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ボーイとガールがミートして  作者: ニャンコ教三毛猫派信者
LOG 1
18/75

五月十七日・下

私の古着を送って欲しいとママンに言ってあった件です。

ママンは娘の私に対して基本無愛想なのでうんともすんとも言わず、電話したとき、了承をしたのかどうかさえ不明でした。

電話をかけてみると予想外の答えが届きました。


「あれのこと? それならもう送ってあるけど……指定された住所に」


「ほんとですか!」


え? ママンとのプライベート電話ですら敬語なのかって?

はい。私は敬語以外で話したことがないのです。


用件を話し終えたママンは、マイペースなため、もう話すことはないと判断して自分から電話を切りました。

自分勝手なんですよね。彼女は。私は諦めてママンというのはそういうものだと思って接しています。


ママンに話を聞いた直後、ユキくんに電話して聞きましょう!

との計画が持ち上がりましたが、しばらく中断しました。

私は一応連絡先は交換させてもらいましたが、一度もこれを使って連絡はしていません。

女の子の私から電話をするのは、ちょっと恥ずかしいような気がするわけです。

しかし私は決めました。私はそういうことを意識するから恥ずかしいのです。

むしろ、業務連絡感を前面に押し出せば、私はユキくんに、色気づいた女の子みたいな印象をもたれる事もないはずですと気付きました。


「よし……」


ユキくんに電話をかけようと考えたそのとき。

まるで心が通じ合っているのかと錯覚するほど突然に、ユキくんから電話が。

電話の向こうで誰か女の子の声が聞こえます。


「もしもし……」


「誰? 彼女?」


「さっき会っただろ、忘れた?」


「寝てないんだから忘れません!」


「ああごめん。夏樹ちゃんがちょっと騒いで。それにしてもずいぶん早く出たね?」


「はい。あの、荷物届きました?」


「それを言おうと電話させてもらったんだけどね。今届いたから……」


ユキくん。あなたずいぶん律儀なんですね。生真面目というべきでしょうか。


「今着てるよ。これを小さい頃の君が着てたんだね」


「そ……それはそうですけど……」


「可愛い服をありがとう。喜んでくれてる。僕は君ほど親切な人を他に知らないよ」


「そんな……」


これは計算外でした。私はユキくんには極力事務的な対応をしようと考えていました。

私の心を誘惑し、気持ち良く持ち上げ、ふにゃふにゃにした上で、やがて自分の手に入れようとしているのは彼の方ではないですか。

まあ、わざわざ電話を切ることもないので話は続けますが。


「助かるよ。うちの妹の余ってたのを着回すのにも限界があったから……」


「よかったです」


「送ってくれたお母さんにも僕からのお礼を言っておいて貰えると嬉しい」


「それはもちろんです……はい、それじゃあ私はこれで」


「あ、もう切るの?」


「業務連絡をしたかっただけなので。それでは失礼します」


「わかった。じゃあ最後に。おーい変わって?」


「はいはいはい……」


夏樹ちゃんが電話を代わったようです。ユキくんがうらやましいです。

あんな年下の子に懐かれるなんてうらやましい限りです。

食い意地の張った岡本さんはともかく、ケーキの件はもう私は許していますし。

私の妹は双子な上に親戚の子供がおらず、年下の子供と一緒に過ごした事は、一度もないのです。

ああ。夏樹だけになつき……いやなんでもありません。


「お姉ちゃんありがとう! 嬉しかったです!」


「はい元気があってよろしい」


などとユキくんが夏樹ちゃんの後ろで言っていました。

彼の夏樹ちゃんへの接しかたは、兄のようでも父のようでもなく、ベテラン教師のそれです。

あるいはお医者さんでしょうか。微笑ましいです。


「はい。どういたしましてです」


そこへユキくんが割りこんで来ました。


「瞳。さっきの件だけど少し蒸し返させてほしい」


「さっきの件?」


「ああ。僕はもしかすると……死ぬ。この世から消えるかもしれない。

そして、君の書いているというログも意味をなさなくなる」


「何を言っているんですか?」


「僕は死ぬかも知れないって話。春の雪のように、跡形もなく消えるかもしれないんだ。

だから今日は君に対して好きだとかいきなり驚かせるようなことを言った……」


