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幻創の楽園  作者: 士宇一
番外 アギ戦記 後編
184/195

アギ戦記 -3度目の

……ようやく、ここまできました

 

この話がおそらく、転章

 

 +++

 

 

 夜明け。次の日のセイカ女学院。

 

 

 夜通しの訓練を終えてユーマと別れたアギは、校舎の周囲を1人うろうろとしていた。見廻りというよりは朝の散歩、といった感じで。

 

 ユーマが伝えた術式は思いのほか相性が良く、何とかモノにできた。徹夜明けで両の瞼は重いが気力は充実している。それだけの手応えがアギの中にあった。

 

 やれるだけのことはやった、と。

 

 

 ちゃんとした師の下で武術を学んでいるアギは理解している。たった一晩の訓練で劇的に強くなれるわけがないと。身に付けた新技にしても《盾》が使えることが前提の、いわば『《盾》がなければ《用心棒》に通用するとは限らない』という、そんな代物だった。

 

 今の《幻想の盾》で『代用』した所でどれだけ役に立つか。それ以前として護衛対象のマイカと共にセイカ女学院に留まっている以上、『奴ら』が女学院を襲撃してこない限りアギ達に出番はない、というのが現状だったりする。

 

 それでもか、だからこそか。待機状態で燻るリュガには「落ち着け」と言ったものの、アギもまた何かをせずにいられなかったし、ユーマから特訓の提案を受けた時には有難いとさえ彼は思っていた。

 

「あとは、出たとこ勝負だな」

 

 人事を尽くして天命を待つ。

 

 できるかぎりのことはしたのだ。ならば先の見えない事で悩み、不安を抱えても仕方がない。その時その時の流れに身を任せ従うにしても、抗うにしてもだ。

 

 迷いはなかった。やるべきことは決まっている。アギは昨夜に再確認した。

 

 マイカを守る。《歌姫》最後のライブを『奴ら』から守り抜く。そうして学園都市から一足先に『卒業』する彼女を皆で快く送り出す。

 

 例え《用心棒》が立ちはだかろうとも全力で立ち向かい、必ず止めてみせる。それだけわかれば十分だった。

 

 将来希代の歌い手になるであろう彼女の為に、今の自分にできることはこのくらいだとアギは思っている。決意の顕れとしてユーマに話してみたら、「馬鹿だなぁ……」なんてなぜか呆れられたけど。

 

 

「……はぁ。真面目というかなんというか。こんなことなら術式じゃなくて、女の子を喜ばせることの1つや2つ、教えとけばよかったよ」

 

 デートとかプレゼントとか。妙なことを呟いていた気がする。

 

 

「さて……今日も頑張るとするか」

 

 朝日を浴びながら強張った背筋をうんと伸ばし、欠伸を噛み締める。

 

 禄に仮眠を摂っていないので1限目の授業はサボりたいところ。でもここは我慢する。マイカが「明日も遅刻したら許さないから」なんて言うものだから仕方がない。

 

 今は6月の半ば。例年なら学園都市は雨季に差し掛かる時期ではあるが、ここ数日天気はすこぶる良い。叶うなら3日くらいこのまま快晴であってほしい、そんなことをアギは考える。

 

 

 護衛任務も今日で3日目。マイカが学生として学園都市にいられるのは、あと2日。

 

 

 やる気はある。備えて、決意も固めた。

 

 それでも足りないものがあるとすれば。

 

「……」

 

 アギは自分の腹を力なくさすった。

 

「……朝飯、まだかなぁ……」

 

 腹が減っては戦はできぬとはよく言ったものだ。

 

 

 セイカ女学院の朝食は儀礼的な意味もあって共食(*生徒が揃って一斉に食事を行う。ちなみに女学院の生徒総数は200人弱)であり、時間は6時半からとなる。やや早めだとは思うがそれでも今から1時間も待つ必要がある。アギはこの待ち時間が苦痛だった。

 

