その昔、子供は数え七つまでは人間として扱われていなかった……
※カニバリズム。
※グロ注意。
カニバリズムって、割と世界中である話っぽいよねー。
いきなり、どしたよ?
ん~? なんとなく? ほら、童話で有名なのは白雪姫の継母。ヘンゼルとグレーテルに出て来る魔女や継母。ラプンツェルの王子の母親とか?
日本昔話だと、安達ヶ原の鬼婆。三枚のお札。カチカチ山。瓜子姫……は、違ったか。あれは、天の邪鬼が殺した瓜子姫の皮を剥いで、その皮を被った天の邪鬼が瓜子姫に成り代わるってやつだったか。
剥いだ人皮被って成り代わるってのも、なかなかやべぇ話だよねー。しかも、童話。
なにげに童話って、原典の話はガチでえぐかったりするからなぁ。最近は子供には……っつって、マイルドにした話が主流だろ? イマドキの子供の中にはディ○ニーしか知らん子もいるらしいぜ。
そだね。○ィズニーは残酷描写はなるべく省いてるから、お子様に安心して見せられるんでしょ。カニバリズムの話の中でも、カチカチ山は性質の悪さと悪辣さが群を抜いてるよね。
おお、話戻った。まあ、仲良し夫婦だったじいさんに殺したばあさんの肉を食わせて、「ばばあの肉は旨かったか?」って聞くくらいだもんなぁ。しかも、愉快犯とか。邪悪が過ぎるぜ。原典は普通にトラウマもんだわ。
鄙びた寒村の、禁忌の話。
これまた唐突な……で、どんな禁忌なんだ?
昔の寒村では、力仕事の出来ない女の子が歓迎されなかった。
おお。アレだろ? あまり大事にしなくて、ある程度育ったら女衒に売る……的な? 童謡の花いちもんめとか有名だよなー。アレ、親と女衒が娘の値段交渉する模様を歌った歌だろ? もっと高く買え、もっと安くしろ、器量良しの子を売れ。って言い合ってんの。
そうだねぇ……でも、さ。売りに出されるのと、育たないのはどっちがマシなんだろうね? どっちも地獄……らしいけど。
育たない? なに? 飢饉で死んだ子? 座敷わらしが有名だよな。
そうだねぇ……やっぱり、飢饉とカニバリズムは切り離せない話だよね。座敷わらしは、飢饉などで亡くなった大量の子供達を若葉様、双葉様、葵様、緑様という風な名称で祀ったことが起源だとされている。
わかば、ふたば、あおい、みどり……成長せず、未熟な子供のままで亡くなった子供の集合体が妖怪になった存在ってやつだっけ?
そう。実は……こういう話があるんだって。
ん? どんな話?
飢饉で農作物が育たず、食べ物は無い。けれど、子供は生まれる。
ぅっわ、もう厭な感じ。口減らしで子供を山へ捨てた、的な? ああ、いや……もっと直接的に自分の子供を殺した、の方か?
生まれた子供は、母親があまり食事ができなかったせいか、身体が弱かった。昔、子供は死にやすいため、七つを数えるまでは村の人口として数えられなかった。
ああ、あれな? とうりゃんせの歌にあるやつ。『七つのお祝いに……』っていうのは、数え七つでようやく人間として村人の一員に数えられる。人間として扱われる。それまでは、子供は神様のものとして、七つ未満で亡くなったら、神様のところへ帰還したのだ……という考え。
そう。その昔、子供は数え七つまでは人間として扱われていなかった……ということ。特に、寒村部では力の弱い女の子は歓迎されなかった。はっきり言えば、疎まれていたらしい。
話が戻ってね?
うん。でも、さ……子供は七つまでは人間扱いされなかったんだよ。例えば、さっきも言ったけど。無事に育つかわからない身体の弱い子供が生まれた。飢饉の中、それでも食べ物が手に入る余裕のあるうちはよかった。けれど、食べ物が一切手に入らなくなったとき……
だから……口減らしで子供を殺したんだろ?
身体の弱い末っ子が……他所の家に貰われることになった。貰われる先の家は食べ物に困らないらしい。その代わりうんと遠くて、貰われて行く末っ子とは二度と会えなくなる。そして末っ子は、兄弟達が寝静まった夜中に他所の家に貰われたという。翌日、貰われ先の家からお礼にと食料の差し入れがあり、家族の食卓には久々に肉料理が並んだ。
マジかよ……
マジみたいだね。飢饉が発生した年代の寒村部で、大量の子供の骨が発見されている。その中には、まるで刃物で骨を削いだような痕跡の骨もあったそうだよ? そして、骨は女児のものが多かったらしい。
ぅっわ……えぐ過ぎるわっ!?
女児が生まれると、ある程度育つまで待って、七つで人間になる前に、村人全員に振る舞った……とか言う頭おかしい話まであるみたい。『ご馳走を残して神様の下へ還った』なんて解釈があってさ、めちゃくちゃ怖いと思わない?
現代に生まれてよかったっ!! なんつーか、餓えって人間を容易く鬼畜に堕とすよなぁ。
まあ、うん。でも、一番怖いのは……餓えてないのに、興味本位や好奇心から人間を食べてみようって実行する狂人だよね。レ○ター博士って、実在の人物がモデルなんでしょ?
ぁ~……そう言や、外国で自分の彼女だか奥さんを殺して食った挙げ句、その体験記を本として出版したやべぇ日本人がいたよなぁ。しかも、心神喪失だったって主張が認められて、人殺して食ったのに裁判で無罪勝ち取ったらしい。
いたねぇ。でも、外国だと更にやべぇ人の話もあるよね? 人肉を他人へ食べさせていたやつ。例えば……お肉屋さんとか。
……ドイツやロシアなんかで、人肉を売っていたって肉屋の話か。あれ、安くて美味い肉を提供する店だって評判だったらしいな?
そうそう。人肉を加工したソーセージが安くて美味しいって、人気だったみたい。ちなみに、材料費はただ。近所の人間で調達してたっぽい。店は繁盛。店主は張り切って商品を作ってたってさ。中には、夫婦で肉の加工をしてた店もあるらしい。
えげつない……人肉を売られて、普通の豚や牛、鶏肉だと思って食っちまった人の中には、もう一生肉を食えなくなった人もいたらしいぜ。しかも、下手したら顔見知りの人食っちまった可能性もあんだろ?
うん。でも、中には……事件発覚後に、「あの肉屋のソーセージの味が忘れられない。もう一度食べたい」なんていうやべぇ発言をした人もいるみたいよ?
マジか……怖っ!?
読んでくださり、ありがとうございました。
大飢饉のあった時代辺りの寒村部で、子供の白骨が大量に見付かっている。骨の一部には、なぜか刃物で削がれた形跡がある。しかも、それは死後に付けられたような傷で……
その地方では、飢饉で死んだ子供達を供養するために祀っている。
寒村地域の男女比の比率が片寄っており、村人は明らかに男が多かった。女性が少なく、嫁取りに難儀したという記録がある。
座敷わらしは、赤い着物姿で描かれることが多いそうですね……