間章2 1900年代の超人研究について(資料)
注意事項
・第一次世界大戦並びに第二次世界大戦にて、多くの資料が散失、消失、欠損した形跡があり、中でも第一級資料とされる■■■■■資料については、ナチスドイツの度重なる検閲並びに修正により原本は大きく改ざんされていると考えた方がよい。
・この当時は、社会学、民俗学的な学問の黎明期にあたるため、根幹をなす資料には、歴史的に価値のある資料から、原典の保証がない資料まで多く用いられている。
・また、完全に理解するためには、当時流行にあった神秘学や一時復権を遂げた錬金術的な資料を参照する必要があるが、学術的な側面から行う当講義においては、歴史学、政治学以外の視点は持たないこととする。
・当講は、あくまで学術的視点によって行われていることを聴講生にはご理解いただきたい。
【そもそも超人とは何たるや】
人類史の初めより、超人と呼ばれるものたちの活躍を記したものは数知れず存在している。それは、神代にまでさかのぼり、神話的な叙事詩であったり、英雄譚であったりと、伝承であったり、単なる村の言い伝えであったりとその起源の証明・主張に事を欠かないものである。ただ、超人という言葉が初めて我々の前に現れたのは、遺失した聖書の文言が偶然にもローマの遺構から発掘されたことによる。
≪――(判読不能)。主に問う。「主よ。神が人を作り給うたのならば、同じ界に人超えるものはあるべきに当たらず。だが、神は作られたる。」主、答える。「神は、人のみを愛する。故に、人超えるものを作り給う」――。さらに問て曰く、「神が人を愛するのならば、人を超えるものなど造られるべきではない」主、(答えの文章と思われるが、破損、風化がひどく判読不能) ――「(意図的に破損した形跡がある)。もって是となす。」≫~原典 R119222文書(第二次世界大戦にて紛失)
さて、ここで、すでに答えも出ているものではあるが、紀元のころより、超人とは、一定の人間としての器を超えたものを指していたことは想像に難くない。さて、ここで、今まで理解されている超人像を書き出していくことにしよう。
一、通常の人間にない身体的・精神的特性を有すること。
二、一の特性が生来性のものに限定されること。現時点においては、後天的に当該特性の保有に至った事例は存在しない。
三、社会的・政治的に、いかなる法体系にも例外として扱われる可能性を含むこと。(法科学界における、巨人への死刑執行を行えるかという命題)
この命題について、この■■年間において、調査を行ってきた。これは、(検閲痕。意図的に破損された跡がある)に対して調査を行った結果得られた情報をもとに独自の分析を行ったものとなる。
《超人連盟組織の形成について》
超人連盟組織が作成されるようになったのは、シオン・ヒルの誓約というものが深くかかわっていることは、疑いようのない事実である。
・ヨーロッパに現存する超人連盟組織、並びにロシア、北アフリカの存在するすべての超人連盟組織の設立規約には、シオン・ヒルの誓約という言葉が必ず盛り込まれている。
・人間側にとっては、それは目にしたことのない文言である。しかし、超人側にとっては、非常になじみ深いものである。ただ、その理念は基本的には超人側のみで共有されているらしく、我々に対して、どんなに協力的な超人であったとしてもその理念の説明を行ってもらえるものは現れなかった。
・ただ、基本的な理念については、教えてもらえた。神代と古代を分けるもので、その由来は、……(意図的に削除された形跡がある)という史実に起因するもので、それは、……(意図的に削除された痕跡がある)。
・(意図的に削除された痕跡がある)にルーツを持たないはずのアフリカの超人連盟組織もその誓約を遵守していることから、影響力の高さを垣間見ることができる。
超人連盟組織の役割について
超人連盟組織は3つの役割を持っている。
1.超人同士の争いごとに対する仲介並びに制御
2.超人が何か行動を起こす場合の申請先
3.人間に対して超人が何か行動を起こした際の、人間の保護先
以上の3つである。これは、この組織の先祖にあたる部分が、民間自治組織や自警団に祖を発することに由来している。いわば、この組織は、地域に住まう超人たちの集会所的な互助組織である。組織間の人員構成を用いて、争いを巻き起こすような組織ではないことはご理解いただきたいと感じている。
そして、この組織は、組織自体がいかに巨大化し、いかに組織として強化されようと、その方針が揺らぐことはないものである。
以下、ヨーロッパにおける主な超人連盟組織である。
エジット:フランスにおけるの超人連盟組織。急進的な技術革新を取り入れることに積極的な組織。
ライン会議:保守的な組織ではあるが、内部にて、若い超人たちが育ちつつある。特に……(削除済)は、期待の星でもある。エジットとは、隣国の超人連盟組織として、特に関係を深めている。
石の円卓:イギリスの超人連盟組織。秘密主義的ではあるものの、比較的人間に協力的な組織である。非常に一筋縄ではいかない、癖ある組織として有名。様々な文献にも皮肉的な立場で登場する。
(以下は、破損し、意味ある単語をくみ取ることもできない)
ハーバード大学 神秘考古学部門の権威 L.H.W教授 モンペリエ大学に客演した際の3日目の講義の始まりとして
この写本を後世に託す。




