なんだから、と自分に言い聞かせた。

 

 

「クッキー食べていいですかー」

「駄目だよ。リィちゃんをちゃんと待とうね」

「うーん。わかりましたー」

「……」 

 

 風葉はミサによくなついている。風葉の唯一の理解者と自認するポピラはそれがおもしろくない。

 

「ミサさん。わたしはその……エイリークさんのともだちです」

「うん。知ってるよ。いつもリィちゃんを助けてくれてありがとう」

 

 にこにこ

 

「……風葉ちゃんもともだちです。仲良しさんです」

「そうですよー。クッキー食べていいですかー?」

「もう風葉ちゃんたら。駄目だよ」

「……」

 

 この前までポピラのポケットの中にいたともだちは今はミサの肩の上にいる。

 

 おもしろくない

 

「風葉ちゃんは試験期間中私の護衛をしてくれたんです」

「そうなの?」

「そうですよー。今日はミサちーにご褒美もらいにきたんですー」

「そうだったの? だったらつまみ食いに1枚だけ」

「わー。ありがとうですー」

 

 風葉はクッキーを抱き寄せ幸せそうにくるくる回る。

 

「……呼び方が違う」

「ポピラちゃん?」

 

 おもしろくない

 

「……試験期間中はずっとエイリークさんの特訓を手伝いました」

「うん。わたしはそっちの方はリィちゃんを助けてあげられないからポピラちゃんがいてくれて嬉しいよ」

 

 にこにこ

 

「時間が合えば最近はお昼も一緒です。お弁当のおかずを交換したりしました」

「あ。どうだった? リィちゃんったらわたしの作ったお弁当に感想1つ言ってくれないの」

「……美味しかったですよ」

 

 ポピラが食べたそれはエイリークへの愛妻(?)弁当だったらしい。

 

「リィちゃん遅いね」

「そうですねー」

 

 ぽやーとしてミサと風葉はエイリークを待つ。

 

「……」 

 

 ポピラにとってエイリークと風葉は数少ない彼女のともだちだ。その2人と自分以上に仲の良いミサにポピラは脅威を感じた。

 

 単に嫉妬しただけだが。

 

「……ミサさん」

「何かな? あっ、ポピラちゃんもクッキー食べる?」

「あなたは私の……敵です」

「え?」

 

 いきなりの宣戦布告。

 

「今の私は全てにおいてあなたに敵わないようです。ですがわたしは負けたくありません」

「ちょっと、何と戦うの? わたし!?」

「あなたはただのちちでか小娘ではありませんでした。……私のともだちはそう簡単にあなたには譲りません」

 

 ミサ、絶句。

 

 ちちでか小娘発言はできれば聞きたくなかった。

 

「今日はこれで失礼します。私も忙しいので」

「……」

 

 ミサはショックを受けているが彼女に敗北感を味わったポピラはそれに気付かず、珍しく負け惜しみの捨て台詞を吐くのだった。

 

「……あなたのお弁当、確かに美味しかったです。でもおかずのバリエーションと発想は……ミツルギさんの方が上でしたよ」

「――!!」

「また会いましょう」

 

 

 こうしてミサはポピラにとってはじめての強敵ともと認定された。

 

「ユーマ君が……お母さん(風森の城の侍従長)直伝のわたしのよりも腕が上?」

「ジンっちもおいしーて言ってー、セリっち達がっくりしてましたよー」

「……」

 

 

 ポピラは確かに一矢報いた。

 

 +++

 

 

 学園内にある売店の多くは商学科の生徒や《組合》の技術士が運営している。

 

 ミサお勧めの紅茶の茶葉を取り扱っている店もその中の1つであり、そこはフェアリーの少女が開いているという。

 

 

「いらっしゃいませ~」 

「お邪魔するわ……ってあら?」

 

 エイリークはその店員に見覚えがあった。

 

「確かアンタは……3号?」

「違うの!」

 

 リンはお客に対して本気で怒った。

 

 

 リン・エリン。《皇帝竜事件》ではジンと共にユーマに協力してくれたフェアリーの2年生。薬学を専攻。

 

 

「ユーマがそう言っていたからつい」

「その呼び名は一体何なの?」

「ジンに関する事じゃない?」

 

 エイリークが思う1号2号とはユンカとセリカの1年生コンビ。彼女の周りもその認識である。しかし実はユーマが『3号』と呼ぶのはリンが余りにも風葉にそっくりなためである。

