5、たのしい早退
私は一般的な会社員、何かを生産したり会社に貢献することで生活費を稼ぐしがないサラリーマンだ。本日も車で通勤、仕事を行い、残業を行い、車で帰宅した。部屋着に着替え、炊飯器のスイッチを押す、その後は部屋干しした衣類をまとめ夕食を作る、風呂に入り…とにかく生活上の諸所をこなし布団に潜り込む、どうか、どうかお願いします。楽しい夢を見させてください。誰に頼むでもなく私はそう願いながら就寝した。
就寝
普段通り仕事をしていると、いきなり上司から、
「今日はもう上がっていいよ、たまには早く帰ってゆっくりしなさい」
と言われ、喜び勇んで自宅へ向かう私、普段通勤で走る道を自家用車で逆に自宅へ向かう、家に帰ったら溜まっている録画番組でも見ようかと考えながら、道中信号の無い三叉路交差点を左折しようとした。しかしその際、日差しが目に入り右側の安全をよく確認せず左折してしまった、結果右側から進行してきた茶色のロードスターの助手席側へ突っ込んで事故を起こしてしまた。あわわわわ…、やちまったよ、やばいよ、これどうしようと怯える、とにもかくにも相手の運転手と話をしなければならないと考えるが、近くに車を駐車できそうな場所が見つからない、私の車は相手車両の前方を走っていたことから、ちらっとバックミラーを確認すると相手は40代から50代くらいの男性で顔は鬼と言って差し支えない容貌でこちらをにらんでいた…、あぁ…黒塗りのベンツにぶつかったら人生終わると考えたことはあったけどロードスターでも人生終わるかもと思い始めたところ、ようやく車を駐車できそうな場所を発見、急いでそこに車を駐車する。
車から降りると、丁度相手車両も駐車場に入ってきた。殺されるかもと考えていると、少し遅れて運転手の男も降りてきた。とりあえず名乗って話をしなければと覚悟を決めようとしたところ、こちらに来る男性はたたまれた手押し車を肩に担ぎあげた状態で近づいてくる、覚悟不完了!なんだよ明らかにあれで殺る気じゃん!えっこの場で殺られるの!?と恐慌しつつ私は身構えた。しかし、相手の男は以外にも理性的に話をすることができた。ただし、この話し合いの間も相手の男は顔は鬼の形相を保ちつつ、手にはいつでも殴りつけられたら私程度ひとたまりもなさそうな手押し車が握られている。あっそっか…最近の鬼は金棒じゃなくて折り畳み式の手押し車がトレンドなんだ、と変に納得しかけたところ、この状態を打開する妙案を思いついた。そうだ警察を呼ぼう!と、ただいきなり電話するのもあれなので相手の男に一応、念のために断りを入れて110番通報をするが、まったくつながらない、いつまでも続くコール音…気が付くと何処からか、
蛍の光
が流れてきた、よくスーパーとかの閉店間際に流れることで有名なあの曲だ。あぁ…私の人生もここまでなのか…あれか、私の人生もそろそろ閉店ガラガラか?と思った。耳に入るのは蛍の光と一向につながらない電話のコール音…妙にすがすがしい気持ちで私は空を見上げた、きれいな夕焼けが見えた気がした。
起床
なんて夢だ!起きて最初に思った。楽しい夢どころかリアルで起こりえる恐怖の夢だよ!寝る前にあれだけ祈ってこの仕打ち…前世で何か相当悪いことをしたのか?まぁいいや、とりあえず交通事故は夢のことだし、現実は別にどうにもなっていないと考え、私は仕事へ向かう準備をする。
ふと、自家用車に乗り込んだ際に思い出す、そういえば昔見たテレビかネットの動画で夢の中で事故をした後に現実でも事故を起こしたという話を…いつも以上に注意しながら私は会社へ向かうため車を走らせた。
この夢を見た後、幸いにも本稿執筆まで交通事故は起こしていません。