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ボーイとガールがミートして  作者: ニャンコ教三毛猫派信者
LOG 1
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六月二十五日・中

ため息混じりに言いながらも桜井さんは私に付き合ってくれました。

階段を昇り、さっきの廊下に出てみると四宮さんと神野さんがにらみ合いです。

最強の盾と最強の盾が出会ってしまったみたいな感じですね。

お互い身動き取れず、決定打も存在しません。


「ふふふ。白痴の奴隷め。奴隷の癖に!」


爆音が聞こえ、神野さんの後ろにはやじ馬が。

彼は棒立ちで何の反応もしません。

その前に四宮さんは仁王立ちしてまた何か言ってます。


「わかってる。あなたが誰の奴隷かくらい。

私は知ってるから。もういいでしょ。これ以上私を苦しめないで。

私の大切な人たちを苦しめないで。もう必要ないから」


四宮さんは、意識を失い、前のめりに倒れた神野さんを抱き留めると、愛おしそうに頭を撫でてから、膝枕を開始しました。

そのうち男子の誰かが運んであげるため近寄ろうとしたんですが、神野さんが息を吹き返して口を開きました。


「頭痛がする……吐き気もだ。僕は一体……何がどうなって……まさか……」


「大丈夫だよ。誰も傷つけてないよ」


「イザナ……大丈夫、もう一人で大丈夫だよ」


神野さんは身を起こすと、衆人環視の前で爆弾発言をかましました。


「多分これは……僕は何かに操られて暴走したんだね」


「大丈夫、私がちゃんと止めたから」


「君が……止められるのか!?」


「私がいつもついてるから。ね、わかったでしょ。

あなたには私が必要で、私にはあなたが必要なんだから」


イザナさんは人前では話が出来ない性質なんですが、もう今は二人だけの世界に入っていて他人は意識にすら入っていません。


「心配かけてごめんね……君がいないと、僕はダメみたいだ」


「そんなこと……」


「いや、ある。僕に愛を伝える資格があるのは、君だけだ」


少女マンガの男のように傲慢な台詞を吐く神野さんでした。


「何それ。受け売りでしょ。愛の言葉ぐらい自分の言葉で言って!」


「僕は君が、僕のことをどれだけ心配していたかも、知ったうえで無視していた。

何も知らずに、何も気付かずに。僕は最低だ。

この期に及んで僕は君の優しさに甘える事しか出来ない」


「優しさに甘えるのは私の方だから……」


本質的には、自分の事などまるで神野さんは関心がない事を理解している四宮さん。

いくらなんでもちょっと可哀相になってきます。

ちょっと羨ましいと思った事もありますが、あの悲しそうな笑顔を見ると、そんな気にはとてもなれません。


神野さんは気が済むまで会話を終え、おもむろに立ち上がると服がどこにもないことにやっと気づき、顔をしかめました。


「やれやれ。イザナ何か服持ってない?」


「はいこれ。着替え持っててよかったね」


四宮さんは私達に見せ付けるようにしてそれを神野さんに手渡しました。

彼女が彼の着替えを持っているということはほぼ間違いなく彼女の家に彼が泊まったということです。

もちろん、私はそうと既に知ってます。

その彼ですが、シャツのボタンを留めながら苦しそうに声を出しました。


「被害はこれだけ?」


「うん。怪我人はなし、ガラスが割れただけ」


「ガラスが割れた……? 爆発でも起きた?」


「そうみたい。まあ気にしないで。こっちで処理しとくから」


「処理って……」


「後始末。あ、先生来た……」


四宮さんは私達のことは、とりあえず黙っておいてくれました。

要するに圧倒的に優位な立場にあると確信しているからこその余裕です。

別に私達は神野さんを略奪しようなんて絶対思いませんけど、正直見下されているのは不本意ではあります。