「ちゃんとした説明をお願いします!」


「ただの推論だし、根拠も薄弱だから話すほどの事じゃない。

これは覚悟の問題なんだ。僕は心から、明日死ぬかもしれないと思って生きることにしたんだ」


「死ぬかもなんてそんな……ならせめて何か思い出をください。

死んでも忘れませんから、だからあなたと出会った証を……」


「そう思ってあのブローチを贈ろうとしたけど、受け取ってくれなかっただろ」


「そ、それは……」


私は恥ずかしくてあの時の真意を教えることはできませんでした。

向こうはきっと何か深謀遠慮があって私が断ったと思っていそうですが、下らない理由です。


「その前に付き合ってほしいと言ったときもダメで、正直どうしようかと頭を抱えたよ。

僕は好きな人に好きだと言う前に離れ離れになってしまったんだよ。

二度と繰り返したくはなかった。でも言ったところで、無駄だったようだな……どっちみち」


「そんなことを言わないでください! ちょっとそっちいきますから待っててください!」


「え、ちょっとーー」


なんか言ってる気がしますが気にしません。

私は通話を繋げたまま部屋を飛び出し、適当にモードの持っていた子供っぽいサンダルを足に引っ掛けるようにして家を出ました。

外は暗くても私にはこの目があります。過去を見ながら道路の端っこを走っていると、家を出てわずか数十メートルで誰かとぶつかってしまいました。

私を受け止めてくれた人は、次にこう述べました。


「前まで来てるって言ったのに、もしかして聞かずに飛び出してきた?」


「すみません……ユキくん……」


私はその直後気づきました。今は極度にラフな部屋着。

お風呂から上がってそのままの姿であるということを。

ブラさえ着用していません。こんな姿を他人に見せたことはありませんでした。


「聞いてほしい事がある。僕はもう、君の力を頼るつもりはない。

それに……言うまでもない事だが、親戚の決めた結婚をして大金持ちになったりもしない」


「……何でそこで許婚の話が?」


私は普段人並みより頭は悪くないと自分では思ってるのですが、この時は間違いなくバカになっていました。

恋をしていて、しかも好きな人の腕の中にあられもない姿でいるので、ついバカな返しをしてしまったんです。

ユキくんは私を責める事なく、こう続けます。


「決まってるだろ。事件の捜査とかもう関係なく、君のことが好きだ。

これが僕に出来る最大限だ。本気だ。全力なんだ。これ以上好きだと伝える術は僕にはない」


「そんな、ユキくん! まるでそれでは私の方が鳰さんより大事みたいに聞こえます!」


「あれ……そう聞こえなかったかな?」


私は深い悲しみに襲われ、不意に鼻の奥に熱を帯びた痛みの奔流が走って、涙が溢れてきました。


「そんなことを言わないでくださいよ。あなたは過去に必ず決着を付けると自分に誓ったんでしょ。

もちろん鳰さんの事です。そしてあなたは先の約束を守れる男になりたかったと言ってましたが、それは過去に誓った未来の自分への約束でしょう。

それを守ってくださいよ。お願いですから……」


「何で泣いてる……? 僕が悪かったかな?」


私の気持ちが全く理解不能な彼に、私は泣いている理由を、心が乱されている私としてはかなり冷静に説明しました。


「私はあなたを試してました。口先だけのあなたが私に対して本気かどうかを。

でもそこまで言うなんて、言わせてしまうなんて、それが悲しかったんです。

それは私の責任でもあると思います……」


「そうだったか……でも今はもう……君の方が大切だ。それだけは信じてほしい」


「もちろん信じていますよ」


鳰さんには悪いですが、死んだ初恋の人より今好きな人がいいに決まってますよね。


「それで、僕が家の前まで来てたのは他でもない。これを渡したくて」


「……これは?」


私が手にしたのは、やはりさっきのブローチのようなものでした。


「君が気に入らないなら捨てていいから」


「いえ、いえ、大切にします。だから、死ぬとか消えるとか言ってるのが何なのか教えてください!」


「……少しだけ話そう。僕の体を、誰かが守ってるんだ」


「はい?」


「銃で撃たれて無事だったことが何度かあるだろ。昔からそうなんだ。

雪が降っても雨が降っても、僕は濡れた事がない」


「あなたを自動で守ってるって事ですか?」


「ああ。僕を操って父を殺したのも鳰を殺したのも恐らくそいつだ。

