九月十六日
「生徒会選挙……ですか?」
それは九月十六日の金曜日の事でした。
私が生徒会に顔を出し、お茶など嗜んでいた時です。
不意に会長が選挙などと言い出すではありませんか。
「選挙……あなたもやったでしょう?」
「記憶にありませんが……」
「まあいいわ。私たち二年は来春をもって引退するわ。
そこで来春以降のメンバーを決める必要があるわよね」
「え、でもそんなの一言も……」
「生徒会役員に三年がいない時点で気づきなさいよもう……」
言われてみればそうだと思った私は会長に口答えするのをやめました。
「さて。岡本さんは誰が当選すると思うかしら?」
「そうですねぇ。本命は風紀委員長じゃないでしょうか」
「でもつい最近現れたダークホースがいるわよね」
「ですね、あの人が立候補したらヤバいと思いますが……」
「誰ですあの人って?」
「とぼけないでよ佐々木ちゃん。神野春雪に決まってるでしょ?」
「ああ……まあ確かに……」
神野さんは目立ちたくないのか、学業や体育の成績は中の上くらいを維持しています。
しかしそれでもなお、彼は女性人気が凄まじいので当選の確率は高いと先輩方は踏んでいました。
何より女っ気のないところが人気の秘訣ですね。
彼は女性の影など一ミリも感じさせません。まあ、彼の恋人は大阪ですし、同じ学校の子と何かすることは彼の倫理的に出来ませんから、必然的に女っ気など皆無となります。
もし立候補したら確かに当選確実ですが、そこに私は異論を呈しました。
「あの人、夏樹くんと一緒の学校に行きたいだけですし目立つような事はしないと思いますよ?」
「あらら、彼のことは私が一番知ってるわ(ハート)とでも言いたげね?」
などと岡本さんは体をクネクネさせながら私を揶揄してきました。
私は答えるのも億劫な愚問に、馬鹿正直に答えます。
「岡本さん。(ハート)なんてどうやって発音したんですか?」
「聞くところそこ?」
「冗談です。しかし彼とは付き合ってないですよ。何にもないです彼とは。
それはもう全部答えてあるでしょう、怒りますよ?」
「わかってるって。確か夏樹くんの叔父さんだっけ?」
「ええ。あの人は四人の子供の父親なんです。実の父ではないですけどね。
優しい人です。優し過ぎる。自分を軽く見てるのか他人を重くみているのかは知りませんけどね……」
「そうよね。生まれた時から貴族的に育っているせいか気前も良いし優しくて人気があるわ」
「貴族的にですか?」
「ええ、聞いたわよ。夏樹くんの親戚で家は裕福。
何不自由なく育ってきたけど甘やかされていたわけではなく、相当英才教育も仕込まれたとね」
「まあそうですね会長……」
「ああ、それと言い忘れてた事があるわ。佐々木さん、二期目もやりたいなら当然もう一度選挙で立候補して当選することよ?」
「あっ……そうですよね。選挙期間って……」
「月曜からだけど」
「それを早く言ってください!」
私は急いで生徒会室を飛びだし、選挙管理委員会に相談。
結果、私に突きつけられた答えは残酷でした。
月曜にはもう選挙が開始するので立候補の受付は終了したという哀しいお知らせです。
私がトボトボと帰ってきて生徒会室のドアを開けると、岡本さんに早速図星を指されます。
「あのー、もしかして神野くんと生徒会やりたかった?」
「別にいいですよもう……私は生徒会に残らないんですから関係ありませんよ」
というところで、今日のところは終わります。
筆者は学園ものがやりたかったのに、気付けば学校シーンは全体の一割にも満たなかったので、テコ入れがなされたのである。