「コラコラコラーッ! 何をやっとるかーッ!?」


大柄な男性の体育教師です。たしか女子バスケ部の顧問もやっていた記憶があります。


「……!」


また始まりました。四宮さんは大柄な先生の前では萎縮して言葉も出てきません。

そこで私が代わりに状況を説明します。


「あー、えっと、桜井さんがニトログリセリンで遊んでました」


「ほんとか桜井! 神野の火傷もお前かッ!」


神野さんの胸にはクロロホルムでついた火傷が。

一応不思議な力で治癒しているとはいえ、まだ十分肉眼で見えるレベルの傷が残されています。


「すみま……せん……」


桜井さんは感極まって泣きだし、先生もタジタジにたじろいでしまいました。

女の子に泣かれると大の男である先生だからこそ困ってしまうものです。


「あなたたち、私のハルくんを傷つけて満足したかしら!?」


とでも言いたそうにしながら、言葉の出てこない四宮さんです。

子供を守る母犬のように四宮さんの目が鋭い眼光を放つようになりました。

今まで余裕をアピールし、飄々として泰然とした態度だった彼女の初めて見せる本気の怒りでした。


「……ごめん。先生、ガラスは弁償します」


「あ、ああ、うん。そ、そうだな。泣くことはないんだぞ。

人間誰しも失敗はある。か、科学は失敗を糧に発展してきたからな……」


などと先生は口ごもりながらそれっぽいことを言いました。

消え入りそうな桜井さんを見かねて神野さんがこう言います。


「僕は大丈夫だから気にしないで。千春、前にも言ったけど、母親を愛するように君のことを愛している」


そう言われ、神野さんの方を振り返った桜井さんは傷痕を見て目を伏せ、また泣きだしてしまいました。


「ごめん……わたし……また止められなかった……私一人の力じゃ……」


「あのですね先生、桜井さんは私が体育館に連れていきますから……」


「ああ、そうか。ご苦労だ佐々木。神野、保健室行くぞ」


「私も付き添います!」


「ならわたしたちも……」


と私は進言し、私達は五人で保健室へ向かいました。

しかしそこに先生の姿はなく、先生も予定外の事に動揺します。


「あれ……高橋先生は……!?」


「あ、そういえば確か授業の準備じゃなかったですか?」


「うわっ、そうだった。先生すぐ呼んで来るからな!」


「大丈夫です、私も応急処置くらいできますから」


「何もするなよ! 先生が来るのを待ってろ!」


待つわけがありませんでした。四宮さんは前世で有名大学の医学部を卒業し、外科医になったエリート。

正直な話、保険の先生よりは治療も出来るでしょう。

やけどの応急処置であれば、恐らく大差はないでしょうが。


「千春? スルフォンアミド作れる?」


「無茶言わないで」


「じゃあアスピリン」


「作り方知らない」


「まあいい。じゃあこの中の薬勝手に使おう。

ハルくんじっとしてて。動かないでね?」


「さすがだね。僕も看護師の母がいるから、テキパキと治療する女性に少し……憧れもある」


神野さんの胸の火傷は水で良く洗ったあと、次によくわからない薬のあと、軟膏が塗られてガーゼが貼られ、ついに治療は終わりました。


「どうも。ほら部外者はさっさと体育館に行って?」


「わかりました……行きましょうか?」


「わかった」


私達はよくわからない治療を見ていても気分が悪くなるだけなので保健室からは退散して一路体育館を目指しました。

藪をつついて蛇を出してしまいました。


夏樹くんの話を聞こうと思ったら、四宮さんと神野さんがどういう関係か改めて見せつけられることになるとは。

しかし若干進展はありました。


「白痴の奴隷は誰かの奴隷、ですか……」


「ん?」


「いえ。白痴の奴隷は誰かの奴隷……何故四宮さんがそれを知ってるのかと。

私の推理が正しければ……」


「多分その推理は正しいと思う」


「四宮家には過去に異次元へ消し飛ばされた人がいる、ですよね?

