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 3 わすれ……

3話目!

目を覚ますと、白い天井と、クリーム色のカーテンが視界に入った。


ゆっくりと身体を起こすと、町田は辺りを見回し、どうして自分がここにいるのか首を傾げる。


町田が起きたことに気づいたのか、養護教諭がカーテンから顔を覗かせた。


「大丈夫?」


「俺、どうして保健室に?」


「憶えていないの?下駄箱で倒れて、そのとき通りがかった先生があなたをここまで運んでくれたのよ」


「倒れた……?」


思い出そうとしたが、靄がかかったように何も思い出せない。


額に手を当てて俯く町田を見て、養護教諭は体温計を差し出した。


「とりあえず、熱を測ってちょうだい。吐き気とかはない?」


体温計を脇に挟みながら、町田は頷いた。


「軽い熱中症かしら。水分はこまめに摂らないと駄目よ」


平熱より少し高めの温度を示した体温計を養護教諭に返し、もう少し休んで行きなさい、

と言う言葉に、町田は素直に従った。


目を閉じるとき、何か大事なことを忘れているような気がしたが、考えてもそれが何か、

思い出せないまま、町田は眠りに落ちていった。


☆ ☆ ☆


ベッドで眠る町田を、見下ろす陰が二つ。


一つは、真っ直ぐ腰まで伸びた黒髪をうなじで束ね、淡い青色の着物を纏った青年。


一つは、昨日まで町田の隣にいた、宮城だった。


二人は重力に反して、天井に浮いていた。


青年は、今にも泣きそうな顔をして町田を見下ろす宮城を、心配そうに見つめる。


「本当に、いいのか?これで」


「うん……」


宮城は、苦しむように胸元の服を握りしめる。そんな宮城を見て、青年はため息を吐き出した。


「お前が決めることだが、後悔だけはするな」


「……。わかってる」


青年は宮城の肩に手を置くと、またため息を吐いた。


「いくぞ」


「うん……」


青年に促され、名残惜しそうに町田の寝顔を見ながら、宮城は青年と共にその場から霧のように消えた。


ありがとうございました!

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