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第6話 進捗報告 ①

一方その頃、秘匿区域(エスパ=スクレ)のゲート前。

選別の結界に弾かれたノクターンは、中に入ることすら許されなかった。

薄紫の障壁に手をついたまま、ただ静かに佇んでいた。


「くそっ……!何が護衛だ……結局は、あいつを1人で危険人物のもとへ行かせちまったじゃないか……!」


ダンっと障壁を殴る音と小さな電撃音が静寂な空間に響き渡った。


「……無事、なんだよな?」


ノクターンの悲痛な呟きが静寂な空間に響いた。

障壁に背をついてズルズルと崩れ落ちるノクターンは膝の上に肘を置いた。

顔の前で手を合わせ、シエルの身を案じていた。


――ブブブッ


その時、マジックバッグの中で伝令石が震えた。

ノクターンがバッグの中から取り出すと、伝令石は青い光がチカチカと短く点滅している。


「……個人あて?こんな時に……無駄話じゃないだろうな?」


伝令石の使用用途は2つに分けられる。

青い光は個人間の連絡が可能。

黄色い光は全体的な周知や報告などに使用されることが多い。


今回はノクターン個人に宛てた連絡が届いた。


「やっほーノクス、進捗報告だよ~」


普段通りの穏やかで軽やかなレイノルドの声が、伝令石から聞こえてきた。


「……レイか。どうした?」


対照的にノクターンは低く、沈んだ声で応答する。


「あれっ元気ないね、どうしたのさ?」


声しか聞こえないはずなのに、首をかしげて心配しているレイノルドの姿がノクターンの脳裏に浮かんだ。


「こっちでは……トラブルがあってな……この話は長くなるから先に進捗を言え」


「トラブル?なんか、嫌な予感しかしないんだけど……」


そう言って言葉を区切ったレイノルドが静かに進捗報告を始めた。


「刻印の解析は今のところ順調だよ。でも……呪いを解くのが結構大変みたいでね~、今やっと暗号化された契約内容の解析と発信元の特定を進めているところさ」


静かに報告を聞いていたノクターンがレイノルドに伝える。


「内容は何となく推測できるから、発信元の解析を先にやってくれと伝えてくれ」


「おっけー、わかった。で、ここからがノクスに個人連絡した本当の理由なんだけど……」


軽やかな口調から一変し、低く鋭い声が響いた。


魔塔主(セラフィウス)が……塔から姿を消したんだ。」


「……は?」


ノクターンは呆けた声を出し、障壁の向こう側を見た。


一呼吸置いたレイノルドが静かに告げる。


「刻印の調査を監視しながら、あの男の気配をずっと追っていたんだけど……突然塔内からパッタリ気配が消えちゃってね。どこに行ったか見当もつかないや……それが、逆に怖いんだよね。」


伝令石を通して、レイノルドとノクターンの間に沈黙が流れた。

これまで呆然としていたノクターンが突然、声をあげて笑い出した。


「何笑ってるのさ!こっちは真剣なんだけど!」


ノクターンの脳裏にはレイノルドの怒った顔が浮かんでいた。


「いや、すまん。柄にもなく真剣な雰囲気を出してくるもんだから、レイの身に何かあったんじゃないかと身構えていたんだが……なんだ、そのことだったのか。」


「え、何?その、俺は知ってますよ~みたいな口ぶり。」


レイノルドは拗ねたような口調で言い返した。


手元で青く優しい光を放つ伝令石と、レイノルドの穏やかな雰囲気がノクターンの不安を少しだけ和らげてくれた――。

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