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幻創の楽園  作者: 士宇一
第2章 後編
44/195

2-07 プロローグ-決戦

第2章後半、ユーマ編です

 

 +++

 

 

 もうすぐ地球という世界は壊れてしまう

 

 ぼくの小さな世界が壊れたように

 

 +++

 

 

 地球を壊して人を滅ぼすのは人なんだとぼくは学校で教わった。

 

 人は地球の資源を食い潰す生き物だ。

 

 森を切り崩しては海を汚し、動物たちの住む場所を奪って見殺しにした。

 

 

 人は世界戦争というものを何回か繰り返した。

 

 死ぬのは人。壊れるのも人。それと地球。

 

 

 人は人の為に人と争い、人の住む場所を壊していく生き物だった。

 

 

 

 

 でもそんなことぼくには関係がない。

 

 

 

 

 ぼくの生きる世界はぼくの家と学校のあるこの町の周辺と家族と友達、その他の人たちでできている。

 

 

 ぼくの世界は平和なんだ。

 

 

 

 

 そう思っていた。

 

 

 

 

 地球を壊して人を滅ぼすのは人ではなかったんだ。

 

 

 それは星を壊すイキモノたち。

 

 

  

 

 地下から怪獣が現れた。

 

 ぼくの学校を踏みつぶした。

 

 

 

 

 空から宇宙人が降ってきた。

 

 ぼくの町をビームで焼いた。

 

 

 

 

 地球を狙う侵略者。世界がやつらに壊されていく。

 

 ぼくの世界も。

 

 

 

 

 異次元から化物がやってきた。

 

 そいつがぼくの家を……家族を壊した。

 

 

 

 

 ぼくの、世界を……

 

 

 

 

 ぼくだけが生き残った。今は助かった人たちと一緒にただ必死になって逃げている。

 

 夜なのにあかくあかるい。

 

 町が燃えている。

 

 

 

 

 ゆるさない。

 

 ころしてやる。

 

 

 

 

 悔しくて悲しくて許せなくてぼくは必死に走った。

 

 そしてとまった。

 

 

 家や学校なんかよりも大きな怪獣。

 

 手も足もひょろ長くて顔のない宇宙人。

 

 眼がいくつもあって昆虫みたいな化物。

 

 

 ぼくの前に現れた、ぼくの世界を壊したイキモノ。

 

 

「ああ……」

 

 

 怖かった。

 

 戦車の大砲も、戦闘機のミサイルも効かない怪獣たち。

 

 もう駄目だと思った。膝に力が入らなくて座り込んでしまった。

 

 

 空から星が降ってくる。

 

 

 きっとあれは宇宙人たちの攻撃だ。地球にある沢山の世界が壊されていくんだ。

 

 

「いやっ、来ないで!」

 

 

 女の子の悲鳴が聞こえる。化物がぼく達に近づいてくる。

 

 ぼくには何もできない。

 

 無力なぼくは星が降る空を見上げるだけ。

 

 

「助けて、誰か助けて!」

 

 

 誰も助けてくれないよ。ぼくはそう思いながら流れ星を見る。

 

 

 綺麗だなと思った。これが現実逃避ってやつだなとも。

 

 

 

 

 ……そういえば流れ星に願い事をすると、その願い事が叶うって誰かが言っていたかな? 

 

 だったら……

 

「お願いします」

 

 

 空に向かって呟いた。

 

 

 家族が死んでしまって友達も無事かわからなくて、絶体絶命のぼくだけど。

 

 

「助けてください」

 

 

 怪獣たちを前にして、生きることを諦めてしまったぼくだけど。

 

 

「お願いします」



 もし叶うのなら……

 

 

「守ってください」

 

 

 まだ壊れていない誰かの世界を。

 

 

「地球を守ってください」

 

 

 星に願った。

 

 

 

 

 

 ――そこまでだ

 

 

 

 

 突然のことだった。

 

 ドカーン! という激しい音と地響きがして、ぼくの目の前に星が落ちてきた。

 

「……え?」

 

 星は人のかたちをしていた。逞しい身体をした光り輝く銀色の戦士。

 

 星はぼく達を守るように背を向けて怪獣たちと対峙する。

 

 

 

 

 これがぼくと「彼」の出会い。彼の地球を守る孤独な戦いのはじまり。

 

 ぼくの願いを叶えに来た流れ星。

 

 

 彼の名は……

 

 +++

 

 

 ブチッ

 

 

「「「あー!」」」

 

 

 振り返る3人の少年。見るとテレビのリモコンを持った少女が1人。

 

「何するんだよ姉ちゃん」

 

 優真は姉を睨みつけるが、その姉は気にせずに2人の幼馴染に質問する。

 

「何をしてるの? 2人で優君の勉強を見るって言ってたじゃない」

 

 優花はまず大和を見る。

 

「いやな、優真の奴が最近の特撮ヒーロー物はつまらないっていうものだから……」

「だから?」

「すいません」

 

 大和はここで優花の重圧に負けて折れた。正座。

 

「こうちゃん?」

 

 黙る大和に詰問するのを諦めて、優花はもう1人の幼馴染に聞こうとしたが。

 