 ユーマのように食事の支度を手伝うことはできず、休もうにも昨晩から寝泊まりに使っているテントにはあろうことか、普段より早起きして授業の予習をはじめだしたリュガ(*彼は朝方。『エースの初仕事 生徒会編』を参照)がいるので戻るのもなし。

 

 ならば空腹凌ぎにアイリーンの朝練に付き合おうと思ったら。彼女は間借りした中庭に顔を出した途端、朝も早くから勤勉に働く女学院の生徒たちに見つかって、囲まれてしまっていた。

 

 興味津々といった彼女達に邪魔とは言えず、アイリーンは多少困った様子をしつつも日課の訓練を開始。陽の光を透かしてきらきらと輝く鮮やかな《氷晶術》に誰もが目を奪われ、凛とした姿で魔術に打ち込む《銀の氷姫》の姿に少女達が黄色い歓声を上げていた。

 

 

「あの調子じゃあ、ここにも姫さんのファンやら応援団なんかができんじゃねぇか?」

 

 昨日はシスターをはじめ、多くの生徒に恐れかしこまれていたというのに。アイリーンも随分と打ち解けられたようで何よりだ。

 

 

 まあ応援団云々はともかく。アギは彼女たちの交流の機会を邪魔してはいけないと既に中庭をあとにして、近づかないようにしている。

 

 理由は1つ。アギも昨日の早い段階で気付いたのだが、実はマイカだけでなく、どうも何故かセイカ女学院にまで『あの噂』が広まっているようなのだ。リーズ学園の新聞部がでっちあげたというゴシップのアレが。

 

 少しでもアイリーンと一緒にいる所を見られては「やっぱりそうなの?」なんて密かに囁かれた。これはまだいい。「あの頭の青い人が?」と後ろ指を差されたことの方が正直居た堪れない。青いのは頭ではなくバンダナだ。

 

 まるで犯罪者か不審者扱い。極めつけはマイカを加えた3角関係、果てはユーマ参戦の4角関係疑惑までも浮上している。これは昨日の朝、校門前での4人のやりとりがいけなかった。《歌姫》と《銀の氷姫》の対決? は授業中出来事だったにも関わらず、校舎の窓際から殆どの生徒に目撃され、注目されていた。

 

 誤解されやすい状況から噂に噂を重ね、尻尾に尾ひれまで付いて、アギの立場はかなり微妙なことになっていた。つまり娯楽に乏しい女学院の生徒たちにとって格好のネタ扱い。アギが誤解を解こうにも1歩近づくだけで怖がられ、逃げられてしまうので余計バツの悪い思いをしてしまう。

 

 もしかすると。今のリュガはアイリーンに群がる少女達に圧倒され、または扱いに困って中庭のテントから外へ出れないだけなのかもしれない。何せ奴はヘタレだ。

 

 また。ユーマはユーマで滅多に姿を見せないのは、意図して噂の的にされるのを避けているのではないかとアギは睨んでいる。……男子3人だけという環境は肩身が狭すぎた。

 

 

 というわけで。アギは朝食までの時間つぶしに、見廻りの振りをして朝から散歩に明け暮れていた。

 

 人目を忍んで、校舎の裏へ裏へと。

 

 +++

 

 

 校舎の裏となるセイカ女学院の西側には、敷地の一部に密接するようにして雑木林が広がっている。

 

 元は西日避けか防風林か、それとも目隠しの垣根なのか。本来の用途は不明だが長らく人の手が加えられていないらしい林の木々は伸び放題で、まるで侵食するように草木が敷地を隔てる外壁の一部を覆い、境界を曖昧にしている。

 

 外への見通しも悪い。雑木林へ繋がるこの辺り一帯は、女学院の校則では原則立入禁止となっている。勿論アギ達が警備するにあたり、外部から侵入経路として使われる可能性があると警戒していた場所の1つでもあった。ただし。

 

 この時。アギが雑木林のある敷地の隅の方へと向かったのは、見廻りを兼ねてというよりは単なる気まぐれ。その時の気分に過ぎなかった。

 

 

 雨季直前とはいえ季節は初夏。蒸し暑い日が続く中、朝は比較的涼しい。

 