その人は恐らくイザナさんに神野さんの記憶を流し込んだ見えないお姉ちゃんなる人物。

白痴の奴隷の主人。そして恐らくこの世界の神……いいえ、女神ですか」


「そういうこと。夏樹くんを操って父親を消し飛ばさせたのもその女らしい。

彼自身ですら女の手のひらの内じゃないかという疑惑も……」


「改めて思いました。あの一族は呪われていて、化け物です。

私は何か勘違いをしてたみたいです。

人間とは違うものと……側には居られません」


「私も……それは同じみたい。今日思い知らされた。

私と彼は、結局のところ全然違う生き物なんだって。

ねえ、佐々木さんはこの話知ってる?」


「え?」


「来年大学の医学部を彼が受けるって話」


「そんなことを話していたんですか……」


「彼は本気でイザナと結婚して夏樹ちゃんも引き取って家族三人を養うつもりらしい。

何も言えなかった。何一つ、私では心を変えられるような事は言えない……」


「なら桜井さん。ダメで元々ですから、知っている事を全部話してくれませんか。

私はあなたの味方です。あなた何か……何か、夏樹くんに与えられた情報を何か持っているんじゃないですか?」


「持ってるけど正直怖い。あなたに漏らしたらあなたも私も殺されるかもしれない。

あの女はやると思う。私達は計画の邪魔をすることはあっても協力にはならないから」


「あの女?」


「四宮結。四宮夏樹ちゃんの産みの母親。そして、四宮幸村の妻。もちろん二百歳近い。

四宮幸村は神野春雪。何かを知ってるらしい」


「……わかりました。父に電話をします」


体育館では、男女のパートナー同士での授業が行われたのですが、私のパートナーである神野さんは欠席。

まるで保健室から戻って来る気配がありません。

それに保険医の先生もどこかの教室での授業に戻っている模様。


二人が誰もいないところで長時間二人きりであることは考えないようにしながら、私は授業を見学していました。

教室に戻るともう二人は教室に戻っていました。


「あ、パートナーだったのに授業に出られなくてごめんね?」


と心にもないことを言ってくる神野さんに私は冷たく返しました。


「保健室で何をしていたのやら。あ、そういえばその服って」


神野さんは普通にシャツを着てネクタイも締めてます。

予備を持っていたとは思えませんが。


「イザナが予備を持っててくれたんだ」


「何で持ってるんですか!?」


「彼のサイズにあったシャツぐらい常備してて当然でしょ?」


「そ……それは言われて見れば確かに……」


結婚すら約束した仲なんですからそのくらいは当然、なんでしょうかごめんなさいわかりません。

家に人を泊めた事がないし、泊まったこともありませんからわかりません。


「そういうわけだから。あなたも、何か企んでたみたいだけど今後はこういうことのないように。

彼のことは私に任せて。あなたは呪いの事なんか忘れるべきだと思うけど」


「……私は刑事の娘ですよ。そこに謎があれば真相を突き止めるために進み続けます」


それにまだ、私は当初の目標を達成する事が出来ていないではないですか。

当初の目標。すなわち神野さんの事を助け出してあげて、出来ることなら一緒に笑ってみたい。

心の底からの笑顔を見てみたい。瞳を笑顔にしたい。ただ単純にそう思った原点を忘れたわけではありません。

だから、というわけじゃないんですが、私は四宮さんとばかり一緒に居て、あれだけ一緒に居た私に見向きもしない神野さんを困らせたくなって、こんなことを言ってしまいました。


「ところで、神野さんって子供に父さんって呼ばせる派なんですね?」


「あ!? 夏樹に会ったの!? 私ですら会ったことないのに!

