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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

wall painter

作者: ナナシ

 私は壁に向かって絵の具を走らせていく。

色は全て赤だ。

鮮血のような美しい赤色で壁に絵を描いていく。

 今日は向日葵を書いている。

真っ赤な太陽に向かって伸びる大きな大きな向日葵を書いている。

しかし、どうにも大きな壁に書くには絵の具が足りない。

 今日も補充作業から始まることになりそうだ。


 私は明るいネオン街を進んでいた。

ここには多くの絵の具が集まるから補充作業もやり易い。

しかし、最近はどうにも私を捕らえようとする絵の具もあるらしく、白昼堂々と補充する事はできなくなってきている。

 「お兄さん今日うちにやってかない?」

香料の強い絵の具が腕をからませ猫撫で声を出しながら話しかけてきた。

こういう絵の具はあまり良い色を出さないから本当なら使いたくはないのだが、書きかけの絵の色が変わってしまう前に今日中に仕上げてしまいたいのでやむを得ず絵の具の誘いに乗った。

 奇抜な色に発色する店内には様々な絵の具があった。

この店を案内した絵の具もその装飾をこの店内にふさわしい物に変え実に奇抜だ。

正直こう言ったパッケージの物は使いたくはないのだが、絵を完成させるためと思えば仕方がないと諦めがつく。

 とはいえ、まだまだ絵を完成させるにはこの絵の具だけでは足りない………奥の手を使う事にする。

「金ならいくらでもある、欲しい者は私に着いてきなさい」

アタッシュケースから札束を取り出せば店が一気に騒がしくなった。

その喧騒を無視して私は大量の札束が入ったアタッシュケースを持ち、書きかけの絵がある廃ビルへと向かった。

 ぞろぞろ後ろからついてくるその足音から察するに4個から5個の絵の具が付いてきているようだ。

ギリギリ書き上がる個数だろう。

何はともあれ、私は補充した絵の具の開封作業に入ることとする。

 「え?な、なにこれ……」

「し、死体!?うそ!いやぁああああ!!」

使い古した絵の具を見て叫ぶ新品達。

あまりにも煩いので私はとっととパッケージを開ける作業を進める事にした。

 「いやぁ!は、離して!家に帰し………ぐ、ぐが…あ」

あまりにもキンキンと甲高い音を奏でる絵の具を捕まえてそのキャップを捻る。

ゴキッ!という音がした後、その絵の具はやっと静かになった。

 「あ、あゆみ………あゆみぃいいいいい!!」

「ほぉ、自ら飛び込んでくるとは中々優秀な絵の具だな………」

静かになった絵の具に駆け寄ったのは大人しめなパッケージの絵の具であった。

こういう絵の具は綺麗な色をしている。

早速ナイフを使って開けることにしよう。

「な、何をするの!やめて!いやぁ!!やめてったら!!いやぁああああああ!!」

騒いでもあまりキンキンと高くないので耳が痛む事はない。

私は静かにキャップとチューブの間に向かってナイフを滑らせる。

「あががあががが………」

滴り落ちる鮮血のような赤い色に私は歓喜した。

この色が欲しかったのだ!

 私が嬉しさのあまりはしゃいでいるその間に残りの絵の具達が逃げ出したようだがまぁ、構わない。

優秀な私のペット達がきっと全ての絵の具を捕らえてきてくれるだろう。

 「さぁ!書き始めよう!ラストスパートだ!」

私は二個の絵の具を抱えて途中まで書いてある向日葵の絵に向かった。

私は邪魔なキャップを取り払い2つの絵の具を逆さまにロープで釣り上げ、大きな桶に赤色の絵の具を出していった。

意外とキンキンと煩かったあの絵の具も良い色を出している。

 「わん!」

「わんわん!」

かつかつと音を立てながらやって来たのは優秀な2匹のペットであった。

身体が大きくて朝黒い肌をしているのがノワールで、体格は良くないが白い肌をしているのがブランである。

「ちゃんと捕まえられたのか偉いではないか!後でご褒美をあげようね」

「くーんくーん」

「きゃんきゃん!」

私の可愛いペットが逃げ出した2つの絵の具を捕まえ私に差し出してきた。

絵の具が何も騒がないその様子から優秀なペットが上手く事前準備までしてくれたようで後はキャップを開けて色を出すだけである。

「さぁ、お前たち私の作品が出来上がるのを見て待っていなさい」

「「わん!」」

4つの絵の具を吊り下げて色を出す。

美しい見事な赤色を大きな筆に乗せて壁に書いていく。太陽に向かって伸びる真っ赤な真っ赤な向日葵の絵を。

 書き終えた。

やっと、向日葵の絵を書き終えることができた。

後は写真に撮って永久保存をするだけだ。

 「さぁ、ペット達写真を撮る準備………を……」

振り返った刹那、私は腹部に異様な熱さを感じた。

見ればそこには絵の具を開封する時に使うナイフが突き刺さっていた。

「は……?え?」

目の前には何故か逃げ出したはずの絵の具があった。

そして、視線の端でロープに吊り下げられている哀れなペットを捉えて私は意識を失った。

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― 新着の感想 ―
[一言] 自分が絵具にされると思うと怖いですねぇ。 最後は生き延びた絵具に復讐されたのかな?
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