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第4話 狙われたシエル

ノクターンは腕の中で震えているシエルを、副団長のレイノルドに預ける。


「……レイ、シエルを頼む。俺はフェリルのもとへ向かい、状況を聞く」


レイノルドは頷いてシエルの身体を支える。


「分かった。」


そして彼女の背中を優しくさすりながらシエルへと問いかける。


「怖かったね。大丈夫かい?」


「だい、じょうぶ……です」


シエルは震える声で頷いた。


「まだ震えているね……少し休もうか。」


レイノルドはマントを脱いで床に広げ、そこにシエルを座らせる。

紳士的な行動とは裏腹に、レイノルドの視線は獲物を狙う猛禽のように鋭く、現場の方を見据えていた。


依然として緊迫した空気の中、ノクターンは威嚇を続けるフェリルに駆け寄り説明を求めた。


「フェリル、この男は一体何をしたんだ?」


フェリルは男から目を離さず、ノクターンに告げる。


「……こやつから、あのナイフと同じ毒の匂いがするのだ」


フェリルの言葉を聞いた周囲の人々はざわめき始め、近くにいた騎士が男を拘束して跪かせる。


「毒だと!?」


「ストラウス殿が犯人なのか……?」


騒動を鎮めるかのようにフェリルが短く咆哮すると、気圧された人々は押し黙り、場内に静寂が訪れる。


「……ストラウス、といったか。なぜ、シエル……召喚者を狙った?」


周囲の会話を聞いていたノクターンは男の名を呼び、シエルを狙った理由を問いただす。


「何の話をしているのか分らんな。そもそも、俺がやったという証拠はあるのか?」


ストラウスと呼ばれた小太りの男はナイフを所持していたこととシエルを狙った犯行を否定する。


「ほう……貴様は我の、神獣の嗅覚を疑うのか?」


フェリルは威嚇の唸り声を上げながら、一歩前に詰め寄った。

怖気づいたストラウスは小さな悲鳴を上げて押し黙る。


「ひっ……」


その様子を見ていたノクターンは漆黒の長剣をスッと鞘から抜きとった。

鈍色に光る剣先を静かにストラウスへと向けた。

氷のように冷たい瞳は、まるで獲物を狙う猛禽のようにストラウスを鋭く射抜いている。


「……吐け。さもなくば……分かっているな?」


ノクターンの一言に謁見の間には張り詰めた空気と緊張感が漂う。

ゆっくりと剣を構え、振りかざそうとした瞬間――ストラウスは慌てながら口を開いた。


「分かった、いう!言うから!命だけは助けてくれ……」


そして観念した様子で項垂れる。


「命を狙った奴が命乞いだと?笑わせるな。」


ノクターンは威圧的な眼差しをストラウスへ向け、剣を床に突き立てる。

大理石の床に剣先が当たり、甲高い金属音が場内に響き渡る。


「言え。お前はなぜ、召喚者を狙った?」


「め、命令されただけなんだっ……!だから、仕方なく……」


ストラウスは震える声で犯行を認めた。


「誰にだ」


すうっと細められたノクターンの目には、真意を探るようにストラウスを射抜いている。

ストラウスが命令された相手を口にしようとした瞬間――。

彼の顔が突然苦痛に歪み、衛兵の拘束を振りほどいて激しく暴れだした。


「それは、あ……ぐっ……ぐわぁぁぁぁぁっ!」


ストラウスの目は異常に見開かれ、血走った瞳が虚空を彷徨う。

苦しげに喉を掻き毟ったかと思うと口から泡を吹き、声にならない悲鳴をあげる。

そして、異様な音を立てて地面に倒れ込むと……次第に動かなくなった――。

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