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転生ゲーマー、マルチジョブで無双する  作者: 金沢美郷
第一章 転生・チュートリアル編
7/75

3 ゲーマー、毒を食らう

 トリファで回復スキルを習得した後、不親切なことにゲームでは何故か持っている初期費用が一銭もなく何も買えず、トリファにはお金を得るも手段がない。結局他に何ら得るものなく次なる拠点へと移動することになった。


 出発してから気付いたが、生身ということは食事と水分が必要かもしれない。

 長らくNSVをプレイしていたから生で食べられる(と設定上はされている)植物の見分けはつくが、にしても野草や果実程度では限界があるし探すのも手間だ。しかも生で食べられるものでも採取品の場合ごく小確率で寄生虫に当たるという妙にリアルな意地悪設定がある。食当たりしないためにも採集しながら鑑定スキルを覚える必要がある。

 本当はじっくり魔物を狩ってレベルを上げつつ次の街までたどり着きたかったが、とりあえず食事と水分を抜く算段として一徹で済むくらいのペースで移動することにした。


 道中見かけた魔物は基本一撃で狩り、当面消費する予定のないMP余力に任せて回復スキルをクールタイムを経るたびに連発、ついでなので道端の目についた薬草やら鉱石やらを採取しつつ進んでいた。

 

 ステータス同様、ゲーム的便利要素であるインベントリも問題なく機能した。

 NSVの特に上級者の戦闘では、固定ジョブではなく一連の動作で臨機応変にあらゆる装備とスキルを盛り込む技巧こそが常套手段であり醍醐味でもあった。その再現にはインベントリの操作が必須。無くては困ると思っていたところだが、確認できてよかった。

 そしてインベントリが使えるからには、今後必要となる物資を道中採取しておいて損はない。

 今採取しているのは主にポーションの素材となる薬草など初期の採集クエストの課題となる植物、そして各種毒草や毒キノコである。

 

 毒草も毒キノコも採集クエストでは滅多に提出対象にはならない。毒薬は作ろうと思えば作れるが生産スキルを上げていない今は作りようがないし、作れるようになったところで必要な用事もない。

 

 今採集しているのは自分で食べるためのものだ。

 

 先ほどから特に致死系ではない弱毒、麻痺、幻覚系の毒草や毒キノコを摘んでは食い、ちまちまと身体に状態異常の負荷をかけている。


 理由は三つ。まずは各種状態異常の耐性を獲得すること。

 耐性は食らい克服する他に耐性効果付与の装備を纏うことで獲得できるが、装備の貴重な付与スロットを状態異常耐性如きで埋めてしまうのは勿体ない。

 耐性を獲得してしまえば将来必要となるポーションの節約にもなる。


 二つ目、回復系スキルの熟練。

 毒で食らったダメージの回復を一定回数こなすことで状態異常を治癒する魔法をショートカットで習得できる。こちらはレベルアップに伴い順当に習得できるスキルではあるが、耐性を獲得するために毒を摂取し続けているので回復スキル自体の熟練度を上げるためにも乱発し、スキルの習得に必要なスキルポイントの節約もできる一石三鳥の策だ。

 とはいえ状態異常は生身ともなれば思いの外苦しい。後で身体に後遺症が出るようなことがあっても嫌なので弱めの毒でも過剰な回復で余念がないようにしたい。


 三つ目、状態異常のまま魔物を討伐すれば経験値ボーナスが得られる。

 いかに苦しいとは言えこちらは技術だけは世界最高峰だ。初期エリアの魔物程度、渾身・会心・クリティカル三拍子そろった最高峰の一撃で今のところ漏れなく必殺。レベルの上昇に伴い反動で受けていたダメージもなくなった。

 ついでと言ってはなんだが


 ――パッシブスキル 【不屈の精神】 を獲得しました


 各種状態異常やダメージの心身への負荷を軽減するスキルも獲得できた。これも攻略を効率的に進めるための大事な地固めの一つだ。


 ……あぁ気持ち楽にはなったがまだしんどい……クソ~……


 体感的には十数年前にメインキャラを育成した時ぶりの状態異常苦行。しかも当時はリアルな苦痛など味わうこともなく、せいぜい戦闘が本調子でいけないくらいだった。

 ただ、各種状態異常の感触を体感できたのは棚ぼた的な収穫だ。今後状態異常を回避できず戦闘に持ち込むときの参考になる。


 と、何十回目かの気功術 集気を発動したところで


 ――気功術 集気 の熟練度が5になりました

   気功術 錬気 を習得しました


 来た来た。思ったより早かったな。


 集気はHPの回復スキルだ。空気中に漂う気(魔力)を吸収することで生命力を向上するだったかそんな設定が書かれていたような気がするが、対して錬気は吸収した気を体内で練り込み主にMP・SPと僅かにHPを回復し、一定確率で各種状態異常をクリアしてしまうというものだ。