 林を抜けて吹いてくる風は朝露を含んで少しだけ湿っており、鼻につーんとくる酸っぱい匂いをアギの元へと運ぶ。

 

 この匂いの正体が、樹皮の裂け目や、幹から染み出たクヌギの樹液だと彼に教えたのはユーマだった。

 

 

「多分ね。もしかしたら『こっち』にもカブトムシやクワガタがいるかも」

 

 夏はよく昆虫を捕まえて遊んだというユーマ。砂漠の民であるアギにとっては珍しい話だったのでよく覚えている。

 

 虫なんか捕らえて何が楽しいのか力説されてもさっぱりだったが、昔シュリやヒサンといった幼馴染のきょうだいたちとよくやった、トカゲ狩りのようなものかとアギは考える(*ぜんぜん違う)。

 

 

 樹液の匂いに露で湿った土の匂い。草木や花の匂い。砂漠ではまず味わえない緑の匂いを満喫する。そこでふと「おや?」とアギは思った。最近どこかで嗅いだことのある匂いだと気付いたのだ。

 

 何だっただろう? 思い出してみるとすぐにわかった。『大地讃歌』だ。

 

 2日前のライブでアギが見た、《歌姫》が創り出した幻の緑の大地。その中で嗅いだものと同じ匂いだった。それでなんとなくアギは理解した。

 

 おそらくマイカにとって緑のイメージとは、どこにあるとも知れない想像の大地ではなく、身近あって直に触れることのできたこの雑木林だったのだろう。

 

 

「世界術式、か。姫さんがみたもの、感じたものすべてを……歌であらわして」

 

 伝える。そんなちから。

 

 

 ――あの日のあたしの感動をこの手で再現したくて

 

  あたしが感じた熱をみんなにも伝えたかったの

 

 

 ――あたしが受け取った熱や感動を、今度はみんなに伝えたいの

 

  もっと多くの人にあたしが貰った力を与えたい

 

 

 何度か聞いた、ステージに掛ける彼女の想い。あらためてすごいな、とアギは思った。思わぬところで《歌姫》がうたう歌のルーツを1つ発見しては、どこか感慨深い不思議な気持ちになる。

 

 せっかく来たのだ。《歌姫》の歌でも思い出しながら木陰の下で少し休もうと、アギは外壁を飛び越え雑木林の中へと足を踏み入れた。その時。

 

「ん?」

 

 誰もいないと思っていたのに先客がいる。そう気付いたのは誰かの声がしたから。

 

 誰だろう。アギは耳をすませてみる。

 

 

 ふわふわーまんまるー おーつきさまー

 

 やきたてーさくさくー おーほしさまー

 

 

 木々の影の向こう。聞こえてくるのは軽快で、どこかテンポのズレた不思議すぎる謎のメロディ。けれど聞き覚えのある歌声は間違いなく《歌姫》のそれ。

 

「……歌の、姫さんなのか?」

 

 マイカを寮に送り届けたのは深夜。「起きるの早いな、眠くないのか?」なども思いもしたが、林の奥から聞こえてくる歌に突っ込みどころが多すぎてアギは戸惑った。

 

 一応アギも聞いたことのある歌だった。それも最近のこと。アギの知る限り《歌姫》のレパートリーには存在しないはずの歌。そう。あれは2日前の夜、ライブの打ち上げの時のことだ。

 

 ドゲンのおやっさんの店で散々騒いだあの日。余興の1つにユーマの精霊である風葉が《歌姫》の真似をしてくるくるー、と踊り回り、ふよふよー、と飛び回っては空中ライブよろしく、あの歌を歌っていた。

 

 おそらく。これがのちに何度もユーマ達を追い詰めることとなる『かぜはげきじょー』の初公演である。ちなみに初の犠牲者はミサだった。

 

 

 そんな『ミサちゃんクッキーのうた』をあのマイカが1人隠れてこっそり、それも随分と楽しそうに歌っている。そう考えるとアギはおかしくなってきた。似合わない。

 

「……よし」

 