悔しい! この泥棒猫! 二度と私達家族に近づかないで!」


神野さんを困らせるつもりが、四宮さんが過剰反応してしまいました。

教室にいる同級生も全員四宮さんの方を向くほどのものすごい剣幕です。


「落ち着けよイザナ。そう呼ばせてたら、何?」


「いえべつに。神野さん、子供は好きですか?」


「人並み以上に好きではないと思う。ただ、何にも優先して必ず守らなければならないと、そう教えられている」


「子供のいるお母さんと、四宮さんのどっちかしか助けられない状況に遭遇したらどうしますか!?」


四宮さんは、視線だけで私を殺そうとしているのかというほどこっちを無言で凝視してきました。

鬼の形相です。殺し屋のような目です。元は医者なのに。


「全く。君はときどき意地悪な質問をするね。

まるで僕を困らせたがってるみたいに。答えは決まってる。

子供のいるお母さんの安全を確保した上で、できる限りイザナを助ける方法をギリギリまで探す。

仮に助けられなくてもイザナは許してくれるはずだと信じている」


「……これで満足? 私が傷つくとでも? 傷つけたかった?」


四宮さんは勝ち誇ったような顔で言いました。


「いえ。ただ、自分の子供より他人の子供を優先するんだと思って」


「……!」


毎度の如く、人前なので四宮さんは黙りました。もう同級生達が大挙して戻って来たんです。


「彼女がいなければ僕らはこうしてなかったんじゃないか?」


「ぅん……」


ものすごい小声で、怯えたように四宮さんが答えました。

見たくないっ! 

私は目を逸らしそうになったのを精神力でグッと耐えました。

神野さんはもはや完全に大人の男性としての風格すら漂い、四宮さんとも何だか会話の調子といい彼女を見つめる眼差しといい、夫婦っぽいです。

見た目は以前と変わってないはずなんですけどね。

まるであの異次元の中で全くの別人になったように、神野さんは大人っぽくなってしまいました。


いや、割と最初から大人っぽいと印象は持っていましたが、今思えば彼は年相応の少年だったではないですか。

ですが今私の前にいる人は、もはや少年とはとても呼べないような空気を醸し出しているのです。

私達子供は背伸びをしてみたり、なんとか大人っぽく見られようとしがちですが、それでは到底出せない雰囲気があります。

同級生の中でも異質です。埋まらない人生経験の差というやつですよね。

私は父が有名で怖いイメージがついてるせいなのか彼氏も出来たことないのに、神野さんは結婚して子供までいますもんね。


「仕方ない。答えよう。正直言うとその通り、僕は自分の子供より他人の子供を優先するよ。

それが医者という生き物だからだ。父も祖父も曾祖父も医者だった。僕は骨の髄まで医者だ」


「……」


完全敗北です。反論不可能です。喧嘩を売った私が、これで悪役となりました。


「そんな食い下がらないでも。ほら、次の授業あるから……」


私は今一番複雑な心境のはずの桜井さんにさえ心配される無様な有様でした。


「は、はい……」


後ろで二人がこんなことを言っているのが私に聞こえました。


「イザナ。知らなかったとはいえ、今まで独りにして悪かった。

もう夏樹の事も、イザナの事も、独りにはしないと誓う」


「ぅん……」


またもや辛うじて聞き取れる程度の声で四宮さんが言いました。


「時間はまだある、慌てるな。前世の僕は君をあまりにも強く縛りつけてしまっていたらしい」


「……?」


「そうかもね。君が距離感を失うのも無理ない。僕も手探り状態だよ。

でもこれだけは信じてほしい。君が好きだ。もう他は目に映さない」


神野さんは何の躊躇もなくイザナさんの唇にキスをしました。

そして、以心伝心過ぎるせいか彼女が何も言わなくても会話が成立してるみたいです。


「あの人なにをして……!」


思わず声が出てしまいました。

それから先も何か会話はあるかと思いますが二人の世界でのことなので無視無視。

教室から出たあと、私は強めに桜井さんに詰問されました。


「何であんなこと言ったの。何がしたいの。悪あがき?」


「違いますよ。でもなんかこう、釈然としないんですよねぇ。

あの人が好きなのは、瞳だと思います。それは間違いありません」


桜井さんは目を伏せました。その行動がどのような感情から来るものなのかはわかりませんが。


「子供がいるから諦めてイザナさんと結婚する。

確かに正論ですよ。人として素晴らしい事なんじゃないですか?

なるべく多くの人を幸せにしようと努力した結果でしょう?

でもなんか釈然としないんです。あの人は女を何だと思ってるんですか、全くもう!」


イザナさんにも失礼な態度じゃないですか、それは?

