3、たのしい競争
私の名前は藤山、一般的な会社に勤務している一般男性だ。今日も楽しく仕事をしていたら気が付くと日付が変わっていた…、もちろん明日もいつも通りの出勤となる。
そんなわけで私はさっさと帰宅し寝ることとした。
就寝
会社のレクリエーションで、
自転車VS自動車
を使用してどちらが早く目的に到着できるか勝負することとなった。どう考えても自動車が勝つのは明白ではないだろうかと考えるものの、私は幸いにも自動車を使用することとなり内心一安心した。
会社の部長よりルールの説明が行われた、
・3人1組でそれぞれ自転車と自動車を使用すること
・会社からスタートして目的地は京都の東山山荘(銀閣寺)
・自転車と自動車は同時に出発すること
・ナビについてはその類の一切の使用を禁ずる
ということであった。
正直、東山山荘ってどこだよ!と思ったが、幸いにも一緒の組になった後輩が知っているらしくそれならば運転は後輩に任せようとなり、運転席に後輩、先輩が後部座席、私が助手席に座り出発することとなった。
しばらくは国道を滋賀県方面へひた走っていたのに、気が付くと鬱蒼木々がざわめく山道を走っていた。私は後輩にこの道であっているのかと尋ねると、
「この道であってます」
と豪語する後輩、ならば安心だと思い、後部座席の先輩を見ると爆睡していた。しばらく私も起きていたが、その後眠ってしまった。
目が覚めると自動車はイチゴ農園の駐車場に停まっていた。目の前に、
いちご狩り
と書かれた看板が仰々しくあるので間違いないだろう、しかし、どうしてこんなところにと思っていると、運転席の後輩が、
「僕イチゴ食べたいんですよね」
と私に話しかけてきた、…なんで?と思うが私自身、自動車が自転車に負けるはずがないと考えており、後部座席で爆睡していた先輩も目が覚めいちご狩りに非常に乗り気になっていたことから、特に何の抵抗もなくいちご狩りをすることとなった。
受付で金を払い、ビニールハウスに入ると、普通のイチゴがなんの面白味もなく生っている、私は練乳が入った透明のビニールパックを片手にそのうちの一つをつまんで食べてみる。
恐ろしいくらい味がしない
甘くもなければ酸っぱくもなく、口の中に入れても歯ごたえも何もしない、かといってまずくもない。しかし、逆に考えればこんなイチゴそうそう食べれる物でもないと考え、次々ともぎ取っては口の中に入れていく、練乳をつけることも忘れて…
しばらくして6個目のイチゴを食べようとしたところで、ふと、顔をビニールハウスの外に向けると、自転車の3人組がおおよそ自転車とは思えないスピードで走り抜けていくのが見えた。あれは、競争相手の他部署の3人組だと即座に理解した私は、急いで先輩と後輩に知らせると車に乗り込むが、後輩が一向に自動車に乗り込んでこない、一度車を降りて様子を見に行くと、ビニールハウスに併設した売店でイチゴパックを購入しようとしていた、
「家族のおみやげにいいかと思いまして…」
そんなことを言う後輩の襟首を私はつかむと、後輩を自動車の助手席に放り込み、ハンドルを握り自動車を走らせた。
なんとしても負けてはならない、自動車が自転車に負けたと知られれば世間の笑いものになる、だから、絶対に負けるわけにはいかない!焦る気持ちを押させつつ私は京都へ向かって自動車を走らせた。
起床
眠い、何度目のアラームだろうか…念のために携帯のアラームを寝る前に4つほど仕込んでおいたおかげが、ある程度余裕を持って起きることができた。私はいつも通り、会社へ行く準備をし会社へ向かう、とりあえず会社に着いたら、後輩に何らかのいたずらをする決意を持って。
後日後輩に、東山山荘(銀閣寺)はどこにあるか?と尋ねたところ北山山荘(金閣寺)と勘違いしていました。