表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻創の楽園  作者: 士宇一
第2章 後編
57/195

2-15 決戦、皇帝竜

ユーマVS《竜使い》。第1ラウンド

 

 +++

 

 

 1人の少年は1つの絵に魅入られた。

 

 それは赤い空に黒い翼を広げ、羽ばたく黒竜の絵。

 

 竜の絵はほかにもあったが少年はその黒竜しか目に留まらなかった。黄金の角と爪を持ち、力強く圧倒的な存在感のある竜の姿にただ憧れた。

 

 羽ばたく黒竜の絵。背景の赤い空の下、描かれた炎と燃える街を少年は気にもしなかった。

 

 破壊者たる黒竜に対する畏怖よりもその力への憧れが強かった。

 

 

 最初はただそれだけだった。

 

 +++

 

 

 学園にいるすべての生徒が見守る中で《精霊使い》はエースである《竜使い》に勝負を挑む。

 

(学園長公認の決闘だと? ……ここで奴に負けたら、ボクはエースの資格を簡単に奪われる!!)

 

 離れているのにもかかわらず、向けられた短剣の切っ先は《竜使い》を確かに追い詰めた。

 

 学園の生徒を前にした公開試合、さらにはエースの座をかけた決闘となってしまえばエースはまず断れない。断れば恥さらしもいいところだ。

 

 《Aナンバー》の1人、ユウイ・グナントの立場が突然今になって揺らいだ。ユウイは挑戦状を叩きつけられた自分以外の《Aナンバー》を見渡す。

 

 誰もが驚き、面白そうに《精霊使い》を見るエースの中で眉間に皺を寄せて額を抑える自警部部長とその彼を見て苦笑する赤毛の騎士がいた。

 

 それとユウイを見てにやりとする錬金術師。3人が《精霊使い》側だとすぐわかった。

 

 ティムスと目があってとんでもないことに彼は気付く。

 

(重傷のはずの奴が《スタジアム》の補強工事を指揮した? それを今日までボク達が知らなかった?)

 

 そこで初めて情報操作の可能性、報道部を敵に回していたことに気付いた。

 

 

 元々報道部部長がユーマに協力したのは打算だったのだ。彼女は《竜使い》への報復のきっかけと『隠れ蓑』をずっと探していた。それが《精霊使い》の少年だったというだけだ。

 

 《竜使い》の最大の間違いは《精霊使い》を敵視したことではない。それ以前に報道部の情報を力ずくで盗んだことあったのが失敗だったのである。

 

 その事実を忘れて『中立』である報道部の『とっておきの情報』を信用したことが今の状況を作り出していた。自警部の特殊部隊と噂の『覆面男』のことも彼どころか学園の生徒すべてがその詳細を知らない。

 

 

 学園の中では全てを欺かれる。報道部を敵に回すということはそういうことだった。

 

 

「おい、そろそろ返事をしたらどうだ? みんな待ってるぜ」

 

 隣にいたティムスが沈黙するユウイに声をかける。

 

 誰もが注目していた。《精霊使い》が、他のエースが、学園長が、それに遠くで見ているであろう報道部部長が、本当の『敵』だった生徒会長が、

 

 

 学園のすべてが《竜使い》の次の言動に注目している。

 

 これは仕組まれたことだ。ユウイは間違いないと確信するが敵は明らかに消耗している《精霊使い》。

 

 その彼が《幻創獣》で勝負を挑むならば恐れる理由が彼にはなかった。

 

 

「……いいだろう。見せてやるよボクの力を、ボクの竜を! ボクの《皇帝竜》は最強だ!!」

 

 

 対戦者同士睨みあう2人。《スタジアム》は生徒の歓声で沸いた。

 

 

 +++

決戦、皇帝竜

 +++

 

 

「というわけではじまりました今期初の『エース争奪戦』。会場はここスタジアム。実況はなんと報道部部長であるこのボクだあぁぁぁぁぁぁ」

「馬鹿ですね」

 

 解説はポピラ・エルドでお送りします。

 

「ところで幻創獣にも詳しい《天才》の妹であるポピちゃん。この試合はどんな展開になるのでしょうか?」

「……はぁ」

 