  

 この時点では2号(幻創獣のピンク風葉)は公開されていない。大きな3号と彼は呼ぶ。

 

「ち、違うよ。ジンは私の後輩なの。ユンカちゃん達と私は違うの」

「そんな真っ赤になって否定しなくても」

「うう、だからっ」

 

 あくまで首を振るリン。

 

「往生際が悪いわね。……リン。アンタもしかして西国出身のフェアリー?」

「? そうだけど」

「あの時ジンは空を飛んだわよね? ……《妖精の羽》を彼に与えた?」

「――!!」

 

 驚いて口をぱくぱくとするリン。顔どころか全身真っ赤だ。

 

「知ってるの!?」

「何をかしら?」

 

 意地悪そうな顔。

 

「そ、それは……」

「伝説の勇者に告白した妖精の話よね」

「知ってるじゃない!!」

 

 絶叫。

 

 

 

 

 400年前に世界を救った勇者の伝説。その仲間の1人だった魔法使いの話。

 

 

 ――傍にいるわ。いつだって。私の風は貴方と共に

 

 

 それは故郷を救う為に仲間と離別した彼女の告白。

 

 《風使い》のフェアリーは《剣》の勇者に自分の想いと共に羽の力を彼に与え、最期は1人魔人と戦い命を散らしたという。

 

 

 

 

「彼女はいなくなって勇者の羽も消えてしまったけど、想いだけは残った。それは加護となって勇者を救うことになる」

「……」

「『離れても共に』、『永遠の愛をあなたに』。女性のフェアリーが異性に羽の力を与える意味あいってこんなだったかしら?」

「……フェアリーの女の子だったら憧れなんだよぉ」

 

 リンは観念した。西方のフェアリー族に伝わる伝説の挿話を知られていたら誤魔化しようがなかった。

 

「ユンカ達が知っていたら大騒ぎするわね」

「他の子は誰も知らないと思っていたのに……どうして?」

 

 リンにとってそれはいつか彼に気付いてほしいなー、なんて淡い期待を込めた内緒の告白だったのだ。

 

 それなのに色恋に程遠く疎そうなエイリークにばれたのは予想外でしかない。

 

「その話、発祥の地が風森よ。《風使い》の故郷だから」

「嘘! ほんとうなの!?」

 

 フェアリーのリンも知らないことだった。

 

「ウインディ家は元をたどればフェアリーの血を引いているって昔聞いたことがあるわ」

「だからあなたも《旋風の剣士》?」

「かもね」

 

 実際それは関係ないと思うエイリーク。彼女がフェアリーの血を引くことに納得しているのは《魔法使い》である姉姫や王妃がいるからだった。

 

 《風邪守の巫女》と呼ばれる風使い。彼女達が人でいて魔力を持つ理由だとすれば納得がいく。

 

 そして《風使い》が最後に戦った魔人というのはきっと……

 

「ああ。だからかも」

「なに?」

「別の事。風葉がアンタにそっくりな理由」

「?」

 

 それよりも、とエイリークは遅くなっているのに気がついて茶葉を買い求める。

 

「ミサ・クリスって子が買いに来るものがわかるならそれをお願い」

「ミサちゃんですね。お得意様だからおまけしますよ」

「それじゃあ割引きして」

「……えーと」

「ジンに今日のこと話すわよ」

「……1割引きで」

「わかったわ。ユンカに用事があるからまた今度」

「3割!」

「ベルティナって子がアタシと同じ戦士科で最近話かけてくるんだけど」

「……」

 

 

 

 

 半額で倍の量をお買い上げになりました。

 

 

 

 

 買い物を終え久しぶりに親友とゆっくりとした時間を過ごすエイリーク。

 

 ひたすらクッキーを貪る風葉。ミサは終始なんとなくしょんぼり気味だったけど。

 

 +++

 

 

 2人と精霊のお茶会が終わるとエイリークは風葉をユーマの所へ送っていく。

 

 正しくはお土産のクッキーをユーマの部屋へ届けに向かっているのだが。

 

 

「明日もきっと3枚食べていいんですよー」

 

 エイリークが持つ紙袋を見てほくほくした顔をする風の精霊。

 

 風葉はユーマがいつもクッキーを1枚しかくれないのが不満らしい。

 

