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第1話 動き出す歯車

新章を投稿しようと思ったら、寝ぼけて削除してしまいました……(´;ω;`)

王都編まで一気に再投稿します(*_ _)

漆黒の夜空に浮かぶ紅い月は異様な輝きを放ち、王都の街並みを不気味に照らしていた。


巨大なドラゴンが翼を羽ばたかせ、闇夜に溶け込み音もなく滑空した。

この世の終わりを告げるようなその姿は、まさに厄災そのもの。


ドラゴンが大きく咆哮するとビリビリと空気が震え、緊張感が漂い始めた。

そして大口を開けると――紅蓮の炎を吐き散らした。


「全員退けっ――!」


騎士の叫びも虚しく、業火に焼き尽くされた王都の街並みは廃墟と化し、すべてが炎の波に飲まれていった。

魔族や魔獣の大軍が攻め入り、老若男女問わず無差別に襲い掛かる。

人々は絶望に染まった顔で悲鳴を上げ、逃げ惑っていた。


崩壊した王都の中心に、ひとりの少女が静かに佇んでいた。

銀色の髪が風に揺れ、深紅の瞳が魔族の王を鋭く睨みつけ、小さく呟いた。


「どうして、こんな事を……」


王都屈指の騎士たちですら、魔族の圧倒的な力の前では敵わず、次々と討ち倒された。

少女はたった一人で、大軍を迎え撃つ。


神聖審判サグラード・ヴァーディクト!」


少女が短い呪文と共に杖を振りかざすと、轟音と共に天地が激しく揺れた。

漆黒の夜空から降り注ぐ、眩い神聖な光。

白き光に包まれた無数の魔族が、悲鳴を上げる間もなく塵と化して消えていった……。


――グワァァァァッ!


同時に、魔王の咆哮が王都中に響き渡った。

身体からは黒紫色の瘴気があがり、ゆっくりと崩れ落ちて静かに呟いた。


「この国の人間など……守る価値も無い。それなのに、なぜ助ける?……お前は、奴らと相容れぬ……異質な存在だろう?」


少女は静かに目を伏せ、ただ一言だけ告げた。


「……ここは、私の大切な場所だから。」


杖を高く掲げ、力強く叫んだ。


悠久の柩セルクイユ・アヴァディ!」


眩い神聖な光と共に、黄金の鎖が魔王の身体に絡みつき、王都全体が真っ白に染まった。


「……お前だけは、絶対に許さん――!」


純白の光に包まれる中で怨みのこもった低い声だけが静かに響いていた……。


——ピピピピッ


無機質なアラーム音が静かな部屋に響き渡る。


「ん~……」


しなやかな白い手が伸びてアラームを止め、少女がゆっくりと身体を起こした。


銀糸のように美しい銀髪がサラサラと零れ落ち、ぼんやりと虚空を彷徨う深紅の瞳を気だるげに擦る少女——白銀葵(しろがねあおい)


「……また、この夢……」


ファンタジーの世界で、自分とそっくりな魔法使いが、たった一人で魔族の大侵攻を食い止め、魔王を封印する——。

いつもその場面になると必ず目が覚める不思議な夢。


しかし、目が覚めた後も微かに魔力の感覚が手に残っている感じがする。


「……神聖審判サグラード・ヴァーディクト


夢の中の魔法使いが使っていた呪文を試しに唱えてみる。

もちろん魔術が発動することは無かった。


「何をやっているんだろ……恥ずかしい。」


自嘲的な笑みを浮かべてため息をつく。


「……でも、何かを伝えようとしている……のかな?」


そう思ったのは、これが初めてではない。


彼女は3年前に事故で両親を亡くして以来、叔父夫婦のもとに引き取られて暮らしている。

しかし叔父夫婦は彼女を「不幸が伝染る死神」と罵り、部屋に軟禁して冷遇していた。


この奇妙な夢を見るようになったのも、ちょうどその頃だった。


「そんなわけ、ないよね……」


寝ぼけている頭を軽く振って、静かに階下へと降りて行った——。

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