 これは仕組まれたことだ。でもなんで私はここにいるのだろう、とポピラは不思議に思う。

 

「単純に《竜使い》対《精霊使い》ならばミツルギさんが勝つと思います。アギさんとの試合でもあの人はまだ精霊の力のすべてを見せていません」

「なるほど。では幻創獣同士での対決ならどうでしょう? 《竜使い》、ユウイ・グナントが圧倒的有利じゃないかのな?」

「そうかもしれません。でもミツルギさんはそれをわかっていながら幻創獣で勝負を挑みました。《皇帝竜》への対策は当然しているでしょう」

 

 とりあえず与えられた役割を無難にこなすポピラ。

 

「彼のセコンドにはポピちゃんの兄である天才君が付いています。やっぱり秘策ありなのか? 面白くなってきましたぁ」

「……」

 

 いいからはじめてください、とポピラ。それに対してわっかりましたぁ! とテンション上げっぱなしの部長。対極的な2人。

 

 

「因縁の対決はもう間もなく開始です! この放送は学園長主催、スポンサーは『エルドカンパニー』、ほか《組合》の各ギルドの提供でお送りします」

 

「カンパニー?」

 

 当人の知らないところで兄妹の会社(新設のギルド)が立ち上がっていたらしい。

 

 +++

 

 

「カイゼル!」

「グ、グルァアアアア」

 

 ユウイの幻創獣、《皇帝竜》は10メートル近い巨体と黒い翼を震わせて咆哮。

 

 《スタジアム》の観客に向けたパフォーマンスだ。

 

 

「……大きいわね。ユーマはアレにどう対抗するの?」

「わかんねぇ。そもそも幻創獣同士の戦いを見るのも初めてだぜ」

 

 観戦席ではエイリーク達がユーマの戦いを見守っていた。

 

 

「出ました。《竜使い》の代名詞、《皇帝竜》! 対するミツルギ選手の幻創獣は!?」

 

 ユーマも右腕の腕輪を掲げて幻創獣を喚ぶ。

 

「こい、コメットマン!」

 

 ドシーン! という衝撃と地響きは会場を揺らした。

 

 先程の彼の登場を彷彿させる空からの落下。銀の彗星が落ちてきた。

 

 

「い、《隕石落とし》だぁあああ!?」

 

 

 魔術師から見ればそれは火属性上位の砲撃術式にもみえた幻創獣の登場。

 

「ミツルギさん、この登場シーンに無駄なIMP使ってるんです」

 

 ポピラは呆れるが登場時のパフォーマンスはユーマのこだわりが勝った。大きな歓声。

 

 土煙で見えなかったユーマの幻創獣が姿を現す。

 

 

 全身が銀色に輝く逞しい体躯。身体のところどころには模様のような赤いラインが描かれている。

 

「人型? でもあれ」

 

 頭と一体化した仮面の貌には楕円型の大きな2つの目があり、敵である黒竜をただ見上げていた。

 

 

「さあ、やろう。ヒーローショーの始まりだ」

 

 

 ユーマの幻創獣はファイティングポーズをとる。

 

「ヘアッ!」

 

 コメットマン。

 

 地球を狙う侵略者たちから人々を守リ抜いた光輝く銀色の戦士。

 

「かかってこい、《皇帝竜》!!」

 

 自信満々のユーマ。肩を震わせるユウイ。

 

「……ふ」

 

 全長がユーマの腰までしかないそのヒーローの姿は、

 

「ふざけるなぁぁぁぁ!!」

 

 

 3頭身だった。

 

 +++

 

 

 試合開始。

 

「さあ、《竜使い》の絶叫と同時に試合が始まりました。なお、この勝負は1本勝負。相手の幻創獣に耐久値を上回るダメージを与えて消失させた方の勝ちとします」

 

 報道部部長の簡単なルール説明の間に幻創獣が互いに動きだす。

 

「そんな雑魚で皇帝竜が倒せるものか。いけ!」

「GO!」

 

 ドシン、と地響きを立てて歩く皇帝竜に対してコメットマンはダッシュ。驚く実況。

 