僕はそいつに操られて鳰を殺した。それを千春は見たんだろう……」


「まだそうと決まった訳では……」


「間違いない。そいつは、何かを目的にしていたはずだ。

そして未来が見えてるはずだ。そうでなくては父や鳰を排除する事が意味不明だし、まるで予めわかっているように僕への銃撃等を防げる説明がつかない。

僕の意識の外の不意打ちの銃撃すら完全に防いでいる……奴は未来が見えてるはずだ」


「そう……なんですかね?」


「奴は僕が鳰とくっつく未来は嫌だった。まして他の規定路線はな」


「規定路線というと、元々許婚だった澄谷会長や、例の四宮イザナさんですね?」


「その通り。その規定路線ではなくなるよう、ヤツは仕向けた。

そして僕が君に会うために必死になるように運命を誘導し、こうして僕は君と出会えた。

運命を感じないか。あるいは作為を」


「ちょっとごまかさないでください!」


と言っている時でした。若干肌寒い五月の夜に、裸と同じような格好で外に出ていたせいです。

私不意にものすごく鼻の奥が痒くなり、絶対くしゃみが止められない事だけは理解しました。


「あっ……あっ……あぁ……あちゅぅー!」


何とか一瞬早く手で顔を覆うのが間に合いました。


「お大事に。ティッシュいる? どう見ても持ってなさそうだからね」


「すみません……」


私がもらったティッシュで顔を拭いている時でした。

後ろの方から見知った声が聞こえてきます。


「どうした瞳ちゃん?」


「あっトントン」


声でわかりました。私の叔父にあたるトントンです。

私の実母には姉がおり、この人の夫がこの人。

今仕事から帰ってきたみたいですね。子供がいないとはいえ、東京に一軒家を持ってるので稼ぎはあるんでしょうね。

モードだけでなく私が一週間の間という約束で転がり込んでも嫌な顔一つしないですから。


「クシャミしてたろ。風邪ひくぞ」


トントンは私が男の人とこんな裸に近いような格好で抱き合っていてもスルー。

ユキくんが既に何度か彼氏と称して家に来ているからかもしれませんね。


「すみません、僕が呼び出したんです。じゃあ、またね」


「はい……」


ユキくんはまだ話の途中だったんですが、そのままきびすを返して帰っていきました。

ちょっと気まずいですが、私はサンダルでペコペコという足音を鳴らしながら革靴の叔父(トントン)についていきます。

すると、あの人から思いがけない一言をもらいました。


「いい子だな、彼は」


「え?」


「あの一瞬……俺に驚くどころか咄嗟に瞳ちゃんを庇う事までしてみせるとはな」


「あ、見抜かれてましたか」


「ああ。瞳ちゃんを夜中に突然そんな格好のまま呼び出すような男なら君を庇ったりはしない。

そしてその手のティッシュ……彼が渡してくれたものだな」


叔父は何を隠そう刑事です。血の繋がらない義兄、佐々木本部長と比べるのは可哀相ですが、立派な刑事さんです。

この程度の洞察力、そして観察力はあって当然でしょうね。

そんな叔父は聞きたくなどないでしょうが、私はどうしても誰かに自慢したくて言いました。


「あの人は私の恋人なんですよ」


「知ってるよ」


「あの人、許婚と結婚さえすれば日本最大の財閥の当主になれるそうなんですよ。

何を隠そうあの神野家ですよ。神野家が日本を牛耳ってる事ぐらい子供でも知ってます」


「神野家のか? 全く漫画みたいな話だな……」


「その結婚なんかする気ないから、私が好きだって、そう言ってくれたんです。

すみませんトントン。誰でもいいから、とにかく自慢したくてしょうがなかったんです」


「目が赤いな。泣いていたのか」


「ええ、悲しくて一度。嬉しくて一度」


「そうか。寒さに耐えても一緒にいたかったんだもんなぁ。悪いことをしてしまったかな?」


「いえ、大丈夫ですよ」


「今週から会えなくなるな……寂しくないかい?」


「淋しい気持ちはありますけど……いつまでもここにいるとご迷惑ですし。

それに……それに……私はその……えっと……」


私は答えに詰まりました。何故かというと、実際には淋しいのに、寂しくないと無理矢理答えようとしているからですね。

叔父はすぐそれに気がつき、無理に私にそれ以上の答えを求めませんでした。


「まあいい。よければ好きなだけいなさい」


「はい……」


家に入った直後でした。すぐにチャイムが鳴ったので、出てみると案の定ユキくんでした。


「瞳さんいますか?」


「忘れ物でもしたか?」


