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第2話 入国審査

ノクターンは調査書類を手に、静かに関所の魔法兵へ歩み寄った。


「我々は王都直属の騎士団、ブラックウィングだ。国王より古代魔法の解析任務を任され、魔塔に協力を要請しに来たんだが……通してもらえるだろうか」


魔法兵はノクターンから調査書類を受け取り、騎士団一行をじっくりと見据えて鋭い瞳を光らせた。


「王都の騎士団か。話は聞いているが……魔導国家に騎士など――必要ないのでは?」


鼻で笑いながら魔法兵は冷たく言い放つ。


「それから……そこのデカい狼。街中で危害を加えたりしないだろうな?」


魔法兵がフェリルを鋭く睨みつけながらノクターンに尋ねた。


「……この子は私の従魔よ。私に危害を加えない限り、人を襲うことはないわ。」


シエルが冷淡な口調で威圧的に言い放つ。

魔法杖を地面に叩きつけ、カンっと短い金属音が静かに木霊した。


「魔導師か……それなら大丈夫そうだな。だが、手綱はしっかり握っておくことだ。」


ローブを被ったシエルを見て納得した様子の魔法兵は、受け取った書類を水色の水晶にかざした。


(何アレ。態度悪すぎでしょ……すっごく嫌な人。)


シエルはフードの奥から冷ややかに睨み、そっと舌打ちをする。


水色の水晶は淡い光を放ちながら、書類の内容に偽りや偽造が無いかを調べている。


「流石は魔導国家というべきか……入国審査も魔道具で行うんだねぇ」


感心するレイノルドが水晶をじっと見つめている。


柔らかな光が消え、魔法兵は書類をノクターンに返した。


「書類に異常は見られなかった。通っていいぞ」


魔法兵は一行の入国を許可した。

その瞬間――薄紫色をした結界の一部がアーチ状に開いた。

人が1人、通れるほどの小さな道ができた。


「へぇ……入口が見当たらないから、どうやって入るんだろうって思ってたけど――許可が下りたら開くようになってるのね」


シエルは驚いたように入口を見つめ、小さく呟いた。

騎士団一行はアーチ状に開いた結界を通り抜け、都市の中に入っていった。


◆ ◇ ◆


アストラルヴィエンの市街地には石畳の道が遠くまでのびている。

道の両脇に魔力石の街灯が設置され、青白い輝きを放って神秘的で幻想的な光景を作り出していた。


「ここがアストラルヴィエンの都市内部……すごく、幻想的……」


王都とは異なる都市内部に関心を示すシエルは周囲を見渡した。

騎士団一行はシエルの包囲を維持したまま、魔塔を目指して歩き出した。


「よし、無事に入国できたな。……ここからは警戒を緩めるなよ。王都と違って何が起こるか分からないからな」


ノクターンは騎士たちに命じた。


「了解しました!」


騎士たちは気勢をあげて静かに歩く。


(……そうだ。この街のどこかに、私を狙う敵がいるんだったわね……)


シエルは今朝、自分の枕元に置かれていた手紙のことを思い出してわずかに顔が強張った。


”アストラルヴィエンには敵が潜んでいる。調査任務には気をつけよ。くれぐれも1人で行動するな”


「お主は我と……団長殿から離れるでないぞ」


フェリルがシエルの背中をつついて静かに声をかけた。


「……僕もシエルさんの護衛を任されているんだけどなぁ?」


レイノルドが横から柔らかく微笑み、口を挟んだ。


「貴様はその軽々しい態度が胡散臭くて信用できぬ」


フェリルは顔を背け、冷ややかに言い放つ。


「そんなこと言われると地味に傷つくなぁ……」


少し悲しそうな表情を見せるレイノルドが小さく呟いた。


「レイ、無駄口をたたくな。護衛は俺たち3人が交代で行う。フェリルもそれでいいな?」


フェリルはため息をつき、渋々承諾した。


「……仕方あるまい。」


騎士団一行は隊列を崩すことなく、魔塔を目指して静かに足を進めていった――。

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