それとも、全部わかったうえで何か私の考えもしない物凄い事でも考えてるんでしょうか?


「彼のすることには何かある。無駄なことはしないと思う。

ハルくんは昔から私達の気付かないようなことに気づいたり、サプライズで驚かせようとして計画を立ててそれを誰にも秘密にしたり、そういうことよくあったから」


どうやら、私と桜井さんは同じ事を考えていたみたいです。


「無駄なことはしない、ですか……だとしたら、私やあなたはどうなるのでしょうか?

夏樹くんだって父親のそういうところ受け継いでいるように感じました。

無駄なことはしないはずです。なら、私達の運命は一体?

あなたが公園で消えたから、彼は私を追ってこの学校に来たんです。

それを全部覆すようなことを夏樹くんは自らの手でしてしまった。

私達の運命を彼が操作したことは無駄だったのでしょうか?」


「違うと思う」


「ですよね! 私も思います。本当に夏樹くんは全てひっくり返してしまったんでしょうか?

彼は父親に似て用意周到で戦略的です。

自分が積み上げてきた計画を感情的にぶち壊すタイプにはとても思えません。

あれはアクシデントだったわけですが……」


白痴の奴隷。それは謎のお姉ちゃんなる人物の奴隷だと見て間違いないでしょう。

それが干渉して夏樹くんを押しのけて神野さんを操り、私を二度も殺しかけました。

ならば、その二回の出現には何か意味があるはずです。

どうしてもわかりません。何か意味あるはずなんですが、夏樹くんと神野さんの考えていることがわかりません。


「桜井さん。神野さんの考えそうなことってわかります?」


「彼の考えそうなこと……まあ思い当たる節がないではないけど」


「それは何です!?」


「彼は誰のことも見捨てたりしない。昔からそういう性格だった。

あなたを襲った刺客も絶対に殺したりしなかったでしょ?」


「多分……そうだったと思います……」


「誰も見捨てない。甘い。すごく甘くて優しい性格。

やっぱり……夏樹くんを救うだけで満足はしないかもしれない」


「カギとなるのは娘、ということですかねぇ?」


「うーん……娘ときくと私は今、恐ろしい想像をしたけど」


「想像ですか?」


「彼は自ら異次元に消し飛ばされて異次元に生きる情報だけで実体を持たない存在になる。

そして娘が生まれない未来じゃなくて、生まれて元気に育ち、兄とも別れたりしない……そういう未来へと改変しようと考えてるのじゃないかなって」


「つ、つまり……仕切り直しってことですか。今までやってきたこと全部!?」


有り得ない話ではないかもしれません。神野さんは現実に大いに不満を持っていることでしょう。

本当は鳰さんと結婚したかった。彼の望みは、何一つ叶わず。

現実を捩じ曲げようと考えることも十分ありえるでしょう。

しかし、私はすぐ思い直しました。


「でも安心してください桜井さん。それは有り得ませんよ」


「何か聞いたの?」


「はい。神野さんが言っていました。

夏樹くんが妹や母親と再会する道を断ってまで積み上げてきたもの。

それが壊れるなんて耐えられるわけないじゃないかと。

だから、そういうちゃぶ台返しはしないはずです。

何か……何か違う意図があったはずです」


「振り出しに戻っちゃった。私達、意外と彼のこと全然わかってないね?」


「残念ですがそうですねぇ……私はともかくあなたまで。

他に神野さんのことをよく知っていそうなのは、家族を除くと……?」


「……結さん」


「ですよねぇ。会いたくないです……」


「ハルくんが何を考えてるのか……多分、私や佐々木さんが聞いたところで意味はないと思う。

秘密主義者だし。でも結さんって何から何まで軽そうだからイケるって」


「問題は彼女の子守りを神野さんがしてる点ですが」


「大丈……」


桜井さんが言いかけたその時。私も桜井さんも気づきました。

アーモンドをカジっている、リスが桜井さんの肩に乗っている事に。

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