 弱毒や麻痺は一定練度のヒール、集気又は錬気を所定の時間内に三回使えば一応解毒できるが幻覚はここに含まれない。しかし幻覚に限っては錬気で一発解毒が可能だ。これで幻覚耐性の獲得がより捗る。

 さらにこの錬気を熟練させることで、行く行くは自動回復パッシブスキルの習得が可能になる。

 錬気自体は特段のモーションが必要なわけでもMPやSPを消費するわけでもなく、錬気に意識を集中するため一拍ほど隙が生まれるくらいだ。熟練度10になれば中程度までの状態異常はほぼほぼカバーできるが、その隙も極限の戦闘中では命取りなので実質的にはパッシブスキルに昇華させるための踏み台のような扱いとなる。

 よって……


 「ふっ…………ふっ……」


 隙が命取りにならない段階に無駄打ちに無駄打ちを重ねて熟練度を上げていく。

 

 「お、武器持ちいるな」


 単独武器持ちのゴブリンを見つけたので指笛で呼び寄せる。毎度毎度呼び寄せられるままに突っ込んできてくれるおかげで経験値に魔石に予備の武器にウハウハだ。


 相も変わらず愚直に振り下ろされる剣に対し、こちらは敢えて甘めかつ突拍子のない方向に突き出した剣で受け止める……と思わせて


 「ギッ!?」


 剣と剣が触れる瞬間に素早く左にステップを踏みつつぬるりと剣を切り返すと、すっかり受けに気を取られたゴブリンは勢いを受け流され前のめりにバランスを崩し


 「よっ」


 がら空きになったゴブリンの脳天を縦に一刀両断する。


 二種ある初級剣術の難関の一つ、既に習得している【返し斬り】だ。

 剣術には攻撃技、受け技の他に応じ技というカテゴリーがある。返し斬りは応じ技の中でも相手の攻撃の勢いを如何に上手く受け流すかで威力補正が決まる上、失敗すると武器にそこそこダメージが入るわ一瞬スタンするわで便利ではあるが慣れるまでは扱いが難しい玄人向けのスキルだ。今のような場面ではこのように脳天を叩き斬るか、放り出された相手の腕を切り落とすのが定番だ。

 今回は三拍子揃って余裕の一撃必殺だったが、相手の隙を突くカウンターでクリティカルを狙いやすい反面、相手の攻撃を受け流し攻撃に転じるというスキルの特性上渾身・会心の判定が初級にしては辛いスキルでもある。


 受け流しも完璧に決まったので武器へのダメージもない。初級なのでこれで熟練度も10。


 さて、ナマクラのストックも確保できたのでもう一つの応じ技を習得しよう。


 お次に出会った原始鈍器持ちのゴブリンを煽って先手を促す。

 

 こちらは剣を中空に向け敢えて隙を見せ、相手が振り下ろした鈍器を躱しながら絶妙な角度で叩き落す。


 「ギェッ!?」


 振り下ろしの勢いと叩き落としの威力で前のめりにバランスを崩したゴブリンの頭部をすかさず一閃で横一文字に薙ぐ。

 

 ――初級剣術 陸ノ型【打ち落とし】 を習得しました


 初級応じ技のもう一つ 【打ち落とし】だ。

 こちらは打ち落としの大まかな動きを実践することで習得できる。

 受太刀と違うのは相手の攻撃をはじき返さず、ほぼ流れそのままこちらの力を上乗せして大きくバランスを崩させること。補助エフェクトによっては相手の武器に大ダメージを与えて破壊したり、武器を落とさせたりもできる。そしてスキルとして応じることでタイムラグなく次の剣術を発動できるという繋ぎの優れ技でもある。難点といえば返し斬りと違いどれだけ上手く使ってもこちらの武器も多少ダメージを負うということ。

 習得のための一発目では熟練させられないので手持ちの武器を消耗する羽目になる。が、武器のストックは手に入っているので近くにいたゴブリンを同じように打ち落としからの一閃で必殺。

 打ち落としも無事熟練度10に達したので今の今まで使っていた耐久値ギリギリのナマクラをその辺の木に向けて投げる。

 コッと小気味のいい音を立てて木に突き刺さると


 ――投擲術 【片手剣投擲】 を習得しました


 まぁあると便利なスキルなので一応。

 こちらも打ち落とし同様一発目では熟練しない上に武器の耐久値を消耗するスキルなので、捨て剣での習得が定番。刺さった剣は一応まだ使えそうなので抜いて使い捨て要員としてストックしておく。


 まぁ順調。この調子で攻撃魔法習得前に近接の実戦に使えるスキルを備えていこう。

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