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幻創の楽園  作者: 士宇一
序章
10/195

1-00 プロローグ・ゼロ

第1章 予告

 

 +++

 

 

 優真はいつもの公園でしろいものを見つけた。

 

 しろい服にしろい髪。近くで見ると優真よりもちいさな子供が身体を丸くして倒れてる。

 

「生きてる?」

 

 子供の顔を覗いてから肩を揺する。女の子だ。

  

 むき出しの腕はしろい肌をしていてあたたかい。

 

「……う? あ?」

 

 気がついた女の子。

 

 目を開き、自分を揺する少年の黒い瞳をじっと見つめている。

 

「……はは、まっしろだ」

「う?」

 

 女の子の瞳はしろかった。

 

 銀色ではない。眼球の白とも違う色をしたしろ。

 

 ありえないものを見ても優真は不思議と怖くなかった。無垢なしろ。彼を見つめる瞳は何も知らない赤ん坊のようだ。

 

「君は誰? 天使の子? それとも悪魔?」

「あー、う?」

 

 しろい女の子は言葉を発しない。黒髪が珍しいのか優真の髪を引っ張る。

 

「うあー。あー!」

「いたい、いたいってば。……困ったな。記憶喪失で迷子の扱い方なんて『みんなの公園危機百選』には載ってなかったぞ」

「あー」

 

 優真は両手で女の子をあしらいながら考える。

 

「まあ、いいや。困った時は姉ちゃんか兄さんに頼もう。きみ、一緒においで。きっとどうにかなるよ」

「う?」

 

 よくわかってない女の子の手を引っ張って優真は駆け出した。

 

 

 ――ぼくはいつか兄さんたちみたいになりたい。この子はぼくがたすけよう。

 

 

 優真とましろの出会い。

 

 

 

 

 ……少年が忘れることのない、出会い。

 

 +++

 

 

 このおはなしが、きっと少年のはじまり

 

 この物語は、優真がユーマになった時の話

 

 

 +++

プロローグ・ゼロ

 +++

 

 

 優真は目の前の光景を信じたくなかった。

 

 

 雨の日の夜のこと。

 

 優真の目の前で2人の男と少女が1人戦っている。

 

 2人の男の内、1人はもう1人を庇って今倒された。

 

「がはっ」

 

 火炎弾の直撃を受けた彼は優真が兄と慕う15歳の少年。

 

「大和兄ちゃん!」

「優君どいて!」

 

 駆け寄ろうとする優真を、姉は声で制して大和の手当てをはじめる。

 

「どうして? どうしてなんだよ」

 

 

 ――誰が兄ちゃんにこんなひどいことをした? 

 

 

 優真はわかっているけど信じたくなかった。

 

 

 しろい少女。

 

 

 しろい服の少女は肌の色、髪の色がしろいだけでなくその瞳もしろい。

 

 優真が拾った、ましろと名付けた女の子。

 

 天使でも悪魔でもない彼女が《魔法》を使い、姉や兄たちに襲いかかる。

  

「やめろしろ! やめて……どうして!?」

 

 12歳の少年にできることなんてない。ただ大切な人たちが殺しあう様を見ていることしかできない。

 

「あ、あああーーっ」

 

 しろい少女の放つ雷撃がもう1人の少年を襲う。

 

 少年は右の掌で雷撃を弾くと一気に距離を詰めて少女を殴る。

 

「ぐっ、があっ!」

「やめろーっ!」

 

 優真の声は届かない。

 

 雨音が邪魔だ。そう思うがもう雨なんて関係ない。優真の叫びなんて彼と少女には関係ない。

 

 殴られた少女は距離とってから背中からしろい翼を『放出』。上空へ逃げる。

 

「優花!」

「はい!」

 

 姉が《飛翔》の魔法を少年にかけ、彼は空へ追撃をかける。

 

 優真は実の姉が魔法を使うなんて初めて知った。

 

 少女が上空から火炎弾を放つが、同じくして飛び上がった少年が無造作に左腕を振ると、火炎弾は見えない壁のようなものにぶつかり相殺された。

 

 再び距離を詰める少年。しろい少女の腹をグローブをはめた右で殴る。

 

 バチィッ!!

 

 殴った右手から電撃が疾る。

 

 怯んだ少女の首を少年は掴み上げた。

 

「ぐあっ、ああっ、ああああ!!」

「もういい。お前の魔法は《理解》した。俺に2度目はない」

 

 空中で少女を掴み上げる少年。反対の手にはいつのまにか『銃のようなもの』を握っている。

 

「やめて。もういいでしょ……光輝兄さん。やめて。しろが、ましろが……」

「優君……」

 

 光輝と呼ばれた少年は優真の声を無視した。止める気はない。

 

 彼は殺す。

 

 誰よりも、何よりも、自分の……心を。

 

 

 優真はただ叫び、彼を睨みつけることしかできない。

 

 夜空に浮かぶ彼には何をしても届かない。

 

 兄と慕う少年はいつもと姿が違う。優真は今でもアレは兄とは違う別のモノだとしか思えなかった。

 

 

 ――銀の髪と金の瞳を持つ少年

 

 

 彼のことを《梟》と呼ぶ人がいることもこの時の優真は知らない。

 

 

「しろーーーっ!!!」

 

 撃ち落とされたしろい少女。

 

(……ゆうま)

 

 声が聞こえた気がした。しろい少女はこの言葉しか知らない。

 

 見たくなかった。でも優真は見てしまう。

 

 傷つき墜ちた少女の血の色もまた

 

 

「ああああああ!!!」

 

 

 しろかった。

 

 +++

 

 

 《風森の国》聖堂。

 

 エイルシア・ウインディ、風森の第一王女である彼女は向き合う2体の女神像を前に悲壮な決意を固めた。

 

「……私しかいない。国もお父様も、リィちゃんだって私しか守れないから……」

 

 女神像の1体を睨み、もう1体に語りかける。

 

 

「もう少しだけ待っていてくださいお母様。……私が必ず貴女を解放します」

 

 +++

 

 

 《精霊使い》でさえない少年は

 

 再生の地、風森の国で彼女達と出会う

 

 

 次章 風森の勇者

 

 +++

 

 

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