第15話 幼馴染
"冷酷な悪魔"と呼ばれているノクターンと"春風の貴公子"と呼ばれているレイノルド。
まるで太陽と月のように正反対の2人。
彼らは幼馴染であると同時に、親友でもあった――。
謁見の間でシエルたちと別れた後、彼らは王城の北側に位置する厩へと足を運んでいた。
「ノクス、シエルさんが現れてから何か変わったよね」
レイノルドの黄金の髪が太陽の光に反射してキラキラと輝き、ノクターンに微笑みながら軽やかに告げる。
「……俺が?何を言ってんだ、いつも通りだろ」
そういってレイノルドのおでこを指で弾く。
「痛っ……。そうかな?あの子といるときの君は、冷酷な悪魔なんて呼ばれるようには見えないけど?」
レイノルドは弾かれたおでこを擦りながら反撃する。
「あいつは……どうしてか、放っておけないんだよな……。」
雲1つない青空に目を向け、ノクターンはポツリと呟く。
「似た者同士、シンパシーを感じているんじゃないかな」
ノクターンは首を傾げて問いかける。
「俺とシエルが似てる……?」
無言で頷くレイノルドは肩をすくめ、どこか楽しげな口調で続ける。
「ノクスは公爵家の次期当主という使命が、シエルさんは召喚者……それから、白き魔女かもしれないという使命を抱えている。2人とも、1人で背負いすぎてる部分があると思うんだよねぇ」
ふっと笑い、確かにそうかもしれない――と思ったノクターンはレイノルドの言葉を否定できなかった。
「……返す言葉が浮かばないな。」
厩に到着した2人はそれぞれの馬のもとへ歩み寄る。
「シエルさんも災難だよね……。知らない世界に召喚されたと思えば、今度は命を狙われるなんてさ……。」
先程までの柔らかい雰囲気とは異なり、レイノルドは凛とした表情で静かに呟く。
「あぁ、そうだな……。オマケに白き魔女の生まれ変わり説が浮上したとなれば、余計な混乱を招きかねない。……何考えてんだ、あの王様は……」
ノクターンはため息をついて愚痴を吐く。
「ダメだよノクス、不敬罪で処刑されちゃうよ?」
サラッと国王を侮辱する発言をしたノクターンをレイノルドは優しく咎める。
「ここには俺たちしかいない。お前が告げ口しない限りは処刑されないから大丈夫だ。」
ニヤリと不敵な笑みを浮かべ、レイノルドの頬をつつく。
「ほら、シエルたちが待っているから早く行くぞ」
そう言ってノクターンは馬を連れてゆっくりと歩きだす。
「全く……ノクスはいつもそうなんだから」
苦笑いを浮かべながら、どこか楽しそうに告げるレイノルドも馬を連れて城門へと歩き出した――。