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ボーイとガールがミートして  作者: ニャンコ教三毛猫派信者
LOG 1
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六月十三日・上

【注意】


この作品は途中から読んでも全くわからないほど複雑です。

総集編から読むか、第一話から読まないと何一つわからないと思うのでご注意ください

六月十三日。月曜日です。モードは読者モデルの仕事があります。

学校の皆さんには体調不良と言ってますが全然そんなことはなく、むしろ体は頑健そのもの。

病気一つしたことのない健康優良児であり、今日も溜まっているモデルの仕事のためちょうど休もうかと思っていたらしいです。

まあ本当かどうか知りません。優しさで言っただけかも。


ともかく私は学校へ。


迷った挙げ句、私は最低の愚行とわかった上で、休憩時間に珍しく千春さんや四宮イザナさんや岡本さんなどに絡まれておらず一人でいる神野さんを狙って話しかけてしまいました。


「あの……神野さん?」


廊下で話し掛けられて振り返った神野さんは、ばつが悪そうに頭をかきました。

私の気持ちには当然気づいているということです。


「どうかした? 話しかけて来るなんて。昨日は機嫌でも悪かったかな」


「私は……あなたのせいで、父に反抗する事を覚えてしまいました。

私は悪い子になっちゃったんです。どう責任取るつもりですか?」


神野さんは五秒くらい絶句していました。


「いやどうって言われても……」


「私は悪い子になっちゃったんですよ。あなたのせいですよ?

あなたや、父が望まない事だって自由に出来るんです。

賢明なあなたなら、その意味がわかりますよね?」


「や、やめろ瞳、落ち着け」


神野さんの顔色がにわかに青ざめ、といっても見えないですが、滅多に見ないほど焦っています。


「何をやめろと?」


「君の企んだ事は十中八九、四宮イザナとの接触だな?」


「はい。少し別の角度から情報収集をしようと思いまして。

何のヒントもないのにすぐ正解するなんて、やはり神野さんはその推理力を活かして医者より刑事になった方がいいですよ」


「……刑事の娘に言われると恐縮するね。とにかく今は僕の話を聞いてくれ」


「はい、話というのは?」


「聞いてくれ。今は僕が全部解決するから、焦らないでくれ!

四宮イザナにだって恋愛感情を抱いているわけじゃない!」


「さてどうだか……向こうは神野家と引き合う血筋。実際二人は引き合いましたし、見た目も絶世の美少女じゃないですか」


「君も絶世の美少女だと思うよ?」


「話を逸らさないでください」


「……今はまだ仮説段階。僕の予想したことよりは良い状況かもしれないし、実態はもっと悪いかも。

でも約束は果たすよ。何があっても僕が君をこの手で幸せにする。

絶対にだ。君が嫌だと言わない限りはね」


「口先だけでしょどうせ」


「こんなこと議論しても仕方がないだろ? 今日、一緒にどこか行く?」


「行くってどこに?」


「どこかその辺でデートとか」


「この際だから言っておきますけど……やっぱり恋人っていうのはナシにしてもらえます?」


「やっぱり僕なんか好みじゃないかな……?」


「妹に手を出す最低の人です。多くの女性に言い寄られているのも事実ですし、そのことに一々心配してたら身が持ちません。

あなたは恋人には相応しくないと思います。友達ならいいですけど」


「……じゃあ友達で」


絶対にそんなこと思ってないのに、口から勝手に言葉が出てきました。

でも後悔はありません。これは私の弱さのせいです。

この期に及んでも私は弱くて、つい諦めてしまいました。


それほどに私は神野さんのことを信用していたんです。


彼の子供がもし一族を根絶やしにしようとするほど苦しんだと確定したら?