 ひとしきり笑いを堪えるとアギは忍び足。歌に夢中で自分のことなど気付いていないだろうマイカを驚かせてやろうと1つ企んだ。

 

 歌声を頼りに彼女を探す。近づく度に歌ははっきりと聞こえてくる。

 

 

 さぁーくりあまくて おいしーですねー

 

 いちまーいたべると、 しぃーあわせー

 

 

 それにしても不思議だ、とアギは思った。なぜなら《歌姫》の歌は変幻自在だ。

 

 男勝りな所があるマイカはどちらかと言えば綺麗で格好いい、そんなタイプの少女だ。けれどステージの上に立って歌う《歌姫》の姿はそれだけでなく、子供っぽく可愛かったり、反対に大人びて色っぽかったり、などと様々な『顔』を見せてくれる。

 

 これが「女の子だから」と言われたらミもフタもないけれど。彼女は特に声質の変化が顕著だった。歌う歌に合わせて時に優しく、時に烈しく。感情の起伏に富んだ表現豊かな声は才能といえる。

 

 今も彼女の歌はまるで精霊のこころが理解しているというよりも、『精霊そのもの』となって風葉の気持ちを代弁しているようにアギには聞こえる。

 

 

「ミサちーのクッキーはー、あまくてー、さくさくでー。せかいいちですよー」

 

 

 と、幻聴が聞こえるほどに。

 

 世界術式なんて使われずとも《歌姫》の持つちからは絶大だ。アギは無性にクッキーが食べたくなってくる。ついでに朝飯もまだだったことまで思い出して腹が鳴った。

 

「……あとで。ユーマから分けてもらうかな」

 

 こうしてまた1人、作り手の与り知らぬ所でミサちゃんクッキーは広まっていく。

 

 

 無断で『かくれんぼ』をはじめて約1分。位置を特定した。マイカがいるらしい木の影まであと10歩といったところ。丁度『ミサちゃんクッキーのうた』もクライマックス。

 

 

 さーくりさくさく ふーわふわふー

 

 さーんまぁーいもたべるとー

 

 

 ちょーお、 しあわせぇぇー

 

 

「……」

 

 アギは突っ込みを堪えた。

 

 わかってる。この歌で最も突っ込むべきところはラストだ。

 

 

 さあ。なんと言って驚かせよう。

 

 昨夜案外怖がりだったと発覚したマイカの反応を想像しては、アギはほくそ笑んだ。

 

 驚かせて散々からかったあと。怒った彼女には思いっきり蹴られたり、殴られたりするだろうが構いはしない。これも楽しい思い出になるだろう。あと2日しかないのだから。

 

 残された時間は何事も無く、平穏であってほしい。最後まで彼女が他愛のない、けれどかけがえのない充実した日々を送れるのなら。それでもいい。

 

 《用心棒》や『奴ら』との因縁とはまた別の所で、そんなことをこの時のアギは考えていた。――結果だけ言えば。彼のささやかな願いは叶いはしなかったが。

 

 

 アギは、まだ気付かない。

 

 

 

 

 ――あたしを見て、『ブレイズ・ダンス』!

 

 

 

 

『アニス様に比べたらあたしの踊りなんて、まだまだだけど』

『アニス?』

『1度彼女の舞を見たらわかる。彼女の凄さが。もう1度彼女にあって、本物の舞を教わりたい。これもあたしの夢』

 

『踊っているとね、アニス様のように舞えたらっていつも思うの。鮮やかに揺らめく炎のように。あたしのは所詮素人。見様見真似で荒っぽいだけから』

 

 

 憧れの人のことを熱っぽく語ってくれた彼女。

 

 

『みんなの協力があって初めてあたしは、ステージに立っていられるの。誰か1人でも欠けたら成り立たない。みんなに応える為にもあたしは行かなきゃならないのよ』

 

『成し遂げてみせるから。堂々とステージの上に立ってみせるから』

 

 

 ステージでも、

 

 

『誰が来ても負けない。来るなら来なさいよ。あたしは何度だって来るわよ、ここへ! みんなが待ってくれるステージがあるなら……』

 