「さあ……出てみますね」


玄関を開けると、ユキくんが私に紙袋を手渡してきました。


「これ全教科のノート。勉強が遅れるといけないからね……」


私が板書やそもそもノートを使う事自体苦手なため、モードの勉強が遅れることを危惧したユキくんが持ってきてくれたのでした。


「ありがとうございます……私のわがままのために私は、色んな人に迷惑をかけていますね……」


「そんな風には思ってないよみんなも。じゃあ僕はこれで」


ユキくんが出て行ったあと、さらに叔父(トントン)がコメントを残しました。


「とても高校一年生とは思えん……」


「彼は英才教育を受けたらしいですからね。勉強も下手な大学生より出来るみたいです」


「ふむ……何から何まで完璧過ぎる。実は痴漢が趣味とかないだろうな」


「そんなまさか!」


「ああいう完璧過ぎる奴は外面は完璧な分、内面がいびつだったりする……彼と同じ目をした男を何人か知ってる。

いずれも医者や弁護士といった高学歴の犯罪者だったが……まあ彼に限ってそれはないかな!」


叔父(トントン)はユキくんのことをイイ奴だと認めたのか、それとも明るい場所でよく見てみるとムカつくぐらい美形だったので悪態をついたのか、よくわかりません。

まあでも、確かに言ってる事は当たってる気がします。

彼は実際完璧に紳士的な行動をするよう心掛けていますし、欠点らしい欠点は見たことがありません。

逆に内面に何かしら問題を抱えている可能性は、無くはないと思います。

わずか一歳で見えないお姉ちゃんと楽しそうに会話をする、不気味で不安定な子でしたからね。

その日のニュースについても、少し記しておきましょう。

神野家関連のニュースだったので、もしかすると今後役に立つかも。


叔父と叔母、それにモードと一緒に夜リビングにいると、こんな速報が流れていました。


「ーーただ今入ってきたニュースです。内閣府、内務相、外務省、軍務大臣、並びに首相が先ほど声明を発表しました。

中国雲南省と隣接するベトナムの武装組織に対し、政府が宣戦を布告しました。

同組織は日中同盟を結ぶ中国の雲南省西部の国境沿いへ度々略奪をしに出没し、小規模な戦闘が繰り返され、直近の五年間で市民・兵士に一五〇人以上の死傷者が出ています。

これを受け、政府は最後通告を送るも返答なく、宣戦布告に至りました」


「戦争か……」


「瞳、陸軍大元帥の会見がありますよ!」


「ほんとですかモード? もしかして神野家の人でしょうか」


出てきた陸軍大元帥は、期待した人とは違いました。


「あ……そういえば大元帥は天皇陛下と決まってたんでした」


「期待させないでくださいよモード……」


「戦争はまあ持って一ヶ月というところか。戦力が違いすぎるからな。

瞳ちゃん、これで世界の空白地帯がまたひとつ塗り潰されたな」


「ですね……」


中国と日本は日中同盟を結んでおり、日本は軍事的には中国に完全依存です。

というより、日本と中国は一心同体で、役割分担をしてるだけですが。

この情勢について、トントンが解説してくれました。


「インドシナもマレーも東南アジア情勢は日本が本格進出だね。

ここまで来れば世界最大の人口密集地、インド亜大陸も目の前だね」


「インドに日本は進出するつもりでしょうか?」


「当然そうだろう。瞳ちゃん、日本円を使う地域がどれだけあるか知ってるかい?」


「日本円を……? 私は知ってますけどモード、答えてあげてください」


モードは私がそれに答えられない事は理解したうえで、ため息をついてこう答えました。


「ええ。日本を除けばモンゴル、チベット、ウイグル、中国、台湾、朝鮮半島、インドネシア。

東南アジア地域が日本の勢力圏になり、インドまで日本が進出したら世界人口の過半数、三十億人弱が日本円を使うようになるでしょうね」


日本二億、中国が一〇億、台湾三千万、インドネシアと朝鮮半島諸国で合計三億。

現在日本円を使用する人口はおよそ十五億人。インドと東南アジア諸国が加われば三十億人弱になります。

世界人口五十億人のこの時代に、それが実現すればあまりにも圧倒的な国家ができます。


「そうなればヨーロッパ、ロシア、アメリカも日本に平伏せざるを得なくなるだろう。

政府が秘密裏に、そして半ば公然と行っている世界戦略。

大東亜共栄圏の成立だ。日本を盟主としたアジア諸国の連合体……」


私より賢いモードは難無くその話についていきます。


