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第13話 明かされる正体 ①

夜の帳が落ち、高く昇りつめた蒼い月が静かに宿を照らし出す。

ひんやりと冷たい風がサッと吹き、漆黒のローブに身を隠した男が宿の窓辺へ静かに降り立つ。


気配を殺し、足音もたてず、まるで影のような不気味さを秘めながら、ひっそりと宿の一室へ忍び込んだ。

次の瞬間――男の足がピタリと止まった。


(おっと?これは……厄介だな。)


スヤスヤと寝息を立てているシエルのベッドの側で、椅子に腰かけるノクターンの姿が男の視界に映った。

シエルの寝顔を見つめるノクターンの眼差しは優しく、冷徹な悪魔と呼ばれている普段の姿とはかけ離れていた。


(今、自分がどんな顔しているのか、気付いていないんだろうなぁ……)


ローブの男は警戒すべき相手に余裕そうな微笑みを向ける。


(それにしても……隣室で待機しているんじゃ、無かったの――?)


先程までの柔らかい雰囲気は消え、男は焦りの表情が浮かんでいる。

フェリルの言葉を鵜呑みにするんじゃなかった……と後悔するが時すでに遅かった――。


「……何者だ――」


ノクターンの低く、冷たい言葉が飛んでくる。

隠密で気配を消しているにも関わらず、ノクターンの濃紺の瞳が鋭く光り、男を捉える。


(本当に、敵わない相手だ。……残念だけど、撤退――っ!)


ノクターンが隠密を見破ったことに関心を示して余裕の笑みを浮かべながらも、これ以上の長居は危険だと判断したローブの男が踵を返す。


「……逃がすか!雷神の怒り(トネルコレール)!」


微かな空気の揺らぎを感じ取ったノクターンはすかさずスキルを発動させる。

バチバチと鋭い雷鳴を響かせながら黄金色の火花が飛び散り、姿の見えない”何か”を麻痺させる。


「ぐぁ!?」


感電したショックで隠密が解け、黒い影が露になった。


「な、何!?今の音……!」


シエルは大きな音に驚いて飛び起きた。


「……侵入者だ、警戒しろ」


ノクターンは短くシエルに告げる。


「っ……」


シエルは息をのみ、毛布をギュッと握りしめた。


(もし、団長さんがいなかったら……私は――)


――命を奪われていたかもしれない……。


ゾッとしたシエルの背筋が凍りつく。


麻痺で動けなくなった男のもとへノクターンは静かに歩み寄った。


「……まさか、寝込みを狙うとはな。いい度胸だが……詰めが甘い。」


そう言ってノクターンは不敵な笑みを向ける。


「……俺がいる限り、コイツに手出しはさせないぞ。」


そう言ってノクターンは男のローブをい勢いよく剝ぎ取った――。

月灯りに照らされた金色の髪が儚げに煌めき、男の正体が露になる。


「なっ……お前、どうして――!?」


「うそっ……!?」


ノクターンは目を見開き、シエルは口元を両手で覆って驚いている。


「あーぁ、バレちゃった……もう少し、手加減してくれないかなぁ――ねぇ、ノクス?」


未だ痺れる身体に顔を歪めながら観念したように呟くレイノルドの姿が、そこにあった――。

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