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《ノベハン》  作者: ジンベエ
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その8

  そしてガッチがつい余計な事を、ニヤッと笑いながら後藤さんに尋ねた。


田川「・・・もしかして、今後の発展も兼ねてですか?」


 それを聞いて後藤さんは、ガッチの質問の意味を察して答えた。


後藤「あははは、いや、そんな。・・・でも今回たまたま誘っただけで、うん、

   そんな次の展開なんていうのは、全く・・・。」


 と言って照れながら後藤さんは答えた後、坂上さんをチラッと見た。そしてこう付け加えた。


後藤「まぁ、・・・ラッキーだったって感じですかね。」


 この会話も実は坂上さんは聞こえていた。で、後藤さんの意味深な発言にも、坂上さんはあっさりと回答した。


坂上「あはは、それはごめんなさいで。」


 という事で後藤さんは、僕らの目の前でフラれた感じになった。それを見て僕とガッチは思わず大笑いした。


城間・田川「あはははは!」


 当然後藤さんはガッカリした表情をして、雰囲気が一気に沈んで、身体をひと際縮めていた。でも坂上さんは後藤さんに向けて、救いの一言を言った。


坂上「・・・うん、でもまだ、わからないけどね。」


 その言葉を笑顔と共に坂上さんが言った事で、それを見て聞いた後藤さんは少し蘇った。また僕もガッチもそれを聞いて何だかホッとした。そんな中、セキさんはポカンとした表情そのままで、今もなお坂上さんに見惚れている事に、僕は若干の恐怖を感じていた。


田川「実は僕ら、そんなに野球好きじゃないし、当然ホークスファンでもないんですよ。」


 そうガッチが事実を告げると坂上さんは、それは承知してる感じの表情をして、こう尋ねてきた。


坂上「ええ、《ノベハン》の事でしょ?活動は聞いてますよ。私もアニオタなんで、

   好きなイベントがあったら、結構行きますよ。」


 それを聞いてガッチも僕も正直驚いた。


田川「へぇ、そうなんですか?いや全然、そんな風には見えませんけど。」

城間「そうそう。逆に鼻で笑っている側な感じで・・・。」


 すると坂上さんは少し強い口調で、本音を吐露し出した。


坂上「いえいえ、全く。本当オタク側ですよ。例えばセーラームーンだったり、プリキュア、

   あとは昔の魔法少女シリーズなんかも・・・。」


 この回答にガッチのアンテナが反応して、ガッチも俄然口調が強くなった。


田川「おおっ!良いですね!その分野だと自分も結構イケますよ!だってここ実際・・・。」


 とガッチが力んで言ってるその時、突然セキさんが復活して、グワッとこの会話に入り込んできた。


小関「実際にここでショーとかやってますしね!来たりしますか!?」


 とセキさんは笑顔で、ガッチが次に言おうとしていたワードを先に坂上さんに告げて、なおかつテンション高めな感じで質問をしたのであった。これを見てガッチは当然、呆気に取られた表情をした。そして僕もそれを見て、ただただ唖然とした。


坂上「はい、知ってますよ。見に来た事もあります。・・・でも最近はなかなか時間が取れなくて。

   行きたい気持ちはあるんですけどね。」


 と言って坂上さんはふと、行われているイベント会場の方を見た。この言葉を聞いてまたセキさんが、誰よりも早く反応した。

   

小関「そうですか、じゃあ、もし機会があれば、またこうして?」


 とセキさんが坂上さんに尋ねると、坂上さんはセキさんを見つめて答えた。


坂上「ええ、都合が合えばもちろん。」


 と笑顔で答えた事に、セキさんは更にテンションが上がって、僕らを見ながら発言した。


小関「よしっ!じゃあいつだ?いつにしますか!?いつがある!?」


 そんな興奮気味のセキさんとは対照的に、ガッチが落ち着いたトーンで声を発した。


田川「まぁ大体ショーは、土日祝日を基本にやってますから。それに合わせて予定を組めば。

   それにネットで先々の情報もわかりますからね。・・・今ここで決めますか?」


 ここでガッチの性格が出てきた。と言うのは狡猾さも忖度もなく、今この場の空気も感じずに、次の展開に行こうとする所だ。僕が思うに、先程坂上さんが言った『都合が合えば』と言う意味は、恐らくきっとある種の社交辞令だと、僕は思ったんだがガッチはそうだと捉えずに、もう次の予定を立てようとしている訳だ。そう聞かれた坂上さんは無言で笑ったが、きっと困惑しているだろうと、心配性の僕は思った。セキさんも良い返事を期待してる、そういう表情をしている。そんな状況下で後藤さんが、ようやくこの会話に入ってきた。


後藤「そんな急かさなくてもいいじゃないか?まだ今度で良いだろ?」


 それを聞いて坂上さんが、ちょっと安堵した表情になったように僕には見えた。しかしガッチは引き下がらなかった。


田川「でもそうやって、いつかいつかってなってしまって結局、全然決まらずに終わったって事、

   しょっちゅうありますからね。」


 『・・・もう、良いんじゃないかって』と僕は正直思った。そしてそんな表情して僕はガッチを見た。けどガッチには全く伝わらないようだった。ついでにセキさんを見ると、『よし、良いぞ、もっと行け!そして決めさせろ!必ず仕留めるんだ!』って感じの表情をしていた。


後藤「・・・それもそうだけど、今ここですぐには、なぁ?まだスケジュールもわからないしな。」


 と言って後藤さんがふと僕の方を見たので、僕も後藤さんに乗っかって、こう発言した。


城間「・・・そうですね。まぁいずれ行くとして・・・。」


 と言いつつ僕は坂上さんを見て、思い切って聞いてみた。


城間「・・・ライン、交換できますか?」

坂上「あ、良いですよ。時間が合って、好きなイベントでしたら、ぜひ教えて下さい。」


 と言って坂上さんはOKした。言った僕もまさかとは思ったが、これでこの話題の着地ができたと安心した。坂上さんも僕に向けて、感謝の笑顔を見せてくれた。こうして坂上さんと僕らはラインの交換をした。ガッチも何となく納得して、意外にも後藤さんは交換していなかったようで、これが良いきっかけになったようだ。


小関「・・・まぁ良いだろう。連絡先がわかったからな。」


 とセキさんがこれまた僕だけに聞こえるくらいの音量で、未練がましく言ってきたので、僕はそれをガン無視した。



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