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ボーイとガールがミートして  作者: ニャンコ教三毛猫派信者
LOG 1
1/75

四月二十三日

注意。この作品にはリア充しか出てきません。ご注意ください

どうも、佐々木・モード・(のぞみ)です。私がこれを書いているのは七月上旬です。

瞳が書いているので触発されました。捜査資料として残したいと思うので詳細に記しておきます。


というわけなので、時系列がちょっと乱れるかもですが、ログを並べる事にしました。

まず最初は今年の四月の事です。瞳のログですね。

何がどうなってこのログを書くに至ったのか説明が必要でしょう。

すぐ明らかになります。じゃあ開始します。



ここから瞳のログです。



どうも瞳です。もちろん元気にしてますよトントン、パパ、それに本部の皆さん。

今日はご報告があります。というのも私こんなこと生まれて初めてでして、つい筆を取ってしまったんです。

もっとも、パソコンで書いてるんですけどね。


今日の夕方の事です。いつものように盲導犬のシオと散歩をしていると、あの子が立ち止まったんです。

賢い子ですからよっぽどの事がないと立ち止まりません。

オシッコかな、と思ってバッグに入れてあるペットボトルをとろうと手を伸ばしたその時でした。


誰かが私の手を掴んだんです。大きな男の人の手でした。


「ほらな、簡単だっただろ?」


「あの……何か私にご用ですか?」


「そうだよお嬢さん。この車に乗ってくれると嬉しいんだが」


私が答える前に腕は引っ張られ、体ごと抱えられて車の中に無理矢理乗せられたんです。

私の心配はただ一つ。何が起こったかだいたい理解してはいますが、これだけは先に聞かないと。


「盲導犬……あの子はどこです!?」


「心配するな、これからは俺達が君を守ってやる」


「結構です、私は……!」


「おっと。別に必要ない。お嬢さんの事は何でも知っている。

名前は佐々木・アンジェリーナ・瞳。

双子の妹は佐々木・マチルダ・(のぞみ)。愛称はモード。秋田県出身。

フランス人男性と日本人女性との間に生まれた。父親とは疎遠、佐々木は母親の姓。

史上最高の捜査官の異名をとる秋田県警察の佐々木本部長が母方の叔父だ。

佐々木本部長のことはフランス語で叔父を意味するトントンと呼んでいる。

佐々木本部長に実子はなかったが、血の繋がりのためか同じ能力を受け継いでおり、過去を呼びだし、自由に見る事の出来る能力でひそかに叔父を手伝っている」


「すごいリサーチ(ぢから)ですね……警察になればよかったのに!」


「恐れ入る。現在十五歳。今年の十月二十八日で十六歳になる。

シオという盲導犬といつも一緒にいる。

料理はしない。趣味は音楽鑑賞で、絶対音感を持っている。

小学生のころ、ピアノコンクールで金賞を取っている。

中学三年生の夏、突然目が見えなくなりそれ以来盲導犬と生活している。

しかし現在を見ることはできなくても過去は見える模様。日英仏のトリリンガル。

学校には行っていない。通信教育で済ませており、高卒資格取得後は事務所を立ち上げ、目の絶大な能力を活かした犯罪コンサルタントとして事実上、警察の捜査官となる予定」


「どうやってそれを!」


「ただしこれからは人生設計が多少は狂うだろうがな。

お嬢さんはこれから俺達の犯罪コンサルタントになる……意味は一八〇度違うがね」


私を誘拐した犯人。そう、私は誘拐されたんです。初っ端から大事件ですね。

などと明るく過去を振り返っている事からわかるように私は別に平気でした。

そのことについてもう少し描写しましょう。


この男性の目的というのは私の目を利用する事です。

私の目は過去を見る。例えば私はあなたの家に行き、過去を見ると、あなたの携帯電話のロックをどういうパスワードで過去に解除した事があるかわかります。

誰にも知られていない裏のアカウントなども把握できますし、要するに犯罪捜査に最高のこの私の能力は、犯罪を行うのにもうってつけなのです。

おそらくこの男性が具体的にやりたかったのは、銀行の暗証番号等の盗みでしょう。


私が銀行やATMに行くだけで大抵の悪事は可能ですからね。

過去のお客さんの情報を見ればいくらでもキャッシュが引き出せますし。


ああそうだ。緊張感がなくて申し訳ないですが、私は怯えながらこう言ったんです!


