第12話 作戦会議 ②
ノクターンはフェリルから得た情報を簡潔にまとめ、全員に作戦を伝える。
「変異種との力の差は歴然だ。正面からの戦闘は避け、奇襲を仕掛ける。まず俺が雷神の怒りで麻痺させ、続けて火焔の刃で奴の両前脚を断つ。毒爪を封じた後、お前らは総出で弱点を探れ。」
騎士たちはノクターンの作戦に賛同し、敬礼する。
「……分かったわ。それと……一時的とはいえ協力関係になった以上、これだけは伝えておくね。」
シエルも作戦に賛同し、回復時の注意事項を騎士団に伝えた。
「私の回復魔法は状態回復、聖なる雨、完全復活の3つ。ただし、リザレクトとリザレクションはマナの消費が激しくてチャージ時間も長いから頻繁には使えないわ……」
「なるほど……だからあの時、なるべく自分の身は自分で守れって言ってきたのか。」
ノクターンはシエルに協力関係を申し出た際に返ってきた言葉の意味を、ここで理解する。
”一時的に協力するわ。でも……なるべく、自分たちの身は自分たちで守ってね。”
「それで、チャージまでの時間は?」
シエルの説明を聞いて納得した様子のノクターンは問いかける。
「……5分よ。」
しばらく沈黙した後、シエルはゆっくりと口を開いた。
「長いな……」
範囲回復と完治魔法は効果が大きいゆえに代償もまた大きかった――。
「長期戦になればこちらが不利になるな……」
「……ポーションとかは無いの?」
シエルはチャージ時間をポーションで補えないのかと尋ねた。
「あるにはあるが……変異種はかなりの強敵である以上、持ってきた分だけで足りるかどうかは……正直言うと分らんな。」
「そう……」
あまり状況が良くないことを知ったシエルは口を噤んだ。
(やっぱり正体を明かすべき?でも……私に何ができる?全属性の適性があるとはいえ、あの変異種に通用する保証は――ない。)
シエルは正体を隠したまま変異種と対峙するか、否かをまだ迷っていた。
下手をすれば彼らの足手まといになるのではないか――という不安に苛まれる。
「今の話は聞いての通りだ!各自、気を引き締めて明日の討伐にあたってくれ。今日はこのまま洞窟内で休息をとり、明日の朝に討伐へ向かう!以上、解散」
「了解しました!」
ノクターンの声掛けに騎士たちは気勢をあげる一方で、レイノルドは小さく息を呑み、探るような目をシエルに向けていた――。
「……?」
シエルはレイノルドから探るような眼差しを向けられていることに気付いたが、深入りすることなく洞窟の奥へと姿を消した――。