「は、はやい! 速いぞコメットマン! あの短足で一気に皇帝竜に接近!」

 

「コメットパンチ!」

 

 コメットマンは加速の勢いを加えて短い腕を振るう。ボフッ、と皇帝竜の脚を殴った。

 

「雑魚が。効くかよ」

 

 皇帝竜は銀色のチビを蹴り上げて鋭い爪で切り裂きにかかる。

 

「デュア!」

 

 振り下ろされる黄金の爪。コメットマンは空中で体勢を整えて《コメットキック》で応戦。

 

 キックの反動で真上にジャンプして皇帝竜の頭上をとる。

 

 今だ! ユーマは叫ぶ。

 

「コメット、ダァァァァイブ!!」

 

 ダイビングヘッドバット。先制はユーマの幻創獣。

 

「グガァッ」

 

 皇帝竜の頭に流星の様な体当たりが炸裂。皇帝竜のHPゲージを僅かに削った。

  

「きまったぁ! なんと、巨大な竜を相手に一撃を与えたコメットマン! ちっこいくせに戦えています。さらには皇帝竜のスタンピングをチョコマカとかわすかわすぅ。さあポピちゃん解説!」

「……幻創獣は思考操作なので細かい動作や機敏な動きは術者のイメージ次第になります」

 

 部長、うんうんと相槌をうつ。

 

「そうだね。皇帝竜が2本足で立っているのもコメットマンが人型なのも動きのイメージしやすいからだね」

「コメットマンは元々8頭身でしたが実は『人並みの動作』しかできなかったんです。ミツルギさんは幻創獣をあえて今の姿にして小さな全身をフルに使った奇抜な動きで人以上の敏捷性と運動性をコメットマンに与えたのです」

 

 ユーマの思考操作では超人じみたパワフルな動きよりコミカルな動きのほうが断然よかった。それを活かすためにデフォルメされた姿の幻創獣を採用したのだ。

 

 コメットマンは皇帝竜の脚や爪、尻尾の攻撃を掻い潜り、ちょこまかと動き回る。

 

 ユーマの幻創獣の操作はイース達との訓練の甲斐あって相当なレベルだった。コメットマンが視界から外れても《ウインドウ》から見る幻創獣の視点から攻撃を予測することができる。

 

 小さな戦士が大きな竜相手に立ちまわる様子は観戦席の生徒に大いにうけた。

 

「小賢しい。……非力なくせにボクの竜に盾突くな!」

 

 カイゼル・バースト。

 

 皇帝竜が必殺技である高熱線を撃つ態勢をとる。

 

 ユーマは思考操作で射線から離れるようダッシュ操作したが、コメットマンが何かに躓いて転んでしまった。

 

「さっさと消えろ! カイゼル・バースト!!」

「――っ! エレガント・ローリング!!」

  

 咄嗟に《じぇんとる・ビーン》の回避行動をイメージ。コメットマンは転んだはずみを利用してゴロゴロと連続でんぐり返りをして吐き出された熱線を躱してみせる。

 

「ふぅ。あぶねぇ」

 

 転がったコメットマンは途中で前転とびして綺麗に着地。ユーマの汗をふく仕草を真似て危ない危ない、とポーズをとった。

 

 滑稽な回避運動と幻創獣の人間くさい仕草に笑いが起きる。決闘は単なる見世物と化していた。

 

「……どこまでボクを馬鹿にする気だ?」

 

 ユウイはずっと怒りで震えていた。笑いを含んだ歓声は彼を苛立たせる。

 

「笑うな! 貴様、そんな雑魚で何故ボクに盾突く? 決闘までしてボクからエースの座を奪おうとする! 貴様には関係ないだろ? 《精霊使い》!!」

 

「「「……」」」

 

 悲鳴のような絶叫。沸いていた観戦席が静かになる。

 

「邪魔をするなよ。ボクは証明するんだ。ボクの竜、ボクの力を見せつけるんだ。……ボクには力がある。ボクの騎士団が、この皇帝竜が!」

「……」

「なのに貴様は馬鹿にしている。ボクの竜と戦うというのになんだそのチビは? ボクと一緒に笑い者になるためにこんなことをしたのか? 答えろ!」

 

