表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/9

第1話 光臨

 俺は目覚めた。体に力がみなぎる。

 おれの力が人間おれの体を食っている。

 鬼と化した俺の存在が人であった欠片を食い尽くしていく。

 俺の中に生まれた鬼の核が人間の俺を食いつくし栄養に変えていく。

 (おれ)の舌が人間だった体(おれ)を味わい嚥下していく。 

 旨い。俺の体の美味を味わいながら俺が構築されていく。


 血のように赤い俺の右手が鉄の金棒を手にする。先が幅広く棘のような護拳がいくつも飛び出している鬼の金棒だ。

 それを振るうと俺の体の感触が伝わってくる。馴れしたんだ男の体に隆々とした筋肉が盛り上がり俺の体を動かしていく。この金棒が箸のように軽い。

 指で金棒を回すと轟音を立てながら回転する。何という力だ。


 俺が棍棒を握ると額がうずきだす。頭蓋を突き破るよう生えてくる二本の角。体色と同じ赤い角が縮れた黒い髪の間から延びている。

 そして俺の牙が角と同じ様に伸びていく。歯を噛みしめ具合を確認する。人間だった頃の歯が口の中に残っているがそれを噛み砕き飲み込む。


 これなら人間をいくらでも食える。

 俺は恐れおののく人間を前に嗤う。ハァっと呼吸の音が口から洩れる。

 とても旨そうだ。俺を食い尽くした鬼の核が次の得物を求めている。

 まだまだ足りない。

 俺はその欲のまま人間達を狩り立てた。


 食欲を満たした俺は食べるときに邪魔だった着物を腰に巻く。

 マラも失ってしまったがもう使うこともあるまい。俺はただ人を食らい全滅させる。ただそれだけの存在になったのだ。

 ただ恥だけは掻けぬ。それだけは鬼に堕ちた俺の矜持だ。全裸の鬼では猿と変わらぬ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