「アンタも好きね。いっそのことミサの精霊になる?」 

「だめですよー。わたしは《風森》なんですからー」

「なによ、それ?」

 

 エイリークが冗談で言ってみたら意外にも風葉ははっきりと断った。ただ理由がよくわからない。

 

 風葉はエイリークの故郷である《風森の国》の守護精霊、《風森》の一部である。それはエイリークだって知っている。

 

「約束なんですー」

「約束? ユーマと契約した時のこと?」

 

 ちがいますー、と風葉。

 

「むかしむかし、ずーっと昔にしたあの人との約束なんですー」

 

 それは時を経て精霊となった《彼女》と、ずっと昔にこの世界からいなくなった《彼》がした約束。

 

「あの人は約束を守って会いに来てくれましたー。だからわたしは傍にいるんですー」

「……よくわからないわ」

「そうですかー? でもきっと覚えてますよー。エイりっちもー、シアっちもですー」

  

 エイリークとエイルシア、それと精霊の風森。

 

 

 その共通点は?

 

 

「……《風使い》、ウインディの話?」

 

 風葉はにこーと笑った。

 

「やっぱり。もしかして《風森》に『羽がない』のもアンタがフェアリーの姿をしているのもだからなの?」

 

 精霊は答えなかった。でもきっとそれが正解だという確信がエイリークにはある。

 

 だとしたら。《あの人》というのは……

 

「だったらユーマは……異世界の勇者、《剣》の子孫?」

「違います。多分」

 

 答えたのは風葉ではなかった。

 

 小さな精霊に姿を重ねて話すのは故郷の守護精霊。

 

「あの子に《剣》の因子はありません。……彼を追った《裏切りの魔女》の魔力も感じませんでした」

「風森?」

「でもよく似ています。黒髪も。あの子供っぽさも」

 

 翠の髪をした女性は昔を思い出すように優しく微笑む。

 

 

「救えなかった、助けたかったと泣いたあの涙も」

 

 

 少年の心に触れた精霊は

 

 

「《梟》に《狼》。それに『しろいいのち』が。あの子もまたあの人と同じようにたくさんのものに護られながら、自分を見失わずに誰よりも強くなろうとしている」

 

 

 いとしくて

 

 

「あの人と同じように貴女を、エイルシアを救ってくれた」

 

 

 ――守るから。だからまた会おう、きっと

 

 

「あの人は約束を守ってくれた。私は再びめぐりあえた」

 

 

 うれしかった

 

 

「あの人じゃない。でも彼と同じ心があの子にはある。だから私は傍にいます。風森の風はあの人と共に……」

 

 思い違いかもしれない。それでも精霊は少年との出会いを奇跡と信じたい。

 

 

「だからユーマは姉さまの所に来たの?」

 

 いいえ、と風森。

 

「彼女とあの子の運命を変えようとしている《彼》にとってこの世界へ送ることは不本意だったず。……私があの子を《精霊使い》にその存在を書き換えた真実は、この世界に来てしまったあの子を私が護りたいため」

「《彼》とは誰」

「今のあの子を《勇者》にしてはいけない」

 

 風森はエイリークの問いに答えなかった。エイリークは『その域』に達していない。

 

 精霊は《世界》に譲歩してただ伝えるだけ。

 

「エイルシアはあの子を救う為に還す方法を模索しています」

「姉さまが?」

「僅かな時間ですが貴女も私(風葉)を知覚するようになりとうとう私(風森)と《交信》することができるようになりました。……魔力を受け継がなかった貴女もいつか目覚めるかもしれません」

 

 

 ――風森の精霊使いに

 

 

「貴女の運命は貴女のもの」

 

 風森の声が遠くなる。

 

「でも叶うならば私の血を引く貴女たちが彼の助けとなってください。あの子はきっと――」

 

 最後のほうは聞き取れなかった。

  

 

 

 

「ねぇ、風森」

 

 その願いはきっと精霊の我儘。本当はエイリークに関係のないこと。

  

 エイリークは自分や姉の、あの少年の運命なんて急に考えることはできなかったけど。

 

 

「よかったわね。またあえて」

 

 

 遠い祖先である彼女の幸せを祝福することはできた。

 

 

「そうですねー」

 

 エイリークの隣で風葉はにこーと笑った。

 

 +++

 

 

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