「三十億人の人口を抱えるひとつの国。

世界の過半数の人口。実現すれば空前絶後の世界帝国ですね。

しかしトントン、常識的に考えて、日本のような世界の最も進んだ先進国が、中国やインドのような人口ばかり多いアジアの後進国家を飲み込んでメリットあるんですか?」


「メリットか。それは政府のお偉いさんに聞くほかないだろうな。

でもまあ、世界に覇を唱えるというのは男に生まれたら誰でも一度はやりたいことじゃないかな?」


「そんな冗談ばっかり。でも実際、日本を盟主とした連合体ができれば領土争いはとりあえず棚上げされ、軍事費も削減されます。

巨大な領土とその合理化が成されれば他とは一線を画すことになりそうです」


「日本という、ある種アジア地域の紛争とはほとんど局外にいる者を盟主とした連合体というのは実際いい落としどころかもしれないなぁ……」


「トントン。私たちは訳あって神野家の人と知り合ったんですよ。

瞳に至ってはもう恋人同然の関係なわけです」


「……そう聞いている」


「神野家は珍しいお金持ちですね。普通、儲けるという行為は搾り取る対象があって初めて成り立ちます。

神野家は儲ける対象であった外国市場を国内に取り込もうとしているんですよ……変な話ですね?」


「意外と、神野家というのは本当に世界から紛争を無くそうとか考えているのかもな。

そうでなくても、三〇億人の人口を抱えた帝国は運営が難しいだろうが、本気を出せばどんな馬鹿げた夢想だって可能な馬力がある。

世界征服……人類史上誰も成し遂げたことはないが、まんざら不可能でもなさそうだ。

誰もが一度は考えた事があるだろう。国境がなければ、民族や宗教の壁がなければ、世界はもっと合理的で平和であったはずなのに、と」


「世界征服……日本は世界征服するつもりなんですか?」


「それすら可能な力が蓄えられつつある、ということだ。

インドや東南アジアはほとんどが親日国だ。

高速道路、水道施設、ダム、発電所、学校、病院。

日本が海外にインフラを建て、費用は全て日本持ちだということは、授業で習ったはずだ」


「はい。私も瞳も日本の血を半分引いているのを誇りに思っています!」


トントンの言うことに少し訂正を加えておくと、日本が海外に高速道路を引いた場合、その通行料をその国の政府と折半しています。

そして、工事費用を回収できるだけの年数、甘い汁を啜ったあとはインフラの完成から三〇年で自動的にその国に一切の権利が渡るようにもなっています。

実に良心的だと言えます。確かに、全くの慈善事業ではないですが。


「ニュースで出てきたベトナムの武装勢力にしても、恐らくは親日的態度を取ることで日本に取り入るはずだ。

戦っても利益はないが、連合体に入れば双方に利益があるからな」


「インドでいえば係争地として知られるベンガル、カシミア地方なんかは救われるでしょうね。

インドかパキスタンか、どっちの物かで揉める事なく全部日本を盟主とした連合体だから、で終わるんですから」


「事実、中国が十年ほど前に日中同盟を結んだ時にはチベット、ウイグル、モンゴル、満州、朝鮮などがそれに続いて日本の傘下に入った。

結果として中国に支配されていたそれらの地域は独立が認められ、紀元前から続く民族間の争いはとりあえず終わった。

領土問題のゴチャゴチャしている中近東地域も飲み込んでしまえたら良いんだがな……」


「少なくともイスラエルと紛争しているパレスチナなんかは日本に助けを求めるでしょうね。

遅くても、日本の手がインドから更に西のアラビア半島に伸びてきた頃には。

イスラエルだってさすがにそこまで肥大化した日本に対抗できる軍事力はないでしょうし……」


「現在のオスマン帝国には中近東の盟主になれる実力はないしな……日本が世界の警察のような役目を果たすのは、日本人としては正直悪い気分ではない」


「私もです。ベトナム出兵、早く終わるといいですね?」


「そうだね。まあ、終わったらすぐカンボジア出兵だろうけどね。

それも一週間もあれば片は付くだろう。俺はこう見えても警察だからね。

あまり遠い国に手を出して、そして入国審査の簡略化や関税撤廃とかして欲しくはないのが正直なところだが」


「麻薬とかマフィアとか日本に入ってきたら怖いですね……」


ここからも難しい政治の話とか経済の話が続きましたが、よく覚えてないのでカットします。

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