 ユーマは質問には答えずに静かな声で逆に問い返した。


「そんなに自信があるならどうして裏で俺や他のエース候補の人を襲う真似をした? 何人の人をその竜で傷つけた?」

 

 ユウイの悪事を堂々と暴くユーマ。真偽はともかくざわめく観戦席。

 

「どうして、ティムス達を襲った? 間に合わなかったらあいつの左腕、駄目になっていたんだぞ」

「知るかよ! ボクは奴らに見せつけただけだ。竜のスゴさをな。そこの錬金術師が怪我したことなどボクには関係ない!」

 

 皇帝竜はコメットマンを無視してユーマを襲いだした。薙ぎ払われる尻尾をユーマは間一髪でコメットマンを割り込ませ全力で蹴り返させる。

 

「おおーっと、術者を直接攻撃。これは反則だぁ!」

 

「うるさい! 黙れ!!」

 

 実況相手に怒鳴る。ユウイは頭に血が上って自分が悪役になっていることに気付いていない。

 

 ユーマは反則も気にせずコメットマンで戦い続けた。

 

「気付いているか? お前の怪獣が見せてるのはただの暴力だ。そんなもので何がしたいんだ」

「うるさい! 貴様でもその雑魚でもどっちでもいい、消えろ!」

 

 地団駄を踏み、ただ暴れる皇帝竜。大振りな攻撃は小さなコメットマンに当たらない。

 

 ユーマは隙をついてコメットマンのパンチやキックを繰り出す。

 

 攻撃はボフッ、ポカ、といった感じの小さなダメージだが着実に皇帝竜に与え蓄積していく。

 

 コメットマンがギリギリのジャンプで回避するたび、皇帝竜の身体を駆け上って攻撃をするたびに観戦席から歓声が上がった。コメットマンを応援する声が増えていき、《竜使い》はその傲慢さが露見して勝手に孤立していく。

 

「黙れぇ! カイゼル・バースト!」

「――!? 跳べ!」

 

 再び放たれる熱線に驚くユーマ。撃たれる直前にコメットマンは皇帝竜の真下に全力移動。そこからロケットのように跳んで皇帝竜のあごに頭突きをかました。

 

 顎を強打して皇帝竜の頭が上を向く。《カイゼル・バースト》は観戦席の上を通り抜けていった。

 

「お前! どこを狙った!?」

「観戦席さ。うるさい奴らにボクの竜の力を教えようとしたまでだ」

 

 ユーマは睨むがユウイは平然としている。

 

「すべて焼き尽くしてやる。……ちっ、ゲージが溜まらない。こんな雑魚が相手だからダメージを受けることも与えることもできない。破壊しろ! カイゼル」

 

 皇帝竜が狙いを観戦席に変えた。しかし尻尾をぶつけようとして見えない壁に阻まれる。

 

 これはティムスが事前に施した防御結界の術式だ。

 

「馬鹿が。補強工事したといっただろ?」

「何だ? なんだよこれぇ!」

 

 《結界》を気にもせずユウイは皇帝竜で殴りかかる。少しずつだが結界から軋むような音が聞こえ、同時に観戦席からも悲鳴が上がる。

 

「ユーマ! 攻撃を一点集中されると流石にマズイ。皇帝竜を抑えろ」

「わかった」

 

 コメットマンが無防備な皇帝竜の背後をとって飛びかかる。自身の何倍にもなる高さまでジャンプして攻撃。

 

「コメットキックっ!?」

「ひぃぃっかかったぁ!!」

 

 ユウイが奇声をあげ皇帝竜が翼を広げた。そして振り向きざまにコメットマンを翼で叩き落とす。

 

「しまった」

「雑魚が。掴まえたぞ」

 

 コメットマンを掴みあげる皇帝竜。握り潰そうと力を入れる。

 

「なんだぁ? 潰れないじゃないか。 フン!」

 

 コメットマンの防御力は意外にも高い。皇帝竜は握り潰すのを諦め、気のすむまで地面に叩きつけては何度も踏みつぶした。

 