そのことは、もうすぐ明らかとなるでしょう。


もしそうなったら、彼は努力を惜しまず子供のために力を尽くすと、私は確信できます。

そういう人です。作った覚えもない子供のために、子供を救うために命さえ惜しまないと確信できます。


その際、私は滑稽なほど無力で、たかが恋人ごとき、彼はそのためならいくらでも捨てられるでしょう。

まさに果実が熟して、そして摘み取られたような絶望感でした。


私は嫌気がさすほどの自分の弱さに泣きたい気分でした。

彼に捨てられる前に自分から捨てた事にしよう、という実に場当たり的で浅はかな対応でした。


そのことを知ってか知らずか、彼は何も言わず従ってくれました。


私は悪い子になりました。なにもかも不本意なのに、人を傷つけたり甘えたりするばかりで自分では他に何も出来ません。

変わらなければ。もはや全てを失ったに等しい私ですが、ただその変わらなければという思いに突き動かされるようでした。

四宮さんに会って話を聞かねば!


「落ち込んでるとこ悪いけど」


気分の沈んだ私に追い討ちをかけるのは突然出現した桜井さんでした。

慣れなれしく肩など触ってきて、私はこれからこの人と付き合っていく自信がなくなっていきます。


「何話してたの?」 


「私、最低です……」


「そう? あんなにあなたを好きな彼が?」


「はい……」


「よし、私たち友達になろうか?」


「えっ」


桜井さんは自由過ぎます。私は呆れつつも色よい返事をしました。


「そうですね……」


「私たち同じ人を好きになった同志、共通の敵がいるもんね」


「敵?」


「何をとぼけてんの。イザナと運命を操る者でしょ敵は?」


「正体を知っていますか?」


「彼は裏切り者。一族を根絶やしにするんだって。冗談じゃないよね?」


「それはそうなんですけど……」


「おばあちゃんに何か言われた?」


「あの人は嫌いです……」


「キリスト教の考えでは、人間に計り知れない深遠な考えに基づいて人間の運命は決まっていると言うわ。

彼の運命を決めているのは、一族の歴史で一番特別な子なんだって。

その子が運命を決めている。どれほど遠大な戦略を練っているかは誰にもわからない……彼の目的も誰にもわからない」


どうやら運命の支配者は男のようです。


「どうやってそれを知ったんですか?」


「四宮家で少し。で、どうする?」


「どうするって、どうしようもないでしょう」


「私も全体的な構図は掴めたけど、どうしようもないことは理解できた。

流れに身を任せる事にする。それが一番良さそうだって思ったから」


「そういえば四宮イザナさんは前世の記憶を誰かから流し込まれているんじゃないですか?」


「そうだよね。そうとしか考えられない」


「もしかして運命を操るもう一人の誰かがいるんじゃ?