『あたしがステージに立つ限り、あたし達は止まらないっ!』

 

 

 ライブでも。

 

 

『まさか今日のステージで凄いとか思ってないでしょうね? 言っとくけどもっと大きなステージに立ったこともあるんだから』

 

『1度はスタジアムくらい大きな舞台の中心に立ってみたいわ』

 

 

 彼女はいつだって、

 

 

『あたしの世界は変わった。音楽と、音楽が繋いでくれた沢山の人たちが、あたしの世界をこんなにも大きく広げてくれた。

 

『今度はみんなに伝えたいの。もっと多くの人にあたしが貰った力を与えたい。あたしはきっと、その為に生きて、これからもステージに立ち続けるんだわ』

 

 

『あたしはステージに立ちたいだけ。あたし達の自由はそこにある。あたしはステージの上で音楽を感じて、伝えたいの。喜びを分かち合いたい!』

 

 

 夢を、情熱を語ってくれた。けれど。

 

 

『あの歌、ここの部分だけ妙に頭ん中残ってるんだよな。リュガから聞いたけど自分で歌作ってるんだろ? 本当は甘いもん好きなんじゃねぇか?』

『っ、違うわよ。そもそもあの歌だってあたしが……』

 

『みんながみんな、姫さんの歌を聴きに来るっていうのか?』

『まあ、ね』

 

 

 曖昧だった彼女の返事。

 

 アギは、気付かない。

 

 

 

 

 ――あんたも。あたしが《歌姫》だからそう言ってくれるの?

 

 

 

 

『《歌術》なんて知らない。わからないの? ただの歌に、力なんてあるわけないじゃない!』

 

『《歌姫》の歌はただ……、ただ、あたしは……!』

 

 

 偶然の悪戯か、それとも必然の導きだったのか。

 

 アギが雑木林のある敷地の隅の方へと向かったのは、見廻りを兼ねてというよりは単なる気まぐれ。その時の気分に過ぎなかった。立入禁止だった雑木林に足を踏み入れたのもその場の思いつきだった。

 

 

 マイカに悪戯を企むアギは気付いていない。疑問を抱いていない。

 

 今日この日。アギはライブ以外の場で初めて、《歌姫》が歌うのを聞いたということに。

 

 

 彼女は一際幹の太い木に背を預けて歌っているようだ。アギは気付かれないようにその木の側に近づき、彼女の反対側に立って身を隠した。

 

 飛び出すタイミングを測る。それは、彼女が歌い終わる直後。

 

 ミサが真っ赤になって恥ずかしがった、問題の最終フレーズが口ずさまれた、その時。

 

 アギは――

 

 

「~~♪ ミサちーはクッキーの、おーひめさまー」

「……またなんつー歌うたってんだよ、ひめ……」

 

 

 飛び出して、突っ込みを入れて。今日初めて顔を合わせた2人は、絶句した。

 

「さ……ん?」

 

 驚きの度合いが酷かったのはアギか、それとも彼女だったか。

 

 

「――えっ?」

 

 

 アギは、3度目にしてはじめて出会う。

 

 麦穂色の髪をした、お団子頭の少女と。

 

 

 +++

 

ここまで読んでくださりありがとうございます。

 

《次回予告》

 

 護衛の任務はあと2日。だというのにアギは朝から新たな謎に直面して頭を抱えていた。

 

 《歌姫》の声で歌う、お団子頭の少女の謎を追いはじめるアギ。その少女リュシカとのひとときの交流はアギの記憶を大きく揺り動かすと同時、マイカの心をひどく動揺させた。

 

 リュシカのことで些細な誤解生まれ諍い合うアギとマイカ。そこへ現れた再起塾の『奴ら』。彼女達との関係を修復できぬまま、アギ達は再び《用心棒》と、そしてもう一つの因縁と遭遇することになる。

 

 

 次回「アギ戦記 ―護衛3日目」

 

 去年の惨劇が脳裏をよぎる。再び絶望を突きつけられ嘆く彼の《現想》は死体のように冷たく、

 

 身を焦がし、狂うほどに熱く――

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