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《ノベハン》  作者: ジンベエ
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その7

  この時僕ら三人に同時に、ラインのメッセージが入ってきた。それを知らせるチャイムにガッチが、いち早く反応してスマホを見た。


田川「あ、後藤さんから。見つけたって。」


 僕もセキさんもそのメッセージを確認しようとした時、僕の後ろから聞き覚えのある、男性の声が聞こえてきた。


後藤「お~い!」


 そして僕らの所に一人の男性、後藤さんがやって来た。この後藤さんこそが《ノベハン》の発起人なのである。この人の呼びかけに同調して、僕らは今も活動しているのだ。

 

後藤「いや、お疲れさん。忙しい所悪かったな。」


 そう後藤さんが発した後、すぐ様セキさんが責めた。


小関「リーク者が遅いなんて、脱力ですよ。」


 実はこの依頼は、後藤さんが引き受けた案件であった。そして後藤さんからの呼びかけで、こうして僕らは集まったのである。


後藤「いやいや、申し訳ない。でも時間としては丁度良いだろ?」


 そう言って苦笑いした後藤さんを見ても、セキさんの目つきは冷めた感じであった。なので僕はこの場を宥めようと思ったけど、迂闊にもこう言ってしまった。


城間「まぁこうして、セキさんが先に並んでいなかったら、こんな前にはいませんよ。」


 と自分の意に反して、セキさんの肩を持つようなセリフを言ってしまった。僕は言った後『しまった!』とすぐに思ったので、別の言葉を、少しでもフォローできる言葉を考え始めた。でも後藤さんはそう言われても冷静に、しっかりと頭を下げて謝罪した。


後藤「ああ、そうだな。セキ君、本当に悪かったし、早く来てくれてありがとな。

   次回から気をつけるよ、本当に申し訳ない。」


 自分の非を認めて素直に謝意する。そんな大人な行為をした後藤さんに、僕やガッチは改めて、後藤さんの器量の深さに感銘した。後藤さんは三十一歳で、舞台役者であり声優の活動もしている。同じく役者をしているセキさんと比べて、遥かに紳士的な振る舞いである。それを見てセキさんは小声でまた、卑しいセリフを呟いた。


小関「とにかく全員貰えるから、並んで待つ必要はないってか?」


 位置的にセキさんのすぐ傍にいた僕にしか、この言葉は聞こえなかったようで、他の二人は全く反応していなかった。そしてその時のセキさんの表情も、僕の視界に入って見えて、まさしく子供っぽい拗ねた表情をしていた。正直見るんじゃなかったと僕は後悔した。


田川「それにしてもスーツだなんて珍しいですね。こんなクソ暑い時に?」


 そう尋ねたガッチの言う通り、この時の後藤さんはスーツを着込んで、片手にはキャリーケースを持っていた。


後藤「あははは、ついさっきまで仕事だったんだ。舞台の段取りとかでね。」


 と後藤さんは笑顔で答えた。でもガッチはまだ納得していない表情をしていた。


田川「そうですか。・・・で、その後ろにいる、人は誰ですか?知り合いさんですか?」


 それを聞いて初めて僕は気づいた事で、後藤さんの二歩三歩後ろに、女性が一人こっちを見て佇んでいたのであった。そう言われて後藤さんは振り返って、その女性を呼び寄せた。


後藤「ああ、こちらは坂上さんと言って、今回舞台で一緒に仕事をしている女性さ。

   またホークスファンでもあるから、この機会に誘ったら来てくれたんだ。」


 と後藤さんが紹介すると、その坂上さんも少し存在感を出して、僕らに挨拶してきた。


坂上「初めまして、坂上です。誘いに乗って来ちゃいました。よろしくです。」


 と坂上さんは笑顔で言って、軽く頭を下げた。そして頭を上げて、その顔を見た一瞬の印象、当然美人でスレンダーで、この時着ているフォーマルな服装が、凄く大人びている。この容姿端麗さに僕らはすっかり魅了されてしまった。取り分けセキさんの表情がヤバかった。この坂上さんの素敵さに見惚れて、その名の通りにポカンとしている表情をしていた。

 


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