その特別な子でしたか……彼は神野家を根絶やしにしようとしているんでしょう?」


「そうらしい。イザナは裏切り者と呼んでたし……」


「なのに前世の記憶を流しこむのはヘンな話です。

いるんですね、もう一人。戦っているんですね二人は?」


「いると思うけど、誰かはわからない。結さんって人はこう言ってた。

あの娘は何を企んでいるのかわからないけど、どうやら彼の邪魔をしているって」


「千春、何してんの?」


話の途中でしたが神野さんが私の方に戻ってきました。

そういえば彼、私の監督をしたがっていたんでしたっけ。

全盲の私を補助することに幸せを感じるというヘンな人です。


「ちょっと佐々木さんと話を」


「なら彼女にも聞いてもらおう。答えてくれ。夏樹ちゃんは、僕の実の娘なのか?」


何という突拍子もない。でも有り得ない話ではありませんでした。

実際に赤ちゃんが次元を移動するのを私はこの目で見ましたからね。

そして、私の隣の桜井さんは閉口します。


「その質問には答えられない。口止めされている」


「僕の……娘か……道理でな。いやちょっとまておかしいぞ?」


「ええ、私もそう思いました。おかしいですよね神野さん?」


「ああ。夏樹ちゃんが僕の娘なら結さん譲りの変身能力を持っているのは絶対おかしい」


その通りでした。


「言えない。口止めされてるから」


「じゃあやっぱり、妹かな」


「どっちにしろ手を出さなくてよかったですね」


「だから出さないって!」


と一瞬喧嘩したあと、桜井さんはこう言ってその場を後にしました。


「今日はバレンタイン。ちゃんと相手は決めてある?」


「えっと……」


異能が世界に発生してから百年が経過しました。

そこで各国の文部科学省は教育に能力に関するものも組み込んだんです。

我々人間はかつて異能がなくても知能や運、身体能力などで格差があった。

しかし百年前からは異能発生により格差が爆発的に広がりました。

頭が悪くても能力が強ければスターになれる。

能力が微妙でも頭がよければ選択肢は広い。

でも例えば身体的機能と能力が合わなかったり、頭も良くなければ能力も優れない人が大勢います。

そういう人への偏見や差別をなくすため、各国では障害者差別を考える道徳教育とセットで能力に関する教育もしているわけです。


とても筋が通った話ですが、今日はぼっちにとって地獄の授業です。

みんな経験した事がある。みんな二人組作ってっていうあれですよ、あれ。


これは能力での差別や障害者差別をなくそうという道徳授業なんですが、その一環として、互いの足りない部分を補い合うためのパートナーシップ制度も作られたんです。


建前上は非常に道徳的で素晴らしい考えです。

個々人の能力は一長一短。そこを補い合うパートナーを作れという話です。

そして一見短所のように思えるところも場合によっては長所となります。

臆病な性格ということは、慎重という長所であるとも言えます。

だから臆病なやつは後先考えず突っ走りがちな奴と組め、というわけです。

戦闘力に乏しい私のような能力も、敵を油断させやすいという長所と言えなくもないかも。


そしてそういう戦闘力に乏しい者は神野さんのように非常に攻撃的かつ防御力も高い人間がパートナーになるのが望ましいですよね。

まあ、神野さんは特にパートナーとして必要な相手はいないので、純度百パーセントの個人的な感情で私を選びたいことは間違いないでしょうが。

私は組みたい相手は他にいません。これで組むことになると、私生活でも一緒にされることすら有り得ます。

この高校一年の生活が始まって最初の学校行事、これこそ後の人生をセンター試験並に左右してしまいます。


ここで個人的に嫌いな相手と組むことになってしまうか、可愛いあの子と組めるか。

それはもう残酷なまでに明暗を分ける地獄の制度なんです。


「私は他に相手いませんけど」


と、話の方向性を神野さんの思うままにさせる私でした。


「君に他に相手がいないなら申し込んでおこうかな」


「談合というわけですか。別に私がパートナーになるわけじゃないんで、どうでもいいですけどね!」


「全く君は妹にだけは遠慮がないな。彼女が僕のパートナーになってもいいのか?」


「構いませんよ。妹はあなたに対し、好感度は知りませんが信頼度ならとても高いですからね。

でもね神野さん、後学のために覚えておいてください。

女の子っていうのは、そんな裏でコソコソ談合するような男性は好きじゃありません」


「考え方の相違だな。僕は君に申し込むことは誰にも知られたくない。

君と僕だけで完結したい。贅沢を言うなら、このこともログに書かないで欲しい」


「そうは行きませんよ神野さん。あなたは私に衆人環視の前で愛を叫んでください。

四宮イザナさんの前で。そうでないと安心できません。私を不安にさせた責任は取ってもらいます」


自分で言いながら、何という嫌な女であろうかと私は自己嫌悪しました。

でもそんな私を甘やかしてくれる神野さんであることは百も承知でした。

だから離れられない。だから諦め切れない。彼に依存してはいけないことも百も承知でしたが、出来る気がしませんでした。

私は彼と出会う前の自分が何をして、何を目標とし、何を楽しみに生きていたのか全く思い出す事ができません。


彼を知らずに、彼なしで、人生をどうやって生きていたのか不思議なほどです。


「あれっ、あそこまで言ったのに不安にさせちゃったかな。ごめんね?