「……だから言っただろ。俺は改造人間シリーズの方がいいって」

「馬鹿が。優真が言っていたのはこのシリーズだ。こいつの良さはやっぱり初代の奴だろ。それにこの劇場版のディスクを持ってきたのはコウ、お前じゃないか」

「……まあな。俺もこの作品は好きだが、やっぱり秘密ギミックで満載のあっちの方が俺はいい」

「てめぇ! 全身武器のあの野郎のどこがいいんだ? 男なら身体張った肉弾戦だろ。あとビーム!」

「お前だってロケットパンチは大好物だろうが!!」

「兄さんたち落ち着いて! 姉ちゃんが切れる!」

 

 光輝は無視して大和と言い争いを始めた。

 

 でもって優真はしっかり正座している。

 

「……もういい。夜姉さんと陽香さんを呼ぶ」

 

 優花は最終手段をいきなりとった。携帯電話に手をかける。

 

「待て! 師匠はマズイ」

「陽香さんまで!? 俺達に何をさせる気だ?」

「こうちゃんたちも夏休みの宿題まだでしょ。私は手伝わないから2人にお願いするの。……逃がさないでくださいって」

 

「大和!!」

「おう!!」

 

 その言葉で2人は逃げた。師である義姉とその親友の組み合わせから余程おそろしい目にあうと思ったらしい。

 

「もう。それで優君、宿題は終わったの?」

「自分の部屋でしてきます!!」

 

 優真も逃げた。

 

「まったく、これじゃ私が追い出したみたいじゃない。……ドラマの再放送でも見よ」

 

 優花は冷蔵庫からアイスを取り出すと、リビングのテレビを独占した。

 

 

 

 

「……はぁ。宿題終わったら続きを見よっと」

 

 

 

 

 ユーマこと優真のとある日の思い出

 

 

 すこしだけ昔の話

 

 

 +++

プロローグ

 +++

 

 

 ユーマはこの時を待っていた。彼の目の前にいるのは《Aナンバー》の1人、《竜使い》。

 

「わざわざ《幻創獣》で勝負するとはな。奇策のつもりか? いくらお前が万全でも、ボクの《皇帝竜》にはかなわないよ」

「いーや。万全ならお前なんか楽勝だよ。俺とアギの試合、見たんだろ?」

「ぐっ」

 

 《竜使い》の彼も気付いている。《精霊使い》と正面からぶつかれば必ず負けてしまうことを。

 

 ユーマは挑発する。

 

「今のぼろ雑巾みたいな俺が相手してもいいけど、それで俺が勝ったらアンタがかわいそうだろ? お前の土俵で戦ってやるんだ。ありがたく思え」

 

 はったりだった。

 

 アギとの試合で予想以上に消耗したユーマ。さらにエイリーク達によって冗談ではなく再起不能一歩手前までやられてしまった。

 

 《幻創獣》で対決することは予定通りだが、ここで中断されてルールを変えられると計画が無駄になってしまう。

 

 

 ユーマの目的は竜殺し。

 

 《竜使い》の《幻創獣》を同じ幻創獣で倒し、彼の力を無力化すること。

 

 

「……後悔するなよ」

「そっちこそ」

 

 対決する2人は1度下がった。

 

 

「大丈夫か?」

 

 セコンド役の少年がユーマに問う。

 

「大丈夫さ。所詮ゲームだよ。こんなものが強さだと勘違いして力を振り回す奴らなんかに負けない。……亡くなったティムスの仇は俺が討つ!!」

「おい。俺を勝手に殺すな」

 

 セコンド役の少年ことティムス・エルドは眉間に皺を寄せてユーマを睨む。

 

「冗談だよ。緊張をほぐすためのね」

「まあいい。わかってるか?」

 

 ティムスは拳を突き出す。

 

「わかってる。『俺達』で勝つ、だろ? 任せろ」

 

 ユーマはティムスの拳に自分の拳をぶつけた。

 

 +++

 

 

 再び対決の場に立つ、《竜使い》と《精霊使い》。

 

 

 《竜使い》が想造する《幻創獣》はもちろん《皇帝竜》だ。彼は竜を《現創》したことでエースとなったのだから。

 

 対するユーマも自分の《幻創獣》を想造する。

 

「皇帝竜に敵う幻創獣なんていない」

「《カイゼル・ドラゴン》なんて子供っぽくカッコイイ名前なんてつけるなよ。お前のそれは所詮怪獣だ」

「お前に倒せるものか!」

 

 ユーマの易い挑発に乗る《竜使い》。

 

「俺が倒すんじゃないよ。怪獣退治はヒーローの仕事だ」

 

 ユーマは自分の幻創獣の名を呼んだ。

 

 

「こい、コメットマン!」

 

 

 銀色の光がユーマの目の前に落ちてきた。

 

 ドシーン! という衝撃と地響きは会場を揺らす。

 

「なっ、《隕石落とし》の術式!?」

「違う。ヒーローは格好よく登場しなきゃ」

 

 土煙の中に隠れているが、そこにユーマの幻創獣がいる。

 

  

「さあ、やろう。ヒーローショーの始まりだ」

 

 

 

 

 ユーマはこの時を待っていた。敵はもう逃げも隠れもできない状況にいる。

 

 

 あとは正々堂々と殴って埋めるだけ。

 

 +++

 

 

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