「それにどうやって警察による警備をくぐり抜けたんです!?」


「ごく簡単な話よ。警察官をちょいと買収すればそれでいい。

全部で一千万円かかったが、君がいれば何億円でも稼げる、安い出費だ」


「そんな……私信じていたのに……」


「気にする事はない。これからは俺達が一緒だ」


「何とかしなくては……」


非常にまずい状況でした。トントンも無策ではなかったですが、まさか警察官が買収されるとは思いもよらなかったでしょう。

ここまでの組織的犯行、トントンに責任を求めるのは酷というものです。

私が絶望的な気分でこの窮地を脱する策を考えながら、頭の端っこでは無理だと諦めていたその時でした。


誰かがこの発車寸前の車に声をかけてきたんです。運転席の方からです。

明らかに若い男性、または少年のような声でした。


「佐々木瞳という女の子を知りませんか……会って話がしたいんです」


男達がこの男性の事を殺すことを決めたことは肌で感じました。

私のことをこの人たちに聞いてきた時点で、もう殺さなくてはなりませんからね。


「佐々木本部長め、手を打っていたのか。殺せ!」


「先輩、弾が出ません!」


「なに!?」


弾が出ないと訴える男性の声が運転席から聞こえ、さっきから私に構っていた男が私の耳元で叫びました。

直後、鉄臭い臭いと断末魔のような男の悲鳴が運転席から発生。

続いて私のすぐ横から風が入ってきました。

ロックしてあったはずの車のドアが開いたようでした。


「お前どこの回しもんだああ!?」


銃の安全装置を外す音が聞こえました。今回も弾が出ないことを祈るばかりです。


「二人とも銃持ち。ならどっちもザコか。ろくな能力もない使い捨ての鉄砲玉だな?」


そうみたいですね。強い能力があれば銃は必要ないでしょうし。

そして、そう言っているということは彼は半端じゃない能力って事でしょうか。


「うるせえ!」


「彼女と話がしたかっただけだ。目的は本当にそれだけだったんだ。

余計な事をしなければ痛い目を見ずに済んだのに」


男性は私の手を引き、車から降ろすとそのまま無造作にただ歩いて車から離れ、私に何も言ってきません。

盲導犬のシオが無事なので、途中で彼は私から手を離しました。

その間もずっと男の悲鳴が車の方から聞こえてきます。


「佐々木さんだね、話は聞いている」


男性は今、マフィアを二、三人半殺しにしたばかりと思えないような冷静さで言ってきました。


「あなたは……トントンに雇われたボディーガードですか……?

だから今、私が危ないところを助けてくれたんですか?」


「何の事だ?」


「違うならいいです。ええと、そうですね。言うのを忘れていました。

普通助けてもらったんですから真っ先に言うべきでした……ありがとうございました」


「礼は言うな、頼むから。君と話がしたかっただけだ」


変な人です。すこぶる変な人でした。


「はい、話というのは?」


「送っていくよ。その間に話そう」


「何で私の家を知ってるんですか?」


「県警本部のあるビルまでだよ。あそこにお父さんがいつもいるんだろ?」


「はい……じゃあお願いします。あ、警察に通報はしてありますか?」


「してないけど……」


しかし私はここで、一つの事に気がつきました。

私を心配したトントンは間違いなく私を軟禁状態にするでしょう。


この件を黙っていれば私は明日ここに来る事が出来るのです。


私の目は、二十四時間以上前の過去をこの目で見ることが出来ます。

従って今から二十四時間後、翌日の夕方以降にここへくれば私は自分を助けてくれた人の顔を覚える事が出来ます。

私は現在を見ることが出来ないのでそうするしかないんです。


「今、この事件を公にしなければ僕の顔を見ることが出来る、なんて考えただろう?」


「考えてませんよ!」


「そんなことをしなくてもまた君に会いに来るよ。言っただろ、話がしたかったって」


「ははーん、わかりました。あなたそういう魂胆だったんですね?

つまり私の事が密かに可愛い子だなと思ってるんですね?」


「そうだね。君は間違いなく可愛いよ。さっきのヤツらみたいに多くの男が狙うのも無理ないね」


「冗談ばっかり。それで、あなたは自分の顔に自信がないので私に顔を見られたくないんですね!?」


「さあね」


「それで……あなたは何の話があってきたんです? お金なら貸せませんよ」


「まさか。君に話といっても大した話じゃないよ。世間話とか、そういうの」


「私とそんな話して何の得があるんですか? 分からない人ですね……?」


私はこのとき、男性の意図が全くわかりませんでした。

しかし次に彼の言った言葉で私は話が見えてきました。


「得はなくても意味はあるんだ」


「はい?」


「君と親しくなりたい。その点においては、僕はかなり必死だ」


「私をストーキングするくらい必死ですか?」


さっき私を助けてくれたこの男性ですが、偶然通り掛かったわけではないでしょう。

私に話し掛けようと思ってストーキングしていたはずです。


「そう捉えてもらって構わない。嫌ならいいよ。二度と君の世界に入らない」


「大げさな人ですね。私に話しかけるくらいでそう構えることありませんよ?

親しくなりたいんですよね。別にいいですよ、私達は今日から友達です」


「本当か!」


「嘘つくわけないじゃないですか。私はご存知の通り瞳ですが、名前は?」


「昔大好きだった人に呼んでもらっていた名前が気に入っている。ユキくんって呼ばれてたんだけど」


「……じゃあユキくん、今はフルネームはいいです。何か事情があるんですよね?」


「想像に任せるよ」


「私や、警察関連者のトントンに名前や顔を知られたくない理由が?」


「さすが世界一の刑事の娘。とても鋭いね。その通りだよ」


「そうでしょう、そうでしょう。ユキくん、私はあなたを信用します。

あなたがトントンに知られたくないのなら理解も協力もします。

まあそうでなくても、父親は女の子と付き合う上で邪魔ですもんね」


「ありがとう。僕は警戒してたよ。君がもっと疑り深いんじゃないかって。

君の人生はお父さんの捜査への協力とともにあって、犯罪をたくさん見たんじゃないか?

さっきみたいな怖い事もあったし、もっと人を信じられなくてもしょうがないよ」


「あなたの言う通りですが、私はいい人も沢山知ってます……あなたみたいな」


「僕はいい人ではないけどね。おっ、到着だね、じゃあまた」


「はい……」


ユキくんはこうして去って行きました。変な人でしたでしょう?

悪い人ではないとは思うんですけど怪しいと言うしかないです。


そしてこのログをトントン、あなたに見てもらう事にしました。

この人が何であれ、トントンにはもちろんこれを伝えます。

それが義務だと思っています。

とりあえずこの一話では大量の伏線を張っておくことにしたわけだけど

一話から大胆に話を動かして引き込んでから伏線とか世界観説明はそのあとって手もあるな……。

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