確かに僕らの間に邪魔は入った。でも一時的な事だ。

小鳥が止まり木を見つけるように……君の側で羽根を休められるときが必ず来ると思う。

本当に、一時的な事だ。だから安心していいよ」


信じられない言い草でした。ヘンなテンションにでもなっていたのか。

私はあまりにも恥ずかしい台詞に耳まで赤くなりました。

そして見えませんが、神野さんは常人ではないので、普通なら言った本人が赤面ものの恥ずかしい台詞を吐きながらも平気な顔をしている事は見なくてもわかりました。


「本当ですね? その言葉信じていいんですね?」


「本当だ、信じてくれ。どこへも行かないから。僕を繋いでいてもいい」


するとどうでしょうか。神野さんは私の手を引ったくるようにして掴むと、それを彼の首筋に持って行きました。

手に当たるけい動脈の規則正しい拍動とは裏腹に、私の胸が早鐘を打っていきます。

この人、何をして来るかわからない恐さがありますからね。


「僕のことを繋いでいてもいいから」


次に手に当たったのは神野さんがいつも首筋につけているチョーカーでした。

人の趣味にどうこう言いませんけど、私はこの神野さんがマゾヒストではないかと疑い出したのでした。


次の授業は三階で行われるんだったと思います。

私は神野さんと一緒にその教室へと入り込みました。


滅多に使わない多目的室。正式名称は何と言うのか知らないです。

ここに集められたのは、学年全員です。

まだ入学から日が浅いので全く見たこともない顔が多いですね。


ここで先生方が挨拶し、いよいよパートナー決めとなるわけですけど、先ほどパートナー制度は建前上は非常に道徳的だ、と言ったのは実質は違うからです。

基本的に性格が合うかどうかとかより、重視されるのは見た目とか周りから尊敬されるような強い能力。

その傾向は特に男子に強いです。

そして、女の子は可愛ければ能力や性格など完全無視して男が群がってくるんです。


何故ならこの制度でパートナーになれば恋愛関係、そして結婚まで視野に入れて考える事ができるわけです。

だからよくある婚活パーティーとほぼ変わらない様子が繰り広げられるわけですね。


要するに女は男のスペックばかり見る。

男の方は女の顔とか体しか見ていないということです。

婚活だと年齢も重視されるかとは思いますが今回は同い年同士しかいません。

差異はせいぜいそのくらいでしょうか。


同意の上でパートナーになった男女は尊敬され、羨ましがられます。

その次の地位に収まるのが同性同士で円満に組んだコンビ。

そしてその下に大量の余り物コンビ。互いに多少なりとも不満はあるものの、妥協して組んでいます。

最下位には歯牙にもかけてもらえず、どうしても余った可哀相な人がいます。


ていうかこの学年、生徒の数は奇数なので、絶対に一人は余るという構造です。

何という残酷な制度。綺麗なのは建前だけなんです。

みんなが固唾を飲んで見守る中、先生の合図が始まります。


「というわけでですね。更新は一年に一回。それまで契約は原則破棄できないものとします。

それでは第一回パートナーシップコンペティション、開始ィッ!」


先生のシャウトとともにソフトロックっぽい無難なBGMが流れはじめ、明るくて一学年が収まるには若干狭い多目的室に生徒たちが一斉に広がりました。

体育館の半分くらいの面積に百人近くが群れてつどう。

心の準備が出来ていない私のような人が無数にいます。

こういう事態に対する順応力の高い人って羨ましいですよね。

もう交渉が始まり、決めている人も。

最初から談合してある人も多いとはいえ、これは焦りますよ。


私が神野さんと組もうとしても、それを邪魔するかのように男性陣が群がって来たので、そんなに背の高くない私は高い壁に囲まれてなす術もなく、ストレスが急上昇してきます。


「是非俺と!」


「俺にしとけって、な?」


と言われても、二人でじっくり話して人となりを知る時間がないので何とも返答のしようがありません。

私ではお相手の役にも全然立てないですし。


「あの! ちょっとお手洗いに……」


私は全力で逃走し、多目的室をも脱走して、催してもなければ前髪を整えたいわけでもないのに、トイレに向かいました。

まさかここに人がいるとは思ってませんでしたが、何やらトイレの中から話し声が聞こえるじゃないですか。

私はこの方面のトイレに来たことはなかったですが、一体この授業中の時間に誰が?


