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第14話 いざ、変異種討伐へ【探索編】

一夜明け、洞窟の入口では、討伐の準備を整えた騎士たちが静かに気勢を高めていた。

1人の若い騎士はゴクリと唾を飲み込み、剣を握る手にじっとりと汗が滲んでいる。

また別の騎士は胸元のペンダントを握りしめ、家族の無事を祈るように目を閉じた――。


その先に待ち受けるのは、未知なる変異種――緊張感が空気を張り詰めさせている。


日の光がほとんど入ってこない深層部はどんよりと薄暗く、湿った空気と濃い瘴気がねっとりと身体にまとわりつく不快感がヴェルグリムの深森の不気味さを際立たせている。


「これより、変異種の討伐任務を再開する!昨日も話した通り、変異種を見つけ次第、俺が奴の気を引く。お前らは弱点を探ることに集中してほしい。」


「了解しました!」


騎士たちは気勢をあげて洞窟から出発し、フェリルに跨ったシエルも騎士たちに続いて洞窟を後にした。

深層部の探索を再開した騎士団一行は、鬱蒼と生い茂る木々を通り抜け、青緑色に光るキノコが薄暗い深層部を幻想的な淡い光で照らし、まるで道しるべのように点々と自生しているのを見つける。


「……静かだな。魔物の気配が感じられない……」


出発時から探知スキルを発動させているノクターンは、周囲に魔物の気配がないことに違和感を抱いてポツリと呟く。


「もしかしたら、近くに変異種がいるのかもしれないわ……」


ノクターンと同様にシエルも出発時点から気配探知を発動させていて変異種の動向を探っていた。

スキルで周囲を探っていく中で、まるで何かを避けるかのように移動している魔物たちの姿が確認できた。


(……見つけた。500メートル先、ワイルドベアの居住地を襲ってる)


フェリルからノクターンに伝えるよう、シエルは念話で位置を教えた。

小さく息を整えるようにしてから、フェリルはノクターンに報告した。


「……団長殿。500メートル先に複数のワイルドベアと対峙しておる変異種の気配を感じ取った。……居住地を襲っているようだぞ」


「何?ワイルドベアと変異種を同時に相手するのはかなり厄介だな……」


フェリルの言葉を聞いてノクターンの顔が曇る。

その様子を見てレイノルドはふんわりとした口調でノクターンに問いかける。


「クマ狩りは変異種に任せればいいよ。僕たちは少し離れたところから様子をうかがうのはどうかな?」


レイノルドの発言にノクターンは少し考えてから答える。


「……軽口を叩いている場合じゃないぞ、レイ。しかし……無駄な体力を使うよりはマシか。よし、お前の案で行こう。500メートル先にワイルドベアと変異種を見つけた!これより気付かれないように進軍を開始する。各自、警戒を緩めるな!」


ノクターンの号令のもと、騎士団一行は深層部の奥にあるワイルドベアの居住区へと慎重に進み始めた。

その先に待ち受ける過酷な運命を、誰にも予測できないまま――。

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