「潰れろ。潰れろよ! ぷちぷちぷちぷち潰れろ! ヒャハ」

 

 奇声混じりの叫びがスタジアムに響く。いくら幻創獣だからといってもコメットマンをいたぶる戦い方は見ていて酷い。

 

 コメットマンのHPゲージが一気に減っていく。

 

「雑魚が。……さあ、今度はお前たちだ。やれ、カイゼル!」

「グガァァァッ!」

 

 3発目の《カイゼル・バースト》は明らかに観戦席を狙ったものだ。

 

 いくらなんでもあの熱線はティムスの付与した結界でも耐えられない。

 

「ユーマ!」

「うおおおおっ!!」

 

 倒れたコメットマンが再び跳び上がり皇帝竜の正面に出る。さながら観戦席にいる生徒を守るように。

 

「コメット・シールド!」

 

 ユーマはやむを得ず必殺ゲージを消費してバリアーを張り、《カイゼル・バースト》を正面から受け止めた。

 

「邪魔を、するなああああ」

 

 均衡したのは一瞬。すぐに押し切られた。

 

 観戦席への直撃は避けられたがコメットマンは多大なダメージを受ける。HPゲージが2割を切った。

 

「なんだよお前? 雑魚のくせにまだ消えないのか」

「……コメットマンは怪獣から地球を守る《ヒーロー》なんだよ。負けるか」

 

 満身創痍で立ち上がるコメットマン。みんなを守るように皇帝竜に立ち塞がる。

 

「ヒーロー? なんだよそれ。そんなものが竜より強いのか? その雑魚チビが英雄や勇者だというのか?」

 

 馬鹿にした声。でもユーマ気にもせず答えた。

 

「違う。そんなものと一緒にするな」

 

 ユーマの声には若干の怒りがあった。

 

「この世界の勇者なんて結局他人から世界を救う役割を押し付けられた奴の事だ。コメットマンは違う。ヒーローなんだ。ヒーローは……」

「ごちゃごちゃうるさい! 飛べ、カイゼル!」

 

 コメットマンを無造作に蹴り飛ばし、黒い翼を広げてスタジアムから上空へ飛びあがる皇帝竜。

 

「もういい。スタジアムごと吹き飛ばす」

「馬鹿が。学園の生徒巻き込んだ上にてめぇはどうする」

「構うものか。竜は最強。ボクの皇帝竜が最強だと知らしめればボクはどうなってもいい」

「ちっ」

 

 狂っていた。そうティムスに答えるユウイは正気ではない。

 

 まるで魔力の《狂気》に侵されたような……

 

「《イグナイター》か。あの野郎、幻創獣の腕輪に魔石を組み込んでやがるな」

「ティムス……あれやるよ」

 

 ユーマの決心にティムスは顔をしかめた。あれとは彼が気に入らない作戦だったのだ。

 

「フェイズ3か?」

「あいつとはもうまともな勝負にならない。だったらもっと『ふざける』しかない。ポピラに合図お願い」

「……どのみち皇帝竜の暴走を止めないとマズイか」

 

 ティムスは観念してポピラに向けて合図を送った。

 

 

 スタジアムの破壊を阻止するためにユーマ達はほんとうのヒーローショーをはじめる。

 

 +++

 

 

 一方その頃の実況席。

 

「上空へ飛び出した皇帝竜。一体何をする気だ……ってやばくない?」

 

 誰が見ても皇帝竜は空から必殺技を撃つ気だ。あれだとスタジアム全体に被害が出る。

 

 それに気付いた生徒もいたようだ。慌てて避難しようとする生徒がいるが安全圏までは間に合わない。

 

「グナント君の馬鹿っぷりにはまいったね。これじゃ先生が動いちゃうよ」

「○○○○さん」

「ちょ! ポピちゃんボクの名前呼んじゃ駄目! あぶないなぁ」

 

 ポピラの不意打ちに伏せ字で対処する報道部部長。しょうもない彼女の特異技。

 

 

「兄から合図がありました。台本どおりお願いします」

 

 +++

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