「鳰のことを掴んでいたのか?」


居ないと思ったら神野さんがここにいました。

誰かと一緒にいるようです。


「鳰は現在、二十五歳。あなたがイザナと再び結ばれるのを望んでいる」


桜井千春さんは興味なさそうに短く答えました。


「二十五歳……あれは十五で出せる色気じゃない。妖艶ですらある。

そんなことを鳰に感じる僕は情けない限りだが……」


「で、なんで私とここに? 佐々木さんと組むんじゃなかったの?」


「こんな行事最初からどうだっていい。千春に言っておきたかったのは一つだ。

鳰は死んだ。もう元には戻らない。僕は彼女にもらったアクセサリーを瞳に贈ったが、後悔はない。

いまだに突き返されないのが不思議なくらいだが」


「鳰の核心に、触れるの?」


「そうだ。今日放課後にでも四宮家へ行く。君はずっと僕の事を守ってくれていた。

真相がすぐそこだ。僕は君のためにも、鳰のことを探し続けていた。

それも終わりだ。今日、核心に触れたら最後だ……二重螺旋の物語。

それはもうすぐ終わる。君と僕が暗い絆で結ばれてから五年。

それはもうすぐ終わる。君の胸に引っかかる重荷を下ろす」


「うん。鳰が何なのかは私も教えてもらった。ハルくんも薄々気づいてるでしょ。

五年前の四月十五日。私が十一歳になったばかりのあの日事件は起こった。

その日イザナは東京。鳰がわざわざ秋田までお父さんを連れていった。

ところで、十五年前の四宮本家でのことは見てないの?」


「それがすっかり忘れてて……」


「十五年前。鳰は四宮イザナのところへ出てきた。赤ちゃんと一緒に。

もちろんその赤ちゃんは自分と全くの同一人物だった。

それを見るのを忘れてたの? まあ、いいけど別に……あとは核心に触れた後、本人から聞いてね」


「わかった」


「妹の……りっかちゃんだっけ。あの子のことも?」


「四宮イザナの妹、というのが真相らしいな」


「妹の件は簡単に裏が取れた。不思議なのがお父さんと鳰の事。

ハルくんのお父さんが消えたときイザナは三歳になるかならないか。

覚えてないのは仕方ないけど、問題は十歳の時にも鳰の事やお父さんのことをイザナは全く関知してないこと。

つまり二人はハルくんに消し飛ばされていないか……あるいは……」


「あるいは、なんです?」


神野さんに代わって私が聞いてみると千春さんは自信なさそうに、顔に陰影をつくって伏し目がちに言いました。


「ああ、いたの佐々木さん。まあいいけど。

この世界に同一人物が二人以上存在するなら、有り得ない話じゃない。

話は変わるけど……私が独自に調べた事なんだけど、二人とも聞いておいて」


「どうかしました?」


「例えばイザナの一個前の一族の人間が赤ちゃんを吹き飛ばした。

赤ちゃんの名は四宮イザナ。そして、その世界が消えるとまた新しい世界が生まれる。

そして新しい世界でも、異空間への扉の中に吸い込まれた赤ちゃんは保存されていていつでも取り出せる状態で存在する。

その赤ちゃんが、四宮イザナがもう一度生まれた段階で彼女が三歳の時に出現したとしたら?」


「つまり四宮夫婦は、イザナとナギという姉妹を生んだと表向きなっているが、実際には妹のほうは産んでないってことか?」


「全くわからない。ただこれだけは言える。神野家を根絶やしにしようとする一族の息子がいる。

それとは正反対で、あなたと四宮イザナをどうしても結び付けようとする人がいる。

四宮イザナという女の子を二人、あなたのところに送り込んで!」


「いやまさか……僕の妹は四宮イザナだっていうのか?」


「そもそもあなた妹に手を出したらしいけど……それは自分の意思?

自分の中の誰かに操られたってことは考えられない?」


「誰から聞いた!?」


「六花ちゃん本人が言ってたから」


「……正直言うと僕は性欲に突き動かされた。それを自分の意思じゃないと言うことも出来るし、そうしないことも出来る。

最後に決断したのは僕の意思だ。記憶もはっきりしている。それに、後悔もない。

千春、妹が万が一、四宮イザナと完全に同一人物だとしても人生は全く違う。

彼女には痛みを感じる機能もあるだろうし、神野家で育ったわけでもない。

人生は全く違う。違えば違う人間だ。聞いたところで何も変わりはしないよ」


桜井さんを残してトイレを後にし、神野さんは私の手を取ってきました。


「行こう瞳。婚姻届を出しに行こう」


「そうですね。行きましょうか。あと、四宮家に今日にでも行くのは了承です!」


